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 2012-03- 

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カテゴリ:感動 

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ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです

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( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです 第4話 

104 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 00:39:49 ID:AgDSKSjcO
男の三欲と言えば誰もが知る物。

酒・女・賭博。

これは同時に男の三禁にもなる。

酔楽も、肉欲も、射幸心も、それは男の弱みを支配してしまう。

オトナの世界は、そんな怠惰な喜びに溢れている。

オトナの世界は、三つの禁を解放させる為にある。


堅実な者は笑うだろうが放っておけ。

この快楽は、お前の知らぬ高みにある。


105 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 00:46:07 ID:AgDSKSjcO
( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです

その四、「性欲豚、闇スロに行く」

108 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 00:49:17 ID:AgDSKSjcO


( ∵)( ∵)( ∵)今回はちょっと番外編(∵ )(∵ )(∵ )




(´・ω・`)「決戦の時は来た」

( ・∀・)

( ^ω^)

(´・ω・`)

(´・ω・`)「決戦の時は」

( ^ω^)「いや聞こえてる。聞こえてるから」

(´・ω・`)「なら反応してくれよ」

( ・∀・)「いや反応に困るわ」

(´・ω・`)「今日君らを呼び出したのは他でもない」


(´・ω・`)「裏カジノに行こう!」ババーン


109 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 00:54:16 ID:AgDSKSjcO

( ∵)( ∵)( ∵)エッチな店には行かないから、その貧相なブツをしまえよ(∵ )(∵ )(∵ )


( ・∀・)「裏カジノってあれか、違法なやつか」

(´・ω・`)「うん」

( ・∀・)「やだよ捕まりたくねぇし……でもちょっと興味あるな」

(;^ω^)「僕は怖いばかりです……ギャンブルとかやるもんじゃねーお」

(´・ω・`)「まぁまぁ、ブーン」

(´・ω・`)「一度は行ってみたいだろ?」

( ^ω^)「いy」

(´・ω・`)「そうだろ。行ってみたいんだよ」

( ^ω^)「おい」

( ・∀・)「そーだな。実のところ俺も稼ぎたいわ。こないだの12万も残すところあと2万だしな」

( ^ω^)「……何に使ったの?」

( ・∀・)「ギャンブル」

( ^ω^)「おい」


110 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 01:00:55 ID:AgDSKSjcO
(´・ω・`)「といってもまぁ、ブーンが思ってるほど怖いもんじゃないさ。もしお前がギャンブルやらなくても、行く価値はある」

( ^ω^)「馬鹿言えお。ギャンブル場に、ギャンブルをしないで楽しむ方法なんかあるかお」

(´・ω・`)「まず基本的におにぎり、カップ麺類、ジュース複数が食べ飲み放題だ」

( ^ω^)「行きます」

( ・∀・)「お前も露骨だな……」

(´・ω・`)「良い店なら酒やパスタやピザをタダで作ってくれるとこもあるね。当然インスタントだろうけど」

( ^ω^)「行く」

( ・∀・)「お前の食い意地混沌すぎだろ……この話もうタイトル食欲豚でいいんじゃないか……」

( ^ω^)「何の話だお」

(´・ω・`)「別に『(´・ω・`)賭博虎はオトナの博打で勝ちまくるようです』でもいいんだよ?」

( ^ω^)「だから何の話だお。なんだ賭博虎って」

112 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 01:12:20 ID:AgDSKSjcO
(´・ω・`)「何も目的無く賭博するわけじゃない。僕は単に、ちょっとやりたいスロットがあるのさ」

( ^ω^)「スロット、ねぇ。スロットなんかパチンコ屋に行きゃどこでも置いてあんだろうがお?」

(´・ω・`)「違うんだよブーン。今のスロット機はね、五号機って言う世代なんだけどさ」

( ^ω^)「お?五号機?」

(´・ω・`)「うん。五号機。ギャンブル性の少ない、比較的安全安心なスロットなんだよ今は」

( ・∀・)「んでまぁ、その前のギャンブル性が高いのが4号機世代だ。こいつは今は店に置けば犯罪に当たるんだが……」

( ^ω^)「なるほど。裏カジノ的な場所ならまだ置いてあるのかお……」

(´・ω・`)「そうそう。僕は4号機にどうしても打ちたいスロットがあるんだ」

( ・∀・)「なるほど。神様か」

(´・ω・`)「うお、一発で当てられたか」

( ・∀・)「たりめーだろ。だいたいの4号機なんかゲーセンに行けばあるんだからさ」

( ^ω^)「神様?」

(´・ω・`)「そう、神様」


113 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 01:22:08 ID:AgDSKSjcO
(´・ω・`)「ミリオンゴッドって言う名前のスロットなんだよ」

( ^ω^)「ミリオンゴッド……かっけぇ名前だお。他と何が違うんだお?」

( ・∀・)「ミリオンゴッドは、ミズホから2002年に発売されたパチスロ機(4号機)。規定上はCタイプでビッグボーナスもレギュラーボーナスも搭載されておらず、「GG(ゴッドゲーム)」と呼ばれるAT(アシストタイム)機能のみで出玉を得る、特殊なパチスロ機である。その類を見ない爆発力に注目が集まり、全国のホールにおける出玉記録を次々と更新した。 50000枚~60000枚(等価交換で100~120万円)クラスの記録も珍しくなく、機種名通りの超爆裂機だった。しかし玉持ちが非常に悪く、一時間に4~6万飲まれる事なんてザラ。それ故に2003年秋に「大幅に射幸心を煽る機種」として検定取消の処分を受け一斉撤去されたため、稼動寿命は短命だった。2011年から後続機である五号機ミリオンゴッド ~神々の系譜~が発表されている」

( ^ω^)「なるほど」

(´・ω・`)「一瞬で理解してくれてありがとう」

( ^ω^)「要は天国か地獄か、っていうスロット台なんだお?」

( ・∀・)「そうそう。このスロットのせいでサラ金に手ぇ出して自殺したやつもいっぱいいるからな」

( ゚ω゚)「なん……だと……?」


114 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 01:34:52 ID:AgDSKSjcO
(;^ω^)「だ、大丈夫かお?そんなのやって……」

( ・∀・)「大丈夫だろ。別にそんな大金つっこむわけでも無いしな」

(´・ω・`)「うんうん。僕も10万ほどしか用意してないから大丈夫だよ」

( ´ω`)「怖いです……ギャンブル怖いです……」

( ・∀・)「確かに金銭感覚バグってくるよな……」

(´・ω・`)「ブーンにも1万貸してあげるから、やってみない?」

( ^ω^)「……うーん……」

(´・ω・`)「君には比較的安全な台を教えてあげるからさ」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「……ならまぁ、行かない事もないお」

(´・ω・`)「よし!」

( ^ω^)「なんか僕、どんどんダメになってってる気がするお……」

( ・∀・)「何を言う。俺らは楽しみに行くんだ。ダメなのは、のめり込む事だ」

( ^ω^)「のめり込んでるやつに言われても……」


115 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 01:49:57 ID:AgDSKSjcO
( ^ω^)「ちなみにどこにあるんだお?」

(´・ω・`)「シベリアにあるよ」

( ^ω^)「今からシベリアかお……ちなみに今0時だお」

( ・∀・)「あ、なら車出すぜ俺。いいんじゃねーの、チロっと勝って風俗いこう」

( ^ω^)「どうなるやら……」



( ∵)( ∵)( ∵)そんなこんなでシベリアへ(∵ )(∵ )(∵ )


( ^ω^)「ついた」

( ・∀・)「相変わらずキャッチの兄ちゃんの多い事多い事」

(´・ω・`)「さて、聞き込みますかね」



(=゚ω゚)ノ「お兄さん方、何かお探し中っすか?お手伝いしますが」←キャッチの兄ちゃん。どこかでry

(´・ω・`)「飲み屋じゃないんだよ。僕らちょっとカジノ行きたいんだけどさ」

(=゚ω゚)ノ「カジノですか?うーん……シベリアでカジノっていうと小分けにされてるからなぁ……」

(´・ω・`)「へぇ。それは初耳だな」

(=゚ω゚)ノ「うん、ここらへんじゃインカジ(インターネットカジノ)やバカラ場、闇スロ店とかになってきますよぅ」

(´・ω・`)「闇スロ!それだ!」

(=゚ω゚)ノ「闇スロっすか。どんなのがいいかよぅ?」

(´・ω・`)「特に指定はないよ。強いて言えばミリオンゴッドがやりたいんだよね」

(=゚ω゚)ノ「ミリゴね。知ってる店があるよぅ。しかしお兄さん、ギャンブラーっすね」

(´・ω・`)「ちょっと体験してみたいんだ」

(=゚ω゚)ノ「はい。了解ですよぅ」

117 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 02:02:04 ID:AgDSKSjcO
(=゚ω゚)ノ「ちょっと失礼」

(=゚ω゚)ノ】ピッ、ピッ

(=゚ω゚)ノ】「……あ、もしもし僕です。ビコーズさん?あ、3名さん今から大丈夫ですか?」

(=゚ω゚)ノ】「……はい。じゃあ向かいのコンビニ前で。はい。はーい失礼しまーす」ピッ


(=゚ω゚)ノ「よし、じゃあ行きますよぅ」

(´・ω・`)「wktk」

( ^ω^)「はーい」

( ・∀・)「おう」

( ∵)( ∵)( ∵)移動中……(∵ )(∵ )(∵ )

(=゚ω゚)ノ「……しかしギャンブル場って、あんまりお客さんにオススメしたくないんですよねホントは」

( ・∀・)「? なんで?」

(=゚ω゚)ノ「あくまで噂だけど……ギャンブル場ってね、危ない物の受け渡し場に持ってこいなんですよぅ。例えばジャブなんかのね」

( ^ω^)「え」

(=゚ω゚)ノ「マジなんですよぅ。もし警察にガサ入れされた時、シャブの受け渡し場っていうより違法カジノ場って言った方が罪は軽くなりますからね」

(´・ω・`)「なるほど。辻褄はあうね」

(=゚ω゚)ノ「うん、だから危ない連中も紛れてるだろうしね。ヤクザだってフツーにいるだろうし、怖い怖い」

(=゚ω゚)ノ「僕らみたいなしがないキャッチには触れたくないところですよぅ」

119 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 02:53:36 ID:AgDSKSjcO

(=゚ω゚)ノ「さ、ここらへんまで来れば……あ、いたいた」

( ∵)ノシ ←店のry どこかでry

(=゚ω゚)ノ「どうもビコーズさん。ありがとうございます。こちらがお客さんです」

( ∵)「どうもどうも了解。ご苦労様」

(=゚ω゚)ノ「じゃあ僕はこの変で失礼しますよぅ。くれぐれも使いすぎないようにねーwww」

( ・∀・)「おう、馬鹿勝ちしたらまた店紹介してくれよwww」

(=゚ω゚)ノ「もちwwじゃあねー」

( ^ω^)「ばいばいおー」

( ∵)「では、行きましょうか」

(´・ω・`)「うん」

( ∵)「あ、その前に皆さん失礼ですが、身分証明書だけでも見せてもらってもいいですか?すいませんね、こっちも必死なんで」

( ・∀・)つ「全然いいよー。はい免許証ね」

(´・ω・`)つ「はい」

( ^ω^)つ「お」

( ∵)「ありがとうございます。じゃあ改めて行きましょうか」

( ^ω^)(……なんで身分証明書?)

(´・ω・`)(一つはサツ関係じゃないか軽く調べる為でしょ。他にもあるけど、気になったなら後でググればいいよ)

( ^ω^)(お……)

123 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 10:48:10 ID:AgDSKSjcO
向かった先はどこにもありがちな雑居ビル。
こんなにも堂々と存在しているのかと、少し驚いた。

( ∵)「じゃあこちらのエレベーターに」

( ^ω^)(´・ω・`)( ・∀・)

(´・ω・`)「wktkwktk」

( ・∀・)「勝てるかなー?」

( ∵)「ウチはけっこう人気ですよー。通常の20円スロットのみならず40スロ、100スロも用意してますね」

( ・∀・)「なにっ。そいつぁいいや」

( ^ω^)「ひ、100……1000円でメダルが10枚……?」

( ・∀・)「ものの20秒くらいで消えそうだなww」

( ∵)「その分1ボーナスは大きいですよーww金に余裕があればお試しください」


124 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 11:18:09 ID:AgDSKSjcO
( ∵)「さ、こちらです」

エレベーターが開いた先に見えたのは、他となんら変わらないマンションの一室だ。

( ∵)ノ ピンポーン

まず店員がチャイムを鳴らし、インターホンの部分に指を3つ立てて写している。
何かの合図だったのか、そこでガチャリと音がした。
ドアが開いたらしい。

( ∵)「では、どうぞ」

( ^ω^)「うおお……」

少し大きめのマンションの一室に、まず目についたのが目の前にならぶスロット群。
既に10名ほどがスロットに向き合っていた。
しかしパチンコ店と違いそこまで大きな音はしていない。
例えるなら深夜にテレビゲームをやっているという感じの一角だった。


( ∵)「では改めて、ご利用ありがとうございます。こちらがおしぼりです」

(´・ω・`)「ありがとう」

( ∵)「皆様初めてのお客様という事なので初回サービスで遊戯にあたり千円サービスさせて頂いてます。やりたい遊戯台を見つけたら声をおかけください」

( ・∀・)「よし!楽しむぜー!」


125 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 11:31:33 ID:AgDSKSjcO
とりあえず皆で店中を見て回る事にした。
あまり見慣れないスロット台が多く稼働し、賑わっている。
まぁもともと僕はあまりスロットを見慣れないタイプなので、わかったのは吉宗や北斗の拳といったものだけだが。

その中に。

(´・ω・`)「あ、あった」

(;^ω^)「これかお」

無駄に魅力的な金色のフォルム。
ミリオンゴッド。
死神、自殺者製造機、サラ金直行便等の異名を持つ博打台。


(´・ω・`)「回転数500……当たり2か。爆発の可能性あり……やろう」

( ・∀・)「最初っから行くのか?」

(´・ω・`)「ちまちまやって金減らしちゃうのが一番怖いからね。やるよ」

( ・∀・)「頑張れよ。俺はブーンと他のやつ打っとくわ」

(;^ω^)「お」

(´・ω・`)「うん、そっちも頑張ってね」

( ・∀・)「へーい」

126 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 11:53:56 ID:AgDSKSjcO
( ・∀・)「さて、とりあえず……なんか飲むか。お前は?」

( ^ω^)「あ。コーラ取って」

モララーはさっそく店の端に設置された透明な小型クーラーを開けた。
僕は不安だったが「ご自由にお取りください」と書かれているのを見つけ、ようやく安心出来た。
自分はコーヒーを手に取りながら僕にコーラを手渡し、一杯。

( ^ω^)「おっ。ホントに無料なんだおね」

( ・∀・)「まぁな。さて、俺らは何を打つか……お前、やるならシンプルなのがいいよな?」

( ^ω^)「あ、うん。変にごちゃごちゃした機能があっても困るお」

( ・∀・)「ならジャグラーでいいだろ。俺は適当に北斗でもやるかな」

( ^ω^)「お、噂をすれば……」

歩いていれば、40スロの部分にそれはどちらもあった。
北斗の拳と、ジャグラー。

( ・∀・)「丁度いいな。並んでやってみるか」

127 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:07:53 ID:AgDSKSjcO
ジャグラーとはピエロの描かれた、どこのパチンコ店にでも必ず置いてあるスロットの代表。

レギュラーボーナス、ビッグボーナスという大小2種類の当たりしかないシンプルな台だ。

( ・∀・)「だから初心者がやるには持ってこいなのさ。ま、やってみ」

( ^ω^)「わかったお。どうすれば当たりなんだお?」

( ・∀・)「そこのリールの左下にランプがあるだろ」

( ^ω^)「お……なにこれ、『GOGOランプ』……?」

( ・∀・)「そこが光ったら当たり確定。7を揃えにいけばいい」

( ^ω^)「シンプルだおね……やってみるお」

( ・∀・)「さぁケンシロウ、頑張ってくれよー」

互いに1000円を投入してみた。
どうやらコイン不要機らしく、既に画面右に「25」の文字が写っている。

さっそくMAXBETボタンを押し、レバーを叩いた。
スタートだ。

( ・∀・)「まぁ通常の2倍だし……だいたい1万円で当たればいいとこかな」

( ^ω^)「そんな簡単に当たるのかお?」

( ・∀・)「当たるさ。ジャグラーだもん。じじばばに大人気なんだぜ、それ」

( ^ω^)「へぇ……」

GOGOランプ< ベゴッ!!!

(;゚ω゚) ビクッ!!

(;・∀・)「!!!!??」


128 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:18:27 ID:AgDSKSjcO
(;・∀・)「……ひ、光った……?」

(;゚ω゚)「びっくりした……」

気付けば大きな告知音と共に、ランプが点灯していた。嬉しいのだが、かなり心臓に悪い。

(;・∀・)「おいおい、お前どんな強運なんだよ……」

(;^ω^)「え、あ、これ?これが当たりなのかお?」

( ・∀・)「そうだよ。じゃ、7狙ってみ」

(;^ω^)つ「お……」

7そ
バン

(;^ω^)つ

7 7そ
ババン!

(;^ω^)つ「いち、にぃーの……さん!」

7 7 BARそ
パパパーーン!!♪
デッデデレデデッデデレデデーン♪

(;^ω^)「お?7揃わなかったお……」

( ・∀・)「あちゃ。レギュラーか。まぁ速攻で引いたしいいか」

( ^ω^)「これが小さい方の当たりかお?」

( ・∀・)「うん。100枚くらい出てくるから適当に回しとけ」

(;^ω^)「お、おお……」

という事は、現時点では3000円勝ちという事か。
開始1分しかたっていないのだが。

( ・∀・)「お、こっちもバトルだ……ってなんだサウザーかよ」

<アタァ!!

( ・∀・)「当たれー当たれー」

<……ウグォア!!

( ・∀・)「……あー、負けた」

129 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:26:53 ID:AgDSKSjcO
( ・∀・)「ちくしょー、追加投資だな」

財布から1万円を出して突っ込む。
万札が軽々しく消えていくので本当にびっくりだ。
スロットはとても恐ろしいなぁと当たりを貰いながら隣で考えていた。

( ^ω^)「お、終わったお」

( ・∀・)「うん。そっから運がよかったらどんどん連チャンすっから、打っといてみ」

( ^ω^)「わかったお」

( ・∀・)「俺も当たり引かねーかなあ。あーケンシロウよえー」

( ^ω^)

( ・∀・)「第一、ポリゴン絵が粗いのが気になるよな。今の、絵がめっちゃ綺麗だし」

( ^ω^)

( ・∀・)「喉乾いてきた。ついでにおにぎりも取ってこようかなー」

( ^ω^)

( ^ω^)「……モララーさん、モララーさん」

( ・∀・)「ん、なに?」

( ^ω^)「また光った」


今度は無音でランプが点灯していた。

( ・∀・)


(  ∀ )    ・・

131 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:38:51 ID:AgDSKSjcO
ビギナーズラックとは言ったもので、その台を終える頃には3万1千円勝ちにまでなっていた。
モララーは悔しそうにまだ打っていたので、暇になった僕はショボンの様子を伺う事にした。

(;´・ω・`)

顔色はよくなかった。

(;^ω^)「……ショボン」

(;´・ω・`)「あ、ブーン」

(;^ω^)「……いまいくら使ったの?」

(;´・ω・`)「8万円」

パッとそんな金額が出るあたり、狂気じみていると思った。

(;^ω^)「そ、そうかお……僕は3万勝ちだお」

(;´・ω・`)「おお、よかったね……僕はいま死屍累々ってとこかな」

(;^ω^)「……」

(;´・ω・`)「でも丁度よかった。ブーン、一端変わってくれない?僕ちょっとお腹空いたし、おにぎりでも食べたいんだ」

(;^ω^)「お……でも僕、よく知らないお?」

(;´・ω・`)「大丈夫、めちゃくちゃシンプルだから……上の液晶画面を見てればいいだけだよ。それにたぶん当たらないだろうし」

(;^ω^)「お……」

(;´・ω・`)「じゃあ、よろしくね……すぐ戻るから」

(;^ω^)「了解……」

ショボンの足取りはおぼつかなかった。
これがスロット中毒の末路というやつだろうか。


132 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:43:02 ID:AgDSKSjcO
そんなわけでとりあえずやる事にした。
絢爛豪華な台。先ほどと同じように、MAXBETを押してリールを回す。

<キラーン!!

( ^ω^)「お、おおー……」

やればなるほど演出も綺麗で、まさに神様といったところか。
しかし玉持ちが非常に悪く、先ほどの3倍ほどのスピードで玉が消えていく。
ショボンのお金とは言え、これは忍びなかった。

( ^ω^)(みんなこうして金を失っていくのか……)

( ^ω^)(やっぱ僕には早い世界だおね)

<キラーン!シュピーン……







<プツン……


( ^ω^)

(;^ω^)「えっ」


133 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:49:55 ID:AgDSKSjcO

(´・ω・`)「……ふぅ」

(´・ω・`)(まさかストレートに飲まれるとはね……)

(;´-ω-`)(今月、キリキリだ……どうしよう……)

「……ボン!ショボンったら!」

(´・ω・`)「ん?」

( ;ω;)「ショボン!!やばいお!!ピンチだお!!」

(´・ω・`)「ん、どうしたの。僕の突っ込んでたお金、ぜんぶ無くなっちゃった?」

(´・ω・`)「それなら別に気にしなくていいよ。もともと捨てるようなつもりだったし……」

( ;ω;)「違うんだお!僕……僕…!」


( ;ω;)「あの台を、壊しちゃったお!」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「えっ」

( ;ω;)「僕はなんもしてないお!フツーに遊んでただけだお!でも、なんかいきなり」

( ;ω;)「画面が真っ暗になっちゃったんだお!ヤバイお、ヤクザに怒られるお!」

(´・ω・`)

(;´゚ω゚`)「……まさか、それって……!!」ダッ

ショボンは涙目というか、もはやほぼ半泣きの僕を置いて、遊戯台の方に走っていった。


(;ω; )「あ、ショボン、待ってくれお!僕だけ捕まるのはやだお!!」

135 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 12:59:48 ID:AgDSKSjcO
追いかけた先には、ミリオンゴッド。
画面は真っ暗で何も写っていない。
そこでショボンは震えていた。

(;´゚ω゚`)「あ……あ……!!!」

(;^ω^)「……お?ショボン……?」

(;´゚ω゚`)「フリーズだ……」

(;^ω^)「え?」

(;´゚ω゚`)「……」

ショボンは何も言わずに台に座り、直ぐ様リールを回した。
すると暗転した画面に、文字が。

「左から押してください」


(;´゚ω゚`)「……」

[GOD]
ダン

「中を押してください」

(;´゚ω゚`)

[GOD] [GOD]
    ダン

(;´゚ω゚`)「あ……」

「右を押してください」

(;´゚ω゚`)「……」

[GOD] [GOD] [GOD]
        ダダン!

シャキィーーーーン!!♪
パーパーパーパラララーパラー!!♪

(´゚ω゚`)「や…………」

(´;ω;`)「やったァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

(;^ω^)「え?え、え?」


136 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 13:09:22 ID:AgDSKSjcO
画面上に神々しく光る、「GOD」の文字。
どうやら当たりを引いたらしい。

(;・∀・)「なになに、何の騒ぎ……ってうお!GOD揃い!?」

(;^ω^)「あ、モララー!!」

(;・∀・)「おま、何があったんだ?」

(;^ω^)「え、いやなんな画面が真っ暗になって、押したらGODが揃って……」

(;・∀・)「お前それフリーズじゃねえかよ!!8000だったか9000分の1のプレミア演出だぞ!」

(;゚ω゚)「!!?」

(;・∀・)「しかもこうなったら負け分取り返すどころの話じゃねえぞ!!現時点で最低1万枚くらいは確実だ!」

(;゚ω゚)「!!!!?」

(´;ω;`)「あ……あぁ……!!至福っ……!!」


「え、プレミアムゴッドゲームじゃん!!君らまさかGOD引いたの?」

「マジかようらやましい!!」

「すげぇー!」

どんどん人だかりが出来てゆく。
それはもう、怖いくらいに。


137 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 13:17:20 ID:AgDSKSjcO


……結果。

\(´;ω;`)/「34万6千円んんんんんんん!!!!」

ショボンは投資額を差し引いて、35万円勝ちとなった。
いまショボンの手には、7つの封筒に小分けされた大金が握られている。

(´;ω;`)「ありがとう!!ブーンありがとおおおおお!!!」

(;^ω^)「え、いや、いいお……」

( ・∀・)「いやー、いいもん見れたな。結局朝になっちゃったけど……」

( ^ω^)「いや、びっくりだお……こんな大金……」

(´;ω;`)「幸せだ!ああ幸せだよ!ホントに、ありがとうブーン!」

ショボンは先ほどからずっとこんな調子だ。まぁそれも無理無いだろう。

いきなり30万の臨時収入がポンと出たら、誰だってこうなる。

(´つω;`)「ありがとう、ホントありがとうブーン。これで足りるかわからないけど……!」

ショボンはその手で、僕に一束渡してきた。

(;^ω^)「え、あ……ってええ!!?いいのかお!?」

(´;ω;`)「ホント、君のおかげなんだから!!もう童貞とか馬鹿にしない!神様仏様ブーン様!」

(;^ω^)「お、おお……」


138 :名も無きAAのようです:2012/03/30(金) 13:22:49 ID:AgDSKSjcO
(;・∀・)「いいなーブーン。お前の強運がうらやましいわ」

(;^ω^)「いや、こっちもびっくりだお……」

( ・∀・)「まぁ大金せしめたわけだし、とりあえず風俗いこうぜ!」

(´;ω;`)「うん!うん!」

( ^ω^)「これだけあれば大豪遊出来るおね。楽しみ」

(´;ω;`)「もう何でもいいよ!おごる!ビッパー新地でも何でも行こう!」

( ・∀・)「まじか!ひゃっほー!」

( ^ω^)「おお、楽しみだお」


こうして真っ先に貯金でなく豪遊する事が出るあたり、僕らはダメ人間だと思う。
けど、当分はこんな感じでいいだろう。



おしまい。


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カテゴリ:エロ・グロ 

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( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです
( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです

カテゴリ:ファンタジー 

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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです

カテゴリ:バトル 

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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです

( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです


( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです 第3話 

68 :名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 23:10:41 ID:A3rmqHOoO

VIP県のお遊びスポットと言えば県庁所在地であるビップ市、その隣街のビップラ市。

そして他県とのバイパスの役割を果たすニューソク、丁度VIPの中心辺りに位置する若者の街シベリア。

昨今の風営法の強化の煽りを受け、繁華街の大通りからは風俗店の看板がおおっぴらには出せなくなっている。
だがしかし確かにそこには存在しているし、楽しめる人は楽しめるようになっているのだ。
こんな下品な世界にも、大切なのは一歩踏み出す勇気らしい。


今日はモララーの誘いで、ブーンとショボンはシベリアにきている。


69 :名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 23:14:45 ID:A3rmqHOoO
( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです

その三「性欲豚、ホテヘルに行く」

71 :名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 23:33:04 ID:A3rmqHOoO
( ・∀・)「……はぁ……」

( ・∀・)「えっちしたい」

( ^ω^)「何をいきなり」

( ・∀・)「あ、ごめん、口癖」

(´・ω・`)「最悪の口癖だねそれ……」

( ・∀・)「うっせぇなあ、ブーンの『お腹空いたお』みたいなもんだ」

(´・ω・`)「なるほど。気を抜いたら言っちゃうんだね」

( ^ω^)「貴様らァ……」

73 :名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 23:42:47 ID:A3rmqHOoO
( ・∀・)「しかしまぁ……な、ここ最近マジでご無沙汰なんだよ」

(´・ω・`)「? 彼女と?」

( ・∀・)「ああ。最近ヤらせてくれないんだよ」

( ^ω^)「死ねお」

( ・∀・)「はいはい。体目当てではないのになぁ、なかなか束縛が激しいもんだ」

(´・ω・`)「君は遊びすぎなんだよ」

( ・∀・)「えー?そんな事ないけどなぁ」

( ^ω^)「死ねお」

( ・∀・)「うるせぇ童貞」

( ・∀・)「!」

( ^ω^)「ぐぬぬ……ぬ?」

( ・∀・)「そうだ」

( ^ω^)「?」

( ・∀・)「ブーンお前、童貞捨てにいかね?」


74 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 00:02:16 ID:fliDzFNAO
(;^ω^)「えー、やだお。初体験が風俗とか……」

( ・∀・)「童貞が変なプライド持ってんじゃねえよ。いいかブーン、一つだけアドバイスしよう」

( ^ω^)「……?」



( ・∀・)「素人童貞は、恥ずかしくない!!」

( ^ω^)

(´・ω・`)

( ・∀・)「『素人童貞は、恥ずかしくない』!!」ババーン


( ^ω^)「……お、おぉ……」


75 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 00:14:51 ID:fliDzFNAO

( ・∀・)「いいかブーン、得てしてこの素人童貞というものは下に見られがちだ」

( ・∀・)「童貞捨てたいが為に金はたく、変な性知識や性経験がつき実戦がうまくいかない……そんな幻想に囚われて」

( ・∀・)「誰もが性根を曇らせるんだ」

( ^ω^)「し……性根」

( ・∀・)「そうだ、性根だ。エロいやつが馬鹿にされる世の中だから、みんなここを燻らせてる」

( ・∀・)「男は誰だってヤりたいんだ。畏まって、賢ぶって、かっこつけて、それでもしかしヤりたいんだ」

( ・∀・)「素直になるんだ。素直でいいんだ。お前だって2回風俗にいったが、言ってみろ」

( ・∀・)「最後まで……ヤりたいだろ?」

(;^ω^)「う……」

( ・∀・)「だろ?」

(;^ω^)「……そりゃまあ、ヤりたいです」


76 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 00:23:14 ID:fliDzFNAO
( ・∀・)「そうだ。それでいいんだ。で、お前だってそりゃあいつか好きな女抱ければそれが最良だろう」

( ・∀・)「しかし。それで童貞をうまく捨てられると思うな」

( ・∀・)「実際にお前、ピンサロじゃイケなかったんだろ」

(;^ω^)「お、おお……」

( ・∀・)「それがもしその好きな女とのセックスで起きたらどうするつもりだ」

( ・∀・)「言っとくがセックスとオナニーの快感は別種だ。快感と満足感の比率がまるで違う」

( ・∀・)「緊張がその比率に当てはまらず失敗する童貞も多い。初めてはむしろ経験豊富なお姉さんにお願いした方がいいんだよ」

(;^ω^)「……なるほど」

( ・∀・)「それが風俗だから、何を恥じる事がある。堕ちるんじゃない、むしろお前は踏み出すんだ」

( ・∀・)「大事なのは、踏み出す一歩!素人童貞なんて、踏み出せない童貞の言葉だ!」

( ^ω^)「お……おお……!!」

( ・∀・)「さぁ繰り返せブーン、素人童貞は恥ずかしくない!!」

( ^ω^)「……素人童貞は恥ずかしくない」

( ・∀・)「そうだ!」


77 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 00:28:38 ID:fliDzFNAO

( ・∀・)「素人童貞は恥ずかしくない!!」

( ^ω^)「素人童貞は恥ずかしくない……」

( ・∀・)「素人童貞は恥ずかしくない!!」

( ^ω^)「素人童貞は恥ずかしくない!!」


( ・∀・)「素人童貞は恥ずかしくなァァァい!!」

( ^ω^)「素人童貞は恥ずかしくなァァァァァァァァァァァァァァァァァい!!!!」

( ・∀・)b「よっしゃホテヘル行くぞブーーーーーン!!!」

( ^ω^)b「どんと来いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」





<ミテ、アノ人達恥ズカシイワ……
<アンナ大声デ……クスクス……


(´・ω・`)(……周りの視線がロンギヌス……)

79 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 00:51:40 ID:fliDzFNAO
( ^ω^)「……で、ホテヘルってなんだお?」

( ・∀・)「ああ、そっから説明するか。ホテルヘルスの略さ」

( ^ω^)「ホテルヘルス……」

( ・∀・)「ホテルで奉仕して貰うのさ」

( ^ω^)「お。でもなんでわざわざそこに……?」

( ・∀・)「残念ながら最近は風営法だか売春防止法だかのせいで本番を出来る場所が極端に少ない」

( ・∀・)「VIP県ならあったとしても……あれだ、ビップ市の下町のビッパー新地辺りか」

( ^ω^)「お……あれ?じゃあホテルも本番まで出来ないんじゃ」

( ・∀・)「ふふ……そこが違うのさ」

( ・∀・)「確かにホテヘルは表向きは本番行為禁止……だが」

( ・∀・)「出来やすいんだよ。ホテルという個室形態だけに、女を交渉すれば……最後まで」

( ^ω^)「な、なんだtt(ry」

81 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:02:44 ID:fliDzFNAO
( ・∀・)「まぁデリヘルでも同じ事は言えるんだがな、密室だし」

(´・ω・`)「でもデリヘルってだいたいレベル低いんだよね」

( ・∀・)「そ。比べてホテヘルは何故だかレベルが高めだから俺はホテヘルが好きだ」

( ^ω^)「なるほど」

( ・∀・)「だから、うまくいけば10000ちょっとでそれなりに可愛い姉ちゃんを抱けちまうんだよ」

( ^ω^)「お……にわかに信じられないお……」

( ・∀・)「もちろんフツーは禁止だから、腕によるんだが……」

( ・∀・)「向こうも女の子だから、大抵は発情しちまうのさ」

( ^ω^)「それって※ただしryがつくんじゃ」

( ・∀・)「いや、そーでもないさ。ただ単に性欲強い女、リピーターが欲しい女、いろいろある。こっちがうまく口出せばコロッといけるさ」

( ^ω^)「う、うおお……」

( ・∀・)「現に俺はホテヘルは、文字通り十中八九最後までヤってるぜ」


( ^ω^)「おおおおぉ……」


82 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:13:42 ID:fliDzFNAO
( ^ω^)「ち、ちょっとご教授願いたいお」

( ・∀・)「おk。まずホテルに行くんだ」

( ・∀・)「まずはパネルを見て女の子を選ぶ……しかしパネルはあまり信用ならんから直感で選ぶしかないな」

( ^ω^)「なんで?」

( ・∀・)「プリクラみたいなもんだと思っとけ」

( ^ω^)「あぁ……」

( ・∀・)「そういうパネルマジックが起きないように女の子の写真を数枚見せてくれるとこがあるから、そういう店は良店と言えるな」

( ・∀・)「……で、女の子を選んだら料金を払う。部屋代と料金が一緒にの店あるし後で払う店もあるから注意な」

( ^ω^)「はい」

( ・∀・)「んで、部屋に行き待つ……まぁ店によってはエレベーターから一緒に部屋にいくとこもあるけど」

( ・∀・)「そして部屋で女の子と話すわけだが……ここからが本番だな」

( ^ω^)「……ごくり」

84 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:27:13 ID:fliDzFNAO
( ・∀・)「この会話が命だ。ここで好感を持たせれば何とかなる」

( ・∀・)「俺は3パターンの方法で攻める」

( ^ω^)「3ッ……?」

( ・∀・)「ああ。まず1【君だから攻撃】」

( ^ω^)「!?」

( ・∀・)「女の子にこう言ってやるのさ」

( ・∀・)「『正直、今日は友達との付き合いで仕方なく来たからあんまり乗り気じゃなかったんだけど』」

( ・∀・)「『君を見て気分が変わったわ』……とかな」

( ^ω^)「うおお!!すげェ!まさに女の子をたぶらかしてる感じがするお!」

( ・∀・)「ふふ、これだ。特別意識を持ってると思わせるんだ」

( ・∀・)「こうしていつもと違うんだオーラを出せばいい。これの成功率は70%ってとこか」

( ^ω^)「やべぇお!!2回に1回はかなり期待持てるじゃないかお!」

( ・∀・)「確かにな。俺はこの攻め方が好き……だが」

( ・∀・)「お前にはこれを勧めよう。その2、【うぶ攻め】」

( ^ω^)「う、うぶ攻め!?」

( ・∀・)「文字通り、童貞アピールだ。『実は、俺、童貞だから……慣れてないんだ、こういうの』」

( ・∀・)「『恥ずかしくてさ、少しでも経験してみたくて……』なんて少し余裕ない表情で言うんだ」

(;^ω^)「い、いいのかお?キモがられないかお?」

( ・∀・)「考えてもみろ、相手の女は毎日30代くらいのオッサン連中の相手が多い」

( ・∀・)「そんな中で20のうぶい童貞が来て……自分が開花させていくそいつの性欲……」

( ・∀・)「そうやって最後まで転ばせる頃には、向こうから『入れてあげようか?』なんて聞いてくるかもな」

( ^ω^)「おおおおお!」


85 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:35:22 ID:fliDzFNAO
( ・∀・)「その3、これは悲しくなるからホントの最終手段だ」

( ^ω^)「リーサルウェポンってやつかお……なんだお?」

( ・∀・)「その3、【金】」

( ^ω^)

( ・∀・)「『もう1万やるから最後まd』」

( ^ω^)「もういい。もういいお。続き言わないで」

( ・∀・)「なんだ、助言いらないの?」

( ^ω^)「いらねーお。なんか必殺技伝授された気分でウキウキしてた僕が馬鹿だったお。むしろウキウキを返せ」

( ・∀・)「仕方ないだろ、実際問題これが最高なんだ」

( ・∀・)「女は金の為にそんな仕事してるわけだからな」

( ^ω^)「切ない……」

( ・∀・)「まぁこんな3種使わなくても、雰囲気で持ってけるから、頑張れ」

( ^ω^)「お、おお……」

(´・ω・`)「まぁ頑張りなよブーン。僕も最後まで出来た事あるからさ」

( ^ω^)「まじ?」

(´・ω・`)「うん。自分の事を17っつったけどね」

( ^ω^)「なるほど……パターン2かお……」

87 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:47:47 ID:fliDzFNAO


( ・∀・)ノ「何はともあれ、そうと決まれば行くぞホテヘルー!」

( ^ω^)ノ「おー!」

( ・∀・)ノ「素人童貞はー!?」

( ^ω^)ノ「恥ずかしくなーい!!」

(´・ω・`)「……」


( ∵)( ∵)( ∵)というわけでキャッチの兄ちゃんに交渉(∵ )(∵ )(∵ )

(=゚ω゚)ノ「ホテヘルねぇ……」←キャッチのお兄さん。どこかで見た事ある気がするのは気のせいだよ!

(=゚ω゚)ノ「確かにあるよぅ。まぁ平均して13000ってとこかな」

( ・∀・)「まじかーしかし俺ら金欠だしなー(チラッ チラッ」

(=゚ω゚)ノ「ぬぬぬ……12000……いや、11000でどうですかよぅ?」

( ・∀・)「やれば出来んじゃーん!よし、さっそく行くか!」

(=゚ω゚)ノ「おお、もっと値切られたらどうしようかってとこでしたよぅ……まったく、キャッチ使い荒すぎっすよ兄さん方……」

( ・∀・)「悪いね。しかしまぁ、また声かけるからさ。ここらへんよくうろつくし」

(=゚ω゚)ノ「そうして貰えたら嬉しいよぅ」

( ^ω^)(毎度、コミュ力凄いなこいつ……)

(´・ω・`)(集団で話持ち掛ければ値切り易いとはいえ、こんな臆面無くやれるのは大したもんだよ……)

89 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 01:55:59 ID:fliDzFNAO
( ・∀・)「……で、ちなみに」

( ・∀・)「今からいけるとこは、最後までヤれるの?」

(;゚ω゚)・:∴ブッ

(´・ω・`)(こういうの、よく聞けるよね)

(;^ω^)(思わぬ不意打ちだお……びびって吹いた……)

(=゚ω゚)ノ「……まぁ、僕は1度……」

( ・∀・)「ほう。女の子のレベルは高い?」

(=゚ω゚)ノ「それは保証しますよぅ」

( ・∀・)「期待しとくぜ」

(=゚ω゚)ノ「へへ……ここですよぅ」

( ∵)「こんばんは。この人達がお客さん?」

(=゚ω゚)ノ「はい。11で」

( ∵)「うん、了解」

(=゚ω゚)ノ「では兄さん方、僕はこのへんで」

( ・∀・)「うん、ありがとな」

( ^ω^)「ありがとだお」

(´・ω・`)「ばいばーい」

( ∵)「ではどうぞ、こちらへ……」


用意されたのは、フツーのホテル。
見た目から何から、完全にフツーのホテルだ。

( ^ω^)(……フツーすぎだお。看板もないし)

(´・ω・`)(看板は出しちゃいけないのさ。法律で決まってんだ)

( ^ω^)(なるほど……)


90 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 02:05:52 ID:fliDzFNAO
( ∵)←ちなみにこちらがホテヘル受付のお兄さん。どこかで見ry

( ∵)「じゃ、こちらに……」

ホテルに入ってまず、応接室のソファに座らされる。
こんなところの雰囲気も、やはりただのホテルだ。
ショボンからホテヘルは摘発されにくいから多いと聞いたが、納得がいく。


( ∵)「では、女の子を選んでいただくわけですが……ちょっとお待ちを」

( ^ω^)「?」

そう言って受付の兄さんはポケットからあるものを取り出し、操作し始めた。
それは僕もよく見覚えがあるもの。

( ・∀・)「……PSP?」

(´・ω・`)「なるほど、そこに女の子のパネルが入ってるんだ?」

( ∵)「はい。たまに外で呼び込む時なんかにもこれを見せる時がありましてね」

会話を交わしながらも十字キーでかちかちと操作。
画面にはフォルダ分けされた画像群が呼び出される。

それをスライドショーのように滑らせ、見せてくれる。

( ∵)「今ならこの子と、この子と……この子……と、この子。あと30分ほど時間をいただけばこの子なんかも」

( ^ω^)「……」

その中に。

『ミセ*゚ー゚)リ』

( ^ω^)「お……この子可愛いお……」

( ∵)「お、兄さんこの子で?」


91 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 02:14:03 ID:fliDzFNAO
( ^ω^)「うーん……」

しかし、他の子もそれなりに可愛い。
モララーの言うパネルマジックのせいかも知れないが、ホントに平均レベルが高く、迷ってしまう。
しかしまぁ、この子が一番優しそうに見えたのに、ショボンとモララーを置いて即決した。

( ^ω^)「うん、この子で」

( ・∀・)「早いなブーン。タイプだったか?」

( ^ω^)「そんなとこだお」

(´・ω・`)「まじか。僕も狙ってたんだけどなぁその子……」

( ∵)「はい。では他の兄さん方は……」




( ^ω^)「さぁ、後は待つのみか」

( ・∀・)「いいかブーン。絶対に手やフェラで満足すんじゃねえぞ。どうにか本番まで漕ぎ着けてやれ」

(´・ω・`)「69とかをお願いして、やんわり攻めたりしても効果的だよ」

( ・∀・)(´・ω・)「捨ててやれ、童貞!」

(;^ω^)「おお……!!!」


戦いが、始まる。


92 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 02:28:49 ID:fliDzFNAO

~数分後~

( ∵)「では最初に兄さんから……」

(;^ω^)「は、はいお」

(´・ω・`)「楽しんどいでー」

( ^ω^)「お!」

( ∵)「ではこちらに」

( ^ω^)「はいだお」

兄さんに連れられて、来たのはエレベーター。
2つあるうちの右のエレベーターの前に待たされる。

( ∵)「では、こちらのエレベーターに」

( ^ω^)「お」

どきどきが止まらないとはこの事。
僕はこの瞬間、初恋を発症した皮かむりのガキになる。

そして、ぴんぽん、と。

エレベーターが開く。

( ^ω^)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「……どうも♪」

(;^ω^)「……」

(;^ω^)(か)

(;^ω^)(わ)

(;^ω^)(いいいいいいいいい!!!!)

当たりも当たり。大当たりだった。


93 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 02:43:46 ID:fliDzFNAO
そしてエレベーターはゆっくりと閉まる。

ミセ*゚ー゚)リ「こんばんわだね……今日はお友達と?」

(;^ω^)「あ、うん……ち、ちょっとはずかしいんだけどさ」

ミセ*゚ー゚)リ「?」

(;^ω^)「僕、童貞で……その、経験ないならしとけ、って友達が……」

ミセ*゚ー゚)リ「なるほど♪」

(;^ω^)「……まぁ正直、ぼく乗り気じゃなかったんだけど」

(;^ω^)「まさか君みたいな可愛い女の子がいると思わなくて……その」

(;^ω^)「……興奮して」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

ミセ*^ー^)リ「……ふふ、ありがと」

(;^ω^)「お」

とっさにモララーに頂いたパターン1とパターン2を組み合わせてみたが、好調のようだ。
緊張しても意外と口が回ってくれるものだ。
これを勇気と言っていいのかどうかはわからないが。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、お礼に……」

( ^ω^)「え」

がしりと顔を捕まれた時には既に、顔を寄せられていた。

ミセ* ー )リ「ちゅー♪」

そして、たっぷりとキスをされた。
耳に、頬に、下顎に。唇に。


ミセ* ー )リ「たっぷり、尽くしてあげるね」

( *;ω;)(うおおおおおおおおお!!!!)

正直、興奮しすぎて涙が出そうだった。


94 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 03:04:07 ID:fliDzFNAO

そしてエレベーターが開く。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、こっち来て」

( ^ω^)「お……」

部屋へ連れられて、中に入る。

ホントにどこにでもあるホテルの一室、だがしかしそれも全て淫靡に見える。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ……シャワーあびる?無しで?」

( ^ω^)「無しで。入ってきたし」

ミセ*゚ー゚)リ「りょーかい」

これもモララーに教わったのだが、時間を無駄にしない為の嘘だ。

ちなみに今回のコースは35分だが、このシャワータイムがその35分に含まれる場合と含まれない場合がある。
そこで用心に越した事はないので、こう言った方がいいわけだ。

( ^ω^)「じゃあ……」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、服、脱ごうか」

脱いでいく。
自分も、女の子も。

可愛い黒色の下着。
小ぶりな胸。
スリムな腰回り。

可愛い顔。

完璧だ。

そして僕は、この子を抱く。
なんとしても抱いてやる。


( ^ω^)(卒業してやる……)

そう。

素人童貞は、恥ずかしくない。


95 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 03:06:42 ID:fliDzFNAO

( ^ω^)(がんばってやる!)

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ……」

ミセ*゚ー゚)リ「あ」

( ^ω^)「?」





ミセ;*゚ー゚)リ「そう言えば言うの忘れてたけど、いま生理中なんだよね……だから生理用品の糸、ちょっと垂れててさ……」

( ^ω^)

ミセ;*゚ー゚)リ「だから69とかはちょっと出来なくなってるんだ……ホントごめんね」

( ^ω^)

( ^ω^)


( ^ω^ )


( ;ω; )


96 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 03:15:17 ID:fliDzFNAO


(´・ω・`)「……で、フツーに抜いてもらってシャワーで洗ってもらって帰ってきたのwww」

( ^ω^)「うん……」

(´・ω・`)「お前の顔見て生理きた事にしたんじゃないのwwww」

( ^ω^)「いや、実際にタンポンの糸、見せてもらった……」

(´;ω;`)「wwwwwwちょっと進歩wwwwだねwwwwww腹いてぇwwwww」

( ^ω^)「笑いすぎだお……ショボンは最期まで出来たのかお……」

(´・ω・`)「うん。向こうも意外と乗り気だったよ」

( ^ω^)「うらやましいお……」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「で、なんでモララーは放心中なん?」

(´・ω・`)「うん」

(´・ω・`)「フェラ中にだんだん相手の化粧が崩れて、中身がお母さんに似てたんだって」

( ^ω^)「……」

( ;∀;)「途中までっ……途中まで可愛かったのにっ……筑紫っ……!!」

( ^ω^)「なんか僕、勝った気分だわ」

(´・ω・`)「僕も」


おしまい。


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( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです その2 

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:37:32.51 ID:PJzlPi/sO

('、`;川「それで」

( ^ω^)「おkおk。ショボンが選んだなら安心だお」

ζ(゚ー゚*ζ「お薬、作ってあげるよ。勿論お金はいらないわ」

('、`*川「本当!?」

聞いた途端、少女の表情が晴れやかな物になった。
胸の前で手を合わせて精一杯喜びを表現している。
デレは立ち上がり、安堵しきっている少女に次の言葉を投げ掛けた。

ζ(゚、゚*ζ「確かにお金はいらないけど……」

('、`*川「?」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:38:36.11 ID:PJzlPi/sO

ζ(゚、゚*ζ「けど、お金じゃない物を頂戴ね」

('、`*川「お金じゃない物?」

少女は聞き返した。
デレは小さく頷いて言葉を続ける。

ζ(゚、゚*ζ「うん。今回の依頼なら君の命で払って貰おうかな」

恐ろしい事をサラリとデレは言い放った。
少女は理解出来ず、ただ困惑している。
それを見てブーンは咳払いを一度し、デレへと注意をした。

( ^ω^)「デレ、言い過ぎだお。もっと優しく」

ζ(゚ー゚*ζ「あらあら、いっけなーい」


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:39:49.24 ID:PJzlPi/sO

まるで反省をしていない様子のデレは、少女が分かるように説明する。

ζ(゚、゚*ζ「お金はいらないの。これは分かるよね?」

('、`*川「うん」

ζ(゚、゚*ζ「その代わりになる物を、この店では頂いてるの」

('、`*川「代わりになる物?」

ζ(゚ー゚*ζ「そう。今回は君の命で支払って貰うの」

('、`;川「私の命……」

ζ(゚ー゚*ζ「君が死ぬ代わりにお母さんは助かる。どう? 安い買い物でしょう?」

('、`;川「……………」


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:41:26.24 ID:PJzlPi/sO

少女は朧気に理解したのか黙りこくり、視線を地面に落とした。
母親を助ける代価は己の命。
どう? 安い買い物でしょう───。

沈黙を続ける少女を見下ろし、デレは笑顔で付け加えた。

ζ(゚ー゚*ζ「君はまだ小さいから、今回だけ特別に安くしてあげる」

ζ(゚ー゚*ζ「今回だけ、ね。君は死んでも幽霊になれる」

('、`*川「幽霊……」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。君はずっとお母さんの側に居られるよ」

死しても尚、永遠に母親の側に居る事が出来る。
価値を計れない幼き少女は、悪魔の囁きに耳を傾けてしまった。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:42:27.49 ID:PJzlPi/sO

('、`*川「それで良いので、お願いします……」

少女は顔を上げて承諾した。
デレとブーンは視線を合わせて微笑む。

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。これに君の名前を書いてくれるかな」

デレはカウンターに置いてある一枚の紙とペンを少女に差し出した。
それらを受け取り、少女が紙に目を通す。
この国の言語では無い、難解な文字が所狭しと並んでいる。

ζ(゚、゚*ζ「ここね」

デレが中腰になって、紙の一部分を指でトントンと示した。
一筋の線が引いてある。この上に名前を記すのだろう。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:44:14.78 ID:PJzlPi/sO

('、`*川「はい」

店内の隅にあった木製の椅子を机代わりにして、少女はサインをする。
子供らしい、読み辛い文字が紙に描かれて行く。

('、`*川「いとう、………!?」

最後の文字を書き終えたと同時、少女の身に異変が起きた。
視界が白くボヤけ、凍える寒さが全身を襲う。
細い足は震え、立っている事すら困難なようだ。

( 、 ;川「あ」

小さく一言漏らし、少女は後ろへと倒れ込む。
薄れ行く意識の中で少女は、笑う夫婦の姿を見た様な気がした。

(  ω )ζ( ー *ζ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:45:40.85 ID:PJzlPi/sO

 ごりごりごりごりごりごりごりごりごりごり。

何かを磨り潰している音が少女の耳の奥に響く。
酷く耳障りで、少女は頭痛を覚えた。

(-、-*川「…ん」

少女が徐に目を開ける。
気だるげに眼を擦り視界を鮮明にさせる。
先ず、少女の目に映ったのは天井の木目だった。

('、`*川「ここは?」

次に、少女は身体を起こして周囲を見回した。
薄暗い部屋に、古めかしい箪笥、テーブル、椅子が置かれている。
何処かの民家のベッドに少女は寝かされていたようだ。

('、`;川「……………」

壁を見遣れば二つの扉。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:47:34.98 ID:PJzlPi/sO

気味の悪い音と、部屋の暗さに少女は怖くなった。
ベッドから降り、辺りを窺いながら一つの扉を目指す。
ドアノブに手を伸ばしたその時、扉は勝手に開いた。

('、`;川「え?」

焦る少女は、扉の向こうに入り恐る恐る見渡す。
埃の臭いが漂う部屋に木製の棚が並べられている。
そこには奇妙な形をした生物が入ったガラス瓶が置かれていた。

('、`;川「何…これ…………」

ガラス瓶の中。この世の物では無い生物達が蠢いていた。
すくみ、立ち尽くす少女は背後に気配を感じ取った。

('、`;川「っ!?」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:49:01.20 ID:PJzlPi/sO

( ^ω^)「おはようだお」

少女が驚き振り向いた先にはブーンが立っていた。
知っている人間の登場により少女は胸を撫で下ろした。

('、`;川「すみません。私、寝てしまったみたいですね」

( ^ω^)「そんな事は別に良いんだお。
       今、調合が済んだからデレに君の家まで届けさせたお」

('、`*川「本当ですか!?」

先程までの音は薬を調合していた音だったのか。
目を爛々と輝かせ、少女はブーンへと歩寄る。
だが、ブーンの片手に持っている物を見て少女の歩は止まった。

(゚、゚;川「─────」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:50:23.83 ID:PJzlPi/sO

絶句した少女の目に飛び込んだ物、それは自分の頭だった。
首から下は無く、血がポタポタと垂れ落ちている。
ブーンは掴んでいた頭を軽く放り投げた。

ゴロゴロと、少女の足元にそれは転がって行く。

( ^ω^)「君の身体を磨り潰したお。
       そこに此処にある生物と調合したお」

少女の耳にはブーンの言葉は届かない。
わなわなと震えて足元を見ると、己の顔が少女を睨んでいた。

(゚、゚;川「ひっ!!」

短く大きな悲鳴を上げて少女は駆け出す。
ブーンの脇を通り、一目散に部屋から去って行った。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:51:28.45 ID:PJzlPi/sO

( ^ω^)「……………」

部屋に残ったブーンはゆっくりと歩き始めた。
そして、少女の顔を拾い上げ空に翳す。

( ^ω^)「お」

苦痛で歪んだ顔を暫し眺めた後、強く握り締めた。
すると、大きな破裂音と共に部屋中に血が飛び散った。
白衣を血で汚したブーンが、ポツリと静かに呟く。



( ^ω^)「お代、確かに頂戴したお」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:52:36.45 ID:PJzlPi/sO

('、`;川「ハァッ……ハァッ………」

少女は薬屋を出て、急いで自分の家へと向かっている。
空は橙色、買い物袋を提げた主婦達で道はごった返している。
必死に走っていると、角から出て来た人とぶつかりそうになった。

('、`;川「わわっ!?」

少女はぶつかる……筈だった。
しかし、ぶつかる事なく少女の身体はスッとすり抜けた。

(゚、゚;川(……………)

『君は死んでも幽霊になれる』
少女の脳内にデレの言葉が蘇る。
石畳の道を歩く人達は、少女の身体を次々とすり抜けて行く。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:54:08.26 ID:PJzlPi/sO

頭を振って、少女は再び足を動かせた。

('、`;川(お母さんさえ大丈夫なら……!)

幽霊という存在になっても尚、少女は母親の安否を心配している。
息咳吐いて、階段を下り、橋を渡り、自分の家へと急いで向かう。
町民は少女の存在を知り得る筈も無く、平和な日常を過ごしている。

('、`;川「着いた……」

やがて、少女は町外れに建っている小屋へと辿り着いた。
一般の家屋より遥かに小さく、壁には所々穴が開いている。

そろりと、朽ち果てた扉を開けた。
家の中には病気が治った、元気な母親が居る筈である。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:55:42.49 ID:PJzlPi/sO

だが、少女が見た光景は凄惨な物であった。
鉄の臭いが立ち込める部屋に人が倒れている。
窓から射し込む橙色の光が、その姿を淡く照らし出す。
母親が床に倒れ、大量の血を流し絶命していたのだ。

(゚、゚;川「あ、あ、あ…………」

声にならない声を出し、少女はその場に崩れ落ちた。
元気になっていると信じていた母親が死んでいる。
声を上げず、涙も流さず、放心状態になる少女。

ζ(゚ー゚*ζ「あーあ、残念だったね」

デレの明るい声が部屋中に余す所無く染み渡る。
少女のすぐ横にデレは立っていたのだった。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:57:17.16 ID:PJzlPi/sO

ζ(゚ー゚*ζ「ほら、見て見て」

座り込む少女の肩に腕を回し、デレが母親を指差す。
少女は焦点の定まらない虚ろな目で母親を眺めた。

ζ(゚ー゚*ζ「病気はちゃんと治ったんだけどね。
      君が命を差し出したって言ったらこうなっちゃった」

( 、 *川「……」

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんねー」

デレの声には全く謝罪の念が込められていない。

ζ(゚、゚*ζ「残念だけど、永遠に独りで生きてね」

デレはそう言うと、少女から離れて外へと出て行った。
一人残された少女は、ようやく声を上げた。

( 、 *川「ははは────」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:58:37.90 ID:PJzlPi/sO

夜空からブーンとデレは一軒の小屋を見下ろしている。
夫婦の背中には黒い羽がそれぞれ伸ばされている。

( ^ω^)「残念だったお」

ζ(゚ー゚*ζ「ね」

( ^ω^)「助けたかったんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「どこで間違ったのかな」

『間違っていたのは少女の方だ、僕達は何も悪く無いじゃないか』
『私達はただ待っていただけだよ』
夫婦は腹を抱えて大声で嗤う。
そんな夫婦へと一羽のコウモリが舞い寄って来た。

( ^ω^)「ショボン。また頼むお」

ζ(゚ー゚*ζ「今度はもっと可哀想な人を連れて来てね」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:59:53.29 ID:PJzlPi/sO

ある国にはどんな病気でも治してしまう薬師夫婦が住んでいるそうだ。




興味が湧いた方は一度、尋ねてみては如何だろうか。




 ───貴方の人生が残念な結果に終わらぬ内に。





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( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです その1 

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:15:37.88 ID:PJzlPi/sO

女王、クー・ル・アザトース四世が統治するVIP国。
その国の城下町に、小さな薬屋を営む夫婦が住んでいた。
太陽光が余り届かない、暗い路地裏に店を構えている。


( ゚ω゚)「おっおっ!! デレ、出るおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」


ζ(////*ζ「ん…やぁっ! ブーンのせーし! ちょうらああぁぁい!!」


夫婦はベッドの上で一生懸命に勤めていた。





4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:16:36.12 ID:PJzlPi/sO

(  ω )「イクウウウゥゥゥゥッッッ!!!」

叫ぶとブーンは、激しく動かせていた腰をピタリと止めた。
生温かい液体がデレの膣内へと注がれて行く。

ζ(////*ζ「ハァハァ……たくさん…出てる……」

子宮内に流れる精液の感触に、デレは大きく身体を震わせた。
そして、ブーンが息子を引き抜こうとするのを、
両足でがっちりと彼の身体を挟んで制止した。

ζ(////*ζ「も、もう少し、このままが良い……」

(*^ω^)「デレ……」





5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:17:36.95 ID:PJzlPi/sO

甘い囁き声に欲情し、ブーンのモノは再び元気を取り戻す。
それから、ゆっくりとピストン運動を開始した。

ζ(////*ζ「んっ………」

デレが小さな声を漏らした。
剛直なペニスが彼女の膣壁を拡張し擦りあげる。

(*^ω^)「デレの中気持ち良いお」

ζ(////*ζ「ば、ばかぁ……んっ!?」

デレの身体が大きく仰け反った。
突然、ブーンの腰の振りが大きく且つ、速くなったからだ。

ζ(////*ζ「もっと優し……! ああんっ!」





6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:18:45.08 ID:PJzlPi/sO

ブーンは親指で、デレのピンク色の乳首をコリコリと弄くる。
腕を掴んで止めさせようとするが、下半身を襲う快感で力が入らない。
デレは諦めて、己の欲望に身を任せる事にした。

(*^ω^)「エッチな音、聞こえるかお?」

ζ(////*ζ「はぁはぁ……?」

ブーンは一旦動きを止め、デレに問いかける。
室内に二人の荒い息遣いだけが響く。
疑問の表情を浮かべているデレを見てブーンは微笑んだ。
そして、

ζ(////*ζ「きゃっ!?」

ペニスでデレの膣奥深くを力強く叩き付けた。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:19:42.58 ID:PJzlPi/sO

予期してなかった衝撃にデレは大きく目を見開いた。
目尻にうっすらと涙を溜めている。

ζ(////*ζ「い、痛いよぉ……」

(*^ω^)「ごめんだお。でも、ほら」

そう言って、先程と同様の強さで膣奥を連続で突く。
すると愛液のクチュクチュという音が聞こえた。

(*^ω^)「デレはこんなに感じて、エッチな娘だお」

ζ(////*ζ「うぅー……………」

赤く染まった頬を膨らませ、デレが可愛い唸り声を上げる。
ブーンは乳房から指を離してデレの顔の横に添えた。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:20:50.84 ID:PJzlPi/sO

(*^ω^)「そろそろイカせて貰うお」

ζ(////*ζ「………うん」

一つ頷くと、デレは布団のシーツをギュッと握り締めた。
ブーンがそれを確認すると、デレの両足を抱え上げて、
今までよりも激しく、力の限りピストン運動を始めた。
ギシギシとベッドは軋み、デレの形の良い胸が上下に揺れる。

ζ(////*ζ「んっ! すごっ……い……。私もイッちゃいそう!!」

デレが一心不乱にブーンの身体を抱き寄せた。
密着した二人は互いに高みを求め、我を忘れて乱れる。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:21:32.94 ID:PJzlPi/sO



(# ω )「い、イクおおおぉぉぉぉっっ!!!」


ζ(////*ζ「私もイッちゃうよおおおぉぉぉ!!!」


二人の意識は真っ白な世界へと飛んだ。


 ─────。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:22:38.26 ID:PJzlPi/sO

( ^ω^)「・・・・ふう」

ζ(゚ー゚*ζ「・・・・ふう」

数分後、服を着て椅子に座って本を読む二人が居た。
両者共に、徳を積んだ賢者のような表情をしている。

( ^ω^)「『何故、人は生きるのだろうか』」

ζ(゚ー゚*ζ「『終の時に、あぁ、生きて来て良かったな、と思う為よ』」

( ^ω^)「ふむ」

( ^ω^)(分からん)

ζ(゚ー゚*ζ(何? 今の)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:23:39.79 ID:PJzlPi/sO

ブーンは本を閉じて、真剣な面持ちで口を開いた。

( ^ω^)「薬は大成功だお。通常の人間なら恐らく効果は一生」

デレも本を閉じて、ブーンの方へと顔を向けた。

ζ(゚ー゚*ζ「そうね。…えっと、ドクオさんからの依頼だっけ」

( ^ω^)「だお。僕達が使っても媚薬の効果は抜群だったお」

ζ(////*ζ(……)

少し前の情交を思い出し、デレは顔を赤らめた。
そんなデレを無視してブーンは商売話を始めた。

( ^ω^)「用途は想像が付くお。というか、そんなのどうでも良いお」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:24:53.09 ID:PJzlPi/sO

( ^ω^)「問題は」

ζ(゚ー゚*ζ「何を頂くか、ね」

二人は一瞬、下卑た笑みを溢した。

この夫婦が営む店、表向きは普通の薬局である。
しかし裏では、神の所業とも呼べる薬の作成を請け負っていた。
不治の病を治す薬、身体を強化する薬…などなど。

これらは金貨では売られていない。
奇跡を手に入れるには、それ相応の代価が必要なのだ。

( ^ω^)「…寿命を五年程、頂こうかお」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、それくらいで良いかも」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:26:09.94 ID:PJzlPi/sO

( ^ω^)「おっおっおっお!」

ζ(゚、゚*ζ「くす…………」

ブーンは己の膝を叩いて高笑いをした。
デレは口に手を当てて笑いを堪えている。
二人の様はまるで、悪魔のようだった。




( ^ω^)「さぁてと、『本業』に戻るかお」

ζ(゚ー゚*ζ「『本業』……。そうだね」

二人は本を机に置いて、椅子から立ち上がった。
衣紋掛けに掛けられている白衣を手に取って袖を通す。


薬屋『VIP』の開店である。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:27:40.70 ID:PJzlPi/sO

木造の質素な薬屋の店内は埃の匂いが漂っていた。
デレはカウンターに立ち、客が訪れるのを待っている。
後ろの方ではブーンが机に向かい、薬草を磨り潰し調合している。

( ^ω^)「ごりごりごりごり」

ζ(゚ー゚*ζ「…………………」

( ^ω^)「ごーりごーりごーりごーり」

ζ(゚、゚*ζ「…………………」

(#^ω^)「腕が痺れるううううぅぅぅ!!!」

ζ( 、 ;ζ(うるさいなぁ……)

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:28:46.81 ID:PJzlPi/sO

待てど暮らせど、客は一向に来店しない。
入り組んだ道の中に店がある所為なのだが。

ζ(-o-*ζ「ふぁーあ…」

「あの………………」

デレが大きな欠伸をしていると何処からか高い声がした。
弱々しい女の子の声。デレがキョロキョロと辺りを見渡す。

ζ(゚、゚*ζ「?」

「こっちです…」

声がした方向へとデレは見遣る。カウンターの下だ。
デレが身を乗り出すと、小さな客が居た。


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:30:21.64 ID:PJzlPi/sO

('、`*川「こんにちは……」

ζ(゚、゚*ζ(…………)

五歳くらいの少女。
安そうな白いスカートとシャツを来ている。
幼い少女には似合わない薄幸さが、何処か滲み出ていた。
しばし沈黙していたデレだが、営業スマイルを作り接客をする。

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。お使いかな?」

デレが聞くが少女は俯いて答えない。
すりこ木の音だけが静かな店内に響く。

ごりごりごりごりごり。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:31:36.53 ID:PJzlPi/sO

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」

もう一度、デレは少女へと言葉を掛ける。
だが、少女は暗い表情を保ったまま答えない。

('、`*川「…………」

このままでは埒が開かないと、デレはカウンターから出た。
そして、少女の側でしゃがみ込んだ。
同じ目線の高さになって安心したのか、少女は重い口を開いた。

('、`*川「……あの、お母さんを」

ζ(゚ー゚*ζ「ん?」


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:32:42.46 ID:PJzlPi/sO

( 、 *川「お母さんを」

少女の声は震え、語尾は尻すぼみになって行く。
デレは、少女の頭を優しく撫でて落ち着かせる。

ζ(゚ー゚*ζ「お母さんを?」

( 、 *川「…………けて」

すりこ木の音が止んだ。
店内に在るのは涙を流す少女の掠れた声。
その中で、少女は大きな声を出した。

(;、;*川「お母さんを助けて下さい!」

 ────残念だ。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:33:57.51 ID:PJzlPi/sO

暫くして、ブーンが腰を上げてカウンターに立った。
腕を組んで少女へと喋り掛ける。

( ^ω^)「君のお母さんは何の病気なんだお?」

(;、;*川「分かんない……黒くなって、とてもしんどそうで……」

少女の断片的な言葉を捉えて、ブーンは『ああ』と理解した。

( ^ω^)「それは、病院のお仕事だお」

ζ(゚、゚*ζ「…残念だけど、きちんとした処置が必要な病気なの」

少女の母親は致死率の高い流行病を患っているのだ。
一介の薬屋に治せる病気ではない。
薬師夫婦は、病院に連れて行く事を少女に強く勧めた。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:34:45.04 ID:PJzlPi/sO

しかし、

(;、;*川「私の家……貧乏だから……」

少女は切実な問題を突き付けた。

(;^ω^)「そう言われてもだお」

ζ(゚ー゚;ζ「うーん……」

ブーンとデレは返答に困り果てる。
だが、次の少女の言葉で夫婦の様子は一変した。

(;、;*川「でも、ここならお金が無くても助けてくれるって聞いたから……」

( ^ω^)「誰に?」

ζ(゚ー゚*ζ「どなたに?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/18(火) 02:36:23.57 ID:PJzlPi/sO

ブーンは眉をピクリと動かせ、デレは少女に詰め寄る。
夫婦の顔は笑ってこそはいるが、得体の知れない不気味さがあった。
少女は雰囲気の変わり様に若干逃げ腰になるが、
余程母親を助けたいのか、毅然とした態度を取った。

('、`;川「……しょぼくれた顔のおじさんに」

ζ(゚ー゚*ζ「ショボン。あはは、今度はいたいけな少女を狙ったのね」

( ^ω^)「あいつの性格の悪さは異常だお」

少女には夫婦の言っている事はよく分からなかったが、
とても嬉しそうな事だけは、顔を眺めて分かった。


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作品一覧 

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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです
( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです
ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです
从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです
( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです


从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第5話 

79 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:14:19 ID:XOADpTqw0
( ^Д^) ……

( ^Д^) ……何故だ?

从 ∀从 ニヤッ

(;^Д^) 何故能力が発動しない!?

从 ゚∀从 あははははははははははははははは!

从 ゚∀从 ちゃんと発動したさ、お前の能力はよ!

从 ゚∀从 俺の頭と胸の間には確かに強い斥力が働いた

(;^Д^) だったら……

从 ゚∀从 だったらどうして俺の首は繋がったままなのでしょうか?

从 ゚∀从 答えは簡単。俺が何かしたからだよ


80 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:15:36 ID:XOADpTqw0
从 ゚∀从 斥力とはつまり物体同士が離れようとする力

从 ゚∀从 それを打ち消すには逆方向へ同じだけの力をかけてやればいい

从 ゚∀从 そこで活躍するのが俺の能力だ

从 ゚∀从 物体に任意の方向から圧力をかける能力

(;^Д^) てめぇ、まさか……

从 ゚∀从 俺の能力、それはこの世界で最もありふれた能力の一つ……

(;^Д^) な、な……

从 ゚∀从 念動力!

(#^Д^) な訳あるかコラァァァァ!


81 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:16:20 ID:XOADpTqw0
(#^Д^) 俺は今まで何人もの念動力者を千切り殺してきた!

(#^Д^) 弾丸の軌道をねじ曲げる奴や巨石で押し潰そうとしてくる奴……

(#^Д^) 遠隔操作でトラップを起動させる奴なんかも居た……

(#^Д^) だけどなぁ、俺の斥力に匹敵するパワーを出せる奴は一人もいなかった!

(#^Д^) 全員俺が触れるだけでバラバラの生ゴミになっちまうんだよ!

(#^Д^) てめぇは念動力者じゃねぇ

(#^Д^) ただの念動力者が俺の能力を打ち消せるわけがねぇんだ!

从 ゚∀从 悪いが俺は「ただの」念動力者じゃないんでね

(#^Д^) ……は?


82 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:17:15 ID:XOADpTqw0
从 ゚∀从 弾丸の軌道をねじ曲げる、巨石で押しつぶす、トラップの遠隔操作……

从 ゚∀从 「ただの」念動力ってのは素敵な能力だねぇ、ヒーローっぽくて

从 ゚∀从 どれも俺の能力じゃ不可能なことだ

( ^Д^) (確かにこいつは何らかの物体を動かして戦うなんてことはしていない)

( ^Д^) (俺の能力を打ち消し、空を飛び、あとは……)

(;^Д^) (いや、待て、一つだけ明らかにおかしいことがある)

(;^Д^) (こいつはどうして手足を千切られてこんな長時間生きてられるんだ?)

(;^Д^) (普通ならとっくに失血死しているはずだ……どうして……どうして……はっ!!)

(;^Д^) (……どうして手足の切断面から血が流れていないんだ!?)

(;^Д^) (そうかわかったぞ、こいつの能力!)


83 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:18:53 ID:XOADpTqw0
(;^Д^) 俺の能力を打ち消し、空を飛び、血液を体内に押し留め……

(;^Д^) お前はお前自身に対してしか能力を発動していない!

从 ゚∀从 よくわかったな、大正解だ。教えてやるよ

从 ゚∀从 俺の能力は念動力!

从 ゚∀从 ただしその対象は自身とその体液に限られる!

从 ゚∀从 対象が限られている分、精度も馬力も他の奴らとは桁違いさ!

从 ゚∀从 お前が生み出す斥力を打ち消すなんてヘでもねぇ

(;^Д^) だ、だが、それならなぜ四肢を千切られた時に抵抗しなかった!?

(;^Д^) お前の言っていることが本当なら簡単に防げた筈だ!

从 ゚∀从 ふん、右腕の時は完全に不意を突かれたからな。抵抗する前にやられちまったよ

(;^Д^) じ、じゃあ残りの三本は?

从 ゚∀从 どうしてわかっていたのに防がなかったかって?

从 ∀从 それはな……


84 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:19:37 ID:XOADpTqw0
从#゚Д从 お前を確実にブチ殺してやるためだよ!!

(;^Д^) ヒイッ!?

(;^Д^) へ、へっ、その体で何ができる芋虫女!やれるもんならやってみやがれ!

(# Д ) 腕がないんじゃあ銃もナイフも使えn……グハッ!

おいおい、何か勘違いしてるんじゃねぇか?胴体から離れようと手足は俺の体の一部だぞ?
俺が能力を発動すると、男の背後にあった俺の右足は真っ直ぐに飛来し……
その爪先が男の背中に突き刺さった

从#゚∀从 楽に死ねると思うんじゃねぇぞ!

男によって千切られた手足が宙に浮き、男の前後左右にそれぞれ位置取る
一瞬間をおいて、時速120キロの砲弾が男目掛けて四方から放たれる


85 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:20:34 ID:XOADpTqw0
(;^Д^) う、うわぁぁぁぁぁぁ!

男は床を叩いて飛び上がることでこれを回避した
すかさず手足の軌道を変えて男を追うが、次は天井と自身に能力を発動したらしい。逃げられた
それを追いかけると次は壁、そして天井、床、壁と飛び回り、なかなか攻撃が当たってくれない
だが……

(;^Д^) へっ、馬力も精度も桁違い!?笑わせるな!

(;^Д^) この程度の攻撃、俺にかかりゃあ簡単に避けられるんだよ!

(; Д ) 所詮念動力者は念動力s……グエッ!

从#゚∀从 また忘れてやがるぜ……阿呆が

从#゚∀从 こっちは銃も持ってるって言っただろうが!

从#゚∀从 俺くらいの精度がありゃ千切れた手で引き金を引くくらい、ワケねぇんだよ!

从#゚∀从 オラ!その邪魔くせぇ両手を封じさせてもらうぞ!

千切れた手を操作し、男の両手首を握らせる
それをそのまま床に押し付けると……足をバタつかせて脱出を試みているようだ。鬱陶しい

从#゚∀从 ついでに両足もだ!磔になりな!

男の両足首を腿と脹脛で挟むようにして拘束する
身動き一つとれなくなった男は、それでも攻撃的な態度を崩さない


86 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:21:21 ID:XOADpTqw0
(# Д ) 離しやがれ!ブチ殺してやる!

(# Д ) 大体テメェもこの状態で何ができるってんだ!手も足も塞がってやがるぜ!

(# Д ) 諦めなこのダルマ女!所詮テメェなんかじゃ俺を殺すことは出来ねぇんだよ!

从# ∀从 うるせぇな、黙って死ね

俺は男の目の前に移動し、大きく口を開く
その瞬間、男の表情が一変し、恐怖に染まる。察しがいいな、糞野郎
銃や千切れた手足じゃお前を殺す感覚が味わえないからな、こうしてやる

(((; Д ))) あ……やめ……助……

震える男の喉笛に噛みつき、そのまま引き千切った


87 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:22:08 ID:XOADpTqw0
男は最初こそ苦悶の表情を浮かべて藻掻いていたが、ある時ふと糸が切れたように静かになった
しかし、それは最早俺にとってはどうでもいいことだった


从 ∀从 総理の野郎、夢見させやがって……

死体の山、真っ二つにされた仲間、気を失った少女、千切れた手足……

从 ∀从 言ったじゃねぇか、だから俺はヒーローになれねぇんだよ

从 ∀从 こんなもん……

从 ∀从 こんなもん、ヒーローの戦いじゃねぇ

諦めよう。叶わぬ夢なら見ないほうがいい
刺客に怯えながら政府の手先として過ごす人生、それが俺にはお似合いなんだ
手足を能力で無理矢理繋げ、三つの大きな荷物を持ち、首相官邸へと帰還した


88 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:22:53 ID:XOADpTqw0
( ゚д゚ ) 認めん

从;゚∀从 はぁ!?

( ゚д゚ ) 成功の暁にはお前をヒーローにするというのが俺とお前の間の約束だ

( ゚д゚ ) ヒーローは約束を破らない。認めん

从#゚∀从 お前……報告書読んでそんな事言ってんのか?

( ゚д゚ ) うむ、確かにお前の戦闘スタイルはヒーローのそれとは言い難い

( ゚д゚ ) 敵を磔にして噛み殺すなんて、むしろヒール寄りだ

( ゚д゚ ) しかしその件についてはお前と初めて会った時に話を聞いている

( ゚д゚ ) その上で私から持ちかけた約束だ。反古にすることはできん

从#゚∀从 ……この石頭が


89 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:23:40 ID:XOADpTqw0
( ゚д゚ ) 石頭はどっちだ

从#゚∀从 あ?

( ゚д゚ ) 自分の戦闘スタイルがヒール寄りだからヒーローにはなれないだと?

( ゚д゚ ) ヒーローらしくないならヒーローらしくなるように努力すればいい

( ゚д゚ ) かの「英雄」ヒロユキもはじめは人外の化け物として人々から虐げられた

( ゚д゚ ) 首が飛んでも胸に大穴が空いても即座に再生し戦う彼に恐れをなしたのだろう

( ゚д゚ ) それでも彼は正義のヒーローとして戦い続け、次第に民衆の支持を得……

( ゚д゚ ) ついにはニューソクの「英雄」として語り継がれる存在になったのだ

( ゚д゚ ) お前はどうするハインリッヒ高岡、その程度の障害でヒーローを諦めるのか?

从 ∀从

( ゚д゚ ) 誰もが愛する正義のヒーローに、なりたいとは思わんか?

从 ∀从 ……チッ


90 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:24:22 ID:XOADpTqw0
( ゚д゚ ) まあ、なりたくないと言ったところで約束は約束。無駄なことだがな

( ゚д゚ ) では、次の司令だ。傷が治り次第この場所に向かってくれ


                    n
                   /__\
   ;,              r!_¨_¨_¨_h         ,';i';.,,'
   i;';,           |l__i||||||i__l|       ,;';.,,';i,,'
   ,.;;:;:、_____r‐‐F三三三三!‐ ュ____.;;';i;';,,';,,
   :、;; :;、甘甘甘甘|H | |ll |ll |ll |ll |.|H |甘甘,.;i;.i,,';,,';
   .;。 :;;:、;,.ロロ.ロロ.|ロi.| |ll |ll |ll |ll |.|H |.ロロ ;;,Yi;';.,';
   ,.;;:。 ;ソ ┴ ┴┴ ヒニ三三三三三ニ.ヨ┴┴;、;;:l。'';
   , -'": : _,,.-‐''" : : : : : : /: : : : : i: : : : : : : : : `゙''ー-、,_';
                                  」



( ゚д゚ ) VIP水族館。国内最大のアミューズメント施設だ


92 :名も無きAAのようです:2012/03/13(火) 19:34:24 ID:XOADpTqw0
おまけ ヒーロー図鑑その2

( ̄ー ̄)

「英雄」ヒロユキ

1000年ほど前に実在したニューソクの歴史的ヒーロー
能力は肉体再生。どれだけ深い傷を負っても一瞬で再生したらしい
65歳で逝去。死因は癌


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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第4話 

64 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 17:57:02 ID:QE2T4R4I0
从; ∀从

( ^Д^) おー痛そ。その足じゃもう動けねぇな

躱し損ねた
なんとか致命傷こそ免れたが、両足をやられた
……が、まだまだ

从; ∀从 ……へっ

从#゚∀从 こんなんで俺を止められると思うなよ!

(;^Д^) なっ……!

足が潰れたから何だってんだ。こちとら空を飛べんだよ
縦幅10mはある作業場の天井スレスレまで飛び上がり、銃を構える
ナイフが効かねぇなら鉛玉だ。その不愉快なニヤケ面に風穴開けてやる


65 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 17:57:55 ID:QE2T4R4I0
从#゚∀从 オラ!死ねやオラ!

(#^Д^) ……っクソが!当たりやがれ!

戦況は膠着。お互いに撃って、躱して、撃っての繰り返しが続いた
しかし、全く進展が無いわけではない。男の能力について、少しわかった事がある
まず一つ、奴が釘を飛ばすには2つのステップが必要なこと
右手で釘を構え、左手で胸を触る。これが成立して初めて釘を撃ち出すことができる
そしてもう一つ、撃ち出す釘の本数と速度の関係
本数が少ないほど、釘は高速で撃ち出されるらしい。恐らく質量の問題だ
考えてみればさっき俺が吹っ飛ばされた時、奴も俺と同じように吹っ飛ばされていた
撃ち出す物の重さによって、速度や反動の大きさが変わってくるのだろう

ここから導き出される奴の能力……

从 ゚∀从 ……斥力

( ^Д^) ピクッ

どうやら正解なようだ
恐らく奴の能力は自身と対象との間に斥力を発生させるというもの
その予備動作として左手で胸を、右手で対象を触る必要があるのだろう
そうと分かればやることは一つだ


66 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 17:58:48 ID:QE2T4R4I0
从 ゚∀从 こうされると困るんだろう?

(;^Д^) クッ、それは!

懐から取り出だしたりますは手榴弾。男に向かって投下する
せいぜい逃げ回りやがれ。お前の能力じゃ爆風まで防ぐことはできないだろ?

(;^Д^) この……糞がァ!

弾くのを諦めた男は転がるようにして爆風を避けた。そうそう、それが正解
でもこれで終わりと思ってんじゃねぇだろうな?俺は不死身の野郎と戦う場合も想定して来てんだ
手榴弾の蓄えは十分にあるぞ

从 ゚∀从 まだまだ続くよ、なんてな!オラオラ、走れ走れ!

(;^Д^) お、おお、おおおおおおおおおおおお!?

男は逃げる、逃げる、よく逃げる。爆風を躱すことに全神経を集中しているようだ
ところで大事な事を忘れちゃいないか?


67 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 17:59:39 ID:QE2T4R4I0
(; Д ) があっ!

从 ゚∀从 爆発に気を取られちゃいかんねぇ、こっちは銃も持ってるんだぜ?

从 ゚∀从 ……おー痛そ。その足じゃもう動けねぇな

仕返しだ、糞野郎
さて、勝負も決まった所で、あいつらはどうしてるかな?

(; A )

……呼吸はあるようだ。気を失ってるだけか

o川 д )o

こっちもか、帰りどうしよ

从 ゚∀从 まあいい、終わらせるか

从 ゚∀从 手榴弾が二つ。お前の能力じゃ2つのものを同時に弾くことはできないだろ?

(  Д ) ……!?

从 ゚∀从 じゃあな

そう言って俺は、手榴弾を投下した


68 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 18:00:26 ID:QE2T4R4I0
(# Д ) ナ……メ……てんじゃねぇぞオラァ!

男が右手で地面を叩いた瞬間、その体が飛び上がった
しまった、自身と床の間に斥力を……

(#^Д^) 邪魔だ!

男は両手を伸ばし、左手で手榴弾を一つ掴み、そして残る一つに右手で触れた
その瞬間、二つの手榴弾は弾かれたように明後日の方向へ飛んでいってしまった
手榴弾を突破した先にあるのは、もちろん俺の体
慌てて銃を構えるが間に合わない

( ^Д^) お前がどういう勘違いをしているのかは知らんが

( ^Д^) 俺の能力は左右の手で触れた物の間に斥力を発生させるというもの

( ^Д^) こんな感じでな!

そう言って男は右手で俺の右肩を、左手で右手首を掴んだ


69 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 18:01:08 ID:QE2T4R4I0
――ぶつり。という音が聞こえた
その後に激しい痛み。バランスを崩した俺は地面に向かって真っ逆さま
着地の瞬間何とか能力を発動し、転落死だけは免れることが出来た

从; ∀从 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁ!

( ^Д^) 痛ぇか?我慢しやがれ。お前の仲間はもっと痛い思いしたんだぞ

( ^Д^) なんせ上半身と下半身がサヨナラだ!

……そうだ、釘を飛ばす程度の能力でドクオをあんなふうに出来るはずがない
少し考えればわかることだったはずだ

( ^Д^) 返事くらいしてくれよ、寂しいじゃねぇか

( ^Д^) そんな悪い子にはもう少し苦しんでもらおうか

――ぶつり。聞き覚えのある音だ

――ぶつり。三回目

――ぶつり。四回目

( ^Д^) ダルマ人間の出来上がり、ってなあ!


70 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 18:02:10 ID:QE2T4R4I0
( ^Д^) 気分はどうだい?

从; ∀从

( ^Д^) 返事くらいしろ、って言っただろうが

从; ∀从 ガッ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!

男は笑いながら切断面に釘を刺し始めた
糞野郎、絶対に許さねぇ。殺す、殺してやる

( ^Д^) 命乞いでもしてみるか?専用オナホにでもなってくれるなら考えてやるぜ?

从; ∀从 殺せるもんなら殺してみろ糞野郎

从; ∀从 お前の相手をするくらいなら犬に抱かれた方がマシだね

(#^Д^) ……ああそうかい、死ね

そう言って男は左手を俺の胸に、右手を俺の頭に置いた


71 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 18:05:33 ID:QE2T4R4I0
今日の分おしまいです
バトルものの難しさを思い知りました


72 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 18:08:33 ID:QE2T4R4I0
おまけ ヒール図鑑その1

( ^Д^)

「モザイク」プギャー

左右の手で触れたものの間に斥力を発生させることが出来る
撃ち殺すより千切り殺す方が好きらしい
好物はダブルソーダ(分かれるから)


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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第3話 

51 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 14:56:37 ID:rD6kec0k0
ドクオの家から2キロほど北にあるという奴らのアジト
数年前まではとある大企業が使っていた工場で、かなりの規模があるらしい
そこへ向かう車中、俺はこいつの能力について考えていた
当初の予想では肉体再生、分身、瞬間移動、または幻術
手がかりは先程の俺の攻撃への対応。こいつは何も出来なかった
分身を出して俺を攻撃することもなければ、瞬間移動や幻術で避難することもなかった
となるとやはり肉体再生だと考えるのが妥当なところだが……

52 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 14:57:20 ID:rD6kec0k0
('A`) そんなに便利なもんじゃないさ

……どうやらこれもハズレらしい
まあそれもそうだろう。肉体再生なんてレア中のレア
その能力を持つ者はニューソクの長い歴史の中で1人しか確認されていない
ニューソク建国時の「英雄」ヒロユキ。知らぬ者などいない永遠のヒーロー
こんな所に2人目が居るなんて都合の良いことはありませんよって話だ
しかし、だとしたらこいつの能力は何だ?
だめだ全くわからん。働け!働け俺の脳細胞!……

('A`) 着いたぞ

从 ゚∀从 ……ああ

('A`) どうした?不満そうな顔をして

从 ゚∀从 なんでもねぇよ


53 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 14:58:54 ID:rD6kec0k0
移動の時間全てを思考に費やしたが、結局奴の能力はわからず仕舞いだった
まあいいさ。全てが終わったあとに聞こう

('A`) 俺は正面から突っ込む。お前は裏から忍び込んでくれ

从 ゚∀从 いいのかい?そんなことしたら妹が殺されちまうぞ

('A`) 敵の多い奴らだ。襲撃したのが俺だと気づくまでに時間がかかるだろう

('A`) 短期決戦だ。人質を使われる前に終わらせる

('A`) 妹がいるのは恐らく1F西側の作業場。奴らもそこにいるだろう

('A`) 真っ直ぐに作業場を目指し、先に着いた方が妹を救出して逃げる

从 ゚∀从 遅れた方は殿ってわけだ

从 ゚∀从 OKそれでいこう。じゃあ俺は徒歩で行くからあとは好きにしな

('A`) おう、せっかくいい車を貰ったんだ。好きに使わせてもらうぜ

('A`) こんだけいい車だと、いい燃え方をするだろうしな


54 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:00:08 ID:rD6kec0k0
アジトである廃工場の裏に回り、少しの間待機
2本目の枝毛を見つけたあたりで正面入口の方から衝突音、一拍置いて爆発音が聞こえた
すげー音。死んだんじゃねーか、あいつ

从 ゚∀从 さて、そろそろ俺も働くか

大きな音を立てないように窓ガラスを蹴破り侵入する
周囲に人の気配は無し。あの野郎、いい仕事するじゃねーか
気配がなくても油断大敵。罠に注意をしながら西側の作業場を目指す


55 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:00:50 ID:rD6kec0k0
侵入から2分が経過……おかしい
人の気配が無いどころか、物音一つ無いというのはあまりに不自然だ
ドクオの奴があれだけ派手に侵入してみせたのに騒ぎにならないはずがない
まさか……逃げられたのか?
いや、考えても仕方ない。とにかく今は西側の作業場に向かうことが重要だ

从 ゚∀从 ……と、ここだな

从 ゚∀从 扉が開いてる……

ドクオが先に到着したのかと思ったが、もしかしたら敵の罠かもしれない
一歩踏み入れた瞬間にドカンなんてことも十分考えられる
扉の隙間から恐る恐る作業場を覗いてみると、中には……

( ^Д^)

大柄な男が一人

o川*;ー;)o

涙を流す少女が一人

(;;;;;∀;;;)(;;;;;;;;;ω;;;;;)(;;;;;д;;;;;;;;;)(;;;;ー;;;;;;)

成人男性の死体たくさん

(; A )

ドクオの上半身と下半身が1つづつ
……なんだこりゃ


56 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:01:48 ID:rD6kec0k0
しばらく呆気に取られていると、中にいるドクオがこちらに気づいた
どうやら生きているらしいが、いつ死んでもおかしくない状態なはずだ

(;'A`) ……!逃げろ!こいつはヤバい!

馬鹿野郎、声を出すんじゃねぇ
この状況でそんなことをしたら……

( ^Д^) あ?他に誰かいんのか?

……気付かれるに決まってるじゃねぇか
だが、まあいい。もともと全員ぶっ飛ばして帰るつもりだったんだ
やってやるさ


57 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:02:31 ID:rD6kec0k0
从 ゚∀从 おっす

( ^Д^) 誰だお前

从 ゚∀从 そこに転がってる奴の仲間だよ

从 ゚∀从 その娘を迎えに来た

( ^Д^) そうか、残念だったな

( ^Д^) 俺はここに居る奴ら全員殺せって言われてんだ

从 ゚∀从 誰に?

( ^Д^) 雇い主にさ。昔から敵が多かったからなこいつら

なるほど、敵対するグループに雇われたヒットマンってところか
そういえばドクオもそんな事を言ってたような気がする


58 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:03:40 ID:rD6kec0k0
从 ゚∀从 よし、ぶっ飛ばす

( ^Д^) 随分唐突だな、もうちょっとお話でもしy……

男が話し終えるのをまたず距離を詰める
不自然に話を伸ばそうとする奴は不意打ち狙いの遠距離型と相場が決まっている
懐からナイフを取り出し男の胸目掛けて突き出す
驚いた男は左手を胸に当て、右手をナイフの前に出す。阿呆が

(;^Д^) ……クッ!

从 ゚∀从 それでガードのつもりか?右手もらうぞ

目標を胸から右手に移し、全力で貫いた……つもりだった
ナイフが男の手に触れた途端、俺の体が宙に舞った


59 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:05:08 ID:rD6kec0k0
从; ∀从 があっ!ドサッ

(;^Д^) ゲホッ……あぶねぇあぶねぇ、死ぬかと思ったぜ

(;^Д^) 俺も痛ぇからあんまりやりたくなかったが……刺されるよりはマシだ

急いで顔を上げると、男は俺と同じように床の上に倒れていた
どうやら吹っ飛ばされたのは俺だけじゃなかったらしい
問題なのは男との距離。ついさっきまで手の届く位置にいた男があんな遠くにいる
目測で……10mといったところか。遠距離型が大好きな間合いだ

( ^Д^) お返しだ、ほらよ

男の右手に握られているのは……釘?
それをこちらに向けて構え、左手をゆっくりと胸まで運んでいく
左手が奴の胸に触れた途端、右手に握られていた釘がこちらへ向かって真っ直ぐに飛んできた


61 :名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 15:15:55 ID:rD6kec0k0
おまけ ヒーロー図鑑その1

( ,,゚Д゚)

「パントマイム」ギコ

物体を透明にしたり透明な物体を生み出したりすることができる
生み出せる物体は硬さ、重さ共にコンクリート程度
時間さえかければ首相官邸の周りを透明な壁で覆うことだってできる
好物は水羊羹(透明だから)


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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第2話 

27 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:44:15 ID:jb3QtccY0
総理の野郎から渡された資料に目を通す
なになに、

「リビングデッド」本名ドクオ 23歳 男性
テンゴク在住の「ヒーロー落ち」
・身長~
・体重~
・視力~
・病歴~
………
……

・愛用のブランド~
・交友関係~
・性癖~
………
……

・幼少時の渾名~
・尊敬する偉人~
・掲示板利用時のハンドルネーム~
………
……


从 ゚∀从 (……なんだこれ)


28 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:45:42 ID:jb3QtccY0
( ゚д゚ ) 奴についてこちらが持っている情報は全てそこに書いてある

( ゚д゚ ) 好きに使ってくれて構わない

从;゚∀从 さすがの情報収集力だな

( ゚д゚ ) 優秀な人材が居るのでな。その気になれば対象の毛穴の数まで調べられるさ

从 ゚∀从 しかし……ここまで調べておきながら……

・能力 不明
・犯行の動機 不明

从 ゚∀从 一番大事なものが抜けてるじゃねえか

(;゚д゚ ) すまない。しかしながら能力の方は大方の予想ができている

从 ゚∀从 肉体再生、分身、瞬間移動、大穴で幻術とかそんなとこだろ

(;゚д゚ ) ……うむ

从 ゚∀从 優秀な人材(笑)

(;゚д゚ ) と、とにかく、「リビングデッド」は現在テンゴクにいる!至急向かうように


29 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:46:50 ID:jb3QtccY0
首都ヴィップから電車に揺られること1時間、テンゴクに到着
駅から奴の家まで盗んだ車で約5分……ここか、なかなか良い家に住んでんじゃねえか
資料によるとヒーロー候補生の頃から引越しはしていないらしい
金に困ってやむを得ず過激派の手先に、ってわけじゃあないようだ
奴を味方に引き入れるにはテロリストになった経緯から調べる必要があるな……
さて、どうしたもんか


30 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:47:42 ID:jb3QtccY0
【('A`)宅】

<ユウビンデース!ハンコクダサーイ!

('A`) ……

<ユウビンデース!ハンコクダサーイ!

('A`) ……

<ユウビンデース!ハンk(#'A`)うるせーなもう!!ガチャッ

从 ゚∀从 はぁい ズイッ

(;'A`) えっあの……

(;'从从从 ズキュウウウウウン!

(*'从从从 ……

(*'A`) 从∀゚ 从サッ

(*'A`) ……えっ


31 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:48:23 ID:jb3QtccY0
从 ゚∀从 飲んだな?

(*'A`) ……はい?

从 ゚∀从 唾液

(*'A`) ……はい

从 ゚∀从 結構大量に

(*'A`) ……はい

从 ゚∀从 よし

从 ゚∀从 お前詰んだぞ、「リビングデッド」

(;'A`) えっ……グ……カハッ……

(;'A`) (何だ!?呼吸が……)

从 ゚∀从 しばらくそこで苦しんでな

从 ゚∀从 おじゃましまーす、っと


32 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:49:17 ID:jb3QtccY0
家主が留守のうちに家の中を物色する
うへぇ、男の一人暮らしってのはこんなに汚いのか
まあいい、とにかくアレを探さないと……

从 ゚∀从 (……あった)

はい案の定有りました盗聴器。カメラは……無いな、良かった
金目当てじゃないってことは何か弱みでも握られてんだろうと思ったが、正解なようだ
あとはその弱みを聴きだしてこっちが解決してやれば万事OK
あいつも俺の仲間になってくれるだろう
盗聴してる野郎になにか気取られても困る。そろそろ家主に帰ってきてもらおう


33 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:50:12 ID:jb3QtccY0
【玄関】

(ill A ) カハッ……キヒッ……

从 ゚∀从 ……おい ボソッ

(ill A )そ ?

从 ゚o从 パクパク

(ill A ) ……

(ill O ) (読唇術……使える……使える……) パクパク

从 ゚3从 (声を出さないと約束できるなら能力を解除してやる) パクパク

(ill д ) (わかった……わかった……) パクパク

从 ゚∀从 (よし) パクパク

(;'A`) ……ハッ!……ハァー!ハァー!


34 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:51:06 ID:jb3QtccY0
【居間】

('p`) (何が目的だ) パクパク

从 ゚皿从 (お前がドクオで間違いないな?)

('益`) (そうだ) パクパク

从 ゚ー从 (お前を助けに来た) パクパク

(;'ω`) (……どういうことだ?) パクパク

从 ゚ρ从 (まあ、まずは俺の身の上話から聞いてくれ) パクパク


35 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:51:50 ID:jb3QtccY0
………
……


从 ゚口从 (……という訳で俺はここに居る) パクパク

('。`) (なるほど) パクパク

('ν`) (もしお前が本当に俺を助けてくれたら、仲間になってやってもいい) パクパク

从 ゚⊿从 (任せとけ。それで、お前はどんな弱みを握られてるんだ?) パクパク

('、`) (奴らは俺の妹を人質に取っている) パクパク

从 ゚A从 (奴ら?) パクパク

('∀`) (テロリスト共だ。俺が言うことを聞かなければ妹を殺すと脅されている) パクパク

从 ゚n从 (なるほど、じゃあ俺はその妹を助け出せば良いわけだな) パクパク

('-`) (まあそうなるな) パクパク

从 ゚ヮ从 (よし任せろ!奴らの居場所はどこだ?) パクパク

(;',_`) (ここから2キロほど北の廃工場……一人で行く気か?) パクパク


36 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:52:38 ID:jb3QtccY0
从 ゚v从 (安心しろ、強いから) パクパク

('e`) (……俺も行く。壁くらいにはなってやるさ) パクパク

从 ゚へ从 (よし、早速行くぞ) パクパク

('A`) ……さて、買い物にでも行くか ガチャッ

【屋外】

从 ゚∀从 乗りな

('A`) ……いい車だな ガチャッバタン

从 ゚∀从 この車はお前にやるよ

从 ゚∀从 好きに使いな「リビングデッド」。足手纏いにはなるんじゃねぇぞ

('A`) ああ……


37 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 11:53:25 ID:jb3QtccY0



――死ぬ気でやるよ、死なねぇけど

40 :名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 12:19:01 ID:jb3QtccY0
おまけ 本日のNGシーン

从 ゚∀从 乗りな

('A`) ……いい車だな ガチャッバタン

从 ゚∀从 この車はお前にやるよ

从 ゚∀从 好きに使いな「†漆黒の聖騎s('A`) ハンネで呼ぶのやめて


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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:06:06 ID:2zOb5sYM0
空を飛び、地を駆け、弱きを守り悪を挫く
ヒーローというものはこの世界に生きる誰もが憧れる存在だ
交通安全運動から他国との戦争まで、ヒーローの果たす役割は非常に大きい
そんなヒーローになるために必要なものは何か
強靭な体?正義の心?どっちもハズレ
断言するね、ヒーローに必要なのは……


2 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:07:36 ID:2zOb5sYM0
相も変わらず、TVでは連日のようにヒーローの活躍が報道されている
今日は何やらヒートとかいう奴が銀行強盗を捕まえたらしい
「人として当然のことをしたまでだ!」だとさ。ご立派ご立派
窓の外では餓鬼共が「ヒートごっこ」をしているようだ。どうりで騒がしいと思った
「俺絶対に将来ヒーローになる!」なんて声が聞こえてくる
夢を見るのは結構なことだ少年。だけど世の中そんなに甘くないぞ
お前等はヒーローになれなかった者の末路を知らないからそんなことが言えるんだ
考えてもみろ、高い戦闘能力を持ち、職にあぶれた者……

( `ハ´) 今回はこの写真の男を殺して欲しいネ

悪人共に目を付けられないはずがないだろ?

从 ゚∀从 また暗殺か

( `ハ´) 暗殺違う。襲撃

从 ゚∀从 ……派手にやれってことか

( `ハ´) 報酬はいつも通り振り込んでおくネ

从 ゚∀从 了解。えーっと標的は……


3 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:08:19 ID:2zOb5sYM0



       「


              ( ゚д゚ )


                         」



从 ゚∀从 ああ見たことあるわ、コッチミルナ……首……相……

从;゚∀从そ 総理大臣じゃねーか!!

コッチミルナ
圧倒的な支持率で長年首相の椅子に座り続ける元ヒーロー
こいつを殺すのが今回の依頼らしい
依頼の難度としては考えるまでもなくSクラス……だが……

( `ハ´) 無理か?

从 ゚∀从 ……いや、やらせてもらうよ

断ったら消されるんだろう
やるしかないさ


4 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:09:01 ID:2zOb5sYM0
【首相官邸】

(警1”д”) 襲撃だ!空から手榴弾が降ってきたぞ!

(警2”д”) くそっ!そんな所にいないで降りてこい!

(警3”д”) 侵入者は1名!飛行能力者の可能性大!至急応援求む!

从 ゚∀从 飛行能力者ねえ……そんな素敵な能力なら良かったんだけど

从 ゚∀从 まあいいや、十分派手にやったし終わらせるか

(警4”д”) 逃げたぞ!追え!

从 ゚∀从 付いてこれるもんならな。えーと、標的はあっちだな

俺は最高速度120キロで飛行することができる
本来の能力を応用した物なので純粋な飛行能力者と比べると随分見劣りする数字だ
まあ、どっちにしろ普通の人間である警備員が追いつけるスピードじゃあない


5 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:11:33 ID:2zOb5sYM0
从 ゚∀从 ……ん?アイツは……

( ,,゚Д゚)  ここから先は通さん

こいつは確かヒーローの……ギコとかいう奴だ
警備にヒーローが付いているとはさすが総理大臣
「パントマイム」なんて呼ばれるこいつの能力は……あ、ヤバ……

三从 ∀(;;|ドグシャァ!!



ドサッ

(警5”д”) 侵入者が落下、確保します!

(警6”д”) 侵入者確保!連行します!

( ,,゚Д゚)  いや、俺が運ぶ。お前等は持ち場に戻っていいぞ

(警6”д”) はっ!ではよろしくお願いします!


6 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:12:28 ID:2zOb5sYM0
……………
………


从 ∀从

从 -∀从 うーん……

从;゚∀从そ ~ッ!!ココは!?

(;;;;;;) 目が覚めたか

从 ゚∀从 お前は……

( ゚д゚ ) はじめまして、お前の標的のコッチミルナだ

从 ゚∀从 ……糞が

8 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:13:39 ID:2zOb5sYM0
从 ゚∀从 任務失敗したヒットマンに総理大臣が何の用だ?

( ゚д゚ ) なに、少し話をしようと思ってな

从 ゚∀从 俺から情報を引き出そうってんなら諦めな。死んでも言わん

从 ゚∀从 いや、「言ったら消される」の方が正しいかね

( ゚д゚ ) ふん。まるで何も言わなきゃ消されないと思っているような口ぶりだ

从 ゚∀从 あ?

( ゚д゚ ) 情報を漏らす可能性があったら消す。言おうが言うまいが関係ない

( ゚д゚ ) 裏の組織ってのはそういう物だ

( ゚д゚ ) お前の失敗を知った時点で奴らは刺客を差し向けるさ

从;゚∀从


9 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:14:22 ID:2zOb5sYM0
( ゚д゚ ) ……だがまあ、生きる道もなくはない

( ゚д゚ ) こちらの要求に応じてくれたら刺客の対処はしてやろう

从 ゚∀从 ……わかったよ、何でも聞いてくれ。全部話してやる

( ゚д゚ ) ……勘違いをしているようだが、お前から情報を得ようという気はない

从 ゚∀从 はぁ?じゃあ要求ってのは何なんだよ

( ゚д゚ ) 単刀直入に言おう

( ゚д゚ ) お前には我が国のエージェントとして働いてもらう

从;゚∀从そ ハァァァァァァァ!?


10 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:15:03 ID:2zOb5sYM0
゚д゚ ) お前について調べてみた

( ゚д゚ ) ハインリッヒ高岡21歳女性

( ゚д゚ ) 両親ともに既に死亡しており現在はヴィップ市に一人で住んでいる

( ゚д゚ ) そして……元ヒーロー志望者

从 ゚∀从 ッ!

( ゚д゚ ) 天涯孤独の「ヒーロー落ち」か。裏の人間に目を付けられるのも当然だな

( ゚д゚ ) 養成所時代の成績は……と……

( ゚д゚ ) 凄いな、知力体力共にトップクラス。現役のヒーロー以上だ

( ゚д゚ ) これだけの資質を持ちながらヒーローにならなかったのはなぜだ?

从 ゚∀从 ならなかったんじゃない。なれなかったんだよ

( ゚д゚ ) ……さて、どういうことだ?

从 ゚∀从 俺は……


11 :>>10コピペミス……修正はしない:2012/03/02(金) 14:16:40 ID:2zOb5sYM0
……………
………


( ゚д゚ ) なるほどな

( ゚д゚ ) しかし……惜しい

从 ゚∀从 ?

( ゚д゚ ) お前ほどの人材を埋もれさせておくのはあまりに惜しい

( ゚д゚ ) よし、もしお前が我が国のエージェントとして任務に成功したら

( ゚д゚ ) その時はお前をヒーローにしてやろう

从;゚∀从 なっ!

( ゚д゚ ) どうだ?刺客の処理、ヒーローになる権利。破格の条件だ

( ゚д゚ ) やるか?それとも獄に入るか?

从 ゚∀从 ……やってやるよ

( ゚д゚ ) よし


12 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:17:32 ID:2zOb5sYM0
从 ゚∀从 それで、任務ってのは何なんだ?

( ゚д゚ ) 最終的な目標はラウンジへの潜入、そして工作活動だ

从 ゚∀从 まあ、そんなとこだろうとは思ったさ

( ゚д゚ ) うむ。知っての通りわがニューソクとラウンジは長期に渡って戦争状態にある

( ゚д゚ ) つい最近そのラウンジが新兵器の開発に成功したという情報があった

从 ゚∀从 それを調査して、あわよくば破壊しろってことか

( ゚д゚ ) まあ、そういうことだ

从 ゚∀从 最終的な目標がそれだとして、短期目標は何だ?

( ゚д゚ ) 一人で行くのは心細いだろう。メンバーを揃えろ

从;゚∀从 揃えろ……って言われてもなあ

( ゚д゚ ) 候補はこちらで絞ってある。お前は口説きに行くだけでいい


13 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 14:18:15 ID:2zOb5sYM0
( ゚д゚ ) まず口説いて欲しいのが……こいつだ




     「


            ('A`)


                      」



( ゚д゚ ) 通称「リビングデッド」。自爆テロの常習犯だ

从 ゚∀从 ……は?


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目次へ

ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その3 

119 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:36:27 ID:K2gJjNsYO
 


 言った瞬間、全身を巨大なプレス機で押しつぶされたかのような錯覚に見舞われた。
 震え、聞こえるかすらわからない程か細い声で、言い切った。
 自分でもよく言えたな、と思った程に、それは苦しい発言だった。

 目に涙が滲んでくる。
 それをぐっと堪え、柄でもなく顔を紅潮させ、ブーンの方をじっと見つめた。

 ブーンはこちらを見つめたまま、口をぽかんと開いて唖然としていた。
 彼が言葉を話せるようになるまで、十秒程を要した。


( ;゚ω゚)「―――、……なに言って……?」

 正座を崩して、四つん這いになりつつもこちらに顔を近づけてきた。
 状況を呑み込めないようだったため、まだ説明しなければならないと思った。

 いや、呑み込めてはいるだろう。
 言ってきた通り、どうしてそんな事を言うのか、がわからなかったように見えた。


川 ゚ -゚)「日頃の……特に、最近のブーンの動向は、目に余る」

川 ゚ -゚)「どうしてもビデオを捨てられないなら……私は、君を見ていられない」

川 ゚ -゚)「それ故の、判断……だ」


.


120 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:38:43 ID:K2gJjNsYO
 


( ;゚ω゚)「……! ばか言うなお……」


 静かに私の言い分を聞いていたブーンが、漸く絞り出した声はそれだった。
 確かに自分でも馬鹿げている、と思っていた。

 だが、もう見ていられなくなったのだ。
 狂ったかのようにビデオに固執する、ブーンの姿を。

 それを丁寧に言っても、ブーンは馬鹿げていると言いたげな顔をしていた。


( ;゚ω゚)「そんな……そんな事を……言われても……」

川 ゚ -゚)「………ブーン、よく聞いてくれ」

( ;゚ω゚)「世間体を気にしてるのかお?
      だったら今度からは絶対に声を出さず、静かに観るお」

川 ゚ -゚)「違うから、聞いてくれ」

( ;゚ω゚)「世間で言う幼女趣味、ロリコンとか言うのが嫌いなのかお?
      僕は現実と画面の世界とはきちんと分別をしっかり弁えてるから、心配しないでお」

川  - )「……聞いて……」

( ;゚ω゚)「電気代かお? 休日出勤でもしてもっと稼いであげるお、だから―――」



 思わず、怒鳴ってしまった。




川  - )「違うから、聞いて!!」

( ;゚ω゚)「―――ッ」



.


121 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:39:46 ID:K2gJjNsYO
 

 私は、滅多な事では感情を表に出さない人間だ。
 辛い、悲しい、寂しい、楽しい――そのどれも、顔や声、態度に出る事はない。

 そんな私が、どうしてここまで感情的になっていたのか。
 のちの私に問えば、返答に詰まる事だろう。

 だが、今は途方にもなく、感情的になっていた。


川 ゚ -゚)「……君がそれらのビデオを観たがる気持ちは、よくわかる」

川 ゚ -゚)「観ていて癒されるのも、活力を分けてもらえるというのもわかる」

川 ゚ -゚)「寧ろ、もっと観ててくれても構わない。ビデオを観るだけ、なら」

川  - )「でもな……」






川  - )「いくらビデオを観ようが、ツンは生き返らないんだぞ!」





.


122 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:41:23 ID:K2gJjNsYO
 


(; ω )「………ッ」



 私の、心の底で巣くっていた澱みが、ついに氾濫してしまった。
 顔に出ない分、そういった感情は一方的に溜まりやすい。

 それが増幅し溢れかえってしまうと、クールだろうが
 ドライだろうが関係なしに、本心を優先させてしまうのだ。


川  - )「生前のツンの姿を観て、あの頃を思い出すのはいいさ」

川  - )「天真爛漫で、じゃじゃ馬で、でも人形のように可愛い。
     そんなツンとの思い出を、振り返るなとは言わない」

川  - )「私だって――時々アルバムを捲っては、
     笑ってるツン、泣いてるツン、怒ってるツンを目で追ってる」

川  - )「でも………でも………」




 ああ、どうして。


.


123 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:42:51 ID:K2gJjNsYO
 



川 ; -;)「ツンは死んでしまったんだ! それくらい、いい加減わかれよ!」



 どうして、私は涙を流しているのか。
 これも、のちの私に問おうが、決して明確な返答はないに違いない。

 涙など、学生時代に先生に怒られようが、世界一怖い
 ジェットコースターに乗ろうが、見せたことがなかった。
 親が逝く時でさえ、声を震わせた程度で終わったというのだ。

 どうしてか、悲しい、怖いという実感が湧かず、
 現実をそれとなく受け流すくらいしか、今までの経験では無かった。

 自分が産声をあげる時以外では、涙は一度しか流したことがなかった。
 その、たった一度の涙を見せたのは、丁度二年前、雨が降っていた日だ。
 その、涙を流した理由というのが、今涙を流している理由と全く同じなのだ。


 どうして、娘が死んだ、ということに関してだけは、涙を流すのだろう。
 どうして、親が死んでも何ともなかった自分が、娘の死去を前に涙するのだろう。
 決して答えが見つからないであろう疑問を、抱えてきた。
 これからも、それは抱えていくのだろう。


.


124 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:44:39 ID:K2gJjNsYO
 


(  ω )「クー……」

川 ; -;)「いつになったら、ツンは死んだのだ、って現実と向き合えるんだよ! なあ!」

(  ω )「………向き合ってるお。それくらい、知ってるお」


 感情がだだ漏れになっている私を前に、ブーンは冷静を取り繕っていた。
 変わらず小さな声で、否定する。

 だが、私の声を小さくするのは、自分では不可能だった。

川 ; -;)「嘘吐け! ビデオを観てる時の君の態度は、そうじゃない!」

川 ; -;)「……まだ生きているのだ、って気になってるじゃないか!」

(  ω )「………」


 横座りの姿勢を崩し膝をついて、ブーンの両肩に手をかえた。
 そのまま座らせて、身体を前後に揺する。
 力なく揺れるブーンの身体、頭を見て、魂ここに在らず、と言った印象を持たされた。


.


125 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:46:19 ID:K2gJjNsYO
 


(  ω )「………」

(  ω )「じゃあ逆に聞くお……」

川 ; -;)「………?」


 意識してではないだろうが、ドスの利いた、非常に低い声でブーンは言った。
 思わず、矢継ぎ早に物言おうとしていた私の口は、閉ざされてしまった。

(  ω )「クーは、ツンを忘れろってのかお?」

(  ω )「ツンが死んだからって、無かったことにしよう、って気なのかお?」

川 ; -;)「ちが―――」



(# ω )「何が違うって言うんだお!!」


 俯いたまま、ブーンは大声を発した。
 決して、私に殴りかかろうなどとする姿勢は窺えない。
 ただ、言葉で私に殴りかかろうとしているのはわかった。

(# ω )「ビデオを観るな、現実を受け止めろって……」

(# ω )「じゃあクーは悲しくないのかお?
       ツンが死んだことが、最愛の娘を喪ったことが!」

川 ; -;)「悲しいさ。でも、それとこれとは……違う」

(# ω )「違わないお!」


.


126 :クーの涙目が半角でした。すみません。:2012/03/23(金) 19:49:38 ID:K2gJjNsYO
 

 再び、ブーンの一喝で私は黙り込んだ。
 彼も私も、娘の死をこの上なく悲しく思っている事に偽りはない。
 一生に流しきるであろう涙を、一晩にして流し終えた程だ。
 死後一週間は、毎日が生きた屍のような心地だった。

 ブーンにとってもそれは変わらないようで、溜まりに
 溜まった有給を全部使い果たして、ずっと鬱ぎ込んでいた。

 どちらも、娘にかける想いは同じくらいに大きいのだ。
 だから、娘の死についての話なんか、したくはなかった。


(  ω )「……ツンは、丁度僕が会社で、平のサラリーマンとして
       ばりばり働いて、もう精神的にダメだった時に産まれてくれたお」

川 ; -;)「………」


.


127 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:51:45 ID:K2gJjNsYO
 

(  ω )「上司から押し付けられる雑務、裏で囁かれる悪口、決して増える事のない給料、
       クーを待たせたくないのにしなければならないサービス残業……」

(  ω )「もう、会社なんかやめちまえ、そんな時に聞いたツンの産声は……
       どんな天使が奏でるどんな管楽にも負けない、素晴らしい音色だったお」

( ^ω^)「地獄に仏どころじゃない……まさに、女神。
      僕にとっての、生の道しるべ」

( ^ω^)「どんなに会社で雑に扱われても、理不尽な目に遭っても。
      『家に帰れば、ツンがいる』――そう思うだけで、不思議とそれらは消えてって」

(  ω )「クーも尋常ない程愛してるけど、ツンにも負けないくらい、与えれる限りの愛を与えて育てたお」

(  ω )「罵倒されても、杜撰に扱われても、幸せだったお。
       笑ってくれた時なんか、このまま死んでもいいって思えたお」

(  ω )「そんなツンの……え、笑顔が……見られなくなるなんて、だお?」


( ;ω;)「…………当時は……か、考えた事すら……なかったんだお………」





.


128 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:52:48 ID:K2gJjNsYO
 








 昼休み、愛妻の手作りの弁当を広げて、合掌した。
 ちいさなハンバーグに豚の生姜焼き、だし巻き玉子、
 サラダに煮物と総菜が選り取り見取りで、早速食欲をそそった。
 敷き詰められた、光沢の栄える白米の上に、申し訳程度の梅干し。

 実に豪華で、外に金を払ってまで食べる定食よりも大変旨そうな弁当だ。
 声にはしないが、心の中で妻の好意に礼を述べ、箸を手に取った。

 まずは、この渇ききった喉を茶で湿らせる。
 一口、二口と喉に運んで一息を吐いた。
 その上で改めて弁当を眺めると、もう一度息を吐きたくなる。


(=゚ω゚)ノ「あ、センパイ今日は愛妻弁当ッスか!」

( ^ω^)「羨ましいかお?」


.


129 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:54:59 ID:K2gJjNsYO
 

 久々の妻の手作りというだけあって、少し僕は浮かれていた。
 部下の伊予にとっても羨ましかったようで、「おお」と感嘆の声を漏らしていた。

 女とは悉く縁がない伊予は、愛妻弁当というものに憧れるのだろう。
 食べさせはしないが、「ほれほれ」と見せるだけ見せびらかした。


(=゚ω゚)ノ「幸せ者ッスね。くぅ~ッ! 羨ましいッス!」

( *^ω^)「そうだお? そうだお?」

(*=゚ω゚)ノ「美人な奥さんと巡り会えて、可憐な娘さんに恵まれて……
      もう羨ましいどころか悔しいッス!」

( *^ω^)「どれ、もっと悔しがるがいい!」

(;=゚ω゚)ノ「くそ~……。自分も早くイイ人見つけて、口説いて……結婚して。
      まだまだやる事が多いなぁ……」

( ^ω^)「……伊予。出逢いってのは、いつどんなタイミングで起こるかわからないもんだお。
      それまで男を磨いておくことだお」

(=゚ω゚)ノ「センパイ、かっこいいように見えて実はそうでもないッス!」

(;^ω^)「やっかましい!」


.


130 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:56:50 ID:K2gJjNsYO
 


 いつもの昼のように、伊予と取り留めのない雑談を交わす。
 普通の社員ならもたもたしていては、昼食難民となりコンビニで済まさざるを
 得なくなるのだが、伊予は「隠れ家」なる料亭を知っているため、こうして呑気に会話ができるという。

 そのため、僕も遠慮なしに会話を進めていくのだ。
 娘の話題を出されると、ついにやにやせざるを得ない。
 すっかり乗せられ、柄でもない事まで言ってしまうという醜態を曝す事になっていた。


( ^ω^)「お?」

 笑っていると、デスクの上に置かれてある電話が鳴った。
 なんだと思って手に取ってみると、僕の顔から笑みが取れる事はなくなっていた。

 どういう事か、娘の声が聞こえてきたのだ。
 反抗期なのか、僕を罵ってばかりの娘から電話が来るまど、ただ事じゃあない。
 すぐさま有頂天になり、鼻息が荒くなった。


(=゚ω゚)ノ「あ、電話スか?」

( *^ω^)「言ってたら娘から電話だお!」

(=゚ω゚)ノ「じゃあ自分はこれくらいで」

( ^ω^)「おう! たんまり飯食ってこいお!」


.


131 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:58:29 ID:K2gJjNsYO
 


 伊予がオフィスを出て行くのを見届ける前に、耳を
 受話器にぴったりと押しつけ、受話音量を最大限に上げた。
 そのせいか、鼻息が荒いのがばれて、開口一番に罵られた。


  『ちょ……キモいんだけど』

( *^ω^)「どうしたお! なにかあったのかお!?」

 娘の通う中学校は、今日は創立記念日と聞かされていた。
 だから、彼女が電話をかけてくる事に違和感は抱かなかった。

 罵倒を天使の囁きのように受け止め、高鳴る胸の鼓動を押さえようともせずに先を促した。
 それも、室内に残っているOL達など気にも留めず、大声で。
 僕が大の親バカだと言うことは皆が知っている事実のため、気にする必要がないのだ。

 娘の口から放たれる可愛らしい声を、いつまでも聞いていたい。
 ある日、それを本人の目の前で言うと張り手されたが、本心だった。

 そんな声が、僕の耳介に吸い込まれてゆく。
 だが、その瞬間僕の視界は真っ白になった。



  『えっと……。か、カレシ、呼んだから』

( ゚ω゚)


.


132 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:59:53 ID:K2gJjNsYO
 


 右手に籠めていた力が抜け、電話を落としてしまった。
 螺旋状のコードが伸びきり、引き出しの前でぶらぶらと揺れる。

 課内に残っていた人たちが、なにがあったのかとこちらを見る。
 はっとして、慌てて受話器を手に取った。


  『もしもし、聞こえてんの!?』

  『大方、ショックを受けたんだろうな』

  『だから言わない方がいいって――』


 受話器の向こうで、妻と娘が呆れ気味に話している。
 どうやら、クールが僕にその事を話すように促したようだった。
 顔面の強張った筋肉は解せないが、僕は漸く言葉を話せた。

.


133 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:01:05 ID:K2gJjNsYO
 


( ゚ω゚)「だめだお」

  『はァ?』

( ゚ω゚)「今すぐ追い返しなさい、今すぐに」


 冷静な口調になって、追い返すよう指示した。
 まだ中学生の娘に彼氏など、決してあってはならない。
 中学生などという、まともな思考が得られ難い時期につくる彼氏など、陸でない場合が多いからだ。

 しかし、その考えを嘲るかのように笑う娘の声が聞こえてきた。
 後ろではクールが微笑を声にしている様子も聞き取れる。


  『残念でしたー! そういうと思って、もうお話終わりましたぁー』

( ゚ω゚)「ッ! ちょ、母さんに代わるお」

  『はいはい』


 呆れ気味に娘が応えると、やや声が上擦ったクールの声が聞こえてきた。
 まるで、最初から代わるよう促されるのが読めていたかのような手早い動作だった。


.


134 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:03:02 ID:K2gJjNsYO
 


( ゚ω゚)「どういう事だお」

  『カレシさん呼ぶなんて言ったら間違いなく飛んできそうに
   思えたから、呼び終えてから知らせる事にしたのさ』


 確かに、飛んでいく。
 そして、彼氏とやらを追い返す。


  『で、今からツンがカレシさんを見送りに行くところ――』

( ゚ω゚)「ッ! まだ野郎はうちにいるのかお!?」

  『げ』

  『ちょ、おかーさん!』


 クールが言葉を詰まらせた。
 図星、という事だろう。
 このチャンスを逃す訳にはいかない。


( ゚ω゚)「今からうちに帰るから、逃がしちゃだめだお。じゃ」

  『ちょっと――』


 そう早口で言って、返答も待たずに受話器を置いた。
 ひそひそと陰口を叩いているOLなど目もくれず、手早く弁当を片づけた。
 食べるのは帰ってからで構わないだろう。

 資料を全て鞄に押し込み、コーヒーもコップの中身を全部呷った。
 それの苦味を味わう暇も出さずに席を立った。
 この間、五秒も掛かってないだろう。


.


135 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:04:52 ID:K2gJjNsYO
 


 鞄をデスクの上に放り出して、部長のデスクに向かった。
 入社当初から「動けるデブ」との異名を持っていた僕の
 今の動きに、驚いた部長は目を丸くして僕を迎え入れた。
 窓の外を眺めるのをやめて、席に座って。

(;`∠´)「なんだ、どうしたんださっきから」

( ^ω^)「会社早退させてくださいお。では」

(`∠´)

(`∠´)「え?」



 踵を返して帰路につこうとすると、当然ながら部長から制止された。
 普段の僕なら「それはそうか」となるのだが、今はそんな常識すら弁えてなかった。
 急ぎ足でデスクの前に立つと、部長は怒るどころか呆れて物も言えない、そんな風に窺えた。


(`∠´)「あのな、何言ってんだお前?」

( `ω´)「何言ってもなにも、そのままですお!」


 部長の鋭い眼光が、目に突き刺さる。
 だが、負けじと僕も睨み返す。


(`∠´)「早退理由は―――まあ、聞くまでもなく娘関連だな」

( `ω´)「そうですお!」

(`∠´)「病気で倒れたとか、産まれたって訳でもないのに早退が許せるか」

( `ω´)「本気ですお! 早くカレシとやらを追い返さないと――」


.


136 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:06:36 ID:K2gJjNsYO
 

 僕とベル部長は、自分で言うのもなんだが仲がいい方だと思っている。
 接待ゴルフで休日を共にする日も多く、信頼関係は築けている方だと実感している。

 だが、僕の娘に関してだけは、よく部長と諍いを交わすのだ。
 娘が試験で高得点をとったから帰る、と言ってぼや騒ぎになった事もある。
 むろん、それらが僕にとっても会社にとっても決して
 いい事ではないとわかっているので、部長も部長なりにそれを許さない。

 そのやり取りを見てきた他の社員たちの間では、それが
 密かな名物と扱われてる事を知ったのは、ずっと先の話だ。


(`∠´)「だめだだめだ。
     娘さんも思春期なんだからな、恋のひとつやふたつ、許してやれ」

( `ω´)「まだ娘は中学生なんですお! だから――」


.


137 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:08:42 ID:K2gJjNsYO
 


 営業課での密かな名物は、部長のデスクに掛かった一本の電話によって遮られた。
 部長は何度か肯いていると、急に虚を衝かれたような顔をして、
 興奮して肩で息をする僕をじろじろ見て、電話を切った。

 先ほどまで威厳に満ちていた部長の顔は、なぜか途端に蒼くなっていた。
 そんな顔色で向かい合われるため、僕も自然と興奮は醒めていった。

 立ち上がってデスクから上体を乗り出しては、脂汗に頬を伝わせながら口を切ってきた。


(;`∠´)「お、お前の娘の名前、ツン?って言うのか?」

( ^ω^)「あ、ツンってのは『ツンツンしてる』ってところから
      僕がつけた愛称ですお。本当はレイって言いますお」


 それを聞いた部長は、がばっと僕の両肩を押さえてきた。
 「今から言う話を、よく聞け」とまで言ってくるので、
 先ほどまでの興奮など、既にどこかに飛んでいっていた。


(;`∠´)「その子が、交通事故に遭って、病院に運ばれた」


( ^ω^)





( ^ω^)「――――え?」


.


138 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:09:59 ID:K2gJjNsYO
 


 気が付くと、早退の許しも貰わないまま、その場を駆けだしていた。
 デスクの上に置いていた鞄を乱暴に拾い上げて、社員を退かすように。


(;`∠´)「ヴィップ総合病院だ!」

 去り際に部長のその一言だけを聞いた後は、僕の聴覚は機能していなかった。
 心臓が爆発しそうな程高鳴り、鼓動は決して止むことはない。
 日頃の運動不足が祟って足の節々が悲鳴を上げるが、それ以前に痛覚など存在していなかった。

 エレベーターでは遅い。非常用の階段を四段も五段もとばして駆け下りていく。
 屋外に取り付けられた非常階段を使って初めてわかったのだが、外では雨が降っていた。
 天の神様がバケツの中身でもひっくり返したのか、信じられない程の豪雨だった。

 空は黒い雨雲が覆っており、今が正午などと聞いて誰が信じるものか。
 昼である事すら疑わざるを得ない悪天候が、同じく心の中が悪天候である僕を迎え入れた。



.


139 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:11:17 ID:K2gJjNsYO
 


 だが、雹のように強い雨が頭を叩こうが、鞄で雨を避けようなどとは思わなかった。
 せっかく贅沢して買ったスーツは、そんな事など微塵にも思わせない程に雨に濡れてしまっている。

 足場が塗れたせいで、滑りやすくなっている。
 手摺りを掴んで、転ばないように注意しなければならない。
 もし転んだりして、病院への到着が一瞬でも遅れては、元も子もないからだ。

 僕が早くに到着しようが遅くに到着しようが、結果に影響は生じないのに。
 ただ、先を急ごうという考えしか、脳裏には浮かばなかった。


( ;゚ω゚)「ッ! タクシぃぃぃ!」

 エレベーターなんかよりも相当速く下りたであろう僕は、すぐに道路に飛び出した。
 なんの偶然か奇跡か、そこをタクシーが通りかかった。
 先客を送った帰りなのか空いていたため、言うまでもなくそれに食らいつく。

 窓を何度も殴ると、漸く運転手は応じた。


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140 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:13:31 ID:K2gJjNsYO
 


 窓が下りてきて、運転手の声が聞こえる。
 窓を殴られた事で、怒っているようだった。
  _
(#゚∀゚)「なんだよてめぇ! 割れちまうじゃねーか!」

(#゚ω゚)「うっせーお! とっとと乗せろお!」
  _
(#゚∀゚)「まずは詫びれやァァッ! サツ呼ぶぞ!」

(#゚ω゚)「御託はいいからさっさと僕を乗せろお! ヴィップ総合病院だお!」
  _
(#゚∀゚)「……っ、てめ……」


 逆上させてしまい、逃げられるか。
 はっと、そんな思考が浮かんだ時だ。

 運転手は、急に顔から怒りを消して、真面目なそれになった。
 数秒の間、地面を叩きつける音が二人の間を通っていたあと、
 運転手は怒りを鎮めた声で静かに言った。
  _
( ゚∀゚)「……ヴィップ総合病院だと?」

( ゚ω゚)「―――お?」
  _
( ゚∀゚)「…………乗れ」


 僕が答える前に、後部座席の扉を開いた。
 顔を見て、その通りだと判断したのだろう。
 一瞬なにが起こったのか状況判断が追いつかず、ぽかんとしていた。
 運転手の冷静な声が、僕の意識を現実に引き戻してくれた。
  _
( ゚∀゚)「違うのか? じゃあ置いてくぞ?」

( ゚ω゚)「……あ……。あ、ああ……?」


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141 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:15:49 ID:K2gJjNsYO
 


 僕が答え渋っているうちに、タクシーが引っかかっていた
 信号が青になり、後ろからクラクションが聞こえた。
 それで僕は漸く正気に戻り、急いでタクシーに乗り込んだ。
 雨で全身が濡れていたため、座席が雨水で滲む。

 扉を閉めると同時に、タクシーはゆっくりと動き始めた。
 この運転手は、客がいないと勝手に曲を流すようで、車内はポップソングが流れていた。
 まるで僕が居ないものだと思っているのか、陽気に音楽に合わせて歌ってまでいる。

 メーターは回っていない。

  _
( ゚∀゚)「夢を~乗せてぇ~、走る~車道ぅ~√」

(;^ω^)「お、おい、メーター回ってないお?」
  _
( ゚∀゚)「んだよ。文句あっか?」


 ないわけがない。
 いくらパニックに陥っていようが怒りを垣間見せていようが、
 僕も教育相当の常識は持ち合わせているのだ。


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142 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:17:38 ID:K2gJjNsYO
 

 二言目を紡ごうとすると、交差点を大きく左に曲がり、僕は遠心力で右に少しとばされた。
 規定速度ぎりぎりまでスピードが出されている。
 僕は訳がわからなくなっていた。

  _
( ゚∀゚)「客に暴言吐いちまったお詫びだよ」

(;^ω^)「で、でも座席濡らしちゃったお。おあいこだお!」

 すると、運転手は溜息を吐いて、「やれやれ」と言った。
 その間にも、ポップソングは流れている。
 聞き覚えがある曲だったが、タイトルまでは知らない。

 その歌が佳境に入ろうとした時、運転手は答えた。


  _
( ゚∀゚)「運ちゃんは運ちゃんらしく、な」

(;^ω^)「お……?」
  _
( ゚∀゚)「十五分もしないうちに着くだろうよ。それまで、服装でも整えてろ」


 はっとしてスーツを見ると、見事なまでに乱れていた。
 襟は折れ、ネクタイはずれている。
 湿ったスーツの肌に抱く嫌悪感に構うことなく、直していった。

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143 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:19:18 ID:K2gJjNsYO
 


 タクシーの窓は、六面全部が雨水で覆われていた。
 ワイパーが拭ってくれるフロントガラスでさえ、辛うじて前方がすぐ見える程度だ。

 ポップソングにも負けないほどの雨音が、鼓膜を刺激する。
 その雨音がリズムを刻む事で、漸く自分の現状を見つめ直せるほどに落ち着けてきた。


( ^ω^)「……」

(  ω )「………ツン……」


 両手の指を絡ませ膝の間に置き、屈んだ。
 目を瞑って、全身に力を籠め、娘の無事を祈った。
 世界で一番愛する娘、レイの、無事を。


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146 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:43:16 ID:K2gJjNsYO
 







 レイの存在は、僕の中に存在する様々な物の中で、一番だった。
 彼女のために仕事も自然と身につき、係長にまで昇進できたと言っても過言ではない。



 レイが小学一年生の時、クールが私事で忙しくてどうしても授業参観に参加できないという事があった。
 慣れてきた学校生活に初めて親が見に来るという、子供にとっては遠足に並ぶ一大行事と見ていいだろう。
 そんな一大行事に母が出られないと知って、レイは顔をしわくちゃにして泣いていた。

 その時、僕はなんの躊躇いもなく会社から休みを貰った。
 かなり強引に言い寄って、馘首に処される覚悟すら持ち合わせて頭を下げた。
 丁度その辺りから、部長は僕のことをある意味において骨のある奴だと見込んでいたらしい。

 そして、クールの代わりに僕が授業参観に出席する事になった。
 小学生のレイが受ける授業は実に初々しくて、見ているだけで頬が緩んだ。
 むろん、他の保護者は全員母だったため、唯一の父だった自分は浮いていた。
 頬を緩めるたびに隣の人に嫌な顔をされたが、別段気にしなかった。

 だが、レイの方はどうだろう。
 女性が集うなかで、自分の保護者だけがこのようなむさ苦しい男だと、苛められやしないか。
 僕が来てしまったせいで、築かれたばかりの友人関係が破綻を迎えるのではないか。
 不安に駆られつつもレイを見守っていると、そのレイは隣の席に座る
 女の子と会話をしては、こちらに振り向いて、恥ずかしげに手を振ってくれた。

 大声で「見てるお、ツン!」と応じたかったが、必死でその衝動を抑えた。
 にこやかに笑み、手首だけでちいさく手を振った。
 自分が来てしまった事にはレイは全く気にかけていない、むしろ心から
 喜んでくれていたようで、僕も心の底から「来てよかった」と思っていた。


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147 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 20:57:38 ID:K2gJjNsYO
 



 レイが小学二年生になって随分経った頃、レイの動きがややおかしくなっていた。
 僕は早くに会社から帰宅すると、真っ先にレイに「ただいま」と言って抱き上げる。
 高く抱き上げられてはしゃぐレイの姿は、幼稚園児の頃から変わらぬ様子で、仕事で疲れた僕を癒してくれるのだ。
 普段ならそれにあわせてレイも「ただいま」と言ってくれて、たまに頬にキスをしてくれる時もあるのだ。
 その直後、視界が真っ白になって倒れ、クールに迷惑をかけたのはいい思い出である。

 そんなレイが、よそよそしくなっていれば、僕もすぐに気が付くだろう。
 「ただいま」と言おうとしても、ちょこまかと走って逃げ出すのだ。
 最初はかくれんぼのつもりかと思って、僕も彼女のスピードに合わせ追いかけていた。

 だが、レイにかくれんぼのつもりなど毛頭なかったようで、捕まえると泣き喚いたのだ。
 僕もびっくりして、慌てて手を離し、謝った。
 だが聞き入れる様子もなく、泣いたまま自分の部屋に帰っていった。

 加齢臭でもするのか、または父を嫌う年頃になったのか。
 とにかく、泣き喚くとは余程僕が嫌だった、ということだ。
 そう思うと、僕はショックで会社も休み寝込んでしまった。

 そろそろ気疲れもひいてきたか。
 レイに嫌われたのは仕方がないとして、明日からは仕事に行こう。
 そう思った日の晩、寝室にレイがやってきた。
 後ろの方では、クールがにやにやとレイを見つめている。

 どうしたのかと思って布団を蹴り上げ上体をがばっと起こすと、レイの両手が背中に回されているのがわかった。
 「どうしたお?」と控えめに聞くと、一メートル程にまでレイ迫ったレイが、色紙を渡してくれた。
 クレヨンで、歪ながらも色彩のきれいな絵が、描かれてあった。
 僕とクールがレイを挟むように手を握った絵だった。

 そして、言われた言葉で僕ははっとカレンダーを見た。
 照れを隠しながら放たれた「……お、お誕生日おめでとう……?」、という。
 聞くと、絵のプレゼントがばれないように、ここ数日は僕を避けて過ごしていたと言うのだ。


 僕が、初めて娘に泣かされてしまった日だった。


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148 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:00:38 ID:K2gJjNsYO
 


 子供の成長は速いようで、五年生になっていたと気づいたのは丁度夏休みになった頃だった。
 僕の中では、まだレイは幼稚園に通っている印象だったというのに。
 それが、すっかり大人びてきて、クールとガールズトークをする日が増えてきていた。

 また同時に、この頃から僕を罵りもし始めた。
 父親を煙たがるというのは思春期特有の思想のため、別段気にしていなかった。
 寧ろ、健全に成長しているとわかり、嬉しく思えた。

 そんなある日だ。
 レイが、母であるクールと喧嘩をした。
 服が欲しいとねだるのを、クールが叱ったのだ。
 服を買っては三日で飽きて、すぐ新しい服を欲する。
 それを叱るのは、親として当然の事だ。

 レイは、部屋でひとり、肩を震わせているらしい。
 事情をクールに聞いたところ、彼女も「言いすぎたかもしれない」とぼやいていた。
 娘を溺愛するばかりに叱れない僕の代わりに、基本的に躾は母のクールがしていた。
 女の子を母親が躾するのはよくある話だが、クールにとってもレイは大切な娘のため、落ち込んでいたようだった。
 ここでほったらかしていては、レイにとっても教育上よくない。

 レイの部屋をノックして、「入るぞ」と一言断ってから入った。
 室内は明かりがひとつもなく、桃色の壁紙やかわいいぬいぐるみはどれも見えなかった。

 部屋の隅で、声を殺して泣いているレイ。
 彼女を見て、少し胸が苦しくなったが、押し堪えて歩み寄った。
 振り向きもせず「出て行って」と言うレイだが、そういうわけには行かない。

 肩に手をおき、話を聞こうとした。
 しかし、〝嫌いな〟父親と話をするのが嫌なようで、レイは喚きだした。
 置いた手を振り払い、逃げようとする。
 ついでに、力なく蹴ってきた。

 その騒動を聞きつけたクールが、廊下を伝ってやってこようとする。
 その前に、僕の怒声がクールを、そしてレイを制止した。


 はじめて、僕がレイを叱った時だった。


 ぼろぼろと泣き出すも、最終的にはレイも反省し、クールに泣いて謝った。
 謝ったのを見て、僕もレイを抱きしめたのを覚えている。
 大声を出してすまなかった、と何度も言ったのを覚えている。


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149 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:03:39 ID:K2gJjNsYO
 


 気が付けば、中学生という、最も大人に近づく歳になっていた。
 僕の脳内のレイがランドセルを背負っている間に、本物のレイはブレザーに身を包み、桜並木を歩いていたのだ。
 僕の後ろでクールとレイが歩いて、中学への緊張を親子揃って顔面一面に張り巡らせている。

 一旦歩みを止めて、写真を撮ることを提案した。
 レイは当然のようにかぶりを振り罵倒するが、土下座をして地面に額を擦り、
 スターバックスのコーヒーを奢ると約束すると、呆れつつも渋々応じてくれた。

 僕に娘に対するプライドなどなく、許容されてはただ気分の昂揚が収まらなかった。
 呑みにいくのを我慢して、こつこつ貯めて買った一眼レフが役に立つ日がきたのだ。

 高ぶる鼓動を宥め、一本の桜の木を背景にレンズを向けると、レイは途端に慌ただしくなった。
 「どうしたお」と問うと、レンズの映す世界から離れて、クールの手をひいてきた。
 戸惑うクールを尻目に、「やっぱ、撮るならおかーさんと一緒に……」と言ってきた。

 クールは微笑するが、まずはレイ一人の写真を撮りたかったので、
 スターバックスのコーヒーに軽食もつけると言って、半ば強制的に撮った。
 桜を背景に、同じく頬も桜のように染めるレイの写真は、今でもアルバムの一ページに収まっている。

 あの時の、恥じらったレイの写真も、大切な宝物だ。


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150 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:07:04 ID:K2gJjNsYO
 


 中学二年生という、中学校生活が最も楽しいであろう年頃に、またも事件が起こった。
 レイは短距離走を専門に、陸上部に所属するのだが、それを辞めたいと言い出したのだ。

 小学生の頃から、運動会には毎年参観に向かっているためわかるのだが、レイは足が速く、運動神経はいい。
 先生の推薦もあって、レイは陸上部に入ったのだ。
 その陸上部での生活は、一年の頃は円満だったようだ。
 好記録も残すし、走るのが楽しい、と毎日の夕食時にクールに言っていたのを覚えている。

 それを辞めたいと言った理由は、ずばりその記録の事だった。
 まわりが徐々にうまくなっていくのだが、自分だけが取り残されていき、ついに記録を抜かされた、と。
 自分が出るはずだった大会を、後輩に奪われた、と。

 クールは学生時代、運動部に入らなかったため、レイの苦痛がわからず、どう慰めればいいかわからなかったらしい。
 仕事から帰ってきた僕は、机の上に置かれた親の判のない退部届を一目見て、どうしてか怒りを感じた。

 僕は中高続けてラグビー部に所属していた。
 練習してもうまくならない自分を嘆き、何度も退部を考えた。
 だが、それを諦めなかったからこそ、大将まで上り詰める事ができた。

 レイが「練習してもうまくならない」だの、「後輩にまで抜かれてしまった」だのと
 遁辞を並べていくため、ネクタイを外すのも忘れ、途端にレイを怒鳴った。
 自分がそうだったから、という我ながら情けない理由でだが、この時は自分を抑えられなかった。

 当然、レイも年頃だし、言い分だってある。
 「親父と一緒にするな」「男と女は違う」などと。
 レイは涙目で、泣き顔で、鼻水だって拭かずに、僕に食いかかってきた。

 レイには譲れない想いっていうのがあるだろうし、
 僕にも譲れない想いっていうのがあるのだ。


 この日は、レイとはじめて、真っ向からぶつかった日だった。


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151 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:08:54 ID:K2gJjNsYO
 







  _
( ゚∀゚)「着いたぜ」

(; ω )「ッ!」


 レイの無事を祈って目を瞑っていると、自分が知る限りのレイの半生を振り返っていた。
 笑っていたレイ、泣きじゃくるレイ、怒っているレイ、照れているレイ。
 目を閉じた僕の、瞼の裏で確かにレイは生きていた。

 彼女はなめらかに動いているし、雨音やポップソングに混じってレイの声が聞こえてくる。
 そんなレイが、自分より先にいなくなるなんて、考えられない。

 そう思っているうちに、ヴィップ総合病院に着いたようだった。
 扉が開いて、豪雨が地面を叩く音が車内に響き渡る。


(; ω )「……ありがとうだお。金だお」
  _
( ゚∀゚)「俺の詫びだっての。金はいいから、行けって」


 運転手の声は、こちらの事情を知ってか知らずか、どことなく曇っている。
 自分で言うのもあれだが、我が家は裕福ではない。
 まけてくれるならその言葉に甘えるのが普通だった。

 だが、今日に限ってはそうではなかった。
 この運転手には、金を払っておきたかったのだ。


(  ω )「そうかお。じゃあお言葉に甘えるお」
  _
( ゚∀゚)「おう」


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152 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:10:32 ID:K2gJjNsYO
 


 そして、タクシーを降りて、去り際に座席の上に札を置いた。
 間髪入れずに、僕は扉を閉める。

 窓の向こうで、運転手が戸惑っているようだった。
 助手席の窓を下ろして、声をかけてきた。

  _
( ゚∀゚)「いいって言ってんだろ?」

(  ω )「それは運賃じゃないお」
  _
( ゚∀゚)「へ?」

(  ω )「………」

( ^ω^)「……ただのお礼、だお」
  _
( ゚∀゚)「あ、ちょ――」


 運転手の制止を聞く前に、僕は礼を言いながらタクシーから逃げるように去った。
 病院の自動扉をこじ開け、濡れたスーツの事など気にも留めず、夢中で駆け出す。
 受付カウンターに向かい、レイの搬送された場所を聞いた。

 受付嬢は戸惑っていたが、全身びしょ濡れの姿、そして
 圧倒されるような僕の眼を見てか、怯えながら答えた。
 集中治療室にいる、と。

 それを聞いた僕は、礼を言って再び駆けだした。
 息が切れる事などない。
 ただ言われるがまま、その部屋まで階段を使って走っていった。


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153 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:12:21 ID:K2gJjNsYO
 

 言われた階に着くと、その廊下のずっと先に、椅子に座っている女を視認した。
 屈んでいるせいか、濡れそぼった髪が垂れている。
 言うまでもなく、それが妻のクールだ、とすぐにわかった。

 廊下を歩く患者や看護師を突き飛ばすように、走って彼女のもとまで向かった。
 彼女は顔を手で覆っているため、その様子は窺えないが、声を殺して泣いている事はわかった。

 僕と喧嘩した時も、プロポーズしたときも、親が亡くなった時でさえ泣かなかった彼女が、泣いているのだ。
 とうとう、僕も事の重大さを掴めてきていた。

 同時に、今まで無茶して走った分の反動が一気に襲いかかってきた。
 息が切れ、心臓が太鼓のばちで叩かれている。
 肺が破裂しそうな程酸素を吸い込み、血の味を伴いつつ二酸化炭素を吐いた。

 それを三回ほど繰り返して、漸く落ち着けた僕は彼女の隣に座った。
 震わす肩に手をかけ、自分がきた事を伝える。
 はっとした彼女は、顔を手で覆うのをやめ、こちらを見た。
 随分と泣いていたようで、目が真っ赤になり、髪が貼り付いている。


( ^ω^)「……クー」

川 ; -;)「……ッふ……、……ぅ…」


 嗚咽を漏らし、僕に抱きついてきた。
 愛の抱擁ではない。
 今まで、ずっと独りでここにいたため、孤独に耐えられなかったのだ。
 僕も、そっと抱きしめる。彼女の冷ややかな体温が、濡れたスーツ越しに伝わってきた。


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154 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:15:15 ID:K2gJjNsYO
 


 背中をさすり、彼女を宥める。
 普段冷静な彼女が、ここまで取り乱すとは思ってもみなかったのだ。

 数分ほどして、嗚咽は止んだ。
 だが、その後十分程は、ずっと僕を抱きしめていた。


川 ; -;)「……」

( ^ω^)「落ち着いたかお?」


 少しして、クールはゆっくり肯いた。
 震えながら、僕の背中にまわしていた手をひいた。
 話ができるようになったみたいなので、僕も聞きたかった事を尋ねた。

(  ω )「教えてくれお。交通事故って……何があったんだお?」

川 ; -;)「………」

川 ; -;)「電話のあと……ツンが『親父が来る前に早く行こう』って言って……」

川 ; -;)「カレシさんと……二人で手を繋いで家を出て……」


 そこまで言って、口を閉ざした。
 まあ、そこまで聞かされれば自ずと続きは見えてくる。

 走って飛び出したため、自宅前か、近くの交差点かで轢かれた、と。
 事態を聞きつけたクールが、そのレイを見て――



( ^ω^)「わかったお」

川 ; -;)「あ、頭から、ち……血が……」

(  ω )「……わかったから、言わなくていいお」

川 ; -;)「……ん」


.


155 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:16:46 ID:K2gJjNsYO
 


 この時、僕が平常を保っていられたのは、隣に泣きじゃくるクールがいたからだ。
 彼女がいるから、自分まで取り乱してはどうすると思えて、冷静でいられる。
 もしクールがいなかったら、この点滅する赤いランプの下の扉を、叩き破っていただろう。

 それほど、大変な事態だった。



 そのまま、静かな時間が流れた。
 早くレイの無事を確認したいのに、いくら待てど、時計は思っていた分の半分も針は進んでいない。
 じれったく思い歯噛みするも、そのたびに僕の手を握っているクールが、ぎゅっと力を籠める。

 僕も彼女も、気持ちは同じなのだ。
 それを共有しあうことで、なんとか待つ事はできた。
 そろそろか、というタイミングで、僕はある事を思い出した。

 さっと横を向いて、肩に頭を載せるクールを見る。
 随分と疲れたのだろう、このままでは寝かねない勢いだ。
 そんな彼女を起こすのは気が引けたが、肩を揺すって起こした。


川 ゚ -゚)「……なに?」

( ^ω^)「その、ツンのカレシって……事故の際、どうなったんだお?
      ここにいないみたいだけど……」

川  - )「……」


 それを聞くと、クールは目を伏せ、黙った。
 その彼氏とやらも轢かれたのか、と思った時だ。


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156 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:18:54 ID:K2gJjNsYO
 


川  - )「………ツンが轢かれたのを見て……」



川  - )「……逃げた」



( ^ω^)



 僕のなかの何かが、切れた時だ。


 目の前の扉の上に取り付けられていたランプから、赤い明かりが消えた。
 それに気づいたクールが立ち上がると、扉がゆっくり、少しだけ開かれた。

 なかから、緑色の服を纏う女性が現れては、僕の顔を見て


从 ゚∀从「……レイちゃんのお父さん、ですか?」

( ^ω^)「………はい」


 その声色を聞いて、僕の思考回路は鈍りはじめていた。



从 ゚∀从「私たちは、持てる限りの力を尽くしました。
      その甲斐あって、一命は取り留めました」

川 ゚ -゚)「ッ!」


 クールが女性に飛びついた。
 僕も、顔を綻ばせて、立ち上がった。

.


157 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:20:36 ID:K2gJjNsYO
 



 だが



从 ∀从「――取り留めたのですが……」

川 ゚ -゚)「……?」


 クールが、女性に触れた手を引く。
 その手を自身の胸の前に持ってくる。

从 ゚∀从「お母さんの迅速な通報に、応急処置。
      考えられる限り、万全の状態で搬送されました」

从 ゚∀从「ですが……打ち所が非常に悪く、出血の量も洒落じゃない……」

从 ∀从「………生命状態が非常に不安定で……恐らく、保って今日限りの命です……」

从 ∀从「全力は……尽くしたのですが……ッ」


( ^ω^)

川 ; -;)「そ……そんな……ッ!!」


 女性が静かに言い切ると、クールがすがりついた。
 日頃のドライな性格など二の次、自我を崩壊させたクールが、必死に問いかけている。
 「まだなんとかなるのでは」「金ならいくらでも出す」「何年とかかってもいい」などと。
 だが、女性はそれ以上は言わず、駆けつけてきた看護師の人に宥められた。

 僕は、ただ固まっていた。



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158 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:22:11 ID:K2gJjNsYO
 







 レイの顔は、顔だけは、無傷だった。
 神様がかけてくれた、たった一つの慈悲だったのか。
 静かに目を瞑り、頭の包帯さえなければ、寝息をたてる天使にしか見えない。

 だが、その天使の羽は、もがれたようだった。
 羽をもがれ、墜落し、頭を打った。
 そのせいで、この天使が空を飛ぶことは、なくなった。

 ならば、その羽をもいだのは誰か。
 墜落するきっかけをつくったのは誰か。
 籠の中に入った「ブーン」を見下ろしていると、それがわかった。


川 ; -;)「ツン! ツン! レイっ!!」

( ^ω^)「………」


.


159 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:23:13 ID:K2gJjNsYO
 


( ^ω^)「……僕が」

川 ; -;)「…?」

( ^ω^)「僕が、いけなかったのかお……?」

( ^ω^)「急いで帰るとか……追い返せとか言うから……
      二人は周りを見ずに飛び出して……」

( ^ω^)「それで……轢かれたのかお?」

川 ; -;)「……違う。ブーンは…、悪くない」




( ^ω^)「あの時……素直に、レイの幸せを受け入れてあげていたら……?」

( ^ω^)「僕が……余計なことを…言わなければ……?」

(  ω )「…………僕が……エゴを……見せてなかったら……?」






.


160 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:26:44 ID:K2gJjNsYO
 







 目に溜まってきた涙を拭って、話を続けた。
 長いこと、思考に耽っていたようだった。


( ^ω^)「……そんなツンを……いや」

( ^ω^)「……レイを亡くして……三日三晩、悲しんだお」

( ^ω^)「会社もやめて……自棄になって暮らそうかと思ったとき」


 横目で、ビデオライブラリーに視線を遣る。
 今はクールに根刮ぎリビングに持って行かれ、棚には埃程度しかないが、
 その跡からして数え切れない程のビデオがあったことが、わかるだろう。


( ^ω^)「ふと、ビデオがある事を思い出したお」

( ^ω^)「僕が、執拗に彼女につきまとって撮影した、ビデオを。
      どれほど罵倒されたか……。まあ、あのコの罵倒は言わば天使の囁きだけど」

 軽く苦笑する。
 半ば罵られたくて撮ったようなものなのだ。


( ^ω^)「傷心のまま、何の気なしにビデオを再生した途端――生きる気力が、満ち溢れてきた」

川 ; -;)「……」

( ^ω^)「レイの笑顔。泣き顔。怒声。暴力。照れ隠し。
      そのどれもが、僕に元気を分けてくれた」

( ^ω^)「あの子は、やっぱり凄いお。
      いなくなった後でも、その存在を確かなものにしてるんだから」

川 ぅ -;)「……」

川 ゚ -゚)「………」


.


161 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:28:30 ID:K2gJjNsYO
 


( ^ω^)「どんな栄養剤やマッサージチェア、温泉なんかよりも
      元気を分けてくれる、まさに魔法のようなビデオ」

( ^ω^)「それを、観るなと言われちゃ……」

(  ω )「……もう……僕はおしまいだお」



 最後に、聞こえるか聞こえないか程度の声で、呟いた。
 どれもが本心で、心の澱みを吐ききった気分だった。

 生前のレイの姿に、何度助けられたか。
 四肢の指を全部使っても当然足りやしない。
 それこそ秒単位で元気づけてもらってきたのだから、足りる筈がない。

 涙を拭ったクールは、再び横座りの姿勢になった。
 じっと僕を見つめ、瞳の奥まで見透かしている。


川 ゚ -゚)「………君がビデオに執着する気持ちは、わかると言ったとおりだ」

川 ゚ -゚)「だが、ブーン。君はひとつ勘違いをしている」


(  ω )「………」

( ^ω^)「へ?」


.


162 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:29:39 ID:K2gJjNsYO
 


 虚を衝かれたような顔をして、クールと向き合った。
 何を勘違いしているのか、と思ったのだ。
 僕が先を促すまでもなく、彼女は続けた。

川 ゚ -゚)「私がビデオを極力観ないよう言ったのは、なにもビデオに執着する
     君の姿を見ていられなくなった、だけではないという事だよ」

( ^ω^)「?」


 言っている意味が未だよくわからず、首を傾げる。

 すると、両手を床について、少し身体を寄せてきた。
 その行動を見ても、ますますわからない。


川 ゚ -゚)「……その、なんだ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「今日の昼に診てもらってわかったのだが……」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……」


(;^ω^)「ど、どうしたお?」


.


163 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:30:53 ID:K2gJjNsYO
 


 クールはそれを言ったきり、もじもじとしだした。
 視認するのが難しい程に顔を少し赤らめている。
 視線が俯き気味になって、唇が泳いでいる。

 また少し、こちらに身を寄せてきた。
 吐息がかかりそうな距離で、ぐいっと顔を近づけ、漸くクールは重い口を切った。


川 ゚ -゚)「こ、こういう時は顔を赤らめるべきなのか……?」

( ^ω^)「なにさ」

川 ゚ -゚)「……子供が……だな………」

( ^ω^)「へ?」

川 ゚ -゚)「……」

川  - )「…………」

川* _ )「……だ、だから、子供が……デキたって言ってるんだ!」


 クールが照れながらも言った言葉。
 それは、僕に三度ほど自問させた言葉であった。


( ^ω^)

( ゚ω゚)

( ^ω^)

( ゚ω゚)

( ^ω^)



( *^ω^)「ほ、本当かお!?」


.


164 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:32:38 ID:K2gJjNsYO
 


 両肩に手をかけ、クールの顔を覗き込んだ。
 何を恥じらう必要があったのか、僕にはわからない。

 彼女の細い躯を前後に揺らす。
 恵まれないと思っていた子宝が、漸く恵まれたというのだ。
 すると今の恥じらいはなんだったのか、途端にいつもの
 彼女に戻ったクールは、手を払いのけて続きを言った。


川 ゚ -゚)「というわけだから」

川 ゚ -゚)「いつまでも、過去の悲しみを引きずっているようでは、
     産まれてくる子供に迷惑がかかる。更なる悲しみが生まれる」

川  - )「……だからこそ、執着心が取り払えないようなら――」



 クールは次なる言葉を紡ごうとしたが、それは叶わなかった。
 そうなったのは、彼女の意思ではない。

 嬉しさのあまり、つい彼女の口を口で塞いでしまったのだ。
 しかし、下心など全くない、純粋に愛を伝える接吻だ。

 愛の結晶が、愛を生む。
 それは至極当然の話だ。

 だが、クールにとって僕の行動は意外中の意外だったそうだ。
 顔を真っ赤にして、身をひいてきた。
 まるで汚物を見る目で僕を見ている。



川;*゚д゚)「―――ッ!? っ!?」

( *^ω^)「よくやったお! 諦めなかったのが報われたんだお!」

( #)ω(#)「ふぎゃ!」


.


165 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:34:12 ID:K2gJjNsYO
 


川;*゚ -゚)「い、いきなりなんだ変態!」


 さすがに調子に乗ってしまったのか、クールの鉄拳が顔面に埋まるのはすぐだった。
 痛いが、今はそんなのまるで意に介さない程に、胸中は嬉しさで満ち溢れていた。
 そして、ああ、やっぱりレイの母親だな、と実感した。

 同時に、クールの今までの禁止令の意図も、わかった。
 いつか来るであろうこの日に備えて、の下準備だったというのだ。
 すっかり、天にまで昇る気になっていた。


( *^ω^)「炊事洗濯散歩に掃除、なんでもばっちこいだお!
      クーは赤ちゃんのために身体を休めるお!」

川 ゚ -゚)「そ、そこまで言うならお言葉に甘えて――」


 クールは僕を押し退け、立ち上がった。
 数歩下がって、金具が壊れ凹んでいる扉を指さした。

 ―――? 扉が、壊れている?




.


166 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:36:08 ID:K2gJjNsYO
 


川 ゚ -゚)「これ、自力で修理してください」

( ^ω^)



( ;゚ω゚)「―――ッ!? え、僕知らないお?!
      クーが壊したんじゃないのかお!?」

川 ゚ -゚)「あら、もう約束破るのですか?
     お腹の子に見られないかしら」

( ;゚ω゚)「卑怯だお! せめて修理代は家の方で!」

川 ゚ -゚)「高いんだよな、修理屋さん」

( ;゚ω゚)「じゃあ材料費! それくらいは出してくれお!」

川 ゚ -゚)「毎月のお小遣いから少しずつ減らせば、間に合うでしょう」

( ;゚ω゚)「そ、そんなのって――――」





  「そんなのって、あんまりだおォォォォォォォォォォォォッ!!!」





.


167 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:36:28 ID:K2gJjNsYO
 















.


168 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:38:19 ID:K2gJjNsYO
 








 体内時計という、人間のひとりひとりが持つそれは、実に不安定だ。
 心臓の鼓動で発条が巻かれ、それに応じて幾つもの歯車が廻る。
 それらの歯車は完全に不安定なもので、一秒単位で歯が削れ
 示し出される時計が狂うのだから、堪ったもんじゃあない。

 十九年前の悲劇からの二年間は、歯車の表面の油が乾ききり、実に針が進むのが遅い二年間だった。
 発条が巻かれる速度も極端に遅く、おかげで精神的に参ってしまう日が続いていた。

 何度手首を切ろうか、とか。
 何度車にはねられようか、とか。
 今となっては「ばかげている」で一蹴りできそうな思考が、
 当時は真剣な顔をして抱けていたというのだ。

 そんな後ろ向きな思考に終止符をつけたのが、十五年前の日だ。
 その日を境に、喜びという名の潤滑油が全ての歯車の節々に注された。
 心臓の鼓動が速くなり、発条が巻かれる速度も大幅に上がった。

 そのせいか、それからの十五年間は、ジェットコースターの上から
 眺める景色よりも速く見える程、あっという間の十五年間だった。


.


169 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:40:28 ID:K2gJjNsYO
 


 二度と開かれる事はないのではないか。
 そんな風にすら思えていたこの手記だが、
 今では平常通り、このようにペンを滑らせている。

 恐らく、今の私は、世界で一番幸せに近い人間じゃないのか。
 そんな風にすら思えてくる日々なのだ。

 そりゃあ悲しい日もあるし怒る日もある。
 だが、それらを一通り包んでの、幸せなのだ。



 それを気づかせてくれたのは、他でもないレイだ。
 レイが亡くなったのは、未だに悲しい。
 しかし―――いや、だからこそ。

 天国にいるレイでさえ、見ていて噴き出してしまう程の
 可笑しな――それでいて幸せな――毎日を送れたら。

 そう思って、日々を過ごしてきた。
 それは、これからも恐らく、ずっと変わらないだろう。

 ただ、たった一つだけ変わるとすれば。
 そして、たった一つだけ、
 天国で抱腹絶倒しているに違いないレイに知らせる事があれば。





 あなたの妹は、喜び、悲しみ、照れたり、時に怒りも見せ、
 でも笑いながら、無事に、健康に育っていきました。



 そして―――





.


170 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:41:54 ID:K2gJjNsYO
 







 ――そこへ、廊下からリビングに足音が断続的に響いてきたのが聞こえた。
 はっとした私は、そこでペンを置き、手記を隠した。
 手記の事は、家族でもトップシークレットなのだ。

 ワンテンポ遅れてやってきたその子は、顔一面を焦りで埋めていた。



ζ(゚ー゚;ζ「おかーさぁん!」

川 ゚ -゚)「どうした?」

ζ(゚ー゚*ζ「私のカッターシャツ知らない?」

川 ゚ -゚)「カッター……。確か、父さんが持っていってたぞ」

ζ(゚ー゚;ζ「え゙!?」

川 ゚ -゚)「鼻を擦り付けていたから、はやいとこ取り返さないと」

ζ(゚ー゚#ζ「ぎゃああああああッ! あんの糞親父!」



.


171 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:43:28 ID:K2gJjNsYO
 





( ^っ爪c「このシャツは中学から着てるやつかお……。クリーニングに出すお……」

ζ(゚ー゚#ζ「げッ!! なに嗅いでんのよ変態!」

(;^ω^)「はッ! デレ、このカッターシャツはだめだお! 新しいの着なさい!」

ζ(゚ー゚#ζ「なんで替えなくちゃだめなのよ! いいから早く返して!」

(;^ω^)「こんな〝色〟がにおうシャツ、おとーさんは許さないお!」

ζ(゚д゚;ζ「それは体臭――って言わせんなぁぁぁッ!」

( ;゚ω゚)「のわッ! かーさん、デレが反抗期!」

ζ(゚ー゚;ζ「返せ返せ!」

川 ゚ -゚)「朝ごはんできたけど」

(;^ω^)「助け――今朝はなにかお?」

川 ゚ -゚)「小籠包」


.


172 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:45:23 ID:K2gJjNsYO
 


( ^ω^)「え」

( ^ω^)

ζ(゚ー゚*ζ「いただきッ!」

( ^ω^)

(;^ω^)「あ゙! こら、返しなさい!」

ζ(゚ー゚;ζ「誰が返すかターコ!」

ζ(゚ー゚*ζ「おかーさんも、早く着替えて!」

川 ゚ -゚)「はいはい」

(;^ω^)「そのシャツはだめ――僕は?」

ζ(゚ー゚;ζ「だぁーッ! 親父も来たきゃさっさと着替えて!」

川 ゚ -゚)「といっても、もう式まで十五分ないぞ」

ζ(゚ー゚;ζ「ひぇ!? もーだめ、遅刻するぅ!」

  「着替えぇぇぇぇ!!」



川 ゚ -゚)「……行っちゃった」

(;^ω^)「……シャツ……」

( #)ω(#)「ぷぎ!」

川 ゚ -゚)「朝から下品なんだから」

(;^ω^)「だって、あのシャツ着るとけしからん野郎どもが――」

川 ゚ -゚)「ったく、少しくらいおとなしくしてくださいよね」



.


173 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:46:31 ID:K2gJjNsYO
 


川 ゚ -゚)「せっかくの高校入学式なんだから……」

  ζ(゚ー゚;ζ≡「おかーさんこのブレザーってどう着るのぉ!?」

川 ゚ -゚)「はいはい。教えるから走りなさんな」

(;^ω^)「おおう……」






    ―――そして


      あなたがなれなかった、高校生になりました。





.


174 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 21:48:40 ID:K2gJjNsYO
 





   ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです



           おしまい





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ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その2 

56 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:26:38 ID:8EOsmnGwO
 







 午後のワイドショーも見終え、洗濯物を取り込んでいた。
 この間まで続いていた梅雨の残り雨が、漸くあがったのだ。
 ためにため込んだ衣類を、毎日洗濯機をフル稼動させて洗ってゆく。
 明日で丁度洗濯物がなくなりそうだ。


川 ゚ -゚)「よし」

 全部取り込み、ふと空を見上げた。
 徐々に茜色に染まりつつある空には、雲一つ無かった。
 私に言わせてみても、これは清々しいことだった。


 私は、雨が嫌いだった。
 特に、梅雨明けに降る雨が。

 嫌な思い出が心の底に巣くっており、雨の度にそれが浮かんでくるのだ。
 だが、今の空を見て、沈んでいた心もすっかり晴れ上がっていた。

.


57 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:28:00 ID:8EOsmnGwO
 

川 ゚ -゚)「早いうちに米を研いでおくか」


 誰に言うでもなく、呟いた。
 最近は歳のせいか独り言が多くなってきつつある。
 孤独を直接真正面から受け入れられず、紛らわすために呟くことが多いのだ。

 今晩は献立を何にしようか。
 米を研ぎながら、考えていた。

 小籠包なら朝にだしたから、これでは芸がない。
 米を研いでいるうちに浮かんでくると思ったが、結局思いつかないまま研ぎ終えた。
 炊飯器にセットして、予約をいれておいた。

 思いつかないなら、仕方ないのだ。


川 ゚ -゚)「困ったな。もう納豆でもいいかな」

.


58 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:31:59 ID:8EOsmnGwO
 


 悩んだ末に、冷蔵庫の中身をもう一度確認しておこうと思った。
 さすがに、仕事帰りに納豆単品ではブーンも怒るだろう。
 前に一度した事があるのだが、ブーンは部屋の隅で体育座りしていた。

 冷蔵庫に手をかけた瞬間、チェストに置いてあったスマートフォンが鳴った。
 けたたましく響く着信音に加え、密着しているチェストのせいでバイブレーションがうるさい。
 それが、メールではなく通話の着信だったため、夕食のことなどすっかり忘れ、慌ててチェストに向かった。

 ブーンからの着信の場合、着信音はデフォルトから変えている。
 鳴ったものはデフォルトのものだったので、他人からだ、とわかった。


川 ゚ -゚)「……ん?」
 
 驚いたのは、画面に映った名前が、高校以来の旧友だったからだ。
 懐かしいものだから、電話に出る際、少しばかり緊張してしまった。
 応答すると、開口一番に、向こうから元気のいい声が飛び込んできた。
 相変わらず、無邪気な可愛らしい声だ。うるさい。


  『もしもし! もしもーし!』

川 ゚ -゚)「ぽーん。この電話は現在使われておりません。
     ぴーっという発信音のあとに、お客様の通帳と印鑑の在処を教えてきりやがれ」

  『長い! ボケが長いよ!』


.


59 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:34:28 ID:8EOsmnGwO
 

川 ゚ -゚)「しぃか、相変わらずうるさい奴だな。久しぶり」

  『先に久しぶりって言ってよ! おひさー』


 旧友のしぃは、もう四十への扉が前方に見えているという歳なのに、中学生のように明るかった。
 彼女の声が耳にきんきんと突き刺さり、受話口から耳を離した。

 そういえば、昔からこんな煩い奴だった。
 崩壊したダムのように、常に最大限放出されるテンションの固まり。
 失恋して、一時期はその可愛らしい声もかなり低くなっていたが。


川 ゚ -゚)「どうした。同窓会に出てほしいのか?」

  『同窓会なんかじゃないよ!
   ただ、久々におしゃべりしないかなー?って!』


 丁度二年ほど前に、高校時代の面々で行う同窓会のお知らせが届いたことはあった。
 しかし、ブーンも私も、全く参加しようと思う気はなかった。
 二年の歳月を経て、再び催促をしてくるのか、と思ったが、違うようだ。


川 ゚ -゚)「いまから?」

  『うん! 積もる話もいっぱいあるしね!』

川 ゚ -゚)「別に無理じゃないけど」


 私がそう言うと、欣々然としてしぃが喜んだ。
 電話越しでは音声が割れて聞こえるほど、高く大きな声だった。
 そのため、以後一分間は電話を切らずに卓上に放置しておいた。

.


60 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:36:03 ID:8EOsmnGwO
 

  『ちょっと! 電話ほったらかしてたでしょ!』

川 ゚ -゚)「わかってるなら聞くな」

  『ひどい!』



 一悶着を終えると、具体的な指示を出してきた。
 近くのビア・ガーデンで、二〇時くらいから騒ごう、ということだ。
 ビア・ガーデンなど、ここ数十年は行ってない。
 ちょっぴり、今夜が楽しみだった。

 だが、同時に懸念事項が浮かんできた。
 夫であるブーンの夕食を、まだ作れていないのだ。
 また、夕食を作ったところで、仕事でくたくたに疲れた夫の
 帰りをほっておくというのは、良妻のとるべき行為ではない。

 旧友との御飯をとるか、夫への尊重をとるか。
 私は、すっかり悩んでいた。
 時間にして、約二秒程。

川 ゚ -゚)「わかった」

  『じゃあ二〇時に駅前ね! ばーい!』


.


61 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:39:26 ID:8EOsmnGwO
 

 悩んだと言えば、一瞬は本気で悩んだ。
 しかし、思い返せば、昨日ブーンは連絡を寄越さずに勝手に呑みに行っていたのだ。
 それを思い出すと、別に行ってもいいやと考え、即座に了承した。

 不思議と罪悪感はまったくしなかった。


川 ゚ -゚)「……さて」

川 ゚ -゚)「良妻は忙しいのだ。次の家事を片づけようぞ」


 電話をきり、ブーンの夕食の献立も決めて、次は風呂を張り始めた。
 最近の浴槽は進化しており、自動的に温度を保てることができるというのだ。

 いつもこなしている家事を、今日もいつも通りこなした。
 平常と違っていたことといえば、久々の、しかも旧友との
 外食ということで、気分がやや昂揚していたことだ。


 彼女は、私と同様に、人を好きになると盲信的に愛してしまう節がみられる人間だった。
 ところが、面白いことに私とは性格が正反対である。
 それ故、当初はそんなに親密な関係ではなかったが、
 仲良くなるのに、思いの外そう時間はかからなかった。



.


62 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:40:43 ID:8EOsmnGwO
 







 結局、誤解を晴らせないままで、今日も一日が終わった。
 誤解のせいで、普段以上に神経をすり減らした。
 ぐったりと疲れてしまい、身体が睡眠を欲している。

( ´ω`)「ツンちゃん……」


 こんな時は、お気に入りのビデオライブラリーから一本、
 無作為に何か選んで、それをじっくり鑑賞するのがいい。
 疲れ切った身体を癒してくれるし、明日も一日頑張ろう、という気力を分けてもらえるのだ。

 だが、今になって漸く自覚したが、自分はビデオに依存しきっている。
 クールが怒るのも無理はなかったと言えるだろう。
 悪いことだ、とは一概には言えないが、良いことだ、と面と向かって言えないのも事実だ。


.


63 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:41:54 ID:8EOsmnGwO
 

 彼女は、僕が依存を振り切れるように、と精一杯のサポートをしてくれているのだろう。
 それを無碍にしないために、僕は応えなければならない。

 僕が、ビデオとの別れを決心した瞬間だった。


( ^ω^)「ただい――」

 ノブを握り、捻ろうとした。
 ここでスムーズに開いて、すぐに玄関マットに腰をかけて鞄を置き、靴を脱いでネクタイを――
 と、毎日のこの一連の行動が、一段階目にして封じられていた。

 鍵が閉まっていたのだ。


(;^ω^)「おー…?」

 時計を見ても、普段通りの時間だった。
 二日連続で帰りが遅れていたなら、鍵の理由にも大方予想ができる。

 が、今日は定刻通りの帰宅だ。
 真っ直ぐ帰り、クールの料理を食べて寝るつもりだった。
 とどのつまり、何故鍵が閉められているのか、全く見当も付かないのだ。


.


64 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:43:42 ID:8EOsmnGwO
 

( ^ω^)「寝ちゃったのかお。仕方ないお」


 クールは早寝だ。たまに、僕が帰るより前に寝ることがある。
 しかし寝るといっても、リビングのダブルサイズのソファーに横になり、
 ブランケットをかぶって仮眠をとっている程度で、熟睡ではない。

 そういう時は、決まって僕は非常用の鍵を使う。
 玄関の隣の樋の中に、非常用の鍵を隠している。
 連日の雨のせいで濡れているが、この鍵は錆びない。
 臭いが気になるが、こればかりは致し方あるまい。
 いつか、別の隠し場所を捜さなければならないだろう。


( ^ω^)「……暗いお」

 玄関に足を踏み入れ、最初の感想がそれだった。
 クールが寝るときでも決まって玄関と廊下、入って左手のリビングの電気は点いているのだ。
 ところが玄関で既に完全に闇に呑まれており、またしんと静まり返っていた。

 浴槽に湯を溜める音、炊飯器が飯を炊く音、
 テレビの向こうの漫才の声、何一つとしてそこになかった。


.


65 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:45:23 ID:8EOsmnGwO
 

( ^ω^)「寝てるわけじゃないお?」

( ^ω^)「おーい」

 靴を脱ぎながら、とりあえず闇に声をかけてみた。
 返事が返ってきたら返ってきたで怖い気もするが、物音一つしなかった。
 泥棒だったら、高校時代に培った、ラグビー部大将譲りのタックルをお見舞いさせてやろう。


( ^ω^)「もしもし」

  『もしもし』


 だが、それですらない、とわかったのは、クールに電話をしながらダイニングに目を遣った時だ。
 メモと椀、発泡スチロールが見え、何だ、と思った。
 メモはクールの書き置きだったようで、丁寧な字が並んでいた。


川 ゚ -゚)〝 勝手に夕飯食べておいてください。〟
 
( ^ω^)




 メモの隣の発泡スチロールだが、これは納豆だ。



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66 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:46:28 ID:8EOsmnGwO
 


  『友だちとお食事なーう』

( ^ω^)「え」

  『相手はあのしぃだ。一緒に食べるか?』

( ^ω^)「いや、いいよ。んじゃ」

( ^ω^)

( ^ω^)

( ^ω^)「なぜだああああああああああああああああああああああああああああああ」



.


67 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:48:27 ID:8EOsmnGwO
 






川 ゚ -゚)「しぃもお前に会いたがってるぞ」

(;*゚ー゚)「あああ会いたがってない! 会いたがってない!」

川 ゚ -゚)「ほらほら、聞こえるかこのこ――」

川 ゚ -゚)「―――切れてる」

(*゚ー゚)「ほっ」


 しぃは、相変わらずな容姿と性格と声だった。
 出会い頭に抱きついてくる辺り、生活も相変わらずなのだろう。

 ビア・ガーデンはやはりいいもので、室内で食すのとはまた違った。
 忙しなく動き回るウエイターを一人捕まえ、注文をして放す。
 何とも言えない新鮮な光景だが、それだけで酒の肴となっていた。

 その合間に電話をかけたが、しぃの名を口にした途端しぃは手足をじたばたさせた。
 紅潮しきった顔は、酒のせいではないだろうと思うが、気にしない。
 しぃの反応が面白く、あれこれ言ってやろうと思ったが、
 夕食の素っ気なさに呆れたブーンは、足早に電話をきったようだった。


.


68 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:49:35 ID:8EOsmnGwO
 


川 ゚ -゚)「しぃも少しくらい成長したらどうだ」

(;*゚ー゚)「あのね、私の成長期は中二で止まってるの!」

川 ゚ -゚)「身体じゃなくて精神面のことだが」

(*゚ー゚)「え?」

(*゚ー゚)

(;*゚ー゚)「ししし知ってるよバーロィ!」

川 ゚ -゚)「どうだか」


 ジョッキに注がれていたビールは、そろそろ尽きそうだった。
 給仕に注文をしたばかりなので、すぐに来るだろうと思うが、落ち着かない。

 落ち着かないと言えば、しぃの物を噛む動作にも落ち着きがない。
 急いで食べたいのか、将又喋り続けたいのか。


.


69 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:50:34 ID:8EOsmnGwO
 


(*゚ー゚)「そういや、クー子供もってないよね」

川 ゚ -゚)「まあ」


 急に話題が変わるのも、昔はよくあった。
 あまり人と会話しない私は、話題の転換に過剰に反応する節がある。

 しかし、よりにもよってワードが子供、か。
 今、一番聞きたくない言葉だ。
 焦燥を感じていない訳ではないので、聞くだけで不愉快だ。


(*゚ー゚)「まだまだ子供つくれるでしょ」

川 ゚ -゚)「つくる気がしないだけで」

 強ち間違いじゃなかった。
 欲しいと思う気持ちと産みたいと思う気持ちは別なのだ。

 残りのビールを呷り、それでしぃの話を切ろうと思った。
 が、しぃはなかなかしぶとく、食いついてきた。


(*゚ー゚)「もしかしてセックスレス?」

川 ゚ -゚)「まさか。寧ろ暇なときは毎日」

(*゚ー゚)「え?」


.


70 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:51:27 ID:8EOsmnGwO
 


(´・ω・`)「こちらジョッキ生と鳥軟骨です」

川 ゚ -゚)「っしゃー」

(;*゚ー゚)「ねえ、ちょっと待ちなさい!」

川 ゚ -゚)「おーうめー」

(;*゚ー゚)「詳しく!詳しく!」

 我ながらまあ失言をしてしまったものだ。
 しかし別に恥ずかしい話でもない。
 ただ、この女に話すのは恥なのだ。
 理由など何一つないのだが、なぜか負けた気分になる。

 そんな時に、絶好のタイミングで給仕がやってきた。
 なみなみとビールの注がれたジョッキを受け取り、空のジョッキを渡した。


.


71 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:58:29 ID:8EOsmnGwO
 


 テーブルに置かれた鳥軟骨の唐揚げは、まだ油の弾ける音が聞こえてきていた。
 大盛況故、出来上がったらすぐ食べてもらおう、という事には違いなさそうだった。
 だが、それもありがた迷惑。私はすぐに食べたいのだ。

 と文句を並べるも、一口頬張るとそれは自ずと消えていっていた。
 むろん舌は火傷しそうだったが、揚げたてなだけあって、やはり旨いのだ。

 普通の鳥の唐揚げではなく、軟骨のみせる歯応えが、食欲を増幅させるのがそれの最たる理由だ。
 噛めども噛めども、執拗に歯にまとわりついてくる軟骨の食感。
 ただでさえ肉汁が溢れ出てきて唾液が分泌されているのに、そこに
 軟骨を絡ませると、もう一個、もう一個と手が伸びてしまうではないか。

 また、いい油を使っているようで、食べても食べてもしつこさを感じさせないのも高評価だった。
 普通――では困るのだが――生産性を優先させて、油は使い回す事が多い。
 それを拒み、常に新鮮な油でも用いているのか、独特の油っこさは感じられなかった。

 ビールを呷って、口内や食道にある鳥軟骨を包む。
 コクと旨みの混じった液体は、奥の方に流し込まれていった。
 それは、思わず「ぷはぁ」と息を漏らしてしまった程だ。


.


72 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 23:59:33 ID:8EOsmnGwO
 


(*゚ー゚)「ったく……」

川 ゚ -゚)「なんだ、そんなにブーンが好きか」

(;*゚ー゚)「べべべっ――」

川 ゚ -゚)「ブーンは私だけの人だぞ」

(*゚ー゚)「言っておきなさい」

川 ゚ -゚)「ブーンの好物から性感帯まで、何もかも熟知しているぞ」

(*゚ー゚)「じゃあ、ブーンの好きな食べ物は?」

川 ゚ -゚)「私の手料理」

(*゚ー゚)「ブーンの好きな犬の種類」

川 ゚ -゚)「私が買ってきた犬」

(*゚ー゚)「ブーンの性感帯」

川 ゚ -゚)「私が触るところ」

(*゚ー゚)「………ほう」







( ^ω^)「なぜだ……ものすごい悪寒が……」



.


73 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:00:31 ID:K2gJjNsYO
 






 散々に呑み続け、結構アルコールが回ってきてしまった。
 話をするのもほどほどに、二時間で切り上げ、その場はお開きにした。

(*゚ー゚)「週末の日曜空いてる?」

 と別れ際に訊かれたが、首を横に振った。
 週末は大事な日なのだ、空けられる訳がない。
 しぃもそれを察したようで、それ以上は訊いてこなかった。


.


74 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:01:41 ID:K2gJjNsYO
 


 外の風を浴びて、少しは酔いが醒めたように感じた。
 梅雨明けの風には多少生々しさを感じるが、涼しいことには変わりない。
 一歩一歩を確実に踏み締め、転ばないように気をつけなければならなかった。
 それが、雨で濡れるコンクリートのせいなのか、酔いが醒めていない自分のせいかまでは考える気はしない。

 ただ、漫然と自宅に向かって足を運んでいた。
 自宅に着くと、妙な心地になった。

 平生のまま建っている自宅だが、明かりがないのだ。
 庭に面したリビングは暗く、二階のブーンの部屋も暗かった。
 ブーンの部屋の方は、カーテンまでもが閉められていてる。


川 ゚ -゚)「……寝ちゃったかな」


.


75 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:03:43 ID:K2gJjNsYO
 


 ブーンが伊予と呑みに行った時の仕返しとは言え、さすがに私の行動も度が過ぎたのか。
 ブーンに言わせてみれば、帰宅して夕食が納豆と御飯一膳、また無断で私の外食。
 ふてくされたブーンは、独り言で文句をこぼすのもほどほどに、寝てしまったのかもしれない。
 呆れられたか、しかしそうだとしても仕方がないと思った。

 だが、玄関に上がり込んだ時、その考えは真っ向から否定された。
 二階、ちょうど上の方からブーンの喚き声が聞こえてきたのだ。
 苛立ちを抑えきれずに暴れている訳ではなさそうだった。

 というのも


  「おおおおおおおおおおおおおッ!」

川 ゚ -゚)

  「パンチラげぇぇぇぇぇっつ!!」

川 ゚ -゚)

  「そうですブーンは変態な豚ですぅぅぅぅぅぅ!!」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「……あンにゃろ……」



 ブーンは、毎度のようにこう思っているだろう。
 ヘッドホンをして部屋も暗くしているのに、なぜビデオを観ているのがばれるのだろう、と。

 第三者に言わせてみれば、答えは明白だ。
 ブーンが大声で騒ぐからである。




.
77 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:05:24 ID:K2gJjNsYO
 







(;##)ω^)「おはようございますお」

(`∠´)「あ、ああ」


 花の金曜日になって、課の皆が生き生きとしていた。
 今日さえ乗り切れば、ゆっくり休める。

 そう思うと、自然と仕事に打ち込みやすくなるのだ。
 僕だって、普段ならば例外ではない。
 金曜日の仕事が一番楽しいと思えるのだ。

 だが、今日に限っては例外だった。


(`∠´)「その……化粧室いくか?」

(;##)ω^)「青たんはさすがに無理ですお……」

(`∠´)「お面でもつけるか?」

( |::━◎┥)

(;##)ω^)「ほかにお面ないんですかおっ!?」

(`∠´)「息子が好きなアニメのだからな」


.


78 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:06:05 ID:K2gJjNsYO
 

 タイムカードを押して、真っ先にベル部長に身を案じられた。
 昨日、クールにしこたま仕置きをされ、さすがに瘤が隠せなくなってきた。
 なぜばれたのか、と聞くと、夫婦の愛の力だと言われた。絶対嘘だ。


 しかし、お面を渡されたとしても尚、誰もこのことは訊かなかった。
 その顔の傷はまた夫婦喧嘩でついたのか、今度の喧嘩の原因はなんだ、と。
 僕のことを気遣ってくれているようで、そこに暖かみを感じることができた。



从'ー'从「また奥さんと喧嘩ですか~?」

(;##)ω^)「(こいつ以外は!)」


.


79 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:07:57 ID:K2gJjNsYO
 


 僕がデスクに向かおうとすると、またも部長に止められた。
 今度はなんだと思ったが、どうやら喧嘩の原因でも聞く訳ではないようだ。

(`∠´)「おい、その顔はどうするんだ。
     週末、お得意様との接待ゴルフがあるんだぞ」

(;##)ω^)「週末ですかお……」

(`∠´)「社運にすら関わると言われてるのだからな、せめてひっかき傷くら」

(;##)ω^)「その日はちょっと家内と真剣に話し合うことになりそうなんですお……」

(`∠´)「わかった、なんとか話をつけておこう」

(;##)ω^)「すみませんお…」


从'ー'从「がちなムード嫌い~」

(`∠´)「渡辺、こっちに来い」

从;'ー'从「え!?」



 渡辺と入れ替わりで、早速仕事に取りかかった。
 その間、部長の怒声と啜り泣く渡辺の嗚咽が絶えず聞こえてきたが、仕事には集中できた。

 今日は顔は隠さないことにした。
 寧ろ、こんな傷でさえ、クールのものだと思うと誇らしげに思えたのだ。
 こうして傷をつけられるのも、果たしていつまでなのだろうか。


.


80 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:09:16 ID:K2gJjNsYO
 






 昼休みになると、やはり社員の士気は高まるばかりだ。
 各々が食堂に向かったり弁当を広げたりと、午後の週最後の仕事に備えている。
 僕もクールの弁当を広げ、中にぎっしり詰め込まれていた小籠包を食べていた。


(;=゚ω゚)ノ「センパイ、お顔大丈夫ッスか?」

(;##)ω^)「大丈夫だお」

(=゚ω゚)ノ「そうならいいんスが……」

(;##)ω^)「人の心配する前に、自分の心配をするんだお。そろそろ彼女の一人や二人……」

(;=゚ω゚)ノ「き、肝に銘じるッス!」

('、`*川「あら、じゃあ今夜お食事でもどうですか?」

(=゚ω゚)ノ「いいッス」

('、`*川「なんでよー」

(=゚ω゚)ノ「自分はイイ人を捜すために勉強するッス」

('、`*川

(;##)ω^)「(伊予……)」


.


81 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:11:45 ID:K2gJjNsYO
 


('、`*川「じゃあ私があれこれ教授してあげるからさ」

(=゚ω゚)ノ「本読んだ方がはやいッス」

('、`*川


 僕は、思わず噴き出した。
 小籠包を食べ終えたあと、トイレで抱腹絶倒したのは言うまでもない。

 そういえば、伊予と同期の伊藤もまだ独身だ。
 まあ、それを言えば渡辺も同期だが、彼女は男には苦労していないようだ。


('、`*川っ「今をときめく美女が教えてやるってのよーありがたく従いなさい」

<;=っ゚ω゚)っ「いいようー! いいようー!」

(;##)ω^)ゞ お前の事は忘れないお……。


 伊予は必死に抵抗したが、結局伊藤に連れ去られてしまった。
 デスクにしがみつき首をぶるんぶるん振ったが、伊藤が
 伊予の鳩尾に一発重いのを入れ、彼は敢え無くダウンしたのだ。

 彼に敬礼を送り、小籠包の最後のひとつを口にした。
 小籠包四つは、いくらお昼だからといってとても食えたものではない。
 とはいえど、一つでも残せば晩にはまた小籠包が出てくるのだ。


.


82 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:12:55 ID:K2gJjNsYO
 


从'ー'从「ペニちゃんと伊予クン、早速上下関係ができてきましたね~」

(;##)ω^)「お?」

从'ー'从「なんで伊予クンなんかがいいんだろ…」



 恋と言うものは、本当に些細なところから顔を出すものだ。
 そして、相手を想ったり、結婚を考えたり、時に喧嘩したり。
 そのどれもが愛おしく思える時が一番幸せなんだと気づいたのは、いつの頃か。

 今では、家に帰れば嫁がいると思って当然の日々だ。
 当然、クールがいなくなるなんて、思うこともないのだ。



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83 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:14:27 ID:K2gJjNsYO
 







(=゚ω゚)ノ「センパイ」

(;##)ω^)「お?」

(=゚ω゚)ノ「伊藤クンに妙な質問されたんスが……」

(;##)ω^)「なんだお」


 終鈴が鳴り、重い気分で椅子から立った。
 鞄に帰り支度を整え、浮かない気持ちを振り払おうという時、伊予がそう言った。

 伊予に限って質問とは珍しい。
 右目の上の瘤をさすりながら聞いてみた。


(=゚ω゚)ノ「朝の味噌汁の好きな具はなにって聞かれたんスが……」

(;##)ω^)

(=゚ω゚)ノ「自分、朝はスープ派なんスよ」

(;##)ω^)

(=゚ω゚)ノ「なんて答えたらいいんスかね?」

(;##)ω^)

(;##)ω^)「そのまま答えろよ」

(;=゚ω゚)ノ「そうスね! いやあ、助かったッス! 渡辺ちゃんに聞いても」

(=゚ω゚)ノ「『伊予クンにぶーい』」

(;=゚ω゚)ノ「としか言ってくれないんスから……」

(;##)ω^)「うん、間違ってないよ」


.


84 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:16:12 ID:K2gJjNsYO
 


 伊予は礼を言いながら、足早に会社を出て行った。
 どうして急ぐのかと思った次の瞬間、すぐに理由がわかった。
 伊藤が、猛スピードでそのあとを追いかけて行ったのだ。
 胸中で伊予に合掌しつつ、僕も会社をでた。


 外は月の光が射されてなくて、気味の悪い薄暗さが街を支配していた。
 湿気が高く、滲み出る汗と混ざって、不快感を覚える。
 今にでも降り出しそうな程の雨雲が立ちこめていた。
 家に着くまでに降らなければいいが。


(;##)ω^)「(雨は嫌いなんだお……)」

 雨降って固まった地面は、もう一度雨が降れば柔らかくなる。
 また、同時に泥や塵などの汚れが浮かんできて、地表に現れるのだ。
 それは果たして環境だけに関係のある話なのか、と言われると、首を横に降らざるを得ない。

 雨は、少なからずや、人の心の奥底に眠った嫌な記憶までをも呼び起こすものだ。
 恐らく、こんな考えを抱くのはクールも一緒だ。
 いや、クールの方がその度合いは酷いものだろう。


.


85 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:17:31 ID:K2gJjNsYO
 


(;##)ω^)「ただーいまー…」


 今日は、家の鍵は開いていた。
 もし開いてなければどうしようか、というのは杞憂で済んだ。

 扉を抜けると、平生と何ら変わらない玄関が、そしてエプロン姿の妻が出迎えてくれた。
 それらの上から柔らかな明かりが僕を包んでくれて、我が家だな、としみじみと思えた。
 彼女はたまたま料理をつくっていたようで、右手には包丁が握られている。
 玉葱でも刻んでいたのか、包丁にはその屑が付いていたし、目には涙が浮かんでいた。


川 ゚ -゚)「おかえりなさい」

(;##)ω^)「今日はハンバーグか何かかお?」

川 ゚ -゚)「そうなんですが困ったことにミンチがありませんの」

(;##)ω^)「じゃあなぜハンバーグにしようと思った」


.


86 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:18:41 ID:K2gJjNsYO
 


川 ゚ -゚)「でもよかった、ちょうどいいところに帰ってきてくれて――」

 彼女は言葉を濁したかと思うと、無表情のまま包丁で僕の腹を指してきた。
 すっかり情けない形状になっている僕の腹は、全て小籠包とビールのせいだ。

 二、三回揺らしてからクールと視線をあわせ、二人同時に笑った。
 ただ「ははは」と声にしただけで、クールは全く笑っていない。



川 ゚ -゚)「―――早速」

(;##)ω;)「このお肉はだめだお! 夢と希望が詰まってるんだお!」


 腹をさすり、どんと突き出して言った。
 さすがにクールもこればかりは可笑しかったらしく、くすっと笑った。
 互いにこの歳になっても、童心を忘れないでいられるのは素晴らしい事だ、と思った。


.


87 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:20:36 ID:K2gJjNsYO
 


 元の無表情に戻り、包丁を握った手をぶらんと垂らして彼女は話を切り出した。


川 ゚ -゚)「じゃあなににします?」

(;##)ω^)「小籠包以外なら何でもいいお……。カップラーメンでも何でも……」

川 ゚ -゚)「だめですよ、身体に悪い」


 反論する気にもなれないが、朝だろうと昼だろうと、
 まして晩だろうとお構いなく脂ぎった小籠包を食べる方が健康的ではない。

 それは、彼女と幾十年を共に暮らしてきたなかで培った、ひとつの教訓だった。
 小籠包を無理して食べた後は必ずと言っていい程不快感に苦しむ事になる。
 それにビールが加われば、尚更だ。


(;##)ω^)「その前にお風呂に入りたいお……。外じめじめしてて気分が悪いお」

川 ゚ -゚)「そういうと思ってお風呂は張ってません」

(;##)ω^)「はは、こやつめ」


.


88 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 00:22:10 ID:K2gJjNsYO
 


 今の話の流れからして、恐らく風呂の話もクールのジョークだ。
 僕は笑いながら鞄を預け、靴や畏まった服を脱いで風呂場に向かった。
 結局帰宅の道中で雨が降る事はなかったが、高い湿度が下がる気配を見せる事はなかった。

 だから、溢れかえる湿気が汗と手を組む事になる。
 シャツが肌にひっついてしまい、嫌悪感が半端でない。

 そんな嫌悪感と漸くおさらばできると思い、
 一糸纏わぬ姿になって風呂場に入ると、恐ろしい事がわかった。
 クールは、本当に風呂を張っていなかったのだ。




(;##)ω^)


(;##)ω゚)「うそぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」



.
97 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 18:58:16 ID:K2gJjNsYO
 







 包丁に生ゴミの玉葱の屑を付ける事で、ごまかしは効いただろうか。
 いつ雨が降り出すかわからない天候で、少し気が落ち込んでいたのだ。
 人々の悲しみを溜め込んだ雨雲が、少しでも早く私のもとからどこかへ吹き飛ばされてほしい。
 そう思っているうちに過去の悲劇を思い出して、ふと涙腺が緩んだのだ。
 ブーンに見せる訳にはいかないので、ごまかそうと考えた訳だが。

 夕食は本当は小籠包と言えず、ハンバーグなんて嘘を吐いたが結果的には問題なかった。
 それよりも、風呂を張ってないと言ったのにどうしてブーンは風呂に浸かろうと思ったのか。

 その理由を突き詰めてみると、どうやら風呂の話までジョークだと思われたに違いなかった。
 先ほどの嘘が、全く別の形状を伴って弊害を生むとは思いもしなかった。


 ――尤も、反応が面白そうだから放っておいたのだが。




  「うそぉぉぉぉぉぉぉぉッぉお!?」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「予想通りすぎて怖い」


.


98 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 18:59:48 ID:K2gJjNsYO
 


 彼の悲観の叫びを無視して、味噌汁でもつくろうかと思い厨房に立った。
 彼は薄味の合わせ味噌が好きなので、むろん今宵もそれを作る。
 わかめ、豆腐を用意するだけで、簡単ながらも味噌汁はできる。

 コンロに手をかけ、火を付けようとした時だ。


川 ゚ -゚)「ん?」

 風呂場の方から、シャワーが床を叩く音が耳に入ってきた。
 意地でも身体を洗いたかったようで、やむを得ずシャワーを浴びる事にしたようだった。
 彼は昔から浴槽に張られた湯に浸かるのが好きな分、少し異様な光景のように思えた。


 微笑ましく思っていると、ふとある事が脳裏に浮かんだ。
 確か、今彼の顔は―――


.


99 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:00:47 ID:K2gJjNsYO
 



  「あにゃああああああああああああッ!」



川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「顔面にもろに喰らったな……」


 元凶は他でもない私だとして、顔が傷だらけなのを忘れて風呂に入ろうとは、何たる愚行か。
 しかし、ツッコんでやろうとこそ思うが、さすがにこれには同情を隠しきれなかった。

 呆れる素振りだけ見せて、乾燥されたわかめを水でふやかしておく。
 瑞々しい豆腐のパックを見つめていると、風呂場の方から狂気の叫びに近い懇願が聞こえてきた。



  「クー来てくれおォォ! 顔がぁぁ!」

川 ゚ -゚)「ったく……」

川 ゚ -゚)「……着替えでも持っていくか」


 彼の声にかき消されぬよう応答を返して、コンロの火を止めた。
 タンスから着替えを持って、俯き気味な姿勢のままで風呂場に向かった。




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100 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:02:13 ID:K2gJjNsYO
 






( *^ω^)「おっおっ」

 顔が紅潮しているのは、熱いシャワーでとことん身体を温めた
 だけでなく、僕を支配していた嫌悪感を根刮ぎ洗い落とせたからだ。
 決して他意、下心はない。

 一時間ほどかかったのち、風呂から上がってはクールに往復でビンタを喰らった。
 だが、彼女の態度を窺うだけで照れ隠しのビンタだろう、とすぐにわかった。
 そのため僕がにやにやしていると、股間を膝で蹴り上げられ、少しの間悶えていた。

 そして今、冷めぬ温もりを持っているまま、クールに顔の手当をしてもらっていた。
 ラフな恰好で、献身的に消毒液やら絆創膏やら用いて手当に励んでくれている。
 椅子に座っている僕に対し、彼女は立って屈んでいるため、必然と僕の視線は釘付けにされてしまう。
 さっきの今のため、やはりどうしても意識してしまうのが、男としての情けない習性だった。


川 ゚ -゚)「ん?」

( *^ω^)「……」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「たたないうちに捻り潰すぞ」

( ;ω;)「そういうのは実行する前に言ってぇぇぇぇ!」


 この情けない習性は、おそらくいつの時代でも男が持つ悩みのひとつになっているのだろう。
 それを身を持って痛感した日だった。



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101 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:03:43 ID:K2gJjNsYO
 







 日頃学校や仕事に追われている人は、決まって休日と出勤日とで提げる時計の性能が違うのだ。
 出勤日は六十秒ではなく七十秒程で一分になるのに対し、
 日頃の多忙、喧噪から解き放たれる日は四十秒ほどで一分になる。

 その時計は、世界のどんな時計屋に持っていっても修復不可能な程複雑な仕様の時計である。
 いくつもの歯車、発条が絡み合った時計だけに、
 ひとつの事象が狂うだけで大きな誤差を生み出す。

 その事象というのは、実に様々だ。
 一日の天候、湿度、曜日、蝉の鳴き声から、朝の星占いまで。
 そのどれもが、この世界一安定性のない時計の歯車に加わるのだ。


 発条を回す必要はない。
 自分が生きているだけで、勝手に歯車は回るのだから。

 その時計の枠組みの構造も、至極単純である。
 主成分は、精神のみだ。



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102 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:06:04 ID:K2gJjNsYO
 


( ^ω^)

( ^ω^)「もう土曜日が終わってたなんて……」


 だから、僕は溜息を吐く。
 せっかくの休みが、風のようにどこかへ飛んでいっていたからだ。

 朝の小籠包を食べながら、そう思考に耽っていた。
 一噛みするたびに溢れ出す肉汁が、口内に広がる。
 柔らかな弾力の生地を何度も噛むにつれて、徐々に小籠包はその形をなくす。

 傍らに置かれた椀を手に取る。
 スーパーで買ってきたであろう、安物の即席中華スープを口に含んだ。
 形状をなくした小籠包が、中華スープに包まれて喉の奥へと進んでゆく。

 巧みに隠された化学調味料独特の後味を噛み締め、ふぅ、と溜息を吐いた。
 なにも、この小籠包が絶品すぎて出た、安堵の吐息ではない。

 いや、これでは語弊が生じてしまう。
 決して、この小籠包が不味だという訳ではない。
 寧ろ、小籠包そのものとしては非常に絶品なのだ。
 我が愛妻のクールが作る小籠包は、なぜかそこらの高級中華料理店にも引けを取らない完成度を誇る。


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103 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:09:59 ID:K2gJjNsYO
 


 なにが嫌なのか、原因を模索する必要もなかった。
 単純にして明快、人間の誰しもが抱く感情である。

( ^ω^)「なにが嬉しくて、毎日小籠包を……」


 ここ数日で食した、小籠包以外の食事は伊予と行った居酒屋の料理と納豆だ。
 つまり、この蟠りの主成分は、小籠包ではなく「飽き」だという事だ。
 さすがに、どんな絶品でも飽きには抗えない。

 その証拠に、僕の目の前にある蒸籠には、絶品の小籠包が二つ、まだ存在感を示し付けていた。
 それも、物乞いする老人に差し出せば靴を舐めさせる事くらい容易いであろう程の絶品を。
 もう食べようだなんて到底思えないのだ。


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104 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:11:49 ID:K2gJjNsYO
 


 そもそも、事の発端は朝起きた時だ。
 休みの日は、基本寝たいだけ寝る。
 昼過ぎになろうが、睡眠欲に駆られるがまま横たわるのが僕の信条だ。

 その信条があっさり砕かれたのは、仰向けの僕の腹を、クールが踏みつけたためである。
 それも、優しく、労るような踏み方ではない。
 全体重を踵に籠め、軽く跳ねてからの踏みだ。

 彼女は女子大生並な軽さのため、内臓が破裂する事はなかったが、如何せん痛い。
 それこそ耳元でダイナマイトが爆発したかのように、がばっと僕は上体を起こした。
 そして化粧面の彼女がぐいっと顔を近づける。


川 ゚ -゚)『出掛けてきますから、起きて布団を畳んで着替えて顔洗って歯磨き。
     全部済んだら台所に朝ご飯がありますからそれ食べて。
     それでまだ暇だったらわんわんおとでもじゃれてなさいな』


( ^ω^)

( ^ω^)『もう少し寝た――』



 するとクールは僕の背後にまわり、抱きついてきた。
 いや、これは愛の抱擁ではない。

 四肢を僕の躯に巻き付けた上での、プロレス技だ。


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105 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:14:51 ID:K2gJjNsYO
 


( ;゚ω゚)『あべべべべべべッ?!』

川 ゚ -゚)『伊達に鈍っちゃいませんよ』

( ;゚ω゚)『ロープ! ロープ!』


 首に巻かれた彼女のしなやかな腕を、数回叩いた。
 僕を解放して立ち上がり、去り際に言った。
 まるで今の一連の流れがなかったと思わせるような、自然な動きだった。


川 ゚ -゚)『じゃ、行ってくる』

(;^ω^)『おおぅ……』


 そして、言われた事を全てこなした上でありついた食事が、小籠包だったのだ。
 ここまで来るとお約束すぎて、リアクションに困るだろう。

 一通りの家事をこなせる僕は自前で料理もできるが、
 それがばれると、彼女はお涙頂戴の演技で僕を困らせる。

 そして頭を掻きながら小籠包を二つだけ食べて、現在に至る。

 朝食での飽きとの戦いもも程々に、仕方なしに外に出た。
 まだ午前七時過ぎで、休日にこんな早起きをするのは久しぶりだ。
 嗅ぎ慣れない休日の朝の空気を肺にいっぱい溜め、家の中の古びた空気を吐き出した。
 新鮮な気持ちにはなれたが、やはりもやもやしてしまう。


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106 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:16:38 ID:K2gJjNsYO
 

( ´ω`)「むなしいおー」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ´ω`)「わんわんおはいいおね、気軽で」

(∪^ω^)「わんわんお!」


 どんな因果か、自宅の目の前の電柱の足下に捨て犬がいた。
 丁度二年ほど前で、夫婦揃って傷心状態だった僕らはこの犬を可愛がっていた。

 それを皮切りに、捨て犬は僕に懐くようになり、なぜか顔が頗る似てきた。
 大好物はクールの作る小籠包。


(∪^ω^)「わんわんおっ!」

( ^ω^)「お、小籠包かお? 余ってるからあげるお!」

 一旦自宅に戻り、小籠包を蒸籠からひとつ取り出してはわんわんおにあげた。
 とても旨そうに、幸せそうに食べるため、見ているこちらまで幸せな気分になるのだ。


 昨日の雨雲は、未だにここら一帯を太陽から遠ざけている。
 洗濯物が乾かないとのクールの愚痴も、強ちわからないでもない。

 湿気がひどく、豪雨が降るよりもひどく遣る瀬無い気持ちになる。
 もしこれで晴天なら、フリスビーでも持ってわんわんおと公園に繰り出すのだ。


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107 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:17:34 ID:K2gJjNsYO
 


( ´ω`)「雨は嫌いだお」

(∪´ω`)「くぅ……」


( ゚ω゚)「なにもかも悪いのは社会だお!」

(∪゚ω゚)「お!」


( *^ω^)「だからストレス発散するのも大事だお」

(∪*^ω^)「わんわんお!」


( ^ω^)「というわけでばいぶーだお」

(∪^ω^)

(∪^ω^)「お?」


 僕は、文字通りるんるん気分で家に帰った。
 覚束無いスキップだったため、ご近所さんに見られていたら恥ずかしい。



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108 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:19:36 ID:K2gJjNsYO
 







 時計を見ると、思っていたよりも広い歩幅で針は進んでいた。
 結婚当初にブーンに買ってもらった銀の時計は、未だに寸分狂わず廻り続けている。
 だが、それすらをも疑わざるを得ない程、時計の針が進むのは速かった。

 着慣れないスーツ姿のため、歩きづらい。
 一向に退散を見せない雨雲は、いよいよ暗さを伴ってきた。

 自然と、自分の歩幅も広くなる。
 大股で歩くと、決まって転んでしまうのだが、今はそれを憂慮している場合ではなかった。
 帰りに買った花は、瑞々しさを失いつつあったからだ。
 転ばないように、でも枯れないように、二つの均衡を保てる速度で歩みを進めていった。


川 ゚ -゚)「いい花をよこせってんだ」

川 ゚ -゚)「……む」


 長らく外出していたため、寂しさを隠すべく独り言を漏らした。
 誰も聞いてないとは思うも、言ってからどこか恥ずかしさを感じる。

 そして自宅を前に立つと、予測しなかった声が発せられた。
 玄関傍のスモークガラスからは明かりは漏れていないのだ。
 というより、一階全域から明かりは視認できなかった。


.


109 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:21:07 ID:K2gJjNsYO
 


 あまりに長時間帰宅しなかったため、彼はゴルフの打ちっ放しにでも行ったのだろうか。
 若しくは、いい加減小籠包にも飽き、洒落た喫茶店で軽食でもつまんでいるのか。

 ダンボール箱に入ったわんわんおの餌箱に、それと
 思わしき残骸があったため、可能性としては大いにあり得た。
 昼食を用意せず出て行き、まして今は午後四時過ぎのため、尚更だ。


川 ゚ -゚)「わんわんおー」

(∪;^ω^)「くぅ……」

川 ゚ -゚)「どうした? おなかが空いたのか?」


 わんわんおの頭をわしゃわしゃと撫でる。
 どういう事か、普段なら千切れんばかりに尻尾を振り飛びついてくるのだが、今日は様子が違った。
 しゅんとした――いや、どこか焦りと不安が感じられる顔色で私を見つめてくる。

 調子が悪いのかと思い手を離すと、背後から物音が聞こえた。

 背後とは、自宅の二階だ。
 タンスが倒れるような音を聞きつけ、はっとして振り返った。


.


110 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:22:52 ID:K2gJjNsYO
 


 刹那、その部屋――ブーンの部屋――に明かりが灯された。
 窓越しに人影がぬっと現れては、暴れ回っている。


川;゚ -゚)「ま、まさか―――」


 すぐさま踵を返して扉に向かった。
 玄関の鍵は開いていた。

 ブーンのグロックスは乱れて放置されている。
 その事が、私にあるひとつの事態を危惧させた。



川;゚ -゚)「(強盗――ッ!)」


 ブーンは元ラグビー部主将で、体つきもそれなりな力もある。
 しかしそれは若かりし日の話で、今では冴えない中年だ。
 情けなく蓄えられた腹の脂肪が、それを物語っている。

 ごろごろしていたブーンは、家の鍵をかけ忘れていたのだろうか。
 そして、強盗に狙われたのではないのだろうか。

 様々な推測、不安が交錯して、いよいよ私の緊張感は高まってきた。
 ハイヒールをを脱ぎ捨て、急ぎ足で階段を上っていった。



 直後、この世のものとは思えない叫び声が耳を突き抜けた。


.


111 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:24:01 ID:K2gJjNsYO
 



  「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


川 ゚ -゚)


  「ぬおおおおおおおおおっほほほぉぉぉぉぉッぉお!!」


川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚) ……。



 駆けていた足は自然と止まって、平生通りの足取りでブーンの部屋に向かった。
 そして躊躇いなく扉を蹴破った。
 比喩ではなく本当に蹴破った。

 そこには、ヘッドホンすら付けていないブーンが、テレビを前にのたうち回る絵図が繰り広げられていた。
 画面にはこの世に存在するとは思えない程の美少女が。

 爆発音とも聞き違える扉の破壊音は、彼の耳には届いてないようだった。


.


112 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:26:12 ID:K2gJjNsYO
 


ξ;゚⊿゚)ξ『なにこの白い水着?! こんなの着れっての!?』

( *^ω^)「白スクは天使の神器だおぉぉぉぉぉぉッ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ『ばッかじゃないの!?
       水泳の授業にこんなの着ちゃバカ丸出しじゃない、バカ! キモ豚!』

( *^ω^)「ぶふぉぉぉぉぉぉぉッぉお!!
      キモ豚萌え豚ぷぎィィィィィィィ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ『涎出すなぁぁぁぁぁっぁあ!』

川 ゚ -゚)『さすがにキモいな』

川 ゚ -゚)「まったくだ」

( *^ω^)「この涎は――」



( ^ω^)「―――ッ」

( ^ω^)


川 ゚ -゚)

( ^ω^)

川 ゚ -゚)

(;^ω^)

川 ゚ -゚)



.


113 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:27:11 ID:K2gJjNsYO
 


( ^ω^)「お帰り! 小籠包一個だけわんわんおにあげたお」

川 ゚ -゚)「そう、美味しそうに食べてたか?」

( ^ω^)「見てるとおなか空いてきたから、僕も残り一個の食べた程だお!」

川 ゚ -゚)「それはよかった。今晩も小籠包にしますね」

( ^ω^)「それは勘弁」

川 ゚ -゚)「ははは」

( ^ω^)「ははは」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)

川 ゚ -゚)


( ^ω^)「風呂掃除でもしてくっかぁ……」

川 ゚ -゚)「待て」







  「いやアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッ!!!」


.


114 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:28:17 ID:K2gJjNsYO
 


 すぐさまブーンを押し倒して、朝のサブミッションより数段厳しい技を決めた。
 脚でブーンの首を捕らえ、腕で下半身を捻るようにして締める。
 そのまま彼を蝦と真逆の生物にすべく、腰を凄まじく曲げた。

 すぐにブーンはおちて、首に回した脚を叩いた。
 降参の合図ではあるが、彼は決まって技をかけるとすぐに降参に出る。

 解放してすぐに、彼を正座させた。
 むろん私は立って彼を見下ろしている。


川 ゚ -゚)「……」

(; ω )「……」


 静寂が痛い。
 上に立つ私でさえそう感じるのだから、ブーンに至っては尚更だろう。
 たった数秒だけの静寂が、狂った歯車のせいで数時間にも長く感じられた。

 六秒ほどで私の方が耐えきれなくなり、口を切った。
 実際は、まる一日もそのまま過ごしたかのように感じられたのだが。
 あくまで壁にかかっている時計は、六目盛り分しか動いていなかった。


.


115 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:29:32 ID:K2gJjNsYO
 


川 ゚ -゚)「どうして観るんだ。あれほど言ったのに」

 一言目が、それだった。
 訊かなくても理由は痛いほどわかるというのに、なぜか訊いてしまう。
 まずは話をしようという空気をつくり出さなければ、私の方が先に折れてしまうのだ。

 その問いかけに対し、ブーンは小さく答えた。


(; ω )「……捨てられないお……」

 小さく、ただそれだけを囁いた。
 痛いほどの静寂だからこそ、それが聞こえた。

 なにを捨てられないのか、聞くまでもない。
 ビデオそのもの、ビデオにかける執着、
 ビデオによって得られる娯楽、至福、その他全部。
 ブーンにとっては、どれも自分という存在を構築するのに欠かせない部品なのだ。

 そういう事は、わかっている。
 わかっているからこそ、彼をその依存から
 断ち切らなければならない気持ちでいっぱいだったのだ。


.


116 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:32:14 ID:K2gJjNsYO
 


川 ゚ -゚)「……ブーン」

(; ω )「……」

 返事はない。
 向かいの、カーテンのかかった壁に跳ね返って、自分の声が戻ってきた。

 ひどく低く、恨めしげな声だ。
 仮にブーンと立場が逆転していると、間違いなく恐ろしいあまり泣いてしまう。

 気持ちトーンを上げて、続きを言った。


川 ゚ -゚)「どうしても……捨てられないか?」

(;^ω^)「ッ!」


 「何を」かは、言わなくてもブーンに通じる。
 ビデオの話ではない。かといって、執着でもない。
 もっと、大事なものだ。

 それを知ってか、ブーンはがばっとこちらを見た。
 動揺の色が、顔一面に広がっていた。


(;^ω^)「あたッ、当たり前じゃないかお!」

川 ゚ -゚)「なにも、全て捨てろとは言わん。
     『こんなのもあったな』と懐かしむ程度で、軽い気持ちで――という意味だ」

(;^ω^)「無茶だお! 僕からこれがなくなると、生きる気力すらなくなるお!」


 先ほどまでの静けさとは違い、途端に声が荒くなった。
 日頃の飄々とした態度は、全く見てとれない。

 そして、本当に生死について考える姿勢をとるつもりかのように見えた。


.


117 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:33:36 ID:K2gJjNsYO
 


 たかがビデオ如きに――なんて事は言わない。
 「そうか」とだけ言って、私も正座した。
 いや、少し姿勢を崩し、横座りをした。

(;^ω^)「捨てろ、忘れろ―――なんて言うのかお?」

川  _ )「……」


川 ゚ -゚)「程々に、と言ったはずだ」

 少しだけ俯いてから、目を見て言い切った。
 だが、ブーンにとっては程々なんて中途な値は存在しないのだろう。
 そこは、イチかゼロか、の世界のようだ。

(;^ω^)「逆になにが悪いって言うんだお!
      ビデオを観る事くらい……」

川 ゚ -゚)「君の場合はそれだけにとどまっていない。自覚しているだろ」

(;^ω^)「………」


 今度は、ブーンが俯いた。
 私の膝が、ちょうど視界の上に来るように。

 そして、そのままそっと瞼を伏せた。

(; ω )「………」



(; ω )「捨てられなかったら……なんだ、って言うんだお」

川 ゚ -゚)「……」


.


118 :名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 19:34:36 ID:K2gJjNsYO
 

 またも小さく、ブーンは言った。
 この問いに、私は、しっかりと答えなければならない。
 そのつもりで、この問いを投げかけたのだから。

 いざ言おうとすると、喉が締まる。
 心臓の鼓動が速くなり、全身に汗が滲む。
 視界が暗転し、意識がどこか遠くへ飛んでいってしまいそうな気になった。

 飛ばされないように、気合いで意識を呼び寄せる。
 拳に力を籠め、目を見開いた。

 呼吸を整え、静かにこちらの返答を待つブーンに、それを届けた。


川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「どうしても、捨てられないと言うなら……」





川  _ )「……わ、私と……別れてくれ」




.


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ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その1 

1 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:18:07 ID:8EOsmnGwO
(´・ω・`)「やあ、ようこそ」

(´・ω・`)「唐突で悪いが、君たちアニメは好きかな?」

(´・ω・`)「一枚のガラスを隔てた先に広がる、幻想」

(´・ω・`)「それが、どれだけ己に至福の時を与えるか、僕は知っている。
.      ……おそらく、『彼』も同じだろう」


(´・ω・`)「これは、そんな画面の向こうの世界に魅せられた、ある男のお話だ」




※※※

初のスレ立て短編投下
長さ的には短編と中編の中間だけどキニシナイ

もともと紅白に出そうと思ってた作品故、ノリで書いた感が
にじみ出ているので、気楽に読んでいただけたら幸いです

※※※

2 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:20:41 ID:8EOsmnGwO
 


 早いもので、もうあれから二年の歳月が経ったようだ。
 自身ではまだ三ヶ月しか経ってないように感じられるが、
 カレンダーを見ると暦の下一桁が三から五になっている。

 事象についての記憶が薄れることはないが、衝撃は確実に薄れつつある。
 口惜しいことだが、自害までをも考えていたのに、今では平然としていられる。

 時とは残酷なもののようで、人の心から確実になにかを奪っていくようだ。
 記憶、衝撃、悲哀、歓喜、失敗。
 どれも、決して欠かしてはならないものばかりだ。

 そしてどうしてか、そういったものに関してだけ、
 出来事があったという事だけははっきりと記憶しているものなのだ。
 それがどれだけ苦痛で、そしてどれだけ悲観なことか。


.


3 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:22:25 ID:8EOsmnGwO
 

 丁度、二年前の今日が、あるひとつの運命の枝の途切れ目だった日だ。
 だからという訳ではないが、私は今日を機に、ペンを置こうと思う。

 決してあの悲劇を忘れないように、常にこうして当時の情景を思い浮かべ
 同時にそのままの心境を保とうと思って書き始めた手記だが、
 いまとなっては必要のないものになってしまったようだからだ。



 次に新たな幸福が生まれたら
 その時は、その感動を遺せるように、再び手記を書くだろう。

 それまでは、この手記は封印しておきたいと思う。
 何年後になるか、将又そのような機会が果たしてあるのか。

 まだまだ、わからないことは多いが、私は漸く幸福の切れ端を掴むことができた。
 それを、長い時間をかけて手繰っていかなければならないため、ペンなど持っている余裕がないのだ。





.


4 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:24:14 ID:8EOsmnGwO
 







 今日はどれにしよう。
 この、取捨選択に時間を弄するだけで、日頃の鬱憤が晴らせる。

 どれも、タイトルを見るだけで内容の隅から隅まで、完全に思い出せるものばかりだ。
 だが、飽きが訪れることはないし、決してこれを行わない日はない。
 否、行えるのは週末しかないのだが、その週末の大半はこれに費やしている。


( ^ω^)「これにするか」

 ビデオライブラリーから一本のテープを取り出した。
 迷いなくデッキに挿入し、読み込むまでの時間、僕は常に興奮と一緒に待っていた。
 今か、今かと、実に待ち遠しい。

 律儀に正座し、画面を凝視する。
 やがて、青かった画面に、漸くそれらしい映像が映り出された。

.


5 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:27:26 ID:8EOsmnGwO
 



ξ>⊿<)ξ『ふわぁぁー……』


 画面には、金髪の美少女が映った。
 この世に実在するとは思えない、可憐さ。
 人形のようにちいさく、それでいて存在感を存分にひけらかしている、美少女。

 画面が映った時の僕のボルテージは、いきなり最大限にまで高まった。
 彼女が、初っ端から無防備にも欠伸しているのだ。


( *^ω^)「おおおおおおおおおおおおッ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ『っ! いま見てたでしょ!』

( *^ω^)「のどちんこまできれいに見えましたぁぁぁぁぁぁ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ『変態! やらしい目でみないで頂戴!』

( *^ω^)「生欠伸ゲェェェェェッツ!! おおおおおお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ『オシオキするよ!? 次は釘バットだかんね!!』

( *^ω^)「オシオキしてくださいおぉぉぉぉぉッぉお!!」

.


6 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:29:30 ID:8EOsmnGwO
 


川 ゚ -゚)

( *^ω^)

川 ゚ -゚)

( ^ω^)

川 ゚ -゚)

(^ω^ )

川 ゚ -゚)

( ^ω^)




( ^ω^)「掃除でもしてくっかぁ……」

川 ゚ -゚)「待て」





  「真っ昼間からまた観やがってぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

  「お許しをおおおおおおおおおおおおッ!!」






.


7 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:30:11 ID:8EOsmnGwO
 





  ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです





.


8 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:31:38 ID:8EOsmnGwO
 


 彼女は、僕がこの手のビデオを観ることを快く思わない。
 今日も、自室でヘッドホンを使って静かに観たのだが、やはり彼女はやってきた。
 ビデオは没収され、襟首を捕らえられてはリビングに連れてこらされた。
 土下座を強いられる僕と、立って僕を見下ろす彼女の間に、少し静寂が生まれた。

 静寂ではない。一方的に僕が謝っている。
 というのも、怒った時の彼女ほど、恐ろしい人は存在しないのだ。

 結婚する前までは淑やかな女性だったのに、気がつくと尻に敷かれていた。
 彼女に抗うと、なにかよくないことが起こる。


( ;ω;)「悪かったお。ビデオ返してお」

川 ゚ -゚)「だめです」

( ;ω;)「それがないと僕は会社にもいけないお」


 何度も頭を上下させた。
 その後退の兆しが見え始めた頭を見ても、彼女は決して顔を綻ばせない。

川 ゚ -゚)「たまの休日だから、ごろごろするのは許せます」

川 ゚ -゚)「でも」


.


9 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:34:19 ID:8EOsmnGwO
 

 僕が頭を上げ彼女を見ると、
 彼女は、テーブルの上に高々と積み上げられたビデオテープを見ていた。
 天井に達しそうな高さで、テープの上を隈無く占領している。

 本数にして、二、三百はありそうだ。
 そんな事はどうでもよかった。
 それらを見た瞬間、僕は固まった。

 ――待て、それは、そのビデオテープは


川 ゚ -゚)「よくまあこんなに集めたな」

(;^ω^)「マイコレクション!! いつの間に!!」

川 ゚ -゚)「しかもタイトルが卑猥だ」


 僕が、もう十五年以上も昔から集めに集めているテープが積み上げられていた。
 どれも宝物で、ひとつでも欠けると生きてゆく自信がない。
 どのテープでも、マイ・エンジェルが僕を癒してくれるのだ。

 これらは、辛いサラリーマン生活で、唯一と言っていい僕の娯楽だ。
 呑みや外食、ゴルフなんか比較にもならない。
 彼女、クールが一つを手に取り、タイトルを読み上げた。


川 ゚ -゚)「『ツンちゃん反抗期3 ~私の水着を返せ~』」

( ^ω^)「七月二十七日友人と海にゆくツンちゃんが荷造りをしていると
      水着がないのに気がつき捜すと水着をクンカクンカされているのを見つけ
      追いかけ回す罵倒と恥辱の織りなすシリーズ作品三作目のビデオ。傑作だお」

川 ゚ -゚)


.


10 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:36:41 ID:8EOsmnGwO
 

(;^ω^)「あ! ちが、そういう意味じゃな」

川 ゚ -゚)「とりあえず、これらは全部」


 踵を返したクールは、隣にある棚から大きなゴミ袋を何十枚も取り出した。
 中身が透けてみえないもので、一体いつからあるものかはわからない。

 しかし、そんなことはどうでもよかった。
 僕はとてつもなく嫌な予感がしたのだ。



川 ゚ -゚)「没収します」

( ゚ω゚)



 待て、いまなんと言った。

 脳が理解し終える前に、クールは動いていた。
 テープを同時に三本持ち、ゴミ袋に放り投げていくのだ。

 気がつくと、僕は飛び出していた。
 テープに身体全体をつかって覆い被さり、首をぶるんぶるん振っていた。


( ;ω;)「それだけはらめぇぇぇ!!」

川 ゚ -゚)「だめなものはだめです」


 身体全体で覆い被さっても全然覆いきれていない。
 クールは、なんの躊躇いなく、手早い動作でテープをゴミ袋へ投げていった。
 悲痛の叫びをあげても、相変わらずの無表情で淡々と捨てている。

.


11 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:38:08 ID:8EOsmnGwO
 

( ;ω;)「もう観ないお! 観ないから!」

川 ゚ -゚)「ほんとうか?」


 瞬間、ぴたりとクールの動きは止まった。
 舐め回すように、僕の顔をじろじろ見ている。

 しめた、今のうちに説得しないと。
 マイ・エンジェルをみすみす逃がすわけにはいかない。


(;^ω^)「ほんとうほんとう! だから捨てないでくれお!」

川 ゚ -゚)「来年まで一度も観ないでいられますか?」

( ^ω^)「あ、たまに観たい」

川 ゚ -゚)


( ;ω;)「ああああああだめだめ! 嘘だからぁぁぁ!」



 途端に、クールは廃棄作業を再開した。
 ほんとうに無表情で、リアクションも見せずに。

.


12 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:39:57 ID:8EOsmnGwO
 

 結局、全てのテープが黒いゴミ袋の中に詰め込まれた。
 僕の制止空しく、クールは十分で作業を終わらせた。
 速い、速すぎる。

 僕は、七つのゴミ袋に詰め込まれたビデオテープに飛びついた。
 勝手に開けたら殺すと言われたので開けないが、抱きついて頬ずりはした。

 テープは、言わば娘だ。
 手放してはならない。絶対にだ。


( ;ω;)「ツンちゃん、おとーさんは離さないお!」

川 ゚ -゚)「ほう、ビデオが娘になったのか」

( ^ω^)「寧ろ愛人」

( #)ω;)「ひどいお!!」

 目にも留まらぬ速さで、彼女の右ストレートを喰らった。
 右目に食い込み、眼球が悲鳴をあげる。
 これが意外と痛い。いや、普通に痛い。


川 ゚ -゚)「まあ、私も鬼ではない」

( ^ω^)「嘘つけ」

( #)ω(#)「前が見えない!!」

川 ゚ -゚)「黙って聞け」


.


13 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:43:26 ID:8EOsmnGwO
 

川 ゚ -゚)「私とて、せっかくの楽しみを根刮ぎ奪うのは気がひける」

川 ゚ -゚)「月に一度、一本のテープを一時間に限り鑑賞するのは許そう」

( ;ω;)「そんな殺生な!」

川 ゚ -゚)「嫌か?」

( ^ω^)「まったく」

川 ゚ -゚)「そうか」


 むろん、今のは本心ではない。
 そんなに時間を制限されては、生きた心地すらしないのだ。
 しかし、なぜすんなり受け入れてしまったのか、言うまでもなかった。

 拳を構えてから否応を問われては、応としか言えないに決まっているだろう。
 元ラグビー部の僕でも、空手、柔道、合気道の有段者の彼女に勝てるなんて到底思えない。
 三十台後半になってもグラマラスでスリムな美人なのに、どうしてこんなに屈強なのか。

 クールは、ゴミ袋を持って、クローゼットの中に全部放り込んだ。
 がら空きだったクローゼットの床に、大量のビデオテープが積み上げられた。

 リビングには常にクールがいる。
 目を盗んで観る、というのは難しそうだった。


川 ゚ -゚)「あれ、掃除をするんじゃなかったのか?」

( ;ω;)「くちゃーに!くちゃーに!」

川 ゚ -゚)「よし、元気だな。掃除しろ掃除」


.


14 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:48:27 ID:8EOsmnGwO
 







 クールに愛しのビデオテープを奪われ、一週間が経とうとしていた。
 最初は辛うじて我慢できたし、元々週末にしか観てなかったから
 抵抗もなかったのだが、観ることができないと思うと、気疲れが生じてきた。

 水曜日あたりから、そのストレスは頭角を見せ始めつつあった。



( ´ω`)「部長、企画書できましたお」

(`∠´)「お、そうか」

 ベル部長が、僕が昨夜徹夜で仕上げた企画書に目を通した。
 「ふむ」と読みながら、企画書と会話しているかのように何度か頷いている。
 その間も彼は普段のお堅い表情だったが、徐々に眉間に皺ができていった。


(`∠´)「……? おい内藤、なんだこの企画書は。
     こんなので通ると思っているのか?」

(;´ω`)「え、そんな…。ブーンはいつも通り会心の出来を自負して――」

(`∠´)「弛んどるぞ。やり直せ」

(;´ω`)「は、はいですお。すみませんお」

 普段は、部長にこれほど言われる事はなかった。
 すんなりと通り、そのまま会議に出されていたのだ。
 それが、なぜか部長を怒らせる程粗末な仕上がりになっていたらしい。
 だが、僕にその自覚など、全くなかった。

 叱責を喰らい、気落ちして、僕は自分のデスクに戻った。
 パソコンと向かい合い、タイプを始めるが、いまいち身につかなかった。

 画面の文字が目に入らない。
 それどころか、霞んで見える。
 猫背のままでぎこちなく指を動かす。
 無意識の溜め息が、何度もこぼれた。


.


15 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:52:53 ID:8EOsmnGwO
 


从'ー'从「内藤係長、お茶です」

( ´ω`)「ありがとうだお」


 若いOLの一人が、お茶を運んできてくれた。
 何だと思うと、後ろからもう一人、ひょっこりと顔を出した。

 どうやら、お茶はカムフラージュで、僕とコンタクトを取りたかったらしい。
 いつもと違う態度で接してくるため、僕は疑問符を浮かべていた。
 二人は身を屈めて姿勢を低くし、ベル部長には聞こえない程度の小声で話しだした。


从'ー'从「で、で、なにがあったのですか!」

('、`*川「部長が大声を出すなんて珍しい」

(;´ω`)「な、なんでもないお」


 童顔の方のOLの渡辺は身を乗り出し、顔を近づけてきた。
 僕がなにをしでかしたのか、かなり気になっているようだった。
 好奇心に満ち溢れた眼で、僕の顔面を捕らえる。

 しかし、背が高い方のOLの伊藤は、
 どちらかというと僕の様態を気にしているようだった。
 やはり、顔にでてしまっているか、と反省した。
 他人に、僕の異常を感づかせるつもりはなかったのだ。


('、`*川「お疲れじゃないんですか? 顔に覇気が感じられないですよ」

( ´ω`)「そんなことないお。ただの寝不足だお」


 言うまでもないが、実際は寝不足ではない。
 寝不足には慣れているし、三時間しか寝られなくたって平常のままでいられる。
 原因は他のところに潜んでいるものだ。
 だが、一応、ここでは嘘を吐いておいた。


.


16 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 17:57:31 ID:8EOsmnGwO
 

 僕は、自分で言うのもなんだが、明るいほうの人間だ。
 常にジョークをとばしたりして、決して驕らないように努めている。
 だから、少しでも疲労の片鱗を見せると、今のようにすぐに気付かれるのだ。

 しかし、今日における疲労とは、肉体的なものではなくて心理的なものだ。
 ただ、マイ・エンジェルと会えなくなって、辛いだけだ。
 ここまで心理的に疲労が露わになってくるとは予想外だったが。
 一応上っ面だけでも平生を装う、と努めていた。


从'ー'从「あー、まさか奥さんと喧嘩したとか!」

('、`;川「あ、ちょ」

( ´ω`)「はぁ~…。ツンちゃん……」


从'ー'从「(……係長の奥さんの名前ってツンだっけ?)」

('、`*川「(クールだったんじゃ)」


 未練がある、程度の話ではない。
 後ろ指をさされるような娯楽ではあれど、どれだけ僕が
 ビデオに依存しているのか、他人にはわからないだろう。

 別に、わかってもらおうとも思わない。
 まさに「趣味は人それぞれ」というだけあって、僕の趣味が
 それに当てはまり、他人に解せ難いものである、と自覚しているからだ。

 結局その日は、まるで懐手をしているかのようで、なにもしていなかった。




.


17 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:02:41 ID:8EOsmnGwO
 







(=゚ω゚)ノ「センパイ!」

( ´ω`)「お?」


 終鈴が鳴り、皆がそそくさと帰路に着いていた。
 僕も例に漏れず、帰ろうとしていた。
 鞄に書類を詰め、重い腰をあげる。

 そんなときに、後ろから呼ばれた。
 力なく応え、振り向くと部下がいた。


( ´ω`)ノ「いよう」

(;=゚ω゚)ノ「いよう、じゃないッス。どうしたんスか最近」


 そういって、部下である伊予は頻りに尋ねてきた。
 日頃なら僕も同じテンションで答えるだろう。
 おどけるのが、会社での僕の持つ性格の一面だった。

 だが、僕は疲れに疲れていた。もちろん、精神的に、だ。
 そのせいか、応対も、やや雑だった。
 伊予の問いに、力なく吐き捨てるように答える。


( ´ω`)「なんでもないお」

(=゚ω゚)ノ「なんでもないことないッス。どうしたんスか、相談乗りますよ。
      あ、そういや近くにイイ呑み屋があるんスよ。行きましょう!」

(;´ω`)「あ、ちょ――」


 伊予は矢継ぎ早に用件を言っていった。
 早口すぎてあまりついていけなかったが、とにかく呑もうと言いたいらしい。

 生憎だが、もとよりそのような金は持ち合わせてないし、行く気力もなかった。
 それとなく伊予の誘いを断ろうと、浮ついた言葉を紡いだ。

.


18 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:06:33 ID:8EOsmnGwO
 

 だが、伊予は諦めなかった。


(=゚ω゚)ノ「宝くじで一万当たったんスよ、御馳走させてほしいッス!」

(;´ω`)「あ――」

(=゚ω゚)ノ「早く行かないと混んじゃうッスよ!」

(;´ω`)「そ、そうかお」

(=゚ω゚)ノ「じゃ、決まりッス! ささ、行きましょ行きましょ」

( ´ω`)「わかったお」


 ここまで詰め寄られ、更に上司である自分に奢るとまで
 言うのだから、ここで断ると好意を踏みにじることになるだろうと思った。

 また、加えて伊予は自分とは対照的に明るかったので、
 無駄話をするだけで鬱憤は晴らせそうだと思ったのだ。
 たまには、無駄話に花を咲かせるのもいい。
 遅れる時は必ずクールに連絡を入れるよう言われているのだが、一日くらいは問題ないだろう。


 というより、今はクールの声はあまり聞きたくなかった。



.


19 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:09:11 ID:8EOsmnGwO
 

( ^ω^)「しっかし、いつもの呑み屋じゃないのかお?」


 歓楽街を、伊予を連れて歩いている。
 花の金曜日でもないのに、泥酔してる中年や厚化粧のギャルが多く見えた。
 九時をまわった頃合いから急に賑やかになるのも、この土地のひとつの特徴だった。

 それぞれの看板の照明が混ざり合い、黒の画用紙に垂らしたカラフルな絵の具となって現れていた。
 そのおかげか、この土地に足を踏み入れるだけで、自然と暗い気分は和らいでいった。
 いつもは行きつけのちいさな居酒屋で呑むのだが、今日は違うようだった。
 伊予が、最近いい居酒屋を見つけたので、そこで呑もうと言うのだ。

(=゚ω゚)ノ「それがッスね、可愛いコが看板娘を務めているって評判のトコがあるんス」

( ^ω^)「可愛い?」

(*=゚ω゚)ノ「自分も会ったッスが、天真爛漫で本当に美少女したッスよ!」


.


20 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:13:22 ID:8EOsmnGwO
 

 未だ独身で、縁談という縁談もない伊予に女を見分ける能力は全くないはずだ。
 「いい人と、デートに行く」と意気込んでいた伊予が、
 次の日に失恋のショックで涙を見せるのはよくある話だった。

 だが、この浮かれようをみると、それを差し引いた上でよほど可愛いのだろう。
 給仕であり、聞くと暇なときは一緒に馬鹿騒ぎに参加してくれるそうだ。


( ^ω^)「……伊予」

(=゚ω゚)ノ「はいッス」

( *^ω^)「今夜は呑むおおおおッ!」

(*=゚ω゚)ノ「お供しますセンパイ!」


 来る前は乗り気ではなかったが、知らぬうちに騒ぐ気満々で繰り出していた。
 この数日間積もりに積もった鬱憤を、漸く晴らせそうだった。
 暗い雲はどこかへ飛んでいった。
 ふんと鼻を鳴らして、射してくる陽に向かって僕は洋々と歩き出した。




.


21 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:17:29 ID:8EOsmnGwO
 







川 ゚ -゚)「遅い」


 夕食をつくり、あとは椀に白米を盛って、味噌汁を出すだけでいい。
 久方ぶりに得意料理の小籠包をつくったし、私としても早く夕食にありつきたかった。

 ブーンなら、仕事が終われば真っ先に帰ってくるし、残業や呑みに行くならその都度連絡を入れてくる。
 定刻を大きく過ぎてなお連絡がない場合は、まっすぐ帰ってくるに同義なのだ。
 そのブーンが、まだ帰ってこないし、連絡も寄越さない。

 彼が交通事故に遭うことなど、まずないとみていいだろう――とまで考えて、思考を一旦止めた。
 家族が交通事故に遭うなど、想定すらしてはならないハプニングである事を失念していたのだ。
 愚かだ、と自分で自分を叱った。

 とにかく、余程のイレギュラーがなければブーンが遅れて帰宅するなど、まずないのだ。



川 ゚ -゚)「食べたいな」

川 ゚ -゚)「しかし夫を待たなくては」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「……食べたいな」


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22 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:20:49 ID:8EOsmnGwO
 


 私は、目の前に甘い飴があれば、後先考えずに食らいつく性分なのだ。
 愚直と言うか、本能に忠実というか。
 小籠包の脂ぎった匂いが鼻に入ってくるだけで、つい食べてしまいたくなる。

 しかし、仕事で疲れた夫を待ってから食べるのが、妻としての責務だ。
 親しき仲にも礼儀ありと言って、そこいらはきちんと守っている。



 どうやら私とブーンは子宝に恵まれていないようで、子供はいない。
 いれば、子供を口実に先に食べるという手もあるのだが、そうはいかなかった。
 子供は欲しいと思うし、まだまだ出産はできるが、どうも子供ができないのだ。

 やはり、歳か。ふと、私はそう思った。
 昔は美貌にものを言わせてぶいぶい言わせてきたが、歳には抗えない。
 といえど、私はまだまだ三十ウン歳である。
 歳を気にし始めるようでは、到底だめだ。


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23 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:23:11 ID:8EOsmnGwO
 

 そのうち、遅れている理由について模索していた。
 金曜日ではないため上司に誘われた訳でもないだろうし、残業はないと言っていた。

 レンタルビデオショップで目移りさせているのだろうか。
 それなら納得ができる。あの人は、昔からアニメや映画が好きだ。
 先週、例のビデオを封印したせいで、ビデオ欲が抑えきれなくなったのかもしれない。



川 ゚ -゚)「……あ」

 そこまで考えて、ふと、脳裏にある可能性が生まれた。
 もしかしたら、そのことに腹を立て、私に呆れてしまったのだろうか。
 不吉ながらも、そんな思考が脳裏に浮かんできた。


川 ゚ -゚)

川 - -)

川 ゚ -゚)「くだらない事は考えないでおこう」


 自分に言い聞かせるようにそう言って、先に風呂に入る事に決めた。
 この調子なら、あと三十分は帰ってこなさそうだったからだ。




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24 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:26:00 ID:8EOsmnGwO
 








 居酒屋は、こじんまりとした外装と違い、中は大盛況だった。
 一見すると衛生面にまで手が回ってないのではないか、
 とすら思わせる外装だっただけに、これは意外だった。

 のんびり呑んでいる人もいれば、馬鹿騒ぎしている集団もいる。
 この店の居心地が相当いいようで、空席の方が目立っていた程だ。
 僕はそんな気分ではなかったが、つい騒ぎを聞くと混ざりたくなる。

 当然、抑えたが。


(*゚∀゚)「こちら生ふたつと焼き鳥でーっす!」

(;*=゚ω゚)ノ「ど、ども!」


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25 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:27:54 ID:8EOsmnGwO
 

 給仕が、ビールと焼き鳥を運んできてくれた。
 並々と注がれたジョッキを、一滴もこぼさず大胆に置いた。
 焼き鳥のほうは、ここからでもその旨そうなタレの匂いが漂ってくる。

 どうやら、この給仕が言っていた看板娘のようだ。
 確かに明るく溌剌としていて、童顔で可愛らしかった。
 背も低く声もアニメのようであるため、ついにやにやして目で追ってしまった。

 そして、伊予が緊張していた。
 どうやら伊予のタイプらしい。
 全然歳が違うじゃないか、とは言えなかったも、眼で「諦めろ」と言った。


( ^ω^)「おっおっ。今のが?」

(=゚ω゚)ノ「はいッス! つーちゃんという大学生ッスよ!」

( *^ω^)「確かに可愛いお。眼の保養になるお」

(*=゚ω゚)ノ「自分もそう思ってました!」


 ちいさな身体をいっぱいに使い、あれやこれやと職務をこなしている。
 商事会社が多いこの地域では、平日の晩は忙しいだろう。
 そのせいか、休む間もなく彼女は動いていた。
 茶髪の髪から垂れる汗が、それを物語っていた。


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26 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:33:51 ID:8EOsmnGwO
 


( *^ω^)「伊予、ああいうコがタイプなのかお?」

(;*=゚ω゚)ノ「ななななにを言ってるんスか!」

( *^ω^)「ごまかすでないぞ!」

(;*=゚ω゚)ノ「センパイ酔うのはやすぎッス!」


 景気づけに、ビールをがぶっと呑んだ。
 やはり、ビデオを失った今、仕事疲れを癒せるのはアルコールだけだ。
 そのアルコールが全身に染み渡り、早速いい気分になってきた。

 上唇に付いた泡を拭うことなく、続けて焼き鳥を頬張った。
 弾力が強く、一度噛む度に肉汁が溢れだし、先ほどのアルコールに混じらんとしていた。
 続けて一度、もう一度、と噛み続ける。
 やはり肉の質感がしっかりとしていて、喉の奥に運ぶのが惜しいと思われた。

 続けて噛んだ葱も、またこの肉とよく合っていた。
 独特な甘味が焼き鳥の旨みと絡まり合って、まさに「至福」を生み出す。
 そこから、二つを胃送り出すべく更に呷ったビールが、最高だった。


( *^ω^)「くぉぉーッ!」

(*=゚ω゚)ノ「いい呑みっぷりッスねセンパイ!」


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27 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:35:43 ID:8EOsmnGwO
 

 僕がぷはぁと息を吐くと、今までの暗い気分までもを吐き出せたように思えた。
 そのタイミングを計りでもしていたのか、同時に給仕が後ろから顔を出した。
 どきっとした伊予を見て、笑いながら振り向くと


(*゚∀゚)「こちらつーちゃん特製おむすびっす!」

( ^ω^)「おむすび?」

(*=゚ω゚)ノ「ど、どもッス!」


 給仕が差し出したおむすびを見ても、普通のおむすびだった。
 つーちゃん特製おむすびと言っていたが、一見普通のおむすびだ。

 それを照れながら伊予が受け取った。
 再び裏方に回った彼女を見送ってから、僕は伊予の顔を見た。
 彼女に見惚れている。


( ^ω^)「なんだおこのおむすび」

(=゚ω゚)ノ「つーちゃんがせっせと握ってくれたおむすびッス!」

( ^ω^)

 嘘だ、さっきからずっと彼女はホールにいたぞ。
 伊予、君は騙されている。
 だが、口には出さずに胸中にしまっておいた。


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28 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:41:40 ID:8EOsmnGwO
 

 そうとは知らず、伊予はレビューを続ける。
 目が、会社では絶対お目にかかれない程に輝いていた。

(*=゚ω゚)ノ「彼女の愛情が詰まってるんスよ!」

( ^ω^)「あ、ああそうなの」

(*=゚ω゚)ノ「この米粒ひとつひとつの輝き、全部がつーちゃんのココロなんス……」

( ^ω^)


 しれっと気持ち悪い言葉も言う伊予だが、未だホールで
 動き回っている彼女を見ていても全く不審に思っていないのだ。
 顔が笑いで歪むのを、顔面の筋肉を強張らせ必死で堪えた。

 そのおむすび、裏で額に脂汗浮かべる中年が握っているのだぞ
 ――と明かしたい衝動に駆られるも、伊予の落ち込みようが計り知れないだろうから、やはり言えない。
 いっそ、そのままそっとしておく事に決めた。
 知らぬが仏、という便利な言葉が世の中にはあるのだ。

 少しして僕も一つ貰ったが、どう考えても普通のおむすびだ。
 塩分が多めでビールが進むし、ややかためで噛む事の幸せを与えてくれるのは確かだった。
 ただ、こんなちいさなおむすび二つで三百円もすると言う。
 とても、頼もうとする気にはなれなかった。


( ^ω^)「おむすびもいいけど焼き鳥が旨いお」

(;=゚ω゚)ノ「そうスか。おむすびもいいのになぁ……」

( ^ω^)「せめて、なにか具が欲しいお」

(=゚ω゚)ノ「それは言えてるッスがね」

.


29 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:43:19 ID:8EOsmnGwO
 


(=゚ω゚)ノ「……それはそうと、係長も元気だしてくれて、自分は嬉しいッス」

( ^ω^)「え?」

(=゚ω゚)ノ「だって、昼間はずっと、生きた屍って感じッしたよ」

( ^ω^)

(=゚ω゚)ノ「……?」

( ^ω^)

( ^ω^)

( ;ω;)「……そうだお! おいブーン、こんなとこでなにやってんだお!」

(=゚ω゚)ノ「あ」


 伊予に言われて、忘れかけていた悲哀が漸く蘇った。
 いま、こうして楽しく過ごしても、家に帰れば再びそれはやってくるというのに。
 寧ろ、今の享楽的なひとときの反動が襲いかかり、途端に落ち込むだろう。

 僕は、それを忘れ、馬鹿みたいにはしゃいでいたのだ。
 おそらく、伊予に言われなければ、ずっとこの調子だったに違いない。


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30 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:46:14 ID:8EOsmnGwO
 

 もう、この悲痛な別離から逃れたい。
 現実を放棄して、酔いしれたい。

 そう思うと、途端に酒を呑むスピードがあがった。
 一気飲みに近い要領で、ただひたすらジョッキを傾けた。
 こうなったらやけくそだ。


( `ω´)「おおおおおッ! 明日の事なんか知るか!
      ええい伊予、今夜は一晩中呑むお、付き合えい!」

(=゚ω゚)ノ「とは言ってもなぁ……」






 三十分後。



( *‐ω‐)「ぐーすかぴー……」

(=゚ω゚)ノ「この人、お酒はいるとすぐ寝ちゃうからなぁ……」

( *‐ω‐)「つんちゃーん……」

(=゚ω゚)ノ「にしても、まさかセンパイにそんな悩みがあったとは……」

(=゚ω゚)ノ「これは渡辺ちゃんに知らせないと」

( *‐ω‐)「つーん……」




.


31 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:49:51 ID:8EOsmnGwO
 





 霞がかっていた景色の向こうにいる人に、声をかけた。
 僕は、伊予と呑み続け、三軒目に向かおうとしていた最中だ。
 伊予に「次いくぞ」と連呼しているが、霞の向こうの人物は返事を寄越さない。


 ――やい伊予、僕を無視するなんていい度胸じゃないか!

( `ω´)「伊予、もう一軒いくお!」

川 ゚ -゚)「もういいよう、なんちって」

( `ω´)「そうつれないことを言うでないぞ!」

川 ゚ -゚)「つれないだけにそんな言葉じゃ釣れないぞってやかましいわ」

( `ω´)

( ^ω^)

( ^ω^) !


 僕は夢を見ていたようだった。
 頭が痛い。二日酔いだろうか。

 目を覚ますと、真上にはクールがいた。
 黒髪が垂れている。毛先が僕の頬を擽っている。

( ^ω^)

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「おはよう」

川 ゚ -゚)「おはよう」

( ^ω^)

川 ゚ -゚)

.
33 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:51:18 ID:8EOsmnGwO
 


 クールはいつも以上に真顔になっている。
 これはもうだめかもしれない。


( ^ω^)「会社にいかないと……」

川 ゚ -゚)「まだ六時だから大丈夫ですよ」

( ^ω^)「じゃあ掃除でもしてくっかぁ……」

川 ゚ -゚)「待て」





  「遅れる時は連絡いれろやァァァァァァァァァァァッァア!!」

  「許しておォォォォォォォォォォォォォッッ!!」




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34 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:52:55 ID:8EOsmnGwO
 

( ^ω^)「あれ。どうして僕はここにいるんだお」

川 ゚ -゚)「伊予さんが運んできてくださったのですよ」


 わかっていた。なんとなくで予想はついていた。
 逆に、それ以外で説明がつく筈もなかった。
 
 たまにそうして、伊予が僕を運ぶことはあるのだ。
 タクシーを拾い、僕を担いで。
 一応僕の家で呑むこともあり、なんの迷いなしに辿り着いたことだろう。
 その時のクールの困りようが、手に取るように瞼の裏に浮かんだ。

 これはまずい。なんとかしてごまかさないとまずい。


( ^ω^)「くそ、伊予のやつ……上司である僕を引っ張りまわして……」

川 ゚ -゚)「変に言い訳したら許さん」

( ;ω;)「僕が引っ張りまわしましたお!」

川 ゚ -゚)「正直に言ってくれて、クール嬉しい」

( ^ω^)「そう? 嬉しい? やったお、クーが喜んでくれて」

川 ゚ -゚)「ははは」

( ^ω^)「ははは」


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35 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 18:55:47 ID:8EOsmnGwO
 

川 ゚ -゚)「もう。悪い子にはお尻ぺんぺんだぞ?」

( ;゚ω゚)「あああああッああああああああああっっ!!
      布団叩きはらめぇぇぇぇぇッ!!
      尻が割れるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッぅう!!」


 クールが布団叩きで尻を叩く時の痛みは、
 断崖絶壁から尻餅をつくよう落下して岩に尻を叩きつけたのかと誤解する程に痛い。
 布団叩きを地面に水平に傾け、骨にぶつけてくるせいでもある。
 また、メジャーリーガーも絶賛する完璧なフォームで振り抜くのだから、尚更なのだ。


川 ゚ -゚)「じゃあ素手で」

 そう言って、平手でビンタがはじまった。
 手加減してるのか、布団叩きのせいで神経が
 麻痺しているのか、さほど痛みは感じられなかった。
 だから、だろう。またおふざけしてしまった訳は。


( *゚ω゚)「あ、そこ。もーちょい上。強くしてくれお。おおお……」

川 ゚ -゚)





 そして、クールの正拳が肛門に突き刺さった。
 結果的に言うと、そのせいで、今日一日椅子に座れなかったのだ。



川 ゚ -゚)「フンッ」

( ;゚ω゚)「ぎゃあああああああああああああああああああッッ!」



.


36 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:00:15 ID:8EOsmnGwO
 






( *^ω^)「いってくるお」

川* _ )「……いってらっしゃい」


 前もって触れておくと、僕とクールの顔が紅潮しているのは気のせいだ。目の錯覚だ。幻覚だ。
 朝から騒ぎすぎたせいで、すっかり顔が紅くなってしまっただけに過ぎない。

 だが、そのせいで出勤前から随分と疲労を溜めてしまった。
 結局は出勤するのに程良い時間帯になったから、どうだっていいのだが。


( *^ω^)「帰ってからもするかお?」

川 ゚ -゚)「今日はだめ」

( ^ω^)「今日はって。さっきも今日だおね」

川 ゚ -゚)「とにかくいってらっしゃい」


 見送られ、手を振り家を後にした。
 足取りは軽やかだ。

 のんびり出勤できるいい時間であり、日頃からこう出勤できたらどれだけ心地よいことか。
 だが普段だと、ビデオを観る観ないの壮絶な争いが起こるため、だいたい遅刻ぎりぎりなのだ。
 冒頭にて、ビデオを休日しか観ることができないと言った理由のひとつはこれだった。

 だが、今となってはその諍いすら生じ得ない。
 ジレンマとも言えよう。まさに善悪どちらとも言えない、複雑な心境だった。


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37 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:03:03 ID:8EOsmnGwO
 

 家をでてすぐそこの小さな交差点は、赤信号が構えていた。
 のんびり待っていると、右の方から誰かが駆けてくるのがわかった。
 出勤か登校か、とにかくその類であることには違いなかった。

 だが、人物が意外だった。


(*゚∀゚)「えっほっえっほ」

( ^ω^)「お?」


 いつしか、というより昨日だ。
 昨日の居酒屋で見かけた給仕が、走っていたのだ。
 見た目から察するに、大学に登校するのだろう。

 気がつくと、僕は彼女を呼んでいた。


(*゚∀゚)「あっ昨日の! 昨日は店に来てもらってあざーっす!」

( ^ω^)「おっおっ」


 彼女は、店のマニュアルにもないであろう程深々と御辞儀をした。
 昨日随分と働いたばかりだってのに、朝から元気溌剌としている。
 その元気の量は僕と正反対で、正直言って羨ましかった。
 こんな発想を抱くとは、僕も歳なのだろう。

 しかし、なんと珍しいことだろう。
 昨日出会った人と、境遇を変えて出会えるのはそうそうない話だ。
 彼女も、別段急いでいる訳ではなさそうなので、少し雑談へと洒落込んでいた。



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38 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:04:35 ID:8EOsmnGwO
 






 私は朝からなにをやってるんだか。
 独りでにそう思うも、言うほど気にはしていない。

 昨日つくったままだった小籠包は、ブーンが残さず食べてくれた。
 朝からビールと小籠包という組み合わせであるせいか、ブーンは泣いて喜んでいた。
 良妻とは、こう夫を気遣える妻の事を言うものだ。



 ――もちろん、朝からのビールと小籠包はただの嫌がらせだ。


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39 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:06:02 ID:8EOsmnGwO
 


 下らない事に思考を巡らせるのをやめ、踵を返して玄関に向かった。
 ブーンから取り上げたビデオ、返してもいいかな、と思い始めていた。
 懲りずに観たがる癖を直せば、管理を一任してもさほど問題はなさそうだからだ。

 今の彼の場合は、依存が過ぎる。
 それをなんとかすべく、制止を振り切り取り上げただけで。
 私としても、できることなら禁止令などは敷きたくない。
 最愛のブーンにとっての、至高の娯楽を奪うことになるからだ。

 良妻である私は、彼の心の隙間を理解している。
 早いうちに、ブーンのビデオ依存を改善させてあげたい。



 ――尤も、更にいじめてブーンが泣く姿を見たい気はするが。

 サディズムである訳ではない。
 ただ、ブーンが好きなのだ。


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40 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:07:18 ID:8EOsmnGwO
 


(*゚∀゚)「あっ昨日の! 昨日は店に来てもらってあざーっす!」

( ^ω^)「おっおっ」


 ノブに手をかけた瞬間、よく通る女の声とブーンの笑い声が聞こえた。
 若い女の声が気になって、そっと顔を覗かせた。

 高校生くらいに見える女が、ブーンと向き合っていた。
 そして、笑いを含みながら女から話しかけてきた。


(*゚∀゚)「内藤さん途中でいきなり寝ちゃうから驚いたっす!」

( ^ω^)「ちょっと僕、あの雰囲気苦手で……」

(*゚∀゚)「いやいやいやいや、かーなり通い慣れてるっしょ!」

( ^ω^)「まあ、そうだけど……」


 はきはきと話す女に対して、ブーンは言葉を濁している。
 しかし、それ以上に気にかかったことがあった。



川 ゜-゚)「(店? 寝る? 雰囲気?)」


.


41 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:08:54 ID:8EOsmnGwO
 


(*゚∀゚)「うちはまだまだレパートリーも選り取り見取りなんで、またきてくださいっすね!」

( ^ω^)「次もつーちゃんのを食べるお!」

川 ゜-゚)



 待て。
 不吉な言葉が立て続けに聞こえた気がした。


川 ゜-゚)「(レパートリーが選り取り見取り? つーちゃんの? 食べる?)」



(*゚∀゚)「じゃっ大学があるので! 失礼します!」

( ^ω^)「頑張るんだおー」


 女は大学生だった。
 歳に反して、見た目は高校生くらいだった。
 しかし、今はそんなことはどうでもよかった。


川 ゚ -゚)  ( ^ω^)「ブーンも行くかお」

川 ゚ -゚)  ( ^ω^)

川 ゚ -゚)  (^ω^ )

川 ゚ -゚)  ( ^ω^ ) ?


.


42 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:10:44 ID:8EOsmnGwO
 

川 ゚ -゚)「ブーン、ちょっと来い」

( ^ω^)

(;^ω^)「え!? なんで!?」




 高校時代、ブーンと付き合い始める一年前だ。
 あるうるさい友人からは、私は一度相手を好きになったら
 盲信的に愛してしまう性格だ、と言われたことがあった。

 大人になって、ある程度は改善されたと自分でも思っていたのだが。


.


43 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:12:10 ID:8EOsmnGwO
 







 理不尽なまでにいたぶられた。
 さすがに怒ろうと思ったが、誤解と知ってから
 抱きついてきて必死に許しを請われた以上は許さざるを得ない。

 クールは、色仕掛けや誤魔化しを図った訳ではないのだ。
 彼女の場合、すぐに泣きそうな顔をして謝ってくる。
 何が何だかわからなくなった、という下りだろう。

 その時は許したのだが、いざ電車に乗ると、なぜか
 僕の周りだけが妙に空いていて、改めて情けなく感じた。
 鮨詰めとなる通勤ラッシュの電車内で、空間が生まれるのはおかしい。
 しかも、通り過ぎてゆく人々が皆、僕の顔を見てくるのだ。

 当時は理由がわからなかった。
 しかし、会社にやってきて、漸く真意が掴めた。



.


44 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:13:42 ID:8EOsmnGwO
 


从'ー'从「おはよーございまーす」

(`∠´)「うム、おはよう」


('、`*川「おはようございます」

(`∠´)「おはよう」


(;##)ω<)「おはようございますお」

(`∠´)「おはよう」

(`∠´)「ちょっと、誰だお前」


 真顔で、全く動作を見せないまま部長が言ってきた。
 あまりに不意打ちだったから、思わず身構えた。
 が、放たれた言葉はジョークととれるものだった。

 笑いながら、僕も返した。
 だが部長の顔は笑っていない。


(;##)ω<)「やだなぁ、内藤ですお」

(`∠´)「おりいって話がある」

(;##)ω<)「はい? 企画書まただめでしたかお?」

(`∠´)「企画書は完璧だった。いやそれよりもだなぁ――」


 珍しく、部長が口ごもった。
 なにか嫌なことがあるのか、と不安に駆られた。


.


45 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:14:53 ID:8EOsmnGwO
 

 すると、渡辺が部長の代わりに口を開いた。


从'ー'从「係長がまさしく顔面崩壊!」

从'ー'从「でしょ?」

(`∠´)「あくまで上司である内藤にぬけぬけと言えちゃう君は凄い。減給処分な」

从;'ー'从「えっ!?」

('、`*川「あーらら」


 ああ、なるほど。
 皆が僕の顔に注目していた理由が、漸くわかった時だった。


(;##)ω<)「部長、そんなに顔やばいですかお?」

(`∠´)「その顔で昇給せがんだらすんなりあげてくれそうなくらいまずい。化粧室行ってこい」

(;##)ω<)「わかりました」




 そして、絹を裂くようなおのこの悲鳴が響き渡ったのは、すぐ後だった。



.


46 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:17:13 ID:8EOsmnGwO
 

 腫れを治し、ついでに顔を洗った。
 傷に結構染みたが、耐えられない訳ではなかった。

 だが、それよりもクールに鬼のような〝無〟表情で
 引っかかれたあの場面を思い出して、背筋が冷たくなった。


 そして戻ると、課内はなにやら騒がしくなっていた。
 仕事中だと言うのに何をしているのか、そして部長はどうして注意をしないのか。

 不審に思い、足取りを速めて入ったところ。
 どうやら、そのベル部長当人も、その騒がしさに荷担していた節があったようなのだ。
 なぜか、僕が入室したと同時に急に余所余所しい雰囲気になり、皆そそくさと持ち場に戻った。
 
 変な気分になり、自分もデスクに就こうとした時、ベル部長に呼び出された。
 さっきの今だから、何を言われるのか予想がつかなかった。
 ベル部長は、深刻な雰囲気を醸し出して、訊いた。


(`∠´)「内藤、ちょっと」

( ^ω^)「なんですかお?」


.


47 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:18:42 ID:8EOsmnGwO
 

(`∠´)「お前、最近ツンって子に夢中なんだな?」

( ^ω^)「あ、それは」

(`∠´)「アニメに夢中になるのはいいが、程々にしないと仕事に支障を来すぞ」

( ^ω^)

(`∠´)「アニメが原因で嫁と喧嘩する気持ちもわからなくはないが、な」

( ^ω^)

( ^ω^)

( ;゚ω゚)「え?」


 唐突に、そう言われた。
 同時に、課内にいる者の多くの吹き出し笑いが聞こえた。

 そんなことはどうでもよかった。
 それより、どうしてそれを知っているのか、それが気になったのだ。
 僕の中のトップ・シークレットであり、妻のクール以外には知られてない筈である。

 また、部長は勘違いをしている。
 それを正さなければならない。


(;^ω^)「どうしてそれを!」

(`∠´)「気にするな。誰も内プッ藤を馬鹿にしたりしない」

(;^ω^)「違いますお! 話を聞いてくださいお! あと笑ったお!?」


.


48 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:20:30 ID:8EOsmnGwO
 


(`∠´)「みなまで言わなくてもいいぞ。これは営業課だけの秘密だ」

 部長は、ハハハと高笑いを放ちながら言った。
 これでは弁解の余地も与えてもらえない。


从'ー'从「係長ってオタクだったんだぁ……」

('、`*川「しーっ」

(;^ω^)「おいそこ! うるさいお!」

(`∠´)「お前たちもそろそろ持ち場に就け」

从'ー'从「はーい」

(;^ω^)「待って! みんな話を聞いてお!」


 僕の懇願空しく、部長の鶴の一声に皆があっさり従った。
 ふざけるな、と言いたい。
 普段はもう少し不真面目な連中ばかりなのに、今日に限って一致団結していたのだ。

 OLの渡辺も、僕を見てニヤニヤしながらそそくさと出て行った。
 あいつなんか、普段は寧ろ手を抜きすぎて怒られている程だというのに。

.


49 :名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 19:21:47 ID:8EOsmnGwO
 

 しかし、なぜこの情報が漏れたのか。
 そのことが気がかりになっていた。
 気が付くと、誰にも話してない筈の話を、誰もが知っていた。

 少し思考を巡らせると、一つの可能性が浮かんだ。


( ^ω^)「(まさか、伊予に喋っちゃった?)」


 その可能性はあり得る。
 居酒屋で、酒の勢いに乗ってあれこれ話してしまったかもしれない。

 そう思って、伊予をじっと睨んだ。


(;=゚ω゚)ノ「ひッ!」

( ^ω^)

( ^ω^)「伊予……わかりやすすぎるお……」



 思った通りであって、伊予はすぐに身体をびくつかせた。
 今度、伊予には何か酷い目に遭わせてやらないとだめなようだ。




.


その2へ→
目次へ

( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです 第2話 

39 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:22:10 ID:RkuD/2ewO
~ブーン自宅~


  ( ^ω^)
_(_つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/カタカタカタ……

  ( ^ω^)
_(_つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/ポチ

  ( ^ω^)
_(_つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/

  ( ^ω^)「……」
_(_つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/


  ( ^ω^)「……うん」
_(_つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/___/





( ^ω^)「皮オナをフツーのオナニーだと思ってた……」

40 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:23:47 ID:RkuD/2ewO

( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです

その二「性欲豚、夜這い専門店に行く」

41 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:31:34 ID:RkuD/2ewO
~大学食堂~

( ・∀・)「そう言えばビップラに良い店を見つけたんだけど」

(´・ω・`)「へぇ。どんな風俗?」

( ・∀・)「バカ、風俗ちゃうわい。ただの飲み屋だよ」

( ^ω^)「お前が店って言うと如何わしい匂いしかしねーお」

( ・∀・)「ぐぬぬ……」

(´・ω・`)「ビップラか。確かに近いけど、そう言えばあんまり行かないよね」

( ^ω^)「僕らが遊ぶと言えばシベリアかニューソクに行くもんね。」

( ・∀・)「ふふ、お前らビップラをナメるなよ」


42 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:37:50 ID:RkuD/2ewO

( ・∀・)「なんと飲み放題1300円だ」

(´・ω・`)「へ、それだけ?ならシベリアにも1000円飲み放題があるじゃん」

( ・∀・)「違う違う。当然それだけじゃないのさ」

( ・∀・)「なんと、無料でTKG食べ放題だ」

( ^ω^)「!!!」ピクッ

(´・ω・`)「ほぉ、すごいね……飲み屋の卵かけご飯がどんなもんかは知らないけd」

( ^ω^)「行こうお!!」

( ・∀・)「お前なら言うと思ったぜブーン!!さすがだ!!」

(´・ω・`)「……さすがブーンだね、ホント」

( ・∀・)「ショボンも行くだろ?」

(´・ω・`)「そりゃあ、こんなに君たちが乗り気なら行くしかないでしょ」

( ・∀・)「決まりィ!!」


43 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:44:15 ID:RkuD/2ewO

【移動中】


~今更な登場人物紹介~

( ^ω^) ブーン
・豚。顔面偏差値は髭のないカールおじさんレベル
・もちろん童貞でもちろん彼女いない

( ・∀・) モララー
・リア充。テンプレートな大学生
・彼女持ちだけど奔放に遊んでそのうちフラレるタイプ

(´・ω・`) ショボン
・ガチムチ体育会系。
・よく勘違いされるがホモではないらしい
・でも好物はホルモン


皆ビップ大学の2年生。
今日は隣街のビップラの繁華街に攻め込むぞ。

45 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 00:08:43 ID:8eiz5JTUO

~ビップラの居酒屋にて~

(;^ω^)「ハムッ!!ハフッ!!ハフハフ!!」

(´・ω・`)「うわぁ……」

(;・∀・)「何杯いった?こいつ……」

(´・ω・`)「いま6杯」

(;・∀・)「バカ飲みしながらこれとは……正気の沙汰じゃねえ……」

(;^ω^)「うまい!!うまいお!!やべぇお!!ご飯に卵かけただけなのに!!どうして!!ハフハフ!!」

( ・∀・)「すげぇなあ。とりあえずこっちはちびちび行きますか」

(´・ω・`)「だね」

( ^ω^)「……で」

( ^ω^)「この後どうするお?」

( ・∀・)「話すのはどんぶり置いてからにしろ、な?」


46 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 00:24:14 ID:8eiz5JTUO
( ・∀・)「とりあえずそこらは歩きながら決めようと思う」

( ^ω^)「ほう。でも例によって、あんま金ないお」

(´・ω・`)「僕も」

( ・∀・)「そんな金はたくような場所にはいかねーよ。とりあえずオールする勇気だけもっとけ」

( ^ω^)「お!」




~ビップラ、繁華街~


( *・∀・)「ふぃー」

( *^ω^)「食ったお……」

(´・ω・`)「12杯いったね。これにはさすがの僕もドン引きだよ」

( ^ω^)「TKGの魔力恐るべしだお……な、モララー?」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「? モララー!」

( ・∀・)「……あれとか、どうだろう」

(´・ω・`)「あれ?」


47 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 00:33:50 ID:8eiz5JTUO


『5F 夜這い専門:ヨバイルドットコム』←雑居ビルの看板

( ^ω^)「ヨバイル……」

( ・∀・)「ドットコム……」

( ・∀・)「……夜這い……」

( ^ω^)「夜這い……!」

(´・ω・`)「……金はたく場所には行かないんじゃなかったの……?」

( ・∀・)「……と、とりあえず話だけ……?」

( ^ω^)「30分5000円か……」

(´・ω・`)「ノリノリじゃねえか」


48 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 09:15:14 ID:8eiz5JTUO
~5F~

( ∵)「おっいらっしゃいませ」←店のおじさん。見たことある気がするのは気のせいだよ

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「……」

( ∵)「おや、兄さんがた『この店は何する店なんだ』と聞き出そうな顔ですね」

( ・∀・)「まったくもってその通りです。何が出来るの?」

( ∵)「説明しますか」

( ・∀・)「頼む」
( ∵)「当店は責め有りのピンサロと言いますか、女の子を好きにできます」

( ∵)「だからまぁ、おっぱい好きにしたり、手めこだとかもやりたい放題してくれていいです」

(´・ω・`)「ほぅ」

( ∵)「さらにこの店の醍醐味としては手錠や首輪や目隠し、ローターやバイブなんかもあるからお好みでガツガツ女の子を攻めちゃってください」

( ・∀・)「なんだと!そいつぁいい!」

( ∵)「お兄さんアブノーマルお好きそうな顔してますもんね」

( ・∀・)「大好きだよ!」


49 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 09:22:18 ID:8eiz5JTUO
( ∵)「その攻めの時間が10分、そこから抜きの時間が20分ですね」

( ・∀・)「なるほど、これはいくしかないな」

( ^ω^)「お……」

(´・ω・`)「アブノーマルなのやってみたいよね」

( ^ω^)(ノリノリだこいつら……言えない……DTだからそんなプレイまだまだ恐れ多いとか言えない……)

( ・∀・)「よし、30分5000円だよな?それでいく!」

( ∵)「ありがとうございます!即諾してくれたからには、こちらも何かとサービスしますよw」

( ・∀・)「よっしゃそうこなくちゃ!」

( ∵)「では一人5000円、お願いしますね」

( ・∀・)つ「じゃあまぁ、一括で」

( ∵)「はい、確かに」

(´・ω・`)「ごちです」

( ・∀・)「ざけんな後で返せよ」

( ∵)「あ、あとみなさん爪の確認だけさせてもらっていいですか?」

( ・∀・)つつ「はいよ」

( ´・ω・)つつ「はい」

( ^ω^)つつ「お」

( ∵)「……はい、オッケーです。じゃあそのまま椅子に座ってお待ちくださいね!」

51 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 10:05:18 ID:8eiz5JTUO
( ∵)「はい、まず誰からいきますか?」

( ・∀・)「じゃあブーン。お前いけよ」

( ^ω^)「え、あ、僕!?」

( ・∀・)「もちろん。切り込め童貞」

( ^ω^)「おいこの野郎」

(´・ω・`)「wwwwww」

( ∵)「じゃあ兄さんから!ついてきてくださいねー」


(((( ^ω^)((((( ∵)




( ^ω^)「うお……」

中に入れば、また自分一人寝転べばそれでいっぱいになるようなスペースに案内された。
前回と違うのは、そこに手錠や目隠し、その他各種器具が用意されている事。

こんなものをDTたる僕が使いこなせるのか、との不安が大きいところだ。

( ∵)「ビールかお茶が無料でつきますけど、どちらにします?」

(;^ω^)「あ、じゃあお茶で」

( ∵)「はい。じゃあこのままお待ちくださいね~」

(;^ω^)「お……」


52 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 10:17:59 ID:8eiz5JTUO
というか、これのどこらへんが夜這いなんだろうか。
夜這いって確かこう、押しかけソフトレイプ的な。
そんなイメージがあるんだけど。
エロゲで見た事がある。

( ^ω^)「……」ごくごく

運ばれたお茶を飲みながら待つ事数分……

女の子はきた。

「こんばんわ~」

(;^ω^)「おっ」

川*` ゥ´)「どうも☆えへっ」

( ^ω^)


ふくよか……否。
ぽっちゃり……否々。
少し大きめの女の子だった。

( ^ω^)(oh……)


53 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 10:29:19 ID:8eiz5JTUO

( ^ω^)(やべぇ……この子、僕と体型かわらんやん……)

その子の服装はネグリジェ?キャミソール?
種別に疎いのでよくわからないが、とにかくエロい。
しかしその下から見える腹回りが、悲しい。

川*` ゥ´)「今日は飲み会か何かの帰り~?」

(;^ω^)「え、あ、うん。そうだお」

川*` ゥ´)「じゃあけっこう酔っちゃてる感じ?」

(;^ω^)「い、いや、そんな事は……ないけど」

川*` ゥ´)「うふふ、どうしたの?なんでそんな緊張してるのかな~?」

(;^ω^)「う」

そう言いながら、扇情的な目で服の上から股間をこすってきた。
ここらあたり、やはり股間は正直だ。

川*` ゥ´)「ふー……」

(;*^ω^)「うおっ!」

川*` ゥ´)「きゃはっ!可愛い♪」

(;^ω^)「あうあう……」

さらに耳に息をかけられ、思わず腰が浮く。
意外だ。この子、予想と違いかなり積極的なタイプだ。
正直、デブをなめていた。
まずい。うまく反応出来ない。

川*` ゥ´)「んふふ……」

その僕のコミュ障ぶりのせいか、その子は少し勘違いしたサービスに入ってきた。


54 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 10:33:54 ID:8eiz5JTUO


川*` ゥ´)「……あんた」


川*` ゥ´)「ドMでしょ?」



(;゚ω゚)「えっ?」

川*` ゥ´)「ふふ、わかるよ。アタシみたいなのにいいようにやられて、ちんこがこんなに反応してんじゃん……」

(;*^ω^)「うあ……それは……違……」

川*` ゥ´)「違わないでしょ!」

(;゚ω゚)「ふおっ!」

あろうことか女の子は膝で股間をぐりぐりしてきた。
しかしシチュエーションがシチュエーションだからか、不思議と痛くはなかった。

同時にそれがまた悲しい。DTの身にして、そんなアブノーマルな扉、開きたくはないというのに。


55 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 10:55:26 ID:8eiz5JTUO
川*` ゥ´)「ほら、服脱いで」

(;^ω^)「うあ……」

こうなってしまえば為すがまま。男子の尊厳なんのそのだ。

言われるままに服を脱ぐ。
それをニヤニヤと眺めるデブ。
こうして素直にしたがったのがいけなかったのか、デブはなんと

(;^ω^)「えっ」ガチャリ

川*` ゥ´)「んふふふふ」

川*` ゥ´)「手錠、かけちゃった☆」

(;^ω^)「えええ?あ、あのぉ……!?」

手錠をかけられた。

川*` ゥ´)「好きでしょ?こういうの」

(;^ω^)「あ、あの……でも」

川*` ゥ´)「口答えしないの」

(;^ω^)「あ、ああああ……」ガチャガチャ

(;^ω^)(はっ……話と違ううううううう!!!!)

57 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 12:32:34 ID:8eiz5JTUO
川*` ゥ´)「ふふふ、硬くしちゃってもう……♪」

(;*^ω^)「や、やめっ……」

川*` ゥ´)「なぁに?やめて欲しいのぉ~?」

そわそわとこちらをおちょくるかのように股間をソフトタッチしてくる。
それがとてももどかしく、同時に心の奥底の何かが刺激されていった。
……のだが、目の前にいるのがデブだと再確認したら怒りも込み上げてきた。

(;^ω^)(こいつの「これがいいんでしょ」的な表情が腹立つ……)

(;^ω^)(けど、なぜ反応するんだ我が愚息よ!)

川*` ゥ´)「じゃあどうしたいのか自分の口で言ってみなよ……♪」

(;^ω^)「うあ」

(;^ω^)「しゃぶって、ください……」

川*` ゥ´)「ど、こ、を~~~?」

(;^ω^)「うう……ち、ちんこ……」

川*` ゥ´)「聞こえなぁ~い」

(;^ω^)(UZEEEEEE!!)

(;^ω^)「ちんこ!早くちんこしゃぶってくれお!」

<プッwww

(^ω^;)「!!?」

隣の部屋から笑い声が聞こえた。


忘れていたのだが、このスペースは隣としきりにはなっているが、薄い壁一枚だ。
音楽はガンガンに鳴ってはいるが、当然ちょっとした声くらいは聞こえるわけだ。

つまり、この男の尊厳が無いちんこ発言が完全に漏れたのらしい。
死にたい。

( ;ω;)(……もうやだ……)

川*` ゥ´)「ふふふ。よく言えました」


58 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 12:41:58 ID:8eiz5JTUO
川*` ゥ´)「ホント必死だねぇ……もはや豚じゃんw性欲豚w」

( ;ω;)「あうあう……」

川*` ゥ´)「もう可哀想だから、外してあげるね」ガチャリ

( ^ω^)「お……」

やっとの事で手錠を外された。

そして、

川*` ゥ´)「寝転んで」

(;^ω^)「おっ……」

軽く放心中の僕を素直に寝転ばせた彼女は

川*` ゥ´)「よいしょ」

裸になって、逆向きに、上にのってきた。

(;゚ω゚)「!!!?」


僕が生の女性器を初めてみた体勢は、69だった。

川*` ゥ´)「ほら、好きにしていいんだよ」

(;゚ω゚)(うっ……)

(;゚ω゚)(うおおおおおおおおおお!!!)


59 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 12:58:48 ID:8eiz5JTUO




ぼくがはじめてたんのうしたおまんこは

     しょうどくえきのあじがしました。

                   ブーン


60 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 13:05:02 ID:8eiz5JTUO

~終了後、待合室~


( ^ω^)「……ふぅ」

( ^ω^)(なんとか今回はイケた……)

('A`)「……」

('A`)「あの」

( ^ω^)「はい?」

('A`)「どうでした?」

( ^ω^)「あ、はい」

( ^ω^)「なかなかよかったですよ」

('A`)「はぁ。なるほど。縛ったりしたんですか?」

( ^ω^)「縛られました」

('A`)

('A`)「素晴らしい」

( ^ω^)「ふふ……」

(´・ω・`)「ふぃー、ただいま」

( ^ω^)「お、ショボン」

(´・ω・`)「いやぁ、可愛い子が出てきてよかったよ。ぽっちゃりだったけど」

( ^ω^)「え? お前も?」

(´・ω・`)「うん。きつく縛ってあげたらかなり濡れちゃって、ほんと楽しかったよ」

( ^ω^)「うおお……」

(´・ω・`)「もうそれで満足したから抜かないで帰って来ちゃった」

( ^ω^)「うおおおおお……」


61 :名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 13:09:50 ID:8eiz5JTUO
(´・ω・`)「で、ブーンは『ちんこしゃぶってくれお!』だもんなwww」

(;^ω^)「!? ま、まさか……笑ってたのショボンかお!?」

(´・ω・`)「wwwwww」

(;^ω^)「貴様ァ……!!」

(´・ω・`)「でもよかったじゃない。あんまりアブノーマルな女の子じゃなくてさ」

(;^ω^)「はぁ?どこがだお。充分アブノーマルすぎるお……」







( ・∀・)「ただいまー!いやぁ、楽しかったね!俺の女の子がかなりのド変態でさぁ!攻めながら『首絞めて』っていうから絞めながら攻めたら大洪水!落ちる寸前までやってみたら惚けてきたから軽く挿入してやったらよがり狂ってやんの!めちゃめちゃ楽しかったよ!」

(´・ω・`)「……ね?」

( ^ω^)「……うん……」

((((*'A`)(……ドSこい……ドSこい……)



おしまい。


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目次へ

( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 01:28:47 ID:RkuD/2ewO

※この物語は性欲豚たるブーンが性欲豚らしく色んな風俗店やその他いろんなエロいお店に入り浸るだけのお話です。要するにエロ。

※18歳未満の良い子は見ちゃダメだぞ。

※作中に出てくるようなサービスをしてくれる店は探せば実際にありますが、だからといってこの話をアテにして言っちゃダメだぞ。

※別に作者の体験談とかでは断じてないです。ホントに。

2 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 01:30:31 ID:RkuD/2ewO



( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです


その一「性欲豚、ピンサロに行く」

3 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 01:39:31 ID:RkuD/2ewO

常々思うのだが、どれほどエロい男でも真の快楽を手に入れるのはオナニーの中ではないだろうか。
「セックスの方が心も満足するからいい」だなんて言うが、例えば彼女の妊娠を気遣ったり心の距離が合わなかったり
彼女の喘ぎ声が演技くさかったりなんかして、それこそ気苦労が多いんじゃないか。

いや、わかっている。これは肉欲視点の悲しい独り身の言葉で、人生の中で互いに満足し合える伴侶は必ず見つかるはずだ。

しかしまぁ、若い身ともなれば仕方ない部分もあるだろう。青臭いガキの垂れた合弁、真に受けるやつもいない。


何が言いたいかといえば、だからこそ僕は、そういうエロい店を否定なんかしない、という事。

そこに帰結するのだ。

5 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 01:48:46 ID:RkuD/2ewO
~VIP県、シベリア市~


( ^ω^)「………遅いお」

(´・ω・`)「遅いね、モララー」

(;^ω^)「あのバカ何やってんだお!!もう1時間も遅刻じゃねーかお!」

(´・ω・`)「まぁまぁ、別にあの居酒屋を予約してるわけじゃないんだし」

( ^ω^)「それでもあそこの居酒屋が満杯になったらどうするんだお」

(´・ω・`)「そん時ゃまた別の飲み屋探したらいいじゃん」

(;^ω^)「僕はあそこの鳥串が食べたいんだお!」

(´・ω・`)「また食べる事ばっかだね君は。どこでも変わらなくない?」

( ^ω^)「そんな事な………!」ピリリリリ

( ^ω^)「ん、電話。モララーからだ」

(´・ω・`)「さぁ、なんて言い訳が出るかな」


6 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 01:49:49 ID:RkuD/2ewO
~VIP県、シベリア市~


( ^ω^)「………遅いお」

(´・ω・`)「遅いね、モララー」

(;^ω^)「あのバカ何やってんだお!!もう1時間も遅刻じゃねーかお!」

(´・ω・`)「まぁまぁ、別にあの居酒屋を予約してるわけじゃないんだし」

( ^ω^)「それでもあそこの居酒屋が満杯になったらどうするんだお」

(´・ω・`)「そん時ゃまた別の飲み屋探したらいいじゃん」

(;^ω^)「僕はあそこの鳥串が食べたいんだお!」

(´・ω・`)「また食べる事ばっかだね君は。どこでも変わらなくない?」

( ^ω^)「そんな事な………!」ピリリリリ

( ^ω^)「ん、電話。モララーからだ」

(´・ω・`)「さぁ、なんて言い訳が出るかな」


7 :ミスった連投しちった:2012/03/24(土) 01:57:18 ID:RkuD/2ewO

( ^ω^)】「もしもし?」

『ふははははははははは!!!』

(;^ω^)】ビクッ!!

『おおブーン!!ブーンや!!』

(;^ω^)】「なに笑ってんだお。お前いまどこだお。猛遅刻かましやがってからに」

『いや、もうシベリアにいるんだよ。ってかさ、実は昼くらいにはシベリアにいてさ』

( ^ω^)】「はぁ?だったらなんで………」

『実は暇だったからさ、スロット打ちに行ったんだよね』

(;^ω^)】「………お前まさかそれで遅刻したとか言わないおね?」

『まさにその通りだが、怒るなブーン!!久々に大勝したんだよ!!』

( ^ω^)】「はぁ。何千円?」

『12万6千円!!』

( ゚ω゚)】

( ゚ω゚)】「………大至急きてください」

『がってん!ふひひひひひ』プツッ

( ゚ω゚)】プー、プー、プー

(´・ω・`)「モララー、なんて?」

( ゚ω゚)「………きた」

(´・ω・`)「えっ」

( ゚ω゚)「今日はただ飲みじゃああああ!!!」

(´・ω・`)「えっ」


8 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:05:10 ID:RkuD/2ewO

~ところかわって、居酒屋~

( *・∀・)「いやぁ!!最ッッッ高ですな!」

( *^ω^)「うらやましいお。スロットやパチンコ、打ちにいった事ないけど」

( *・∀・)「なんだブーン、一回はやりにいこうぜ。勝ち方ってもんを教えてやるよ!」

(´・ω・`)「知らなくていいよブーン。たまたま勝っても、トータルじゃ必ず負けるんだから」

( *・∀・)「いいんだよそれで。アミューズメントなんだからさ!」

(´・ω・`)「なら生活ギリギリになるまでやらないの」

(;*・∀・)「うっ」

( *^ω^)「僕も手を出すのは金が溜まってからにするお。………ってかショボン酒強くね?」

(´・ω・`)「そう?フツーだけど」

( *・∀・)「まぁもっと飲め飲め!今日は全額俺のおごりじゃーい!」

( *^ω^)「うおおお、モララー様ぁ!!」

(´・ω・`)「おお、マジかよありがとう!」

( *・∀・)「ひゃはははははははは」

10 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:10:38 ID:RkuD/2ewO
~深夜0時ほど、シベリア~

( *-∀-)「………ふぃー、飲んだ飲んだ」

(´・ω・`)「そうだね。今日は楽しく飲めたかな」

( *^ω^)「おっ。マジサンキューだおモララー」

( *・∀・)「なに、いいさいいさ」




( ・∀・)「で、こっからどこ行くかだが………」

( ^ω^)「カラオケでよくね?」

( ・∀・)「いやいや、何を言うか。今日は金があるんだぜ?」

( ^ω^)「?」

( ・∀・)「そしてここシベリアは夜の街。そうだろ?」

(´・ω・`)「まぁ、そうだけど」

( ・∀・)「じゃあ抜きにいくしかないっしょ!!」

( ^ω^)「えっ」

12 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:22:44 ID:RkuD/2ewO

(´・ω・`)「いいけど金がないんだよな。貸してくれる?」

( ・∀・)「はっ、なにしけた事言ってんだショボン。当然、これもおごってやるよ!」

(´・ω・`)「え、マジ?ありがとう!」

( ^ω^)「えっ、あの」

( ・∀・)「なに?ブーン」

( ^ω^)「いや、あのさ」

( ^ω^)「抜くって………風俗ってこと?」

( ・∀・)「? そうだけど」

( ^ω^)「あぁ、そうなんだ………あの、うん」

( ^ω^)「別にカラオケでよくね?」

( ・∀・)「え、なにブーン、今日はそういう気分じゃないの?」

(;^ω^)「え、いや、まぁ興味ないわけじゃないけど………」

( ・∀・)「あ、お前、もしかして行った事ないのか?そういう店」

( ^ω^)「うん、まぁ………」

( ・∀・)「だったらなおさら行こうぜ!何事も経験だろうが」

(;^ω^)「いや、でもなぁ………?」

14 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:29:43 ID:RkuD/2ewO
(´・ω・`)「わかってやりなよモララー」

( ・∀・)「?」

(´・ω・`)「こいつ、童貞なんだよ」

( ・∀・)「えっ、マジ?」

(;^ω^)「ちょっ!」

(´・ω・`)「だから初体験が風俗ってのは嫌だって言う、童貞なりのプライドだよ」

(;^ω^)「いや別に、そんなんじゃないって………」

(´・ω・`)「嘘つけ。行かないの?」

( ・∀・)「はははブーン、別に何も本番行為までやる店に行くわけじゃないから」

( ・∀・)「ちょっとしゃぶってもらったりこすってもらうだけ。それならいいだろ?」

( ^ω^)「おっ、そうなのかお?」

(´・ω・`)「モララーお前……さては予算を一人5000円程度にするつもりだな」

( ・∀・)「そんな最後までやるような店をおごってたまるか。こちとら少なからず貯金もしたいわ」

(´・ω・`)「………まぁおごってもらえるわけだし、文句は言わないけど」

( ^ω^)「………うん、それなら」

( ^ω^)「行ってみたい………かもだお」

( ・∀・)「決まりだな!」

16 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:44:19 ID:RkuD/2ewO
( ・∀・)「それなら………ちょっと歩くぜ」

(´・ω・`)「どんな店に行くの?」

( ・∀・)「うん、まだ決めてないんだよなぁ。シベリアはあんまりそういう目的で行かないしな……」

( ^ω^)「………」

( ・∀・)「とりあえず、そこらのキャッチの兄ちゃんにでも聞くとすっか」

(´・ω・`)「いいやつに当たればいいけどね」

( ・∀・)「なに、12万を引いた俺ならキャッチの兄ちゃんも良いのを引けるはず………」

( ・∀・)「噂をすれば、一人立ってるなぁ」



(=゚ω゚)ノ「おっ!お兄さん方、今から飲み屋なんか探してないかよぅ?ガールズバーとかどうですかよぅ?」

( ・∀・)「お、そうだ、兄ちゃん」

( ・∀・)「ここらへん、スッキリはある?」

(=゚ω゚)ノ「スッキリっすか。うん、予算はいくらくらいで?」

( ・∀・)「まぁだいたい一人4、5ってとこかな。やっすい店でいいからさ」

(=゚ω゚)ノ「あら、そう………か………。ううん、4、5となるとただのピンサロがしかないかなぁ。しかし兄さん、中途半端に金出してカビゴンにしゃぶられちゃたまったもんじゃないっしょ?」

( ・∀・)「まぁ確かに………しかし金欠に代わりはないからねぇ」

( ^ω^)「スッキリって?」ボソッ

(´・ω・`)「抜いてくれるお店の事」ボソッ

(;^ω^)「なるほど………なんか凄い勢いで話が進んでるお」ボソッ

(´・ω・`)「モララー、あしらい方がうまいからね。ここは任せよう」ボソボソ


17 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 02:55:06 ID:RkuD/2ewO
(=゚ω゚)ノ「ぶっちゃけ、シベリアは女の子のレベルが高いとは言えないんだよぅ。だからこそ変に金出すならむしろホテヘルとかの方が………」

( ・∀・)「いやいや、金無いんだって。なんならもう、カビゴンでもいいぜ。俺ら今酔ってっから、たぶんカビゴンでもAKBに見えるわ」

(=゚ω゚)ノ「ははww」

( ・∀・)「まぁ最悪、な。どうにかなんない?兄ちゃん」

(=゚ω゚)ノ「んー、じゃあこうしないかよぅ?」

( ・∀・)「?」

(=゚ω゚)ノ「兄さん方、もう少し奮発して6000円は出せないかよぅ?実は僕の知る、なかなか可愛い子揃いのピンサロがあるんだよぅ」

(=゚ω゚)ノ「時間は35分。ホントは7000円だけど、そこは僕が声かけて1000円引きにしてやるよぅ」

( ・∀・)「ほー、いいかも。可愛いってどんくらい?」

(=゚ω゚)ノ「ポケモンならマリルかな」

( ・∀・)「おっ、カビゴンに比べりゃ破格だなww」

(=゚ω゚)ノ「でしょ?たぶんこれが最善かと思うけど」

( ・∀・)「なかなかいいじゃん。そうするわ」

(=゚ω゚)ノ「決まりで?」

( ・∀・)「おお!」


18 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:02:49 ID:RkuD/2ewO
(=゚ω゚)ノ「ありがとだよぅ。なら、ちょっと待ってね!」

( ・∀・)「おう」

(=゚ω゚)ノ】「………」プルルル

(=゚ω゚)ノ】「あ、もしもし。僕です。今から3名さん、6kでどうすか?………あ、はい。………はい。………了解です。失礼します」ピッ

(=゚ω゚)ノ「オッケーだよぅ!じゃあ、ついてきて!」

( ・∀・)「はいはーい」

( ^ω^)「おっ」

(´・ω・`)「楽しみだねー」

(=゚ω゚)ノ「シベリアにはよく来られるのかよぅ?」

(´・ω・`)「まぁね。基本飲みにくるだけだけど」

(=゚ω゚)ノ「そうなのかよぅ。今日はどちらへ?」

( ・∀・)「あっちにTSUTAYAあんじゃん?あの向こうの通りの………………」



~5分ほどして~



(=゚ω゚)ノ「ついたよぅ。このビルの地下だよぅ」

( ・∀・)「へぇ、こんなとこにねぇ」

(´・ω・`)「知らなかったな。シベリアもまだまだ、奥が深い」

( ^ω^)「………」ドキドキ


19 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:09:03 ID:RkuD/2ewO
(=゚ω゚)ノ「受付で『いよぅの紹介』って言えばいいよぅ。じゃあ、楽しんできてねー」

( ・∀・)「おお、ありがとう!」

(´・ω・`)「ばいばーい」

( ^ω^)「………」

( ・∀・)「さて。まぁなかなか当たりだったな」

(´・ω・`)「自分から差し引いてくれるやつはシベリアでは珍しいよね。まぁ、よかったよかった」

( ・∀・)「可愛いといいなー」

( ^ω^)「………なぁ」

( ・∀・)「?」

( ^ω^)「ここまできて言うのもなんだけどさ………」

( ^ω^)「ピンサロってなに?」

( ・∀・)

( ・∀・)「……ぶはっwww」

(;^ω^)「わ、笑うなお………仕方ないだろうがお、無経験なんだから」

(´・ω・`)「まぁ仕方ないよね、童貞なら。ピンサロはピンクサロンの略さ。基本的に手や口を使って奉仕してくれる店の事だよ」

( ^ω^)「ありがとうショボン。そしてお前さっきから軽くバカにしてるお?」

(´・ω・`)「当たり前だろ童貞」

( ^ω^)「ぐぬぬ………」

( ・∀・)「まぁまぁ、とりあえず入ろうぜ」


20 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:17:49 ID:RkuD/2ewO

カランカラン。

( ・∀・)「ここだな」

( ∵)「いらっしゃい」

( ・∀・)「キャッチのいよぅさんの紹介なんだけど」

( ∵)「はいはい。じゃあ1人6000円ですね」

( ・∀・)つ「一括で」

( ∵)「はいよ、確かに」

( ∵)「じゃあルールだけ確認させて頂きますね。当店は本番ナシ、女の子への乱暴、勧誘行為もナシ。お願いしますね?」

( ・∀・)「オッケー」

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「お」

( ∵)「ありがとうございます。じゃあ、そのまま椅子に座ってもう少し待ってくださいね」


21 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:25:17 ID:RkuD/2ewO

( ・∀・)「いいねぇ、この薄暗い部屋にやらしいピンクの明かり。ピンサロはこれでないと」

(´・ω・`)「あ、見て見てこの壁の女の子の写真。なかなか可愛いじゃん。僕の子はこの子がいいなぁ」

( ^ω^)「………緊張してきた……」

( ・∀・)「まぁ堅くなんなよブーン。堅くすんのは股間だけにしとけww」

(´・ω・`)「wwwwwまぁ、相手の子に初めてだって言えばいいよ」

(;^ω^)「わ、わかったお………」

( ∵)「お待たせしました。じゃあ、誰からいきますか?」

( ・∀・)ノ「はーい、俺俺ー!いいだろお前ら?」

(´・ω・`)「もちろん。君のおごりだしね」

(((( ・∀・)「じゃあ、おっさきー」

そういうとモララーは、カーテンの先に消えていった。

( ∵)「じゃあ続いて、次の方」

(´・ω・`)「ブーン、いきなよ」

(;^ω^)「え、ぼく?まだ心の準備が………」

(´・ω・`)「どうせいつまでたっても出来ないだろそれは。いいからほら、行きなよ」

(;^ω^)「わ、わかったお………」


22 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:35:08 ID:RkuD/2ewO

ドキドキしながらカーテンをめくると、そこには女の子がいた。

|゚ノ ^∀^)「こんばんわ☆」

(;^ω^)「おっ」

女の子の下着姿。黒のブラジャーと下着。
なるほど、最初っからこうなのか、と僕は頭の中で落ち着いて考えていた。

|゚ノ ^∀^)「このお店は初めてですか?」

(;^ω^)「え、あ、うん」

|゚ノ ^∀^)「ふふ…w緊張して可愛いね。じゃあ、ついてきて」ガシッ

(;^ω^)「あっ……」

そうして腕を捕まれ、エスコートされた。
女性経験の乏しい僕にとってはこのような触れ合いはもちろん初めてで、それだけで僕は興奮させられる。

そうしてつれられたのは、これまたカーテンで仕切られた一角だった。

とても小さく、僕一人寝転べばそれで窮屈なスペース。

|゚ノ ^∀^)「じゃあ、靴脱いでこっちきて☆」

女の子はとても楽しそうに言い、先にそのスペースに座って手招きした。
心臓が早い。僕は今日、人生初の体験をするのだ。


23 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:43:14 ID:RkuD/2ewO

|゚ノ ^∀^)「先ずはきてくれてありがとう、だね」チュッ

(;^ω^)「おっ?」ビクッ

座れば女の子は顔3cmほどに距離を狭めてきて、軽くほっぺたにキスをしてきた。
思わぬ不意打ちで、体が跳ね上がってしまい、ますます恥ずかしい。

|゚ノ ^∀^)「んふふ、こういう店は初めてー?」

(;^ω^)「えぇ、まぁ……」

|゚ノ*^∀^)「じゃあ初風俗は私が頂きだね!やったぁ」


(;^ω^)「おっ……」

|゚ノ ^∀^)「じゃあさっそくやっちゃおっか」

(;^ω^)「え、あの……ドウスレバ」

|゚ノ*^∀^)「あはは、ホントに初めてなんだね。可愛い♪」

|゚ノ ^∀^)「とりあえず脱いでー。下だけでも全裸でもいいから」

( ^ω^)「あ、うん」

|゚ノ ^∀^)「私も脱いだ方がいいかな?」

(;^ω^)「あ、お願いします」

ここだけ流暢に言えたのが情けないところである。
全裸か下半身かを悩んだ挙句、結局全部脱ぐ事にした。


24 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 03:51:56 ID:RkuD/2ewO

|゚ノ ^∀^)「じゃあ、失礼しますよっと」

( *^ω^)「あっ……」

全裸になった僕が壁にもたれかかると同時に、彼女は部屋の角に置かれたウェットティッシュで僕の股間回りを拭き始めた。
当然彼女も半裸。近くに生おっぱいがある。
そんな状況でソフトにとはいえ、股間を組まなく拭かれる。
当然反応してしまう。
股間が、徐々に重たい首を持ち上げて行く。

|゚ノ ^∀^)「ところで君、若いねぇ。いくつくらい?」

(;^ω^)「おっ……一応、20になりました……」

|゚ノ*^∀^)「わぁ、若いんだね!学生さん?」

( ^ω^)「そうですお。お、お姉さんはおいくつくらいで……?」

|゚ノ*^∀^)「24だよー♪」

(;^ω^)「あ……はい」

思ったより若くてびっくりした。しかしまぁ、信じていいのかは甚だ疑問だが。

|゚ノ ^∀^)「じゃあそろそろいいかな……」

|゚ノ ^∀^)「……しよっか♪」

(;^ω^)「おっ」

26 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:06:41 ID:RkuD/2ewO

股間に顔を近づけ、自分のそれを柔らかく包む女の子。

|゚ノ*^∀^)「んふふー」

指先で軽くいじったり、触ったり。

( *^ω^)(おお……)

やはり、違う。人にさわられる感覚は、決定的に違う。
それは気持ち良さより、満足感として現れた。
そして……

|゚ノ*//  )「ぱっくんちょ♪」

人生初フェラ。

( *^ω^)(おっ……)

( *^ω^)(おおおおおおお!!!)

うおお、なんだこれ。初感触。
それは一肌に温めたオナホールより優しく、心地良い。
舌の巧みな動きで全体くまなく刺激され、なんとも言えない高揚感が生まれる。
これが、セックスというものか。

( *^ω^)(すげぇ!!すげぇよフェラ!!)

|゚ノ*//  )「出そうならいつでも言ってね……」


27 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:13:58 ID:RkuD/2ewO

|゚ノ*//  )「んふっ、んっ、んっ……」

( *^ω^)(いい!!すっげぇいい!!)

やがてリズミカルに顔を縦に。
その度に温かい何かが股間全体を刺激し、とてもよい。

( *^ω^)(これは凄いお……)

正直な話、僕はこの手の店に行くやつを馬鹿にしていた節があった。
そこまで性欲に溺れてどうする、とか相手がいないからって高い金払う必要があるか、とか
しかし、知らなかった。
こんな幸せがあるのか。
そう、今までの僕はおろかだった。
一度も体験した事のない物を、したり顔で評価して何になる。
そう、一度知るべきだったのだ。そうしてこそ、見詰め直す事が出来る。

( *^ω^)(今度から風俗、馬鹿に出来ないお……)






……しかし。


28 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:18:24 ID:RkuD/2ewO





|゚ノ*//  )「……」ジュッ、ジュッポ、ジュッポ……

( *^ω^)


( ^ω^)(……あれ?)


なんでだろう。
気持ちいいのに、こんなに心地よいのに。


( ^ω^)(なんかぜんぜん、イケる気がしない……お……?)

(;^ω^)(それどころか、亀頭が軽く痛くなってきたような……)

|゚ノ*//  )「んっ、んふっ、ふっ、んっ……」

(;^ω^)(……あれ?痛い。気持ちいいけど痛い)

(;^ω^)(あれ……)

31 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:27:31 ID:RkuD/2ewO

~終了間際~


|゚ノ;^∀^)「……あれ、今日はダメな日かな?」

(;^ω^)「いや、え、わかんないけど……」

|゚ノ;^∀^)「出そうにないかな?」

(;^ω^)「……はい……」

|゚ノ ^∀^)「仕方ないねぇ……もしかして、えっち初めてかな?」

(;^ω^)「う」

|゚ノ ^∀^)「そうなら、たまにいるよそんなお客さんも……オナニーと、フェラや手コキの快感って別種類だからさ。慣れてないから。あと緊張してイケないって人もいるし」

( ^ω^)「あ……そう……かも……?」

|゚ノ;^∀^)「まぁ、それでもちゃんとイカせてあげるのが技術なんだけどね。ヘタだったかな」

(;^ω^)「い、いや、そんなこと……」

|゚ノ ^∀^)「じゃあまた来てよ。今度はちゃんと、35分でイカせてあげるから♪」

( ^ω^)

( *^ω^)「……お!」

|゚ノ ^∀^)「じゃあごめんだけど、今日はこれでおしまい。また今度、遊びにきてね!」

( ^ω^)「わかったお!」

|゚ノ ^∀^)「はい、これ、私の名刺」

( ^ω^)「おっ……」

渡された名刺には、可愛い文字でこうかかれていた。
『レモナ
 今日はありがとう。今度は氏名してね♪』


32 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:38:09 ID:RkuD/2ewO
|゚ノ ^∀^)「ばいばーい!」

( ^ω^)「お!ありがとだおー」


( ^ω^)




( ^ω^)「……ふぅ」


( ^ω^)(正直最後の方、手コキとか痛いだけだった……)

( ^ω^)(なんでだ……)

(´・ω・`)「お、ブーンお帰り」

( ^ω^)「あ、ショボン」

(´・ω・`)「どうだった?」

( ^ω^)「……あの、その」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「いけなかった」

(´・ω・`)「……www」

( ^ω^)「笑うなお……なんでだろ。オナヌなら5分もあればイケる気がするのに……」

(´・ω・`)「たぶんブーンの場合は緊張、あと皮オナのしすぎじゃないかな」

(;^ω^)「ぅえ?皮オナ?」

(´・ω・`)「……とりあえずまぁ、お前が脳内で妄想してたほど、セックスはいいもんじゃないって事さ」

(;^ω^)「ちょっ……どういう事だお?」

(´・ω・`)「帰ってからググれ自分で。な?」

(;^ω^)「おっ……ショボンはどうだったんだお?」

(´・ω・`)「いや、バリヤードみたいな女の子出てきたから」

( ^ω^)「oh……」


33 :名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 04:42:17 ID:RkuD/2ewO
( ・∀・)「いやぁ、よかったな!確かに可愛かったわ!」

(´・ω・`)「あ、なんだよお前当たり引いたのかよ」

( ・∀・)「まぁな!可愛かったわ!ピチューみたいな女の子出てきたしな!お前は?」

(´・ω・`)「バリヤード」

( ・∀・)「oh……」

( ・∀・)「そういやブーンは?どうだった初風俗?」

(;^ω^)「……あ、それが……」

(´・ω・`)「いけなかったんだとさ……」

( ・∀・)「oh……」






おしまい。



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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第7話 

183 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:21:22 ID:RpSgo5Fo0







7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです

185 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:22:22 ID:RpSgo5Fo0



僕は彼女にすべてを話した。

優しかった家族のこと。
残虐で、許し難い事件のこと。

話し終わった後、彼女も教えてくれた。その凄惨な過去を。


⌒*リ´・-・リ 「私の生まれは、もう気づいていると思います。それなりの良家でした。
         父は教会の牧師、母はそれなりに土地を持った家の一人娘でした」

⌒*リ´・-・リ 「父も母もとても優しくしてくださったのを覚えています」

彼女の住んでいた地域は聞いたことがあった。
宗教戦争でその地に住んでいた人は残らず殺されたと、そう風の噂で耳にしていた。

⌒*リ´・-・リ 「それは突然でした。朝方に村を異国の軍隊が襲ってきたのです」

⌒*リ´・-・リ 「ですが、私の家は傷一つつくことはありませんでした。
         なぜなら父は異国の軍隊の進撃を知っていたので、家族の命と引き替えに、村を売っていましたから」

⌒*リ´・-・リ 「それから1ヶ月は毎日が豪勢な生活でした。
         父が何をしたのかは私にも分かっていましたが、命が助かったことに素直に喜んでいました。
         それほど村人達は酷い目にあわされていたのです」


186 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:23:17 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「男達はほとんどが家族の前で見せしめに殺され、残りは家畜同様の奴隷として扱われました。
         若い女は何十人もの兵士に乱暴され、拷問され、玩具のように捨てられました」


⌒*リ´・-・リ 「私の家族だけが平和に暮らしていたのです。しかしその生活もすぐに終わりました。
         元々私たちの信仰していた宗教が、討伐軍を送ってきたのです。
         異国の兵はあっと言う間に打ち負かされ、逃げていきました」


⌒*リ´・-・リ 「その日からは地獄でした。父と母は私の目の前で拷問されました。
         私自身は二人が死んだ後にいたぶる予定だと聞きました」


⌒*リ´・-・リ 「どのくらいたったのか分かりませんが、一週間よりはずっと長かったと思います。
         父が先に死にました。今から思うと村人の怒りは直接敵を導いた父に強く向かっていたからなのでしょうね。
         母はその後も苦しめられました」

⌒*リ´・-・リ 「父が殺された3日後の夜、母も息絶えました。
         いよいよ私も、あの少女達のようにボロボロにされるのだと思い、牢の隅でおびえていました」


⌒*リ´・-・リ 「しばらくして鍵の開く音がし、私は鼻息を荒くした一人の男に力ずくで地面に押さえつけられました。
         そこで必死の抵抗をし、なんとか逃げ出すことが出来ました。
         鍵番が独断で来たおかげで助かりました」


187 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:24:00 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「そこからは覚えていません。ただひたすらに走り、逃げ続けました。
         気づいたときにはこの村のベッドで寝かされていました」


⌒*リ´・-・リ 「持って来れたのは、普段から肌身話さず大事にしていた、父の手作りの笛だけです」


⌒*リ´・-・リ 「……これが私の話です。……嫌いになりましたか?」


心配そうに尋ねてくる彼女に頭を振った。

(´・ω・`) 「そんなことはない」


話が終わった時、太陽は沈み空には星が輝いていた。
僕らは狭いベッドに手を繋いで並んで眠った。

(僕たちはきっと、お互いの傷をなめあいながら生きていくのだろう)

意識がとぎれるほんの少し前にそんなことを考えた。


188 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:25:04 ID:RpSgo5Fo0


僕はまず、村長に事実を話した。僕がホムンクルスで錬金術師だということを。
ちゃんと理解してくれたかどうかは怪しかったけれど。

僕たちは僕の正体を隠さないことに決めた。
これだけ小さな村であれば外部との接触もほとんどないだろうし、隠したままでバレたときの方が困ると考えたからだ。

仲のよい村人から順々に。
皆は一様に驚いていたけれど、受け入れてくれた。
ひと月もしない内に、村人の中で僕の真実を知らない者はいなくなった。

危ない仕事を積極的に引き受け、村のために働いた。
唯一困ることと言えば、衣服が破けてしまうと戻らないといったことぐらいだ。

順風満帆な生活だった。


それが崩れたのは、僕は彼女に出会ってから三年近く経ったある秋の日。


・  ・  ・  ・  ・  ・


一人の兵士が僕たちの村を訪れた。
戦争で用いる長槍を携え、馬に跨って。

男は自らを素性を明かさず、村中の人間を集めるように指示した。


189 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:26:22 ID:RpSgo5Fo0

「今すぐだ! 早くしろ!」

程なくして僕たちは一カ所に集められた。

(´・ω・`) 「!」

他の村人が不審がる中、僕はすぐに男の目的を知る。
その黒い鎧に輝く銀色の蛇の文様。
この世で僕が最も憎む対象を身に纏っていた。

「集まってもらったのは他でもない、みなに協力してほしいことがあるのだ」

(´・ω・`) 「……」

「とある男を捜している。危険な化け物だ。
 そいつは人の形をしているが、怪我はすぐに治り、殺しても死なない。心当たりのある者はいるか?」

空気が一瞬で張りつめた。誰もが僕のことを想像したのだろう。
しかし、誰一人として口を割らなかった。

「隠して特をすることはない。知っているのなら速やかに告げよ。もし正しい情報を提供すれば、金一袋をやる」

じゃらじゃらと見せつけるように巾着を振る。
それでも、声を上げる者はいなかった。


190 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:27:53 ID:RpSgo5Fo0

「ふむ……二、三日この村の入り口にいる。話をする気になったのなら来い」

それだけ言って、歩いていった。僕はその背に襲いかからないように、全神経を集中させなければならなかった。

⌒*リ;´・-・リ (ショボンっ……)

(;´・ω・`) (分かってる)

村人たちは各自の仕事に戻り、僕らはいったん家に帰ることにした。

⌒*リ´・-・リ 「あれって……」

(´・ω・`) 「間違いない。嗅ぎつけてきたんだ」

部屋の中には液体の入ったフラスコと、数種類の粉末が置いたままにしてある。
行商から怪しまれない程度に購入していた物だ。
村に対する恩返しにと、時間を見つけては研究をしていた。

ここから足がついたのかもしれないと歯噛みする。

⌒*リ´・-・リ 「どうすれば……」

リリと僕は全く逆のことを考えているだろう。

(´・ω・`) (どうすれば、村人に危害が加わらない?)


191 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:29:58 ID:RpSgo5Fo0

粉末は一部を残して、全て暖炉に放り込む。
フラスコも同様にし、錬金術の証拠隠滅をはかる。

(´・ω・`) 「……」

入り口で待つと言っていた辺り、確信に近い何かを持っているのだろう。変な誤魔化しはきかない。
疑いたくはないが、密告者の可能性も考えられる。

(´・ω・`) 「リリ、僕はここから離れる。君たちは脅されていただけだと言うんだ。いいね?」

⌒*リ´・-・リ 「そんなっ! みんなで考えれば解決案だって……!」

(´・ω・`) 「そんな時間はないし、あいつらはそんなに優しくない。軍隊を送って皆殺しにしていないのが不思議なくらいだ」

あいつならその程度の行為に何の躊躇いもないだろう。
それだけはなんとしても避けなければならない。

⌒*リ´・-・リ 「それなら私も行きます!」

(´・ω・`) 「無理だ! どこまで逃げればいいのか分からない、厳しい道のりになる。君の安全を保障できない」

⌒*リ´・-・リ 「ここにいても同じことですよね。そういう人に狙われているということは理解しているつもりです」


確かに村に残っても安全とは言い難いのは事実だ。


192 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:30:57 ID:RpSgo5Fo0

説得を試みるが、リリは強情だった。
彼女は一度決めたら譲ってくれない。
強い光を秘めた、覚悟の眼差しと目が合う。

(´・ω・`) 「ああもうっ! 後で泣き言を言うなよっ!」

⌒*リ´・-・リ 「逃避なら私の方が先輩なんですから」

(´・ω・`) 「実行は夜だ。南西側に向かうよ。港を目指す」

無事に逃げ切るために、頭を回転させる。

(´・ω・`) 「冬にかかるとまずい。服はたくさん着て」

⌒*リ´・-・リ 「食べ物は?」

(´・ω・`) 「少な目でいい。この辺の土地は豊かだし、食べる物はあるはずだ」

ホムンクルスの知識があれば、食用可能かどうかを悩む必要はない。

護身用の剣を身につけ、後に使うための金貨を十分に用意する。
最後に、錬金術で作った粉末をこぼれないようにしっかりと包み、腰紐に結びつけた。

さぁ、荷造りはすませた。
後は出発するだけだ。


193 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:31:55 ID:RpSgo5Fo0

日が落ちるまではまだ少し時間がある。

(´・ω・`) 「……別れの手紙を書こうか」

村人に直接合うのは危険すぎる。
それなら別れの手紙を書けばいい。
何も言わずに去るのは、庇ってくれたみんなに対して、余りに薄情だ。

ではまずは私が、とリリは筆を手に取りすらすらと綴っていく。


⌒*リ´;-;リ 「村長、私が初めてこの村に来たときのことを覚えていますか? 
         ぼろぼろになっていた私に温かいスープをくださいましたね。
         その時の味はつい昨日のことのように覚えています。


         力仕事の出来ない私に仕事をくださいましたね。
         最初に作った編み物はうまくできず、とても見苦しい物でした。それでも、それを買ってくださいましたね。
         何度も何度も丁寧に教えてくださいましたね。おかげさまで、随分とましな物も作れるようになってきました。


         一人で生活するための空き家を作ってくださったのも村長ですよね?
         年頃であった私に気をつかってくださったのは嬉しかったのですが、私は村長と暮らしていたかったです。
         実の孫のように可愛がってくれてありがとうございました。


         私には大事な人が出来ました。


         その人の行く道がどれほど過酷であろうと、隣に寄り添って支えてあげたいと思う人が。
         今の私があるのはひとえに、村長と村の皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。
         旅立つ勝手を許して下さい。いつかまた、この地に帰ってきたいと思います。それでは、さようなら」


リリは瞳を潤ませながら、しかし一滴も手紙に零すことなく書き終えた。


194 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:32:53 ID:RpSgo5Fo0

僕も筆を手に取った。
少し考えてから書き始める。


(´;ω;`) 「この村の人々にはとても感謝しています。人ではない僕が、人間のように過ごすことが出来ました。
       厭うことなく、嫌うことなく、恐れることなく、接してくれた皆さんの優しさが、僕は大好きです。
       僕のせいで皆さんに迷惑がかかることを許して下さい。リリと出会えて、皆さんと暮らせて、幸せでした。


       いつか必ず、このご恩は返します。どうか、彼らには脅されていたと言ってください。
       そして、この手紙は燃やして捨てて下さい。それでは、さようなら」


僕の書いた部分は、所々滲んでしまった。
手紙はまとめて筒状にして結んだ。

空はいつの間にか暗くなってきていた。

(´-ω-`) 「急ごう。今夜は月も星もない今の内に離れて、距離を置いてからランタンを使うよ」

⌒*リ´・-・リ 「わかりました」

僕たちは身を屈めて曇り空の下を走った。
途中、村長の家の中に手紙を投げ入れ、振り返ることなく走り続けた。

村から丘二つ離れたところで、太陽の残光は完全に消え失せた。

ランタンに火を灯して掲げる。
小さな明かりに照らされ、街道がうっすらと浮かび上がった。


195 :ごめんなさいーご飯行ってきますー:2012/03/08(木) 21:34:29 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ひとまずはこれを辿る。明日の朝までに距離を稼いでおきたい」

⌒*リ´・-・リ 「大丈夫。心配しないで」

二人で並んで行く。
道は舗装されていて、体力を温存できる。

一言も言葉を交わさず、数時間は歩いていた。
本人の言うとおり、リリにへばった様子はなく、黙々とついてきていた。

(´・ω・`) 「ここだ」

西側に向かって延びる道から細い通りが西南西にある分かれ道に着いた。
今日の目標である林の小道はこの通りの先にある。

この移動がばれ、追っ手が来ていたらのなら、戦闘も覚悟していた。
まだ気づかれていないのだろうか、追われている気配はなかった。

しかし万事うまくいっているわけではなかった。
リリが僕の後ろを歩くようになり始めたのだ。

(´・ω・`) 「大丈夫?」

⌒*リ;´・-・リ 「はい、まだ、大丈夫、です」


196 :もどりましたー:2012/03/08(木) 21:52:59 ID:RpSgo5Fo0

そう答える彼女はやはり、しんどそうだった。
休む間もなく歩き続けているし、もう夜も遅い。
疲労は当たり前だろう。

(´・ω・`) 「後少しだから、頑張って」

少なくとも林道までは行かなければ、いざというときに姿を隠せない。

⌒*リ;´・-・リ 「頑張り、ます」

ペースを少し落とし、彼女の歩幅に合わせた。

それからしばらく歩いて、ようやく林道の頭にたどり着いた。わき道にそれ、木の陰に座り込む。
リリはすぐに眠りに落ちた。
僕は彼女が体を休ませられるように、自らの衣服をクッションとして体の下に置いた。

(´・ω・`) (ひとまずはうまくいったか……?)

僕は寝るわけにはいかず、今後の計画を頭の中で練り直す。
この逃避行がより完全な物になるように。

考え事をしている間に、太陽が姿を現した。
睡眠時間は充分ではないだろうが、もう移動しなければならない。

(´・ω・`) 「リリ、起きて」

⌒*リ´ -・リ 「……ショボン?」


197 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:53:57 ID:RpSgo5Fo0

怠そうに起きあがるリリを見て心が痛んだが、仕方のないことだと言い聞かせた。

(´・ω・`) 「あの山を越えれば、村が一つある。うまくすれば馬が手に入るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「行きましょう……」

昨日よりもゆっくりのペースで、山を目指す。
夕方までに何度も休憩し、やっと半分を踏破した。

当初の予定より大分遅れていたが、リリを責めることは出来ない。
食事はまともではないし、睡眠時間も短い。
人間の女性としてはむしろよく耐えている方だろう。

⌒*リ´・-・リ 「ごめんなさい、ショボン」

僕が難しい顔をしているのが見えたのか、リリは弱々しい言葉を口にした。

(´・ω・`) 「問題ないよ。僕たちがいないことに気づいたとしても、奴は街道を進むと見て間違いない。
       それならば時間はまだ十分にある」

安心させるつもりだった言葉なのに、その言葉は冷たく響いた。

⌒*リ´・-・リ 「もう、歩けるよ」

199 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:54:57 ID:RpSgo5Fo0

リリは立ち上がった瞬間、前のめり倒れた。
慌てて体を受け止める。

(;´・ω・`) 「リリっ!」

⌒*リ´ - リ 「ごめんなさい……ごめんなさい……」

その日の夜も、木の陰で一晩を明かした。
翌日になるとリリは元気を取り戻し、予想以上に距離をかせげた。

細い林道は深い森へと続いていく。この山を越えれば、村が一つあるが、
山越えはそう簡単ではない。人通りも少ないため、草木は茂り放題だ。

姿を隠すのにはちょうどいいけれど、体力を必要以上に消費するだろう。

⌒*リ´・-・リ 「行きましょうか」

覚悟を決めたように、リリは呟いた。

(´・ω・`) 「うん」

草をかき分け、日の光が届かない山に足を踏みいれた。
僕が前を歩き、後ろからリリが着いてくる。

道は次第に上り坂になっていく。
どのくらい登っただろうか。

ちょうどいい高さの岩を見つけ、そこに座り込む。


200 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:55:49 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「リリ、少し待ってて。食べ物を探してくるから」

⌒*リ´・-・リ 「わかりました。気をつけて下さいね」

彼女の手を優しく握り、付近の探索へ出発する。

奥に進んですぐに見つけた背の高い木の果実は、甘くて腹も膨れる。
対して栄養がないのが難点だが、疲れているリリには丁度いいだろう。
木に登ってよく熟れた実をとる。

そして予想通り、この一帯には喉の渇きを潤すのにはもってこいの植物が生えていた。
人差し指ほどの長さの茎から細い毛が無数に生えているそれは、茎に多量の水分を含ませる性質がある。
根を千切れば、そこから水を吸うことができる。

数十の実と一握りの束を手に、リリのもとに戻った。

(;´・ω・`) 「遅くなってごめん」

⌒*リ´・-・リ 「たいして経っていませんから、謝らないでください」

二人で食事をし、長めの休憩をとった。
自然の音が心地いい。耳を澄まして聞き込んでいると、リリは微笑みながら服の内側から何かを取り出した。

⌒*リ´・-・リ 「持ってきてしまいました」


201 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:56:44 ID:RpSgo5Fo0

その手に持つのは、大事な手作り笛。
そっと唇にあて、息を吹き込む。

虫のさざめき、風に揺れる葉の音と一緒に彼女は奏でる。
音楽の終わりと同時に彼女は立ち上がった。

⌒*リ´・-・リ 「さて、歩きますよ」

(´・ω・`) 「また、聴かせてくれ」

⌒*リ´・-・リ 「無事に逃げ切れたなら、いくらでも」

日が沈んだとき、僕らは山の中腹にたどり着いた。
何年も放置されたような木製の台が並んでいる。


(´・ω・`) 「今日はここで休もうか」

強度を調べてから台に座る。
気が抜けたのか、リリはすぐにうとうとし始めた。

(´・ω・`) 「横になって」

⌒*リ´ - リ 「ショボン……はぜんぜん……寝てない……のに」

(´・ω・`) 「大丈夫。僕のことは気にしないでいいから」

リリは元気に振る舞っているが、日に日に疲れを増していた。早急にくつろげる場所が必要だった。

(´・ω・`) (だけど山越えには早くて後二日。この調子だと恐らく三日はかかるだろう)


202 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:58:00 ID:RpSgo5Fo0

それに、いつまでもここが安心とは限らない。
向こうの町で罠を張られている可能性もあった。

リリの寝顔を見ながら、彼女に最も負担が少ない形を考える。
しかし、山を出るまでは歩かざるを得ない。

(´・ω・`) (村に来た男から馬を奪っておけばよかった。そうすれば追っ手までの時間も稼げるし、リリも楽だったはずだ)

自分の手筈の悪さに腹が立つ。彼女を辛い目にあわせているのは他でもない、この僕だった。

(´・ω・`) (後三日は……耐えてもらうしかないのか)

見張りをして睡眠時間を殆どとっていないせいか、頭が重い。
寝るまいと思っていたが、結局、朝日と同時に目が覚めた。
焦ってリリの安全を確認する。

⌒*リ;´・-・リ 「はぁっ……はぁっ……」

体調を崩しているのは一目瞭然だった。
呼吸は荒く、額には多量の汗をかいている。

(;´・ω・`) 「リリ、大丈夫かい?」

⌒*リ;´・-・リ 「はぁっ……はい……なんとか……」

返事をするのもやっとな状態。とても歩けるとは思えない。

(´・ω・`) 「少し待ってて」

寝たままの彼女を放っておくのは気が引けたが、少しでも楽にしてやりたかった。
昨日採った植物を再び集め、破いた袖を十分に湿らす。
それをリリの額にのせた。


203 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:59:12 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「あり……がとう」

(´・ω・`) 「ごめん……僕が無理をさせたから……」

⌒*リ´・-・リ 「気に……しないで」

リリには薬が必要だ。
症状を緩和するための薬を作る錬金術は、今は使えない。

(´・ω・`) (器具も材料もなければ、僕は何も出来ない……)

唯一ホムンクルスでよかったと思える点が、この錬金術の知識なのに、使いたいときに使えない。
そんな知識に一体何の意味があるのか。

⌒*リ;´ - リ 「うぅ……」

(´・ω・`) (っ……! 今は悔しがってる時じゃない)

自分でどうにか出来ないならば、山を越えて町に薬を買いに行くしか方法がない。
彼女をおいて離れることは出来ない。

ならば解決策は一つ。

(´・ω・`) 「リリ、ごめん。揺れるよ」


204 :あうあうあー^q^:2012/03/08(木) 22:02:30 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ;´・-・リ 「うん……」

彼女を背に負う。
その体は驚くほど軽い。

出来るだけ衝撃が無いように気を配りながら進む。

(´・ω・`) (町まで我慢してくれ……)

いかに軽いとは言え、同じ距離を歩くのにかかる時間は倍になった。
苦しむ彼女を背に、夜通し歩き続ける。


・  ・  ・  ・  ・  ・


三日間軽い休憩を何度か挟むだけで歩き続け、三日目の夜、ついに倒れた。
精神よりも先に肉体に限界がきてしまったようだ。

顔の向きだけ変えて、隣に倒れているリリの方を向く。

リリの病状は悪くなるばかりで、回復の兆候は見えない。

(;´・ω・`) 「くそっ……」

山の終わりはまだ暫く先ある。

(;´・ω・`) (考えろ……考えろ……)

今から少し休み、一人で村に向かったとして、果たして間に合うかどうか……。

(;´・ω・`) (少しでも病状を抑える方法を……この近辺には何がある……? 今の僕には何が出来る……?)


205 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:03:38 ID:RpSgo5Fo0

ふと、腰に結んだ袋を思い出した。
そこにあるのは、錬金術で生み出した唯一の物質。
村人への恩返しに使う予定だったそれは、優秀な肥料だ。

一振りで瞬時に植物を成長させることが出来るほど強力な。

肥料は、栄養価の素になる。
リリの病状は疲労と栄養不足が原因だろうから、片方を取り除いてやれば少しはマシになるはずだ。

(´・ω・`) (当然、直接人間には使えない。だけど……)

解決方法は簡単だ。
今までなぜ気づかなかったのか分からないほどに。

手に力を込めて起きあがり、リリを寝かせたまま、来た道を戻る。
充分に離れ安全を確認したところで、袋から粉を一摘み取り出し振りまく。

すぐに植物は成長し始めた。
夏にしか実を成らせない木も、普段は大きくならない木も、肥料を得て、それを栄養価に昇華させる。

(´・ω・`) (よしっ)

この山がこれほどの多様性を有していなければ、難しかったかもしれない。
熟れた果実を収穫し、リリが食べられるように、細かくする。


206 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:04:41 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「リリ、口を開けて」

⌒*リ;´・-・リ 「ぁ…………」

取れたての野菜を口へ運ぶ。
リリに噛む力はほとんどなかったが、必死に飲み込む。

⌒*リ;´・-・リ 「ぉぃし……」

苦痛に歪み、泥に汚れた笑顔は痛々しい。
僕は無理に笑い返し、彼女の食事を手伝った。

⌒*リ;´・-・リ 「ぉ腹………ぃっぱ……」

食べれたのは普段の三分の一にも満たなかったが、ここ数日では一番食べてくれた。


・  ・  ・  ・  ・  ・


その後は僕らは地べたに寝て休んでいた。
危険だとか考えている余裕はなく、丸一日ゆったりと横になっていた。

食べ物のおかげが、リリの様子は見違える程良くなった。
少なくとも、楽に喋れるほどには。

⌒*リ´・-・リ 「ショボン、ごめんね。迷惑かけて」

(´・ω・`) 「僕の方こそごめん。無理していたのに気づいてあげられなくて」

僕らはお互いに謝り、笑い合った。


207 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:05:33 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「さ、そろそろ行こうか」

僕の体力は回復していたから、栄養たっぷりの野菜と果実を少しずつ持ち、リリを背負った。
幾分重くなった気がする。
それを彼女に言うと怒られた。

⌒*リ´・-・リ 「女の子にはもっと優しい言い方をしてくれないと困ります」

(´・ω・`) 「良い意味で言ったんだけど」

⌒*リ´・-・リ 「良い意味でもです」

納得はいかなかったけども、話を切り上げることにした。
無駄に体力を使って、また倒れる展開だけは避けたい。

(´・ω・`) 「やっとか……」

さらに二日経ってから、山を抜けることが出来た。
町はもう目に見えるところにあった。

(´・ω・`) 「リリ、後少しだよ」

⌒*リ;´・-・リ 「うん……」

二日間の強行軍が彼女の病状を悪化させていた。
早く町で薬を手に入れなければならない。

森から出て姿が隠せないことは、もう恐れてはいなかった。


208 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:06:26 ID:RpSgo5Fo0

町に入り、薬屋を探す。
僕の住んでいた町よりはずっと大きく、探すのに多少苦労した。

「へぇ、どうも」

(´・ω・`) 「熱の薬はあるか」

「こちらです」

店主から薬を受け取り、金貨を払った。
次に探したのは宿屋だ。

リリも僕もあまりにも汚く、これでは目立ちすぎる。
宿屋はすぐに見つかった。
もともと交通の要所にある町として広がったために、そういう施設は多いようだ。

(´・ω・`) 「二人部屋を頼む」

「先払いでよろしいでしょうか?」

(´・ω・`) 「構わない。服を二人分、あとお湯を沸かして持ってきてくれ。タオルと一緒に」

「畏まりました」

金貨を握らせ、部屋にあがった。
リリをベッドに寝かせる。


209 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:07:49 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「無事についてよかったです」

(´・ω・`) 「そうだね。さぁ、まずは薬を飲んで」

グラスの水と粉薬を渡す。
それを飲み終えるのと同時に部屋の戸が叩かれた。

「湯と服を持ってきました」

(´・ω・`) 「ありがとう、入ってくれ」

子供が入るくらいの大きさの入れ物にたっぷりと湯が入っており、宿の従業員が複数人で運んできた。

「それではごゆっくり」

扉がしまったのを確認して、湯に用意されていたタオルを浸した。

(´・ω・`) 「さて、リリいいかな?」

⌒*リ´・-・リ 「えっ? えっ?」

子どものように混乱している。
何をされるのか理解していないようだ。

(´・ω・`) 「お互いどろどろだし、リリ動けないでしょ?」

⌒*リ´//-/リ 「~~~~~っ!!」


210 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:08:36 ID:RpSgo5Fo0

やっとわかってくれたようだ。

⌒*リ´//-/リ 「ちょっ、ちょっと待って下さい。まだ心の準備が」

(´・ω・`) 「はーい、時間切れー」

彼女の服を脱がせ、全身を暖かいタオルで丁寧に拭いていく。
汗と泥を取り除くと、綺麗な白い肌が現れた。

(´・ω・`) 「はい、終わり」

服を着せ終え、今度は自分の汚れを落としにかかった。

(´・ω・`) 「ふーすっきりした」

使い終わった湯を廊下に運び、ベッドに横になった。
作業が終わっても、リリはリンゴの様に顔を真っ赤にしたまま、口を利いてくれなかった。


「食事をお持ちしました」

僕らの沈黙は宿屋の主によって破られた。
もうそんな時間になっていたのかと驚きつつ、許可を出す。

(´・ω・`) 「ああ、入ってくれ」


211 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:09:40 ID:RpSgo5Fo0

「どうぞ。食べ終わりましたら、扉の外に出しておいてください」

出された食事は豪勢だった。
久しぶりの肉に思わず涎が出てくる。

当然ホムンクルスでもうまいものはうまい。

(´・ω・`) 「食べようか」

⌒*リ´・-・リ 「はい……」

リリの祈りが終わるのを待ってから食事を食べる。
僕らはやっと日常に帰ってこれた。

(´・ω・`) 「おいしいね」

⌒*リ´・-・リ 「はい……」

ちゃんと話してくれないのは寂しくもあったし、
照れたままはい、としか答えないリリに少し悪戯心が湧いてきた。

(´・ω・`) 「綺麗な体だったから大丈夫だよ。気にしないで」

⌒*リ´//-/リ 「~~~~~~~っ!?」

ますます喋らなくなってしまった。

(´・ω・`) 「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだから」

⌒*リ´//-/リ 「ややや、やめてください……」


212 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:10:34 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ああそうだ、明日からの予定なんだけど、この町もすぐに離れた方がいいと思う。
       馬を調達して、さらに西に向かうよ。馬は乗れる?」

唐突にまじめな話題に戻す。
若干動揺しているものの、しっかりと話についてきてくれた。

⌒*リ´・-・リ 「はい、大丈夫です」

(´・ω・`) 「わかった。朝になったら、二頭貰ってくるから、ここで待ってて」


・  ・  ・  ・  ・  ・


朝の町は交易地といえども、まだ静まり返っている。
厩舎に行き、馬二頭を買うのには苦労はしなかった。
十分な量の金貨があったからだ。

宿に引き返す途中、数人の騎士の姿を見かけ、家の陰に隠れる。
そいつらは間違いなく、あの男とその仲間だ。


213 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:11:28 ID:RpSgo5Fo0

「なかなか現れんな。林の小道は調べたのか?」

「今調べている途中ですが、人が通った後はあるようです」

「ふむ、宿は全部当たったのか」

「いえ、まだです。なにぶん数も多いので。ですが、薬屋の主人からそれらしい男を見たと言う話を聞きました」

「だったら、さっさと探し出せっ!」

会話は其処で終わり、馬の駆ける音が遠ざかっていく。
宿を総当たりされたら見つかるのは時間の問題だ。

(´・ω・`) (急ぐか……)

真っ直ぐ宿に向かい、リリが無事でいるのを見て一安心する。

(´・ω・`) 「リリ、町を出るよ。準備は?」

リリの熱は下がり、すっかり元気を取り戻していた。

⌒*リ´・-・リ 「もうできてます」

(´・ω・`) 「よし、行こう」


214 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:13:28 ID:RpSgo5Fo0

西へ頭を向け馬を疾駆させる。
この先にあるのは港町。
そこから船に乗って逃げれば、そうそう追ってはこれないはずだ。

(;´・ω・`) 「っ!?」

安心して気が抜けた瞬間、左腕に激痛が走った。

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!」

(#´・ω・`) 「くそっ!」

リリの叫びを聞きながら、自分の馬から飛び降り体をリリの後ろに投げ出す。

「がっ!」

計五本の弓矢が全身を貫く。
地面に激しく叩きつけられた痛みを無視し、すぐに起きあがった。
リリに逃げるよう急かす。

(#´・ω・`) 「走れっ! 後で追いつく!」

⌒*リ;´・-・リ 「でもっ!」

(#´・ω・`) 「いいから行け!」


215 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:14:26 ID:RpSgo5Fo0

体に刺さった矢を一本ずつ乱雑に抜いていく。
すぐに五人の騎士に囲まれた。

「女を捕まえてこい」

二人が円陣を崩しリリの後を追う。
それを横目に、男達の隙を窺っていた。

「久しぶりだなぁ、ショボンよ」

(#´・ω・`) 「……」

黒い鎧に銀の蛇。
多くを知っているわけではないが、この男はよく覚えていた。
一番最初に僕の主人を襲った男だ。

「まぁいい。我らと共に来てもらおう」

(´・ω・`) 「断る」

「ならば力づくで連れて行くまでよ」

三人が同時に槍を突き出す。


216 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:16:48 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ホムンクルス相手に接近戦とは脳無しか?」

相手の攻撃と同時に一人の懐に飛び込む。
右腕を槍の一撃で斬りおとされながら、左で抜いた剣で首を叩き斬った。

「がっ……?」

男は目を見開き崩れ落ちる。

(#´・ω・`) 「ぐっ……」

背中から異物か体の中に侵入してくるのを感じる。
胸から二本の槍が飛び出していた。

「やっ……」

(´・ω・`) 「てないよ」

左腕を大きく振りかぶり、刀を投擲する。
真っ直ぐに喉を貫き、絶命に至らせる。

「ぎっ……!」

(#´・ω・`) 「があああああああああああああ」

まだ生きている騎士の槍を掴み、全力で体を捻る。
体中の細胞がぶちぶちと千切れる音をさせながら。


217 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:18:12 ID:RpSgo5Fo0

「なっ?」

男はバランスを崩して落馬した。

(´・ω・`) 「悪いが時間がない」

リリを追いかけなくてはならない。
体から引き抜いた槍を男に向ける。

「待て。女の命がどうなってもいいのか?」

(;´・ω・`) 「っ!?」

振り向けば、首元に剣を突き付けられたリリがいた。
その後ろには追いかけた二人だけではなく、五人に増えていた。

⌒*リ´・-・リ 「ショボン、ごめんなさい……」

「喋るな。武器を捨て隊長から離れてもらおう」

(´・ω・`) 「くそっ……」

「ふ……ふ……よくやった……。こいつを縛れ!」

身動きが取れないほどに上半身が固定される。
リリを見ると、怪我はないようで一安心する。

「女は縛って捨て置け」

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!」

(;´・ω・`) 「リリっ」


218 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:18:54 ID:RpSgo5Fo0


馬にのるように促される。
逆らって彼女に害が及ぶのは避けたかった。

僕を乗せ、男達は道を引き返す。
少し離れたところで、急に動きを止めた。

「ああそうだ」

隊長格の男は不気味な笑い顔を僕に向けてくる。

「我らに逆らうとどうなるか、教えてやるのを忘れていたな」

リーダー格の男が顎で指示し、それに合わせて一人の男が弓に矢を番える。
その先には両手を縛られたままのリリ。

「やめろっ! 頼む! やめてくれっ!」

「やれ」


219 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:22:25 ID:RpSgo5Fo0

ギリギリと引き締められた弦の音が消えた。

「リリ──────っ!!」

スローモーションのように弓矢は進んでいく。
時が止まったかと思えるほど、ゆっくりと。
けれども着実に。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´・-・リ 「この辺の人じゃないですよね……生きてますか……?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´・-・リ 「リルケット・リファリアと言います。この辺りの人はリリーやリリって呼びます。
         あなたの名前は?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´;-;リ 「別に……あなたが死なないだとか、作られただとか、そんなことはどうでもいい。
         私は、あなたと一緒にいたい。それでは駄目ですか……?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

⌒*リ´ - リ 「ショボン……」


矢は、リリを射抜き、彼女はゆっくりと倒れた。
倒れたまま、起きあがることは無かった。

(#´ ω `) 「あ……あ……」


220 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:24:54 ID:RpSgo5Fo0

(#´ ω `) 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「黙れっ!」

叫ぶことしかできなかった。
殴られても、蹴られても、喉が張り裂けてしまうほどに。

「行くぞ」

激痛とともに、意識を失った。


・  ・  ・  ・  ・  ・


「ふん、大した化け物でもなかったな」

意識を取り戻したときは既に夜になっていた。
男たちは山沿いにある街道で野宿をしていた。

「気づいたか化け物?」

僕は身動ぎをしようとして、痛みで動くのをやめた。
両手は重ねられて、墓標のごとく一本の剣が突き刺さっている。
両の足はふくらはぎと太股に一本ずつ、計四本が突き刺さっていた。


221 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:29:46 ID:RpSgo5Fo0

「死なないってのは面白ぇなぁ!」

地面に転がっている酒瓶の数からして相当呑んでいるようだ。
溢れんばかりの憎悪は逆に冷静に考えさせてくれるのだろうか。

僕がすることはただ一つだけだった。

「何か言えよ! あぁん?」

二、三発顔を殴られた。
それでも反応を見せなかった僕に腹を立てたのだろう。
腰から長剣を抜きはなつ。

「反応しねぇと斬っちまうぞ? 必要以上に傷つけるなとは言われてるけどな、
みんな寝てんだ。関係ねぇや」

そうか。
こいつは見張り役か。

それなら都合がいい。

(´・ω・`) 「ホムンクルスを」

「ん?」


222 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:34:42 ID:RpSgo5Fo0

僕の言葉に興味を持ち、耳を近づけてくる。

(´・ω・`) 「ホムンクルスを生け捕りにしたければ、方法をよく考えるべきだったな」

両手を思いっきり引き抜く。
手のひらが半分になるが瞬時に再生する。

「なっ!?」

地面に突き刺さった剣を抜き、不用意に近づいていた男の首を深く切り裂いた。
喉から赤い泡が膨れ上がっては弾け、しばらくして男は動かなくなった。

(´・ω・`) 「ぐっ……」

今度は両足を切り落として自由になる。
火の消えかかった焚き火の近くには男が四人。
順番に喉を切り裂いていく。

(´・ω・`) 「おい、起きろ」

リーダー格の男は殺す前に話しておきたかった。

「なんだ……ん……!?」

屈み込む僕の姿を見て剣に手を伸ばすが、その腕をはね飛ばす。

「ぎゃああああ腕! 腕が!」


223 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:35:47 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「黙れ」

喉元に切っ先を突きつける。
それだけで静かになった。

「なんで……なんでリリを殺した……」

「は、はん。ただの気まぐれだ。
なに、乱暴するよりはずっとマシだろうが。むしろ感謝あ」

(#´・ω・`) 「もう喋るな」

口の中に剣を突き刺した。
脳幹を破壊して地面に届く。

男達の馬に乗り、全力疾走で西に向かう。
移動距離から考えて、気を失ってから一日と経っていないはずだ。
彼女の亡骸を放置したままに出来るわけがなかった。

日の出の前、空が白み始めた頃にリリが倒れていた場所に戻ってきた。
そこには血痕だけが残されていて、彼女の体はなかった。

(どこだ……どこにいる……?)

ここにいないのなら、町の中に運び込まれたに違いない。

(最も可能性が高いのは教会だ)

大きい町だが、中には一つしか教会はなく、そこに向かった。
入り口に馬を結び、中に入る。そこには白いベッドが置いてあった。


224 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:37:22 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´ - リ 「ショ……ボン……?」

(´;ω;`) 「リリ……?……リリ!」

リリはまだ生きていた。
矢は抜かれ、適切な治療が施されていた。

⌒*リ´ - リ 「よか……った……最期……会え……」

(´;ω;`) 「馬鹿なこと言うな! 僕が必ず助ける!」

僕らの話し声が聞こえたのか、奥から牧師が出てきた。

「彼女のお知り合いの方ですか?」

(´;ω;`) 「はい」

「昨日彼女を見つけ、医師に診てもらったのですが、傷が深すぎて……一日生きているだけで奇跡です」

(´;ω;`) 「見つけて下さってありがとうございました」

彼が見つけてくれなければ、もう話すことは出来なかった。
でも、リリはまだ生きている。
医師が匙を投げても、錬金術師はフラスコを投げない。

僕には彼女を救う力があるはずだ。


225 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:40:32 ID:RpSgo5Fo0

(´;ω;`) 「もう少し、リリを見ていてあげて下さい」

「ですが……」

(´;ω;`) 「お願いします。すぐに戻ってきますから。
        リリ、もう少しだけ待っていて」

⌒*リ´ - リ 「うん……」 

僕は教会を飛び出し、薬屋に向かった。
途中フラスコを数個購入する。

(´-ω-`) (リリの傷は深い……人間の治癒力で治る範囲を超えている。
       それならば……僕は罪を犯そう。彼女に恨まれるかもしれない。それでも、僕は彼女に生きていてほしい。)

宿の一室を借り、作業場を作る。

強力な肥料は生命の源に。
千年生きる蝉の粉末と、渦を巻く海牛のエキス。その他はこのくらい大きい交易都市なら手に入る。
必要な素材は多くない。
難しいのはコンマ以下の誤差も許されない調合。

本来は数年かかる物を、たった数時間で完成させなければならない。
それも、最難関の錬金術を。

(…………)


226 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:42:57 ID:RpSgo5Fo0

慎重に薬品を加えていく。
最後に僕の血液を混ぜることで、僕と同等の知識を得る。


・  ・  ・  ・  ・  ・

・  ・  ・  ・

・  ・


(´・ω・`) 「できた……!」


血のように赤い液体金属。

多くの錬金術師が夢見、破れていった伝説の存在。

たった一滴で無限の富と永遠の命を与えると謂われる。

たった一滴で神を貶める罪の結晶。

(´・ω・`) 「賢者の金属……」

ひとたび体内に摂取すれば、それは血液に溶け、後戻りすることはできない。



教会に駆け戻り、瀕死の彼女の横に立つ。

(´ ω `) 「僕の弱さを許してほしい……」

僕は祈るように、罪の塊を彼女の傷口に垂らした。


227 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:51:12 ID:RpSgo5Fo0








7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです  End

             ↓

8 ホムンクルスと少女のようです


《時系列》

ホムンクルス生誕
   ↑
   ↓
6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです
7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです
   ↑
   |
   |
   ↓
1 ホムンクルスは戦うようです
   ↑
   ↓
2 ホムンクルスは稼ぐようです
   ↑
   ↓
3 ホムンクルスは抗うようです
   ↑
   ↓
4 ホムンクルスは救うようです
   ↑
   ↓
5 ホムンクルスは治すようです


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第6話 

181 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:30:07 ID:sHdSpc460

今回は過去の話になります。
書きたい話を書きたい順に書いていたらこんなわけのわからない順番に……。
簡単な順番を書いていくことにします。


ホムンクルス生誕
   ↑
   ↓
6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです
   ↑
   |
   |
   ↓
1 ホムンクルスは戦うようです
   ↑
   ↓
2 ホムンクルスは稼ぐようです
   ↑
   ↓
3 ホムンクルスは抗うようです
   ↑
   ↓
4 ホムンクルスは救うようです
   ↑
   ↓
5 ホムンクルスは治すようです



148 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:20:51 ID:sHdSpc460






6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです


149 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:23:47 ID:sHdSpc460


遠くへ……。


真冬の地。
降り積もる雪。

僕は歩く。
ざくざくと、深く足跡を残して。

それらは白く塗りつぶされていく。
おぞましい出来事を覆い隠すかのように。


僕は歩く。
雪が過去を埋め尽くしてくれることを願いながら。


(´ ω `) 「はぁ……はぁ……」

吐く息は白銀の世界に溶けていく。

何も考えずに足を動かし続けてもう一週間になる。
普通の人間ならとっくに息絶えて、狼の餌食になっているはずだ。

ホムンクルスゆえに、生きていれるというのはなんという皮肉か。


150 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:24:55 ID:sHdSpc460

眼を閉じて倒れ込もうとするたびに凄惨な光景がまぶたの裏に流れる。
その度に前を見て進む。

(´ ω `) 「やめろ……やめてくれ……」

僅かに吹雪が緩やかになり、林の切れ目に尖塔が見える。
そこから洩れる暖かな光に心ひかれ、門を目指す。

四つの尖塔のある比較的新しい教会。
門は押すとゆっくりと開き、中には人の姿は無かった。

教会内は物音一つしない。
それなのに僕の頭の中は甲高い悲鳴が鳴り響いている。

(´ ω `) 「ああ……」

怨嗟の声が頭の中で響き続ける。

ホムンクルスは死んで逃げることが出来ない。
一時的に意識が失われるだけにすぎない。
そんなわずかな希望にすがって、教壇の前で首を切り裂いた。
微かに見えた、飛び散った血液は人間と同じ色だった。


151 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:28:55 ID:sHdSpc460

どれだけの時間がたったのか分からない。
極僅かかもしれないし、数百年と経過しているかもしれない。
世界が滅びていてくれたら、どれほど救われていただろうか。


そんな馬鹿なことを考える。

焦点があった視点の先には、なぜかまだ湯気をあげるスープが置いてあった。

脳が空腹を訴える。
小さな木製のスプーンを恐る恐る手に取り、料理を口に運ぶ。

さらさらとした舌触り。
食べやすい大きさの芋は中まで味がよくしみている。


視界がぼやける。
僕は泣いていた。

まるで、人のように。
殺しても死なない化け物のくせに。

嗚咽をあげながら。


152 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:30:12 ID:sHdSpc460

僕は家族を救うことが出来なかった。
大切な物をすべて失った。

なのにのうのうと生きている。

これからの途方もない命の行方を恐れている。
そんな自分が嫌で、涙が止まらない。

(´;ω;`) 「うっ……っ……ううっ……」

蹲ってひたすら泣いていた。
そんな事では何の解決にならないことは知っていたけれど。

「あの……大丈夫ですか?」

背中から掛けられた小さな声。
振り向けばそこに小柄な少女が立っていた。

ぶかぶかの服は所々に繕った跡がある。
この近辺に住んでいるのだろうか。

⌒*リ´・-・リ 「この辺の人じゃないですよね……生きてますか……?」


153 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:31:02 ID:sHdSpc460

見知らぬ人間が怖くは無いのだろうか。
いや、ここらは平和な土地柄なのかもしれない。

それにしては言語が乱雑な気もするけれど。

(´ ω `) 「スープは君が?」

⌒*リ´・-・リ 「はい。余り物ですけど」

(´・ω・`) 「……ありがとう。美味しかったよ」

ゆっくりと立ち上がる。
体の芯が凍っているのか、うまく動けない。

⌒*リ´・-・リ 「……よかったら、家に来ますか? 暖炉に薪をくべる仕事がありますよ?」

(´・ω・`) 「……いや、いいよ」

優しくされたら動けなくなりそうだった。
だから誘いを断り、出口に向かって歩く。

⌒*リ´・-・リ 「そう……ですか。でも、とてもじゃないけど動けないと思いますよ」


154 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:32:22 ID:sHdSpc460

扉を開けた瞬間、吹雪が舞いこんできた。
目の前が真っ白に染まり、前がほとんど見えない。

⌒*リ´・-・リ 「ね? 私の家はすぐそこですから」

(´・ω・`) 「いや、いい。これくらいで、いい」

これだけ吹雪けば、夏になるくらいまでは眠れるだろう。

⌒*リ´・-・リ 「え?」

驚く少女を余所に、豪雪の中に踏み出した。
慌てた様子で腕を掴まれる。

⌒*リ;´・-・リ 「ちょっ、ちょっと待ってください! 実はですね、家に帰れなくて困ってるんです」

(´・ω・`) 「どうやって来たんだよ……」

少女の小柄な体でこれだけの雪を掻き分けられるとも思えない。

⌒*リ´・-・リ 「家は、この教会のすぐ裏にあるんですけど、さっきは今ほどひどくなかったんです」

(´・ω・`)  「…………」

⌒*リ´・-・リ  「帰らないと凍え死んじゃいます」

(´・ω・`)  「……送っていくだけだから」


155 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:34:50 ID:sHdSpc460

貰ったスープの分くらいは恩返ししてもいいだろう。
少女の指示に従い、雪をかき分けていく。
教会の裏側に回るまでに随分な時間がかかった。

⌒*リ´・-・リ 「どうもありがとうございました」

(´・ω・`) 「ああ、それじゃ」

⌒*リ´・-・リ 「ちょっと待ってください。スープ代貰ってませんよ?」

(´・ω・`)  「……え?……有料なの?」

当然無一文。
金目のものなんて何一つ持ってなかった。

⌒*リ´・-・リ 「伊達に一人で生きてるわけじゃないです。
         いいじゃないですか。今夜くらい泊まって下さいよ」

(´・ω・`) 「……僕が乱暴するとは考えないのか?」

⌒*リ´・-・リ 「身を守る術くらい心得てますし、
         教会でうじうじ泣いてるような人がそんなことするとは思えません」

手を引かれるがままに家の中に入る。
広い部屋には所狭しと薪が重ねられていた。

(´・ω・`) 「広いな」


156 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:35:59 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「一人暮らしですけど、このくらいは必要です。
         ああ、寝るのは地面で寝てください」

確かにベッドは一つしかなく、どう考えても二人が寝れるサイズではない。
それならば、少女が床をさすのは自然なことだと思うのだけれど。

(´・ω・`) (何故親指……)


結局、勢いに流されて一晩泊まることになった。

勢い流されてとは、我ながら体のいい言い訳だ。
ただ独りでいるのが寂しかった。

誰かに優しくしてもらいたかった。

⌒*リ´・-・リ 「夜中は暖炉の火が消えないよにしてくださいね。よろしく」

それだけ言うと彼女は布団にもぐってしまった。

火花を見つめて時間を過ごす。
たまに薪を放り投げ、またうとうととする。


・  ・  ・  ・  ・  ・


157 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:38:23 ID:sHdSpc460



(´ ω `) 「やめろっ……!」

真っ直ぐに伸ばした手は空を切った。

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」

嫌な汗で全身が不快感に苛まれる。
少女は起きてこない。

息するのが苦しい。
生きるのが苦しい。

悪夢のような光景が何度もフラッシュバックする。

一睡もすることが出来ずに朝を迎えた。
日が昇る頃に少女は目を覚まし、調理場に向かっていった。

窓から外を確認するが、相変わらず吹雪いているし、半分ほどが雪に埋もれている。
この調子では扉は開かないだろう。

⌒*リ´・-・リ 「どうぞ」

差し出されたのはパンとジャムを少し。

(´・ω・`) 「これも有料……?」


158 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:39:46 ID:sHdSpc460

⌒*リ´*・-・リ 「勿論です」

少女は笑顔で答える。
迷ったものの、それを受け取りかじる。

その後は無言で過ごした。
少女にとっては苦痛だったかもしれないが、
僕は話す気になれなかった。

少女は黙々と手作業で何かを編んでいる。

二日が経ち、


三日が過ぎ、


四日目についに僕は口を開いた。


(´・ω・`) 「……聞かないのか?」

少しだけ、少女に興味を持ったからだ。
暖かい寝床に、暖かいご飯を食べ、だいぶ落ち着いてきていたというのもあった。

⌒*リ´・-・リ 「何をです?」


159 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:43:26 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「教会にいた理由」

少女から先に理由を聞かれていたら、にべもなく断ったかもしれない。

⌒*リ´・-・リ 「言いたくないのならそれでかまいません。
         雪が積もって家からでれませんから、話すことしかすることがありませんけどね」

(´・ω・`) 「……」

自分から話を持ち出したものの、話したくはなかった。
だから少女の優しさに甘えることにした。

(´・ω・`) 「この辺りはいつも吹雪いているのか?」

⌒*リ´・-・リ 「この時期はたいてい。例年だと、後一週間ほどは身動きとれませんよ」

話始めれば、聞きたいことは次から次へと出てきた。

(´・ω・`) 「……食料は?」

⌒*リ´・-・リ 「当然、足りませんよ。少しでも雪がおさまったら、手伝ってもらうことがあります」

もともと一人分しか用意されてなかったのだろう。
僕が予定外を引き起こしてしまったなら、その責任はとらなければならない。

(´・ω・`) 「それじゃあ、必要になったら声をかけて」


160 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:45:06 ID:sHdSpc460

久しぶりに話したことで少し疲れたので、再び壁にもたれた。
眠ることは出来ないけど、休むことくらいなら。

⌒*リ´・-・リ 「せっかくの話し相手だと思ったのに」

(´・ω・`) 「僕なんかと話してもつまらないよ」

⌒*リ´・-・リ 「つまらないかどうかは私が決めます。それに、家主の要望には答えるべきじゃない?」

会話を楽しむ余裕は残っていなかった。
それゆえ、少女の話を聞き相づちを打っていた。

それは夏の祭りの話だったり、教会を造るときの話だったり、僕にとって新鮮で、心惹かれる物だった。

以前は家から出ることすら許されていなかったのだから。
主の仕事を手伝い、その娘の話し相手をしていた。外の世界のことはそのときに聞いた物が大半だった。

⌒*リ´・-・リ 「どうして泣いてるの?」

指摘されて初めて気づいた。
ぼろぼろと大きな粒がこぼれていた。

(´;ω `) 「いや、なんでもない」

手の甲で拭い、平静を装った。

⌒*リ´・-・リ 「なんでもいいなら、それでいいけですけど。それでですね、その時叔父さんが―――――」


161 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:48:11 ID:sHdSpc460

よくもまぁ、話題が尽きないものだ。
この雪の中ただ一人で暮らしていたせいで、人恋しいかったのかもしれない。

それにしても、なぜこんなところに一人で暮らしているのだろうか。
独り立ちする年齢には見えない。
なら、何か事情があるのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「……気になりますか?」

(´・ω・`) 「え?」

⌒*リ´・-・リ 「私のことです」

どうやら顔に出ていたらしい。
顔を上げると少女の真っ直ぐな視線とぶつかり、目を逸らして謝る。

(´・ω・`) 「……ごめん」

⌒*リ´・-・リ 「謝らないでください。気になるのは当然ですよね。
         それに、まだ自己紹介もしてませんでした」

胸に両手を重ね、ペコリと一礼をする。
ドレスを着て教会で会っていたなら、どこかの令嬢かと思わせるような、そんなお辞儀だった。
その動作が過去の少女と重なって、胸を締め付ける。

⌒*リ´・-・リ 「リルケット・リファリアと言います。この辺りの人はリリーやリリって呼びます。
         あなたの名前は?」


162 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:50:05 ID:sHdSpc460

僕の名前。
主人からいただいた大事な名前。

(´・ω・`) 「僕は……ショボン」

⌒*リ´・-・リ 「変わった名前ですね」

(´・ω・`) 「僕もそう思う」

何故こんな名前にしたのか主人に聞いたことがあった。
その時に笑いながら答えられたのを覚えている。

がっかりしたようなしょぼくれ顔だからだ、と。

⌒*リ´・-・リ 「私がここで暮らしている理由は聞かないでくださると助かります」

ぎこちない笑顔で言う。
問いただすつもりなんか無かった。
隠し事をしているのはお互い様だ。

⌒*リ´・-・リ 「それにしても、ひどい雪ですね」

窓はすでに覆い尽くされており、部屋の明かりは暖炉の火だけだった。

それからも、少女の話を聞きながら時間を過ごした。
たまに僕も話した。

過去を思い出すのはつらかったけれど、少女と話しているだけで少し楽になれたから。


163 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:51:44 ID:sHdSpc460

話疲れたのか少女は寝息を立て始めた。
毛布をしっかりとかけ、火の番をする。
一人の時間になると忽ち自問自答が始まる。

楽になることは主人に対する裏切りではないのか。

幸せに生きる権利なんてないのではないか。

今すぐにでも死ぬべきではないか

堂々巡りで答えなんて出ない。
ただの徒労だと分かっていても、考えることをやめることができなかった。

(´ ω `) 「…………僕はどうすれば」


・  ・  ・  ・  ・  ・


⌒*リ´・-・リ 「起きてください、雪がやんでますよ」

揺すられて目を覚ました。

(´・ω・`) 「……?」


164 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:54:39 ID:sHdSpc460

窓から差し込む太陽の光が目にささる。
うずたかく積もった雪は、溶けはじめていた。

⌒*リ´・-・リ 「随分と長いこと寝てましたね。寒くて目が覚めたじゃないですか」

彼女の指は暖炉を指している。

⌒*リ´・-・リ 「まぁ、いいですけど。二日も暖炉の番を任せたのは私ですし。
         無理をさせてしまいましたか?」

(´・ω・`) 「いや……ごめん」

⌒*リ´・-・リ 「いい天気なので、食料を補充しておきたいのですが」

(´・ω・`) 「ああ、わかった。どうすればいい?」

ゆっくりと立ち上がる。
全身の気だるさはなくなっていた。

⌒*リ´・-・リ 「それでは、行きましょうか。それを持ってきてください」


シャベルに見えるけれど、金属部分は先端だけだ。
幅がこうも広くては地面は掘れない……いや、雪を掘るのか。
それならば、全体的に軽く作られているのも納得できる。


165 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:55:36 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「わかった」

少女が扉を押してもびくともしない。
積もった雪がまだ重しになっているのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「仕方ありません。窓から出ますよ」

少女は窓を開け、雪の上に飛び出した。

⌒*リ´・-・リ 「早く来てください。ここからはあなたの仕事です」

同様に窓から外に出て、雪を踏み固める。
そこからはシャベルを使って雪を崩し、体を使って道を作る重労働だった。
僕が道を作っている間、少女は後ろで方向を指示している。

(´・ω・`) 「ふぅ……少しくらい手伝ってくれないかな」

ホムンクルスの命は無限でも、体力は有限だ。
回復力は人間よりも僅かに優れている程度。
当然、作業効率はどんどん落ちていく。


166 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:57:03 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「あなたのせいで、この雪の中食料を取りに行くことになっているんですけどね。
         それに私はあなたよりずっと力作業では劣ります。まぁ、いいですよ。それをかしてくだ」

(´・ω・`) 「後どれくらい?」

確かに食料が足りなくなったのは僕のせいだ。
それに諦めるのは癪だったので、話を遮った。

⌒*リ´・-・リ 「まだまだですよ?」

数時間かけて雪を掘り続け、大きな木にぶつかった。
幹は大人数人でやっと囲めるほど太く、枝は高くまで伸びている。
この雪で倒れないのだから、余程丈夫なのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「やっとここまで来ましたか。随分かかりましたね」

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……よく、言うよ…」

ここまでずっとぶっ通しで作業していたのだ。少しくらい休ませて欲しい。

⌒*リ´・-・リ 「もう少しです。頑張ってください。この右奥にあるはずです」

言われるがままに道を作る。
疲労は限界に達していた。

⌒*リ´・-・リ 「この辺ですね。少し待ってください」

少女は屈んで、その小さな手で雪の下側を掘っていく。


167 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:58:29 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「あった。ありました」

掘り出したのは袋。

⌒*リ´・-・リ 「中に野菜が入ってるんです。冬はこうやって保存するんですよ。
         全部持って行こうかなぁ……んー、うん。じゃあこれもってください。家に帰りましょう」

渡された袋を抱え、来た道を引き返す。
何の問題も起こらず、あっさり帰ってくることが出来た。
汗で冷え始めた体を、暖炉で暖める。

⌒*リ´・-・リ 「さて、これで完全に雪が溶けるまではもちそうです。お疲れさまでした。何か食べますか?」

(´・ω・`) 「いや……今はいいよ」

体を動かしてるうちは嫌なことを考えなくてすむのだから、悪くないかもしれない。
そんなことを考えていた。

⌒*リ´・-・リ 「もし、もしこれからどうされるのか決まっていないのでしたら……ここに住んでくださってもいいですよ」

(´・ω・`) 「考えさせてもらうよ」


168 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:02:46 ID:sHdSpc460


もし許されるのなら、少女と生きてみたいとすら思っていた。
あいつら以外の人間をも恨み続けることなんて、もとより僕には出来ないのだ。

僕は人間が好きだから。
それに、この娘はあいつらとは関係がない。

⌒*リ´・-・リ 「音楽は嫌いですか?」


音楽についての僕の知識は乏しい。

完璧な存在として説明されている文献が多いホムンクルスだけれど、僕はそうではない。
そもそも生まれながらにして森羅万象を知ると、精神に異常をきたしてしまうそうだ。
それに、人間社会にも適合できない。

実際にホムンクルスを作った僕の主人が言うのだから間違いないのだろう。
音楽や美術、人の心理、人間関係について自ら学ぶことで情緒が育まれ、心を得る。

⌒*リ´・-・リ 「あのー?」

(´・ω・`) 「ん……ああ……いや、そんなことはないけど」

考え事をしていたせいで反応が遅れ、間抜けな返事をしてしまった。


169 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:04:06 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「昔のことを思い出してて。楽器の演奏が出来るの?」

⌒*リ´・-・リ 「少しだけですけど」

階段を上り、二階から持って降りてきたのは木で造られた横笛。
大事そうに抱えられたそれは随分古い物のように見える。
少女は二、三回音を調べるようにならす。

⌒*リ´・-・リ 「それでは」

鳥の囀りのような高い音から演奏は始まった。
短く区切った調子のリズムからゆったりとした長いリズムへ。
音域を全体的に下げ落ち着いた雰囲気を醸し出す。

(´-ω-`) 「……」

技術で言えば決して上手ではないのだろう。
たまに意図せぬ音を出してしまったであろうことが表情から読みとれた。
しかし、音楽として聞くのであれば、それは非常に心惹かれるものだった。

⌒*リ´・-・リ 「どうでしょうか……?」

恐る恐る尋ねてくる少女。


170 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:05:06 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「とてもよかった」

それ以上に今の気持ちを表現する言葉を知らない。
それでも、少女には十二分に伝わったようだ。

⌒*リ´*・-・リ 「それはよかったです。では調子にのってもう一曲」

目を閉じて聴覚に身を任せる。
音楽が心に沁み込む。

少女は気の向くままに笛を吹き続ける。


・  ・  ・  ・  ・  ・


⌒*リ´・-・リ 「晩御飯ができましたよ」

揺さぶられて起こされた時、辺りはすっかり暗くなっていた。
窓からは月明かりが射しこんでいる。

(´・ω+`) 「ん……寝てたのか……」

⌒*リ´・-・リ 「それはもう、ぐっすり」


171 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:08:04 ID:sHdSpc460

机の上には二人分の食事が用意されていた。
切り分けられたチーズ。
一口サイズのパン。

瓶の中に入っているのは葡萄酒だろうか。
小さなグラスが二つ並べてある。

スープには今日取りに行った根野菜が豊富に使われていた。

⌒*リ´・-・リ 「神の恵みに感謝します」

少女が祈りが終わるのを待ってから、食事に手をつける。
神なんて信じちゃいないから、祈りはしない。

(´・ω・`) 「……おいしい」

⌒*リ´*・-・リ 「当然です」

僕と少女の生活はきっとこの日から本当の意味で始まった。


172 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:09:42 ID:sHdSpc460


季節が変わり雪が融け始めてからは、畑の手伝いをすることになった。

村長にも会い、挨拶もそこそこに僕が暫くこの村にとどまることにしたと話した。
陽気な老人で、少女のことをよろしく頼むと任されたが、
現状よろしく頼まれているのは僕の方だった。

(´・ω・`) 「何をすればいい?」

共同生活の一員として生きることに関して、僕は質問してばかりだった。
それなのに彼女は嫌な顔一つせずに教えてくれた。
僕の得意な錬金術は、道具がなければ毛ほどの役にも立たない。
こんな田舎の土地に道具があるはずもなかった。

⌒*リ´・-・リ 「……こうやって左手で押さえながら、そうそう」

朝は今まで少女が任されてきた仕事を習う。
それが終わった後は、割り当てられた畑を耕す。

「おーい! ショボン君、こっちも手伝ってくれないか?」

懸命に働いていたからか、村人達はすぐに僕を受け入れてくれた。

畑仕事を夜までやって、家に帰って葡萄酒を飲む。
そんな人間らしい生活も楽しかった。


173 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:11:13 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「お疲れさま」

⌒*リ´・-・リ 「お疲れさまでした」

そうやって過ごしていた僕らの関係は、ただの同居人だった。
村人達ははやし立てていたけれど、当人達にそんな気はなかった。

それが大きく変わったのは季節が一回りしてから夏に入って少しした頃。

彼女との生活は一年と半年ほど経っていた。

いつも通りに僕は村から一番離れた山の麓で野菜の手入れをしていた時、
山から下りてきた巨大な熊とはち合わせになった。

持っていたのは小さな鎌一つ。
腹を空かせた熊をそのままに逃げることは出来なかった。
畑に居着いてしまえば、村人達に危害が加わるかもしれない。

それに、どうせ死にはしないのだ。
肝を据えて鎌を構えて対峙する。


熊が勢いよく飛び込んでくる。
一瞬の内に振り下ろされた一撃で、どうやら頭を吹き飛ばされたらしいことを回復してから理解した。
一方右手の鎌は熊の腕を軽くひっかいた程度の傷しか与えてないようだ。

:・;、・ω・`) (毛が邪魔して刃が通らない……)


174 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:12:42 ID:sHdSpc460

死んだフリをしたまま作戦を練る。
熊はゆっくりと僕に覆い被り、呑気に鼻を動かしていた。

(´・ω・`) (死肉だとでも思ってるんだろうな)

牙をむき出しにし、頭を食いちぎろうとした瞬間、鎌を目に向かって突き出した。
熊は悲鳴とともに後退する。

その隙につけ込んで、もう一太刀浴びせようと飛び込んだが、鋭い爪で横なぎにされ数秒間宙を舞った。

(#´-ω・`) 「がっ……ってえああああああああ」

腸が露わになっていた。
痛みで意識が飛びそうになるのを必死にこらえる。
治癒に時を要している間に、熊の方も落ち着きを取り戻したように見えた。

(#´・ω・`) 「もう一つの目玉も潰してやる」

完全回復を確認し、不自由な左目の側から懐に飛び込む。
コンマ数秒反応が遅れ、右腕の振り下ろしが襲ってくる。
それを紙一重で避け、残された目玉を潰して終わるはずだった。

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!!」


175 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:13:32 ID:sHdSpc460

その声に動きが僅かに鈍る。
必殺の攻撃と目潰しは同時に入った。

僕は彼女の前で……初めて死んだ。

⌒*リ´;-;リ 「ショボンっ……ショボンっ……」

怒り狂った熊を恐れず、彼女は僕の元へ一直線に走り来る。

⌒*リ´;-;リ 「そんな……嫌だよ……ショボンっ!」

(#´-ω・`) 「だい、じょうぶ、だから」

⌒*リ´;-;リ 「大丈夫なわけが、こんなに血も出て……」

そこまで言って気づいたようだ。
傷が余りにも浅いことに。

それも、驚異的な速度で治癒していることに。

「ショボンっ!大丈夫か?」

村の男達が熊に気づき武装して近づいてくる。
視力を失った熊に驚きつつも、複数人で槍を突き刺してとどめを刺す。


176 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:14:44 ID:sHdSpc460

「お前がやったんか?」

(´・ω・`) 「はい」

「怪我は?」

体中についていた血痕はすでに消えてなくなっていた。
服はボロボロになっているけれど、傷さえなければ大丈夫だろう。

(´・ω・`) 「ありません」

「そうか。今度からは無理をするなよ」

(´・ω・`) 「すいませんでした」

⌒*リ´・-・リ 「……ショボン、家に帰るよ」

彼女の一歩後ろを歩き、帰路についた。
家に着くまでの間、彼女は一言も口を利かなかった。

⌒*リ´・-・リ 「……どういうこと?」

てっきり化け物扱いされると思っていたから、家に帰ってきて最初の一言にひどく安心した。
もはや隠すことはかなわないと知り、正直に打ち明ける。

(´・ω・`) 「僕は……人間じゃない。ホムンクルスだ……」


177 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:16:30 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「ホムン……クルス……?」

(´・ω・`) 「動いて喋って考えて……死なない、作り出された命」

簡潔に言えばそういうことだ。
細かい点だと体内構造も若干違うし、痛みという刺激に対する反応も鈍い。
だがそんなことは説明しても無駄だろう。

(´・ω・`) 「今まで騙しててごめん……」

知られてしまえば、もうここにはいれない。


去ろう。
彼女の元から。

いずれ村の人にも知られるかもしれない。
そうなれば、彼女たちの平穏な暮らしを乱してしまう。

⌒*リ´・-・リ 「私は……私は……」

(´・ω・`) 「さようなら。今までありがとう」


精いっぱいの感謝を籠めて、別れの言葉を告げる


178 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:17:40 ID:sHdSpc460

彼女のおかげで、過去を忘れることができた。

彼女のおかげで、生きていることができた。

だから、彼女のために去ろう。

⌒*リ´ - リ 「待ってっ……!」

反応する暇もなく、後ろから抱きとめられた。

⌒*リ´;-;リ 「別に……あなたが死なないだとか、作られただとか、そんなことはどうでもいい。
         私は、あなたと一緒にいたい。それでは駄目ですか……?」

(´-ω-`) 「リリ……」

⌒*リ´;-;リ 「初めて……」

(´・ω・`) 「え?」

⌒*リ´;-;リ 「初めてちゃんと名前呼んでくれたね……。
         村の人にも分かってもらえるように努力するから……。
         だから……これからも、一緒にいてください」

枯れてしまったと思っていた涙が、とめどなく溢れて来ていた。

(´;ω;`) 「うん……っ。うん……っ」

何も答えることができず、ただひたすらと頷いていた。


179 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:21:30 ID:sHdSpc460







6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです  End

             ↓

7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第5話 

118 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:46:30 ID:lsHJEv/k0





5 ホムンクルスは治すようです


119 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:48:22 ID:lsHJEv/k0


僕は船に乗り海を跨いだ先にある大陸に足を踏み入れた。
その大陸には広大な砂漠と密林が広がっているそうだ。



技術が発展している北側の大陸と違い、南側は砂漠と密林が多くを占める未開の地だ。
とりあえず南端まで歩いてみるつもりで砂漠を縦断していた。



何日も砂漠を歩いていたら、正面からやってきた老婆に藪から棒に話しかけられた。
藪なんてものは一切見なかったけれど。



「お助け下さい、お助け下さい」


120 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:51:24 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「これは……」

腕に抱えているのは生まれて間もないであろう子ども。

その肌には浅黒い斑点に覆われている。
息は浅く、額には汗の粒が張り付いていた。

よくよく見れば、襤褸切れから伸びた老婆の両腕にも同じような症状が出ていた。

(´・ω・`) 「どこから来られたのですか……?」

「ここから南にある小さな集落からです」

(´・ω・`) 「そんなところに村が?」

「ついぞさっきまではラクダがいたのですが、倒れてしまいました。
 どうか旅のお方、錬金術師と窺いますが、どうかこの子を助けて下さい」


こふっと小さな咳が一つ。
赤ん坊は腕の中で息を引き取ったようだ。


「そんな……っ……」

老女もまた血を吐いて倒れてしまった。


121 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:53:11 ID:lsHJEv/k0

(;´・ω・`) 「大丈夫ですか?」

話しかけても反応がないところを見るに、もう生きてはいまい。
一陣の風が老婆の身体を崩していく。
黒く変化した部分はひどく衝撃に弱いようだ。


(´・ω・`) 「こんな病気は見たことない……」

もし感染力の高い菌であるのなら、既に感染してしまったかもしれない。
果たしてこのホムンクルスの身体はいったいどうなるのか。
少なくとも風邪や他の病気にかかったことは無いけれども、どうなるかはわからない。


僕は好奇心と心配を半々に村へ向かうことにした。

(´・ω・`) 「とは言っても、南ってどの位行けばいいんだ……」

少なくとも、目の前は砂しか存在しない。
村があるとは到底思えないけれども、とりあえずは南に向かうとしよう。

(;´・ω・`) 「水は十分あるけれど……あっついなぁ……」

冷たい水が喉を潤してくれる。
今回、この砂漠行に当たって用意した特殊な水筒のおかげで、随分楽な旅路になってる。
気温が高いところでも、影響されることなく冷たさを保ってくれる代物。


122 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:54:22 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「ふふふ……」


内藤と違って僕は実用的な物しか作らない主義なんだ。
これだって売りに出せば相当の金が稼げるに違いない。

一つ作るのにも相当な手間がいるから、売ろうとは思わないけどね。

(´・ω・`) 「これで三つめか」

大きな砂丘を跨ぐこと三つ。

(´・ω・`) 「あれか……」

小さなオアシスを中心にして集落があった。
簡易テントから察するに移動型部族なんだろう。

(´・ω・`) 「一体どうなっていることやら……」


生きた人間の空気がしない。
およそ生活痕は残ってないし、出歩いている人も見えない。


全滅も覚悟で村の一番で前にある家を覗いた。


123 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:55:09 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「失礼します……」

悪臭漂うテントの中には真っ黒になった数人の死骸。
本来、死体が腐ればそこに蠅が湧くものだけれど、その様子はない。

(´・ω・`) 「これは酷いな」

乱雑に積まれた数十人分の死体と、元は人間であったであろう黒い山。
細かい炭の欠片にしか見えない。
おそらく二十人ほどの死体になるだろうな。

「誰だ?」

(´・ω・`) 「!!」

死体の山から声が聞こえた。
がさがさと動き、中からその声の主は姿を現した。

ともかく、生き残りがいるのはありがたい。
死体の山に埋もれていた相手を視認した時、驚き顎が外れるかと思った。



川 ゚ -゚) 「ショボン……」

(´・ω・`) 「クール……?」


124 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:55:55 ID:lsHJEv/k0


川 ゚ -゚) 「君とこんなところで会うとは思わなかった」

(´・ω・`) 「僕もだよ……」



無限を生きる僕は、同じく無限の人間と接することになる。
今日会った人間の、そのずっと先祖も知っているかもしれないし、
その子孫にも会うかもしれない。

世界が滅ぶまで、僕は新たに出会い続けるだろう。


その中で、ほんの少しだけ例外がいる。

僕の生み出した罪の生き物。

四人のホムンクルス達。


125 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:56:35 ID:lsHJEv/k0



怖くて

寂しくて。

僕は罪を形にしてしまった。
与えられた知識を用い、生み出してしまった。

最初の一人には、全ての知識を。
そして僕は自らの過ちを知った。

自らの命を断とうと、意識を寸断してしまった彼女を見て。

次に生み出した三人は完全な知識を与えることはしなかった。

それでも共に時を過ごすうちに内藤以外の彼らは僕を嫌い、姿を消してしまった。。
今はどこで何をしているのか知らない。

たたひとつ、死んではいないだろうということ以外は。


そして後一人。

あの忌々しい悪魔。
命以外の僕の全てを奪い取った男。


126 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:57:21 ID:lsHJEv/k0


川 ゚ -゚) 「変わらないな」

(´・ω・`) 「お互い様だろう」

川 ゚ -゚) 「そうでもないんだがな」

クールが持ちあげた腕は黒く、掲げられたそばから崩れていく。
血は一滴すら流れない。

(´・ω・`) 「それは……」

川 ゚ -゚) 「ああ……ホムンクルスが、病気になるとは、思わなかったか?」

(´・ω・`) 「何をしたんだ?」

彼女の会話を聞きとるのは苦労した。
喉も病に侵されているのか、一言喋るごとに間が空くからだ。

川 ゚ -゚) 「なぁに、ホムンクルスを殺す、研究だよ……」

(´・ω・`) 「……」

返す言葉がない。
彼女は僕と別れてからおよそ百数年の間、自らを殺し続けたと言うのか。


127 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:58:22 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「……」

川 ゚ -゚) 「痛みは最初の、十年で慣れた。こうして、遊牧民族と一緒に、行動しているとな、
      色々珍しい場所にも行くからな。錬金術を対価に、養ってもらっていた。
      そこで開発したのが、この薬……いや病と言った方がいいだろうな」

クールは自重気味に呟いた。
彼女は自らを殺すために、一つの部族を全滅させてしまったことを知っている。

川 ゚ -゚) 「彼らを、殺すつもりはなかった。私は病が完成した時、静かにこの場所を離れた。
      小高い丘の上でそれを飲み、滅んでいくつもりだったのだ。
      私の身体は砂に埋もれ、この世の終わりまで見つからなかっただろう。それを……っ!」

苦しそうに息をする。

(´・ω・`) 「……」

川 ゚ -゚) 「……」

彼女が噛んだ下唇はぽろぽろと崩れていく。
涙が頬を伝って流れおちる。

川#゚ -゚) 「伝染しないように努力したつもりだった!」

あらん限りの叫び声は、彼女を壊した。


128 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:59:07 ID:lsHJEv/k0


川 ゚ -゚) 「君も終わりだな……ここで共に朽ちるのを待とうじゃないか」

(´・ω・`) 「……お断りするよ。僕はまだ、死ねない。それに……その病を後世に残すことは人間にとってどれ程の脅威か。
      それは分かっているだろう?」

川 ゚ -゚) 「……っ」

彼女とて人間を巻き込むのは本意ではないのだろう。
その時の自殺願望が勝っただけで、永遠に後悔し続けるに違いない。

川 ゚ -゚) 「勝手にやってくれ……私はこのまま朽ちていく。邪魔をしないでくれ」

目を瞑り眠ったように見えるクールを残し、僕は外の空気を吸った。
これが空気感染するのか、それ以外で感染するのか全く分からないせいでどうにも変な気がする。

(´・ω・`) 「さて、まずは探索かな……」

テントの数は意外と少ない。
一つずつ調べても大した手間にはならないだろう。


129 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 09:59:52 ID:lsHJEv/k0


(´・ω・`) 「ここは違う……ここも……ここも……」

それぞれに、ぼろぼろに崩れた死体が山と積んである。
まるで墓標のように、テントの下には死体が眠っていた。

中心にあるオアシスに密接した少し大きめのテント。
そこで僕は目当ての物を見つけた。

特殊な器具が所狭しと並べられている。
錬金術師の居所だ。

(´・ω・`) 「何を作ったのかを調べないといけないわけだけれど……きったないなぁ……」

よくよく考えてみれば、僕らの誰一人としてラボを綺麗にしている奴なんていなかったな。
ブーンはアレだし、クールもこの通り。
あいつに至っては……。

僕はそもそも研究所を持たないからなぁ……。

ざっと机の上を眺めるとすぐに見つけることができた。
こんなにもわかりやすく置いてあるとは思わなかったけど。


130 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:01:35 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「ふむふむ……使ったのは鈍色サボテン、岩蠍。黒死病をベースにして……。
       粗方分かったな……。後はどうやって解毒するか、か」

細かいところはクールに直接聞かないと分からないだろう。

クールの眠るテントへの道すがら、ふと気配を感じて振り向いた。

「……」

一人の少年が立っていた。
腕は他の人と同じく患っていたが、随分とその範囲は狭かった。

(´・ω・`) 「君!」

「?」

首を横にかしげる。
どうやら言葉は通じるらしい。

(´・ω・`) 「……話せないのか……?」

コクリ、と頷いた。

(´・ω・`) 「ちょっと来てくれ……」


131 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:02:26 ID:lsHJEv/k0

腕を取り、病巣をよく調べる。
痛がるそぶりを見せないということは、もうすでに組織が死んでしまっているのだろうか。

(´・ω・`) 「後は、クールから聞き出すだけか」

錬金術は素材を的確な順番に調合することで、目的の効果を得る。
そこには術師の実力と意思が大きく関わってくる。

病巣のサンプルは嫌になるほどある。
だけど研究室で見つけた図には、肝心のことが書いてなかった。
クールが何を思い、どう考えて病原菌を作成したのか。

(´・ω・`) 「それさえ聞き出せれば、対為す調合はできるはずだ……」

「……」



(´・ω・`) 「クール! 生存者がいた!」

川 ゚ -゚) 「!?」

予想通り飛び起きてくれた。
その際に身体がばらばらに砕けて少年を酷く驚かせてしまったが。


132 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:03:09 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「この少年を助けるためにも、手助けがいる」

川 ゚ -゚) 「だけど……」

(´・ω・`) 「いつまでもつかわからないんだ!
       調合にも時間がかかる」

何を迷う必要がある。
巻き込みたくなかった部族の生き残りだ。
助けないでどうする。

(´・ω・`) 「……」

川 ゚ -゚) 「…………メモをとる準備をしてくれ」

(´・ω・`) 「!」

クールの話は簡単だった。

調合で最も重視したのは持続性だということ。
どんな怪我でも完治してしまうホムンクルスの再生力は並大抵の毒では覆せない。

転移し増え続ける病巣の速度が再生を上回ることで死に続けることができる。

(´・ω・`) 「つまり……病原体の繁殖を抑えればいいわけか」


133 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:04:21 ID:lsHJEv/k0

川 ゚ -゚) 「感染源はおそらく、患部との接触によるものだ」

(´・ω・`) 「彼は一人で暮らしていたからな。感染が一番遅かったんじゃないか」

「…………」

(´・ω・`) 「君の研究所を借りるよ」

クール置いて飛び出した。
なにしろ時間がない。
既に少年を触ってしまった僕にも移っているに違いない。

クールのように動けなくなってしまえば、薬を作り出すことはできない。
何より早さが重要視される。

研究所にある素材を一つずつチェックする。
強い解毒効果は必要ない。
細菌の動きを緩めるだけでいい。

ただそれの酷く強力な奴を作らなければいけない。

少年の死んだ肌の細胞を純水に溶かし、少しだけかき混ぜる。
解毒作用を持つ月光草を潰して加え、煮沸する。

冷たい試験管の中に集まった水滴を人数分にとりわける。

─────三つの試験管に


134 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:05:06 ID:lsHJEv/k0

最後に、生き物の動きを鈍らせる成分を含んだ千年岩を粉末状にし加える。

(´・ω・`) 「よし……」

数日間月の光を浴びせ、調合を落ち着けさせることで完成する。

擬似的な月光を発生する月光石とともに暗室に放置した。
これで僕も、少年も……クールも助かるだろう。

ただ少年の場合は病巣を完全に取り除かなきゃいけない。
これは僕の仕事じゃない。


彼女がするべきことだ。


135 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:06:13 ID:lsHJEv/k0



(´・ω・`) 「できた」

三日という短い期間で薬は完成した。

少年の症状の進行は早く、半身に広がっていた。
すぐに薬を投与し、布を敷いた簡易ベッドで横になっていてもらう。

(´・ω・`) (それにしても恐ろしいものを作ったな……)

自由に扱える左手で薬を飲む。
実感はない。
確認する方法はただ一つ。

既に言うことをきかなくなっていた右腕を机に上に乗せ……

左手で刀を抜き、自分の右腕を斬りおとした。

……つもりだった。

(´・ω・`) 「いったっ!痛っ! これ無理! くそっ……」


136 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:07:19 ID:lsHJEv/k0

自分の力で斬り落とせないのなら仕方ない。
口と左手を使って、椅子に刀を縛り付けた。

(´・ω・`) 「ふー」

覚悟を決め机から飛び降りた。
右脇に刀が入り込むように。

(´・ω・`) 「うぎぎ……っ。はぁっ……はぁっ……」

勢いよく跳ねあがった右腕は地面に落ちると同時に分解していく。
もし、薬がうまく働いているのなら……ん?

……待てよ。

(´・ω・`) (薬の作用は病巣の進行を緩めること……。
       もし血液に乗って全身に回っていたらどうすればいいんだ……?)

復活した右腕は正常だけれど、既に病魔が巣くっている可能性があるわけか……。

(´・ω・`) (嫌だなぁ……つまり身体を一回綺麗にしなきゃいけないわけだよな……)

あーあ。
完全に不安を拭うにはそれしか方法がないか。

病原菌を持ったまま旅を続けるわけにもいかないし。


137 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:09:16 ID:lsHJEv/k0

……テントの中ではできないな。
ラボから火種の元になる強力な爆発物を持ち出す。




(´・ω・`) 「……クール。行くよ」

無視するクール。
肩を掴んで引き起こそうとした結果、腕だけがとれてしまった。



川 ゚ -゚) 「…………」



(´・ω・`) 「…………」

今度は身体全体を抱えるように持ち上げる。

川#゚ -゚) 「何をする気だ!」

抵抗する力は赤ん坊よりも弱い。
そんな彼女の軽い体を集落から少し離れた場所まで運んだ。


138 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:10:14 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「今から、君を助ける」

川;゚ -゚) 「頼む……やめてくれ……後生だ……」

(´・ω・`) 「生き残った少年には治療が必要だ。それはわかってるはずだよね?」

彼の両腕はもう使い物にはならないかもしれない。
それでも彼はまだ生きている。

川 ゚ -゚) 「それは……君がやってくれ。君ならできるはずだ」

眼をそらすクール。

(´・ω・`) 「逃げるなよ。自分の罪から逃げるな」

川 ゚ -゚) 「……君がそれを言うか……私達を生み出した君が!!
      君さえいなければ!! こうはならなかった!!!」

クールの言葉は僕の心に深く刺ささった棘を押し込む。
ぐりぐりと捩じり込む。



(´・ω・`) 「……僕のことは関係ない。今は君のことを話している。
       君は償わなければならない。僕がそうしようとするように」


139 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:11:35 ID:lsHJEv/k0



川 ゚ -゚) 「…………」


(´・ω・`) 「僕の旅は自分探しだ。否定はしない。でも、それだけじゃない。
       ホムンクルスを殺す方法もまた、僕は探し求め続けている。
       探し続けなければならない」


川 ゚ -゚) 「…………」

(´・ω・`) 「やるぞ……」

小さなかけらを思いっきり地面にたたきつけた。





次に僕が意識を取り戻した時、足元は深く抉れていた。

川 ゚ー゚) 「……無茶苦茶をする」

再生を終えたクールが話しかけてくる。
両腕は元の白さを取り戻しており、顔色も健康そのものだ。


140 :名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 10:14:11 ID:lsHJEv/k0

(´・ω・`) 「さって、暫くはここを離れられないか」



深くため息をつくクール。
その顔に笑みはない。

川 ゚ -゚) 「恨むからな……。私は絶対お前を許さない」

(´・ω・`) 「……ああ」

川 ゚ -゚) 「ただ、それはそれだ。あの少年を救うために力を貸してほしい」

クールが頭を下げるのを見たのは初めてかもしれない。
どの道、完治が確認できるまではここを離れるわけにはいかないのだ。

(´・ω・`) 「……わかった」

僕と彼女は集落で待つ少年の元に駆け戻った。

彼を助けるために。





5 ホムンクルスは治すようです  終了


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第4話 

93 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:38:35 ID:JA8mU53Y0





4 ホムンクルスは救うようです


94 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:39:41 ID:JA8mU53Y0


(´・ω・`) 「久々に来るな……」

僕は幾つかの山を抜け、やっとたどり着いた。
山の合間にある小さな村。

十年ほど前に来てから、どうなったのかが知りたかった。

(´・ω・`) 「顔を隠さないといけないな……」

僕を知っている人間はまだ生きているだろう。
顔を見られて騒がれるわけにはいかない。
持参した布を頭から被る。


目的さえ果たせればすぐに去るつもりだ。

背の低い樹木をくぐれば村の入り口のはずだ。
記憶の通り、背の低い柱が二つ地面にさっている。

(´・ω・`) 「倒れてるかと思ったけど、まだ立っていたか」

村は相変わらず寂れてる。
いつ人がいなくなってもおかしくない。

太陽が昇っているのに、人の姿が見えない理由はすぐに分かった。
入口から入ってますぐ進んだところに村人が集まっている。


95 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:47:33 ID:JA8mU53Y0

そこにはこの村に無くてはならない自然のダムがあるはずだった。

(´・ω・`) (水が……)

かつて僕が来た時と全く同じ状況だった。

(´・ω・`) (なんのために僕が……)

以前訪ねた時も同じようにダムには水が無い。
できる限り水を手に入れる方法を教えて村を出たつもりだったのに、
それはどうやら実行されていないようだ。

(´・ω・`) (ってことは……)

村人をかき分けて奥まで進むと、そこには見覚えのある二人がいた。

一人はこの村の村長。
人間にしては恐ろしく長く生きている。

そして、もう一人は娘。
昔の面影が僅かに残っている。

(´・ω・`) 「やめろっ!」

僕は思わず声を張り上げてしまった。
村人全員の視線が突き刺さる。


96 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 17:55:31 ID:JA8mU53Y0

/ ,' 3 「なんじゃ、ほまえは?」

l从・∀・ノ!リ人 「!?」

村人は皆、僕を訝しがるように見ている。
村の重要な儀式を、突然現れた見ず知らずのしかも怪しい恰好をした男に止められたのだ。
その反応は当然と言えた。

ただ一人を除いて。
村人のなかで、少女だけが僕の存在に気づいていた。

l从・∀・ノ!リ人 「ショボン先生……ですか?」

姿を明かすつもりはなかった。
ただ彼女が無事に生きていることを知りたかっただけだったのだ。

(´・ω・`) 「そうだよ」

でも、ばれてしまったのなら隠す必要はない。
そう判断して、僕は被っていた布を外した。

村人たちが動揺しているのが手に取るように分かる。
十年前に突然やってきた男が、その時と全く同じ顔で戻ってきたのだから。

(´-ω-`) 「まだ、こんなことをやっているのか」

僕はゆっくりと目を閉じて、過去を思い出す。
この村で、命を一つ救った時のことを。
小さな少女の、小さな笑顔を。

98 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:13:59 ID:JA8mU53Y0

■■■■■■■■十年前■■■■■■■■

(´・ω・`) 「おなか減ったな……」

たった一つ山を越えるつもりが、どうやら山岳地帯に迷い込んでしまったようだ。
行けども行けども緑しか見えなから、嫌になる。

食事はほとんどが果実や野草。
動物を調理する腕はあるけれども、捕まえる武器がない。

(´・ω・`) 「種火はあるんだけどな……」

旅をする錬金術師は意外と多い。
その土地の人に嫌われたり、領主に追い出されたりすることはよくある。

旅の必須アイテムは幾つかあるけれども、錬金術師ならば誰もが【種火】を持ち歩く。
特殊な液体を調合した後に、珪藻土に染み込ませたもの。
それに改良を加えて、威力を落としたのが種火だ。

旅先で火をつけるのに重宝する。

(´・ω・`) (でもま、調理するものがないと意味ないよね……)

足を引っ掛けて頭から地面に突っ伏してしまった。

(´・ω・`) (ん?)

顔に影がかかったのに気づいて見上げる。


99 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:22:10 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「大丈夫……ですか?」

小さな少女が覗きこんでいた。
胸元が若干はだけ、僅かな膨らみを持つ柔肌が目に入った。

僕はあの豚とは違うので、それに見とれたりはしないが。
少し見えただけだ。少しだけ。

(´・ω・`) 「どうも、この辺に村でもあるのかい?」

l从・∀・ノ!リ人 「わからないのじゃ」

こんな山の中に十にも満たなそうな少女が一人歩いているのは驚きだった。
しかも、近くに村があるかどうかわからないという。

とりあえず、食料を持っているかどうか聞くべきか。
頭が働かない。

(´・ω・`) 「ところで、食べ物あるかい」

l从・∀・ノ!リ人 「ある……けど……」

少女の動きにつられて、その後ろを見る。
そこには巨大なイノシシが死んでいた。


100 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:31:52 ID:JA8mU53Y0

(´・ω・`) 「君が殺したの……?」

少女が無手でイノシシを殺せるはずもない。
我ながら阿呆な質問だと思ったが、つい聞いてしまった。

l从・∀・ノ!リ人 「違うのじゃ。追いかけられて、木の上に登ったら、ぶつかって死んだのじゃ。
          でも生ではたべられん。 調理も出来ぬし」

なんとタイミングのいいことか。
僕は勝手ながら神様とやらに感謝することにした。

(´・ω・`) 「ああ……それなら僕に任せてくれないか」

腰から剣を引き抜き、イノシシの首に振り下ろす。
数十回の行為の末、首を落とすことに成功した。

次は内臓を引き出し、肉と骨を切り分けていく。
こういうことは何度もやっているから、それなりに得意だ。

l从・∀・ノ!リ人 「すごいのじゃ……」

(´・ω・`) 「さて、次は調理か」

血で汚れた両手を洗うために、荷物から蛇口を取り出す。
掌より少し大きいくらいの金属製の筒で、
片方は薄く広がっていて、反対側は丸くなっている。

これも錬金術師の旅の必需品。


101 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:39:26 ID:JA8mU53Y0

大樹に切り傷をつけ、薄っぺらい方をそこにねじ込む。
水を呼ぶ特殊な金属を用いているから、木の水分を吸いだしてくれる。
ちょろちょろと流れ出る水で手を洗い、種火を使って火をおこす。

(´・ω・`) 「さて、焼き加減はどのくらいかな?」

l从・∀・ノ!リ人 「その水はどうなってるのじゃ? 教えてほしいのじゃ!」

僕の話は聞いてなくて、どうやら蛇口に夢中のようだ。
それもそうだろう。
こんな技術が山奥の国にあるわけがない。

(´・ω・`) 「その水、飲めるよ」

l从・∀・ノ!リ人 「飲んでもいいのか?」

(´・ω・`) 「勿論」

僕の蛇口はひときわ優れものだ。
出てくる水を可能な限り濾過し、そのまま飲めるようにしている。

他の錬金術師が作れば、木の中の水分が出てくるだけだ。
身体に毒な物を含んだままね。

l从・∀・ノ!リ人 「美味しいのじゃ」


102 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:45:30 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「これさえあれば……村も……」

(´・ω・`) 「どうしたの?」

少女の声は小さすぎてうまく聞き取れなかった。
肉から滴る脂が火の中で弾ける。

外側はこんがり茶色に焼き、中まで火も十分に通す。

(´・ω・`) 「できたよ」

小さい目の欠片を少女に渡し、自分の分を取った。
齧ると中から肉汁がしみだしてくる。
臭みはなく、硬めの外側と中の柔らかな部分が絶妙に舌を刺激する。

(´・ω・`) 「うん、丁度いい焼き加減だ」

l从・∀・ノ!リ人 「こんなのおいしいの初めて食べたのじゃ!」

少女はびっくりするくらいよく食べた。

残っていた肉を燻製にするために、丁度いい木の枝と草を探す。
それらはすぐに見つかった。
準備を済ませ、少女に話しかけえる。

(´・ω・`) 「さて、君を村まで送っていこうと思うのだけれど」

l从・∀・ノ!リ人 「その必要はないのじゃ」


103 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 18:55:54 ID:JA8mU53Y0

少女は頑なに僕の申し出を断る。
とはいえ、こんなところに置いていけるはずもなかった。

(´・ω・`) (埒が明かないな……)

(´・ω・`) 「君、名前は」

l从・∀・ノ!リ人 「イモジャと呼んでくれればいいのじゃ。お主は?」

(´・ω・`) 「僕はショボン。錬金術師のショボンだ」

そもそも錬金術を知っているとは思えなかったが、
何も言わないよりは分かり安いだろうと思ってつけ足した。

l从・∀・ノ!リ人 「れんきんじゅつし? よくわかんのじゃが、偉い人?」

(´・ω・`) 「まぁ、そんなものかな」

その解釈には甚だ問題があったが、その程度の理解で十分だった。
村まで送り届けた後には別れるのだ。

l从・∀・ノ!リ人 「じゃあ先生なのじゃ! ショボン先生!」

(´・ω・`) 「ははは……」

先生という言葉が出てきたことにむしろ驚いた。
山奥のコミュニティーに学校があるとは思えなかったからだ。


104 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:02:10 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「先生、それが欲しいのじゃ」

イモジャが指差すのは僕特製の【蛇口】。

(´・ω・`) 「んーでも、これは僕の旅に必要だからな……。
      どうしてこれが欲しいの?」

l从・∀・ノ!リ人 「……村に、水が必要なのじゃ」

(´・ω・`) 「どういうこ……」

草むらをかき分ける音が聞こえてきた。
遠くから名前を呼んでいる声も。

(´・ω・`) 「呼ばれてるよね」

l从・∀・ノ!リ人 「……そうなのじゃ。イモジャは人柱じゃから。みんな探してるのじゃ」

(´・ω・`) 「どういうこと?」

下を向きながら少女は話す。

l从・∀・ノ!リ人 「……水がないのじゃ。水を神様にお願いするのに、イモジャを使うのじゃ
          誇らしいことじゃと、パパたママは泣いていたのじゃ」


105 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:15:40 ID:JA8mU53Y0

隔離された村にはよくあることだ。
今まで何度も見てきた。

その時の理由が不作や災害などの違いはあるものの、
そういった儀式はどこでも行われていた。

何の解決策にもならないのに。

(´・ω・`) 「……村に、案内してくれないか?」

l从;∀;ノ!リ人 「死にたくないのじゃ! イモジャを連れて逃げてほしいのじゃ!」

(´・ω・`) 「それはできないよ。君は僕についてこれない。
       僕なら、君の村を変えることができるかもしれない」


「いたぞ!」


「捕まえろ!」


(´・ω・`) 「信じてくれ」

僕は、現れた男達に連れらて村に辿り着いた。
少女は隣で、ずっとすすり泣いていた。


106 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:25:55 ID:JA8mU53Y0

/ ,' 3 「そのほとこはだれだ?」

「イモジャと一緒にいたので連れてきました。
先生様に用があるそうです」

なるほど、この村では年長者のことを先生と呼ぶのか。
それとも、長老の意で使っているのだろうか。
そんなことを考えながら、僕は年寄りと相対した。

(´・ω・`) 「初めまして。旅の錬金術師です」

/ ,' 3 「んほ?」

間の抜けた返事をする老人だが、村人たちが気づかないほど小さく反応した。
儀式が行われる背景には、二つの理由がある。

一つは、遥か昔から続いている例。
もう一つは、知識のある人間が悪用する例。

(´・ω・`) (後者だな)

錬金術師という言葉に反応した。
この村の誰もが首をかしげる中、この老人だけが。
僕の前では呆けたふりをしているのだろう。

目的は、おそらく……。


107 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:35:09 ID:JA8mU53Y0

知識のある者が、人の命を使う儀式を行う理由などひとつしかない。


…………肉欲だ。


(´・ω・`) 「どうして人柱がいるのか、教えてもらえますか」

答えたのは長老の隣にいる男だった。

「雨が降らないんだ。見てくれ、ここに溜まっている水は底をつきはじめている」

(´・ω・`) 「なるほど……。それなら、私に任せてください。
      人柱など必要ありません。錬金術で解決できます」

村人たちがざわめくのが分かる。
錬金術の存在を知らない彼らは、
きっと僕を神に近しいものと勘違いするだろう。

(´・ω・`) (でも、それでいい。それでこの男の横暴は終わる)

必要なのは時間と労働力だ。

(´・ω・`) 「村の若い者を数人、そして一週間の時間を貰えませんか?」

この村は……イモジャは僕が救う。


108 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:44:36 ID:JA8mU53Y0

水が逃げ出さず、集められる構造に。
自然のダムではそこまでできていない。

だからすぐに水が足りなくなる。
僕の錬金術と知識で、解決できる問題だ。


■■■■■■■■現在■■■■■■■■


そして僕は水の抜けにくいダムを完成させ、その翌日に雨が降った。
問題は全て解決されたはずだ。

それなのに……。

(´・ω・`) 「あなたは、どうしてここにいるんですか?」

この老人は追い出したはずだ。
悪事をばらし、村人たちに真実を告げ。

それがなぜ、年月が立って元通りになっている。
なぜ、イモジャがあの場にいる。

/ ,' 3 「ほっほ?」

/ ,' 3 「簡単ななこほ。村人たちが儂にもほめたのは、すぐにいなくなった神ほ代わり。
     長老ほしてのまほめ役」


109 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 19:55:28 ID:JA8mU53Y0

l从・∀・ノ!リ人 「お久しぶりです……。先生がいなくなってしまい、やっぱり私達には長が必要だったのです。
          この人は村をおさめてくれました」

「そうだ。貴方とは違うんだよ!
知識だけを置いていったあなたとは!」

叫ぶのは村の住民たち。

「今までの全てを覆され、私達には縋るものが必要だった」

l从・∀・ノ!リ人 「今回の儀式は、真に雨を降らすために必要なのです。
          紛い物ではありません」

/ ,' 3 「そういうこほじゃ」

(´・ω・`) 「やめろっ……何のために僕は君を助けたんだ!」

荒巻の持つ刀が高々と掲げられる。
その真下には、座り込んだ少女。

立派に育った見目麗しき少女。

(´・ω・`) 「雨はそんなことじゃ降らないっ!」

浴びせられるのは罵倒。
雨は降ると信じてやまない村人達。


110 :名も無きAAのようです:2011/12/12(月) 20:10:34 ID:JA8mU53Y0

僕は少女の前に走り込み、振り降ろされた刀を体で受け止めた。

(;´・ω・`) 「っ……」

左肩から骨を砕き、肺を引き裂かれる。

(;´・ω・`) 「……ぼくが、悪かった。
       勝手にあなた達の慣習を破壊し、そのまま去ってしまった」

傷は、修復される。
元通りに。

(;´・ω・`) 「知識を授けただけで、自己満足してしまった。
        もう失敗はしない。今度は教え、そして導く」

/ ;,' 3 「なっ! 貴様! なにもほだ?」

(´・ω・`) 「僕は…………」

この村を救うには一つしか方法はない。
知識を正しく理解させ、歴史を教え、村を導く。


僕の時間はここでしばらくの間、費やされるだろう。
ただそれは、無限の前では一瞬にすぎない。


たった一人の少女を救うためには割の合わないことかもしれない。
だけど僕は…………人間を……この村の人を……救いたいと思ってしまった。
だから僕は、その一言を口にした。


(´・ω・`) 「……神だ」



4 ホムンクルスは救うようです  終了


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第3話 

65 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 22:58:02 ID:qFOHwhYI0



3 ホムンクルスは抗うようです


66 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:01:22 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「あーもうっ! しつこいっ!」

僕は今、逃げている。
何からって?


───人からだよ。

僕が恐れれるものはこの世に二つしかない、と信じたいね。
これ以上増えないでほしい。

一つは、孤独。

もうひとつは……


「待てえええええええええ、このホムンクルスがあああああ!!
ばらばらにして、臓器を一つずつ研究させて!
俺の研究手伝って!
この世の心理を教えて!

どこに逃げやがったあああああああ」

68 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:08:42 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」

(;´・ω・`) (どこにあんな体力があるんだよ……。
       ただのマッドサイエンティストじゃないのか?)

大木の陰に隠れて休む。
普段から大陸を移動し続けることで鍛えている僕が、
こうも易々と追いつめられると本当に人間か疑いたくなってくる。

「どぉ~~こにいるんだぁ~~い?」

足音はすぐ近くを通り過ぎて行った。

(;´・ω・`) (ふぅ……後はどうやってこの場所から逃げ出すかだけど……)

僕を囲う木々には特殊な紋が刻んである。
これは、錬金術師が好んで使う簡単な図形だ。

でもその効力は、思っていたよりもずっと優秀だった。
森に入った者を迷わせ、逃がせなくする錬金術。

そんなものは僕の知識には無い。


从 ゚∀从 「見ィ~~つけった!!」


69 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:14:17 ID:qFOHwhYI0

(;´・ω・`) 「!?」

足音は確かに通り過ぎたはずだった。
それがなぜ、この人は僕の真後ろに立ってるんだ。

っていうか、僕の真後ろは確か木だったはずで……

え?

なんで?

从 ゚∀从 「諦めて俺の研究室に来てもらおうか」

腕を掴まれる。
見た目以上の力で握られているから、振り解けない。

(;´・ω・`) 「僕のホムンクルスとしての生き方はここで終わりか……無念……」

从 ゚∀从 「何言ってんだ? 殺しても死なないのがホムンクルスだろうが。
       とりあえず、自分で歩け。引きずるのは面倒だ」


白衣を着た女性はいい、そんなことを内藤が言っていたのを思い出した。
ああ走馬燈が見える……。

从 ゚∀从 「だから死なねーだろ」


70 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:23:07 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「ようこそ、ハインリッヒ博士の研究室へ」

髪はくすんだ灰色、服の上にはサイズの合わない白衣。
ハインリッヒと名乗った彼女は両手を広げて僕を研究室とやらに連れ込んだ。

(;´・ω・`) 「一体何の用だよ?」

僕を捕まえてこんなところに連れて来たんだ。
大体は予想できるけど。

从 ゚∀从 「テメーはホムンクルスだ、間違いないか?」

(;´・ω・`) 「そうだよ……」

ちなみに、僕は全身を横長の机に固定されて身動きが取れない。
抵抗する暇すらなかった。ほんとにこの人は人間なのか……。

从 ゚∀从 「すげーなぁ。構造はほとんど人と同じ。ちょっと失礼」

彼女がとりだしたのは銀色のナイフ。
切先がランプに照らされて鈍く光ってる。

(;´ ω `) 「っああああああああああああああ!」

僕の服をたくしあげると、いきなり腹部を切り開いた。
臓器を素手で弄られているのだろう。

とてつもない痛みと奇妙な感覚が全身を支配する。


71 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:34:57 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「ふむ、中身も人と変わらない。だけど人よりもずっとエネルギー効率がいいな。
       む……再生の力はどこから得ているんだ……?
       特別な器官はないし……ああなるほど。自然から得られるようにしてるのか。
       こんなの作れねーよ。どんだけ神サマとやらに喧嘩売ってんだ」

拷問が長く続かなかった。
身体の再生が終わると、痛みは嘘のように消える。

(;´・ω・`) 「なんてことするんだ……死ぬところだったじゃないか」

从 ゚∀从 「死なないけどな。お前を作ったのは誰だ? 高名な錬金術師なのか?」

(;´・ω・`) 「もう死んだ」

从 ゚∀从 「そうか。一度は会ってみたかったな」

遠い向こうを見る目は憧れなのだろうか。
錬金術師は他人の成果を奪い、嫉む存在だと思っていたけれど。

(´・ω・`) 「今度は僕が質問させてもらいますよ」

从 ゚∀从 「ああ、好きなだけ聞いてくれ。
       最近他の人間と話してないしな、質問に応えるのは大歓迎だ。
       ホムンクルスってことは錬金術の知識も多少あるだろうしな」


72 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:41:05 ID:qFOHwhYI0

(´・ω・`) 「あなたはなぜ、僕を連れて来たんですか?」

从 ゚∀从 「勿論、ホムンクルスの存在を知りたかったからだ。
       テメーの存在は錬金術師の夢じゃねーか」

支配者たちはホムンクルスの存在を嫌い、作り出そうとすることすら禁止していると言うのに。
錬金術師は本当に愚かな存在だ。

あの人も……。

(´・ω・`) 「まぁ、そうですよね。僕がこの森から出られなかったのは?」

从 ゚∀从 「ああ、あれな。錬金術を土台にして、環境そのものに変化を加える。
       人や獣の五感を惑わすことができる。
       俺は【地金術】って言ってるけどな」

(´・ω・`) 「つまり弱虫に最適であると」

(;´・ω・`) 「やめてごめんなさい許して」

ハインは僕の頭の上に大槌を振りあげた。
あんなもので頭を潰されてたまるか……。
死なないとは言っても痛いんだよ……。


73 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:46:50 ID:qFOHwhYI0

(´・ω・`) 「じゃあなたの力が異常に強いのもそれに関係が?」

从 ゚∀从 「半分正解だな。でもまーこっちも俺のオリジナルだ
       術者の血液に特殊な式を介在させることで、身体能力の向上を図ってる。
       【血金術】この二つが俺の研究の成果だ」

(´・ω・`) 「結論、よわ……」

最後まで言えなかった。
気づいた時には、頭のあった部分の机が完全に崩壊していた。

从 ゚∀从 「で、お願いがある。ホムンクルスの秘術、教えてくれないかな?」

(´・ω・`) 「知らない方が幸せですよ」

本心からだった。
満たされるのは、術師としての心だけだ。

生み出された僕らも、生み出したあの人も、その家族も。

(´・ω・`) 「興味本位で僕らを生み出させたりはしない」

从 ゚∀从 「……」


74 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:53:34 ID:qFOHwhYI0

从 ゚∀从 「んーてめーが何か抱えているのはよく分かった。
       だけどな、俺もやる前からはいそーですかわかりましたってわけにはいかない」

(´・ω・`) 「プライド……ですか?」

从 ゚∀从 「俺は錬金術師として並大抵のレベルじゃない。それは分かってる」

その通りだろう。
ほとんどの錬金術師は、他人の模倣で満足してしまっている。
ごく僅かな金を得るだけで止まっているんだ。

それ以上を求めている術師はごく一握りだけ。
その点で言えば、オリジナル派生を生み出しているだけでも、
ハインは一流だ。

从 ゚∀从 「だがな、自分の身体を改造して、長生きしても未だにホムンクルスを生み出すことができない。
       人類の、人間の限界を超えることができてない」

从 ゚∀从 「だから頼むっ! 決して不幸にはさせねぇ!
       悪用もしねぇ! 俺にホムンクルス作成の秘術を教えてくれ」

言っていることをこの人間は守るだろう。
その真摯な目を見ればそのくらいは分かる。

だけど、それでも……

(´・ω・`) 「教えることは……できない」


75 :すいません、出てきます。:2011/12/03(土) 00:00:50 ID:Yr1wJzE.0

从 ゚∀从 「そうかよ……悪いが、俺に時間の余裕はそんなにねぇんだ。
       乱暴な手段を使わせてもらうぜ」

(´・ω・`) 「喋りませんよ……絶対にね」

痛みは苦しい。
それでも、僕らホムンクルスは人間よりもずっと痛みに強い。
心が強い。

何百年も生きていけるように、そう設計されている。
だから、何をされても喋らない。

不幸なホムンクルスは、僕らだけでいい。
そう思っていた。

从 ゚∀从 「がふっ……」

ハインは噴き出した血を白衣で拭う。
無理な人体の改変によって相当な負担が出ているのだろう。
そこまでして、なんで人間の神秘を知りたがるのか。

77 :寝てしまっていた……おはようございます:2011/12/03(土) 04:07:51 ID:Yr1wJzE.0

从;-∀从 「ふぅ……」

(´・ω・`) 「無理をしない方が……」

口を衝いて出た言葉は嘘じゃない。
この時点ではまだ、他人を心配するくらいの余裕があった。

从 -∀从 「悪いな……俺はどうしても知らなきゃならねぇ」

僕を縛りっていた机は、足側を下に傾けられる。
これでより部屋の中がよく見えるようになった。


乱雑に散らばった紙には、びっしりと計算式が書きこまれていた。
粉々になった実験器具が片づけられることなく散らばっている。

从 ゚∀从 「aqua regia 知ってるか?」

その存在を知らない錬金術師なんていないだろう。
金をも溶かす、王の水。

(´・ω・`) 「王水、ですか」

从 ゚∀从 「テメーの足元にあるガラスの入れ物の中にたまってるのがそれだ。
       後は想像にお任せするよ」


78 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:17:33 ID:Yr1wJzE.0

緊縛が一瞬緩んだ。
身体がずるずると机をすべり落ちる。
次の瞬間に襲い来る激痛に向けた僕の覚悟は、吹き飛んだ。

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

足の指が形を無くし、骨までゆっくりと溶けていく。

从 ゚∀从  「俺の…存でいつも※められ──るんだ。
        無理せせせせず●せよ」

ハインの言葉の意味が理解できない。

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

足の先端の感覚はもうない。
そこに僕の足はないのだろう。

从 ゚∀从 「想像以上に頑固だな……」

ハインが僕を引っ張り上げたようだ。

足は既に修復し、直接的な痛みは無い。


79 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:27:22 ID:Yr1wJzE.0

脳にガンガンと響く痛みは幻覚だ。
分かってはいても、耐えることは容易くない。

(#´ ω ) 「はぁっ……はぁっ……話しませんよ」

溶液は化学変化をして物質を溶かすから、溶かすことのできる総量は決まっている。
でもこの場合、僕の身体という不純物はこの世界から失われるから……。

从 ゚∀从 「この王水にずっと浸けててやることも出来るんだが。
       それをやってお前さんの精神がトんじまったら意味ないからな」

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

从 ゚∀从 「人間は継続的な痛みよりも、断続的な痛みに弱い。
       これは私の考えだけどな」

(#´ ω ) 「っあ…………」

从 ゚∀从 「痛みがない状態を頭で理解しちまうからだ。
       常に痛みがあれば存在しない『救い』に縋っちまう」

(#´ ω ) 「ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ
        ああああああああああああああああああああ」

从 ゚∀从 「ホムンクルスはどうかな?」


80 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:36:02 ID:Yr1wJzE.0

もう何度目だろうか。
修復と破壊を何度も何度も繰り返される。

目の前にはハインの言う『救い』があった。
ホムンクルスの秘密を喋ってしまえば、彼女はいとも容易く僕を逃がすだろう。

(#´ ω ) 「そ……れ……でも……無限の……不……幸と比……べれば」

生き続けることよりも苦しいことなんて、ない。
僕は、誰よりもそれを知っている。

从 ゚∀从 「……これでも喋らないか……。相当な精神力だなッゴフッ……」

何度目かの吐血。
白く綺麗だった衣は、汚れきっていた。

从;-∀从 「頼む……俺には時間がない……んだ」

人が倒れる音がした。
一定のリズムで繰り返されていた拷問は止まっている。

(#´・ω ) 「……?」

視界はぼやけているが、なんとか現状を理解した。
ハインは倒れたのだ。


81 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:43:49 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「どうしてそこまで執拗に……」

右手の骨を折り、無理やり束縛から自由にする。
ホムンクルスの動きを真に止めようと思ったなら、
身体の全体を縛りあげなきゃいけない。

片手が自由になったところで、残りの拘束具を外した。

(´・ω・`) 「さようなら……」

血だまりの中にたたずむハインを置いて僕は研究室を出た。
はいって来た時の感覚で言えば、この森は大きくないはず。

(´・ω・`) (すぐに出れるか……?)

結果として、僕は研究室に戻ってきた。
ハインが倒れても森の術は消えておらず、独力での脱出は困難だと思ったからだ。

(´・ω・`) 「ハイン……起きてくれ……森から出るにはどうすればいい?」

頬を軽く叩き、意識を取り戻させる。

从;-∀从 「ああ……ここまでか……。俺の部屋にある鍵……を身につけてればすぐに出れるさ」

今の自分の状態を知り、諦めたのだろうか。
素直に森の抜け方を教えてくれた。

僕は研究室の奥にある扉を開けた。


82 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:51:00 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「鍵……ね……」

おそらく鍵の形状をしているのではなく、
key としての役割を与えられたものが部屋の中にあるはずだ。

女性の部屋で探し物をするのは気がひけたが、
戸棚や机の引き出しをあさる。

そこで見つけたのは一冊の本だった。

(´・ω・`) 「これは……?」

普段の僕なら気にも留めなかったかもしれない。

ただの私物と割り切っていただろう。
でも今は、あれだけの拷問を与えられながらも、
ハインの行動原理を知りたいと思ってしまっていた。

そしてこれを見たらきっとわかるだろうとも確信していた。

だから鍵探しを諦め、椅子に座って表紙をめくった。


83 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 04:58:53 ID:Yr1wJzE.0


パラパラと流し読みをする。


「今日は彼との結婚式がある」


「新婚生活がうまくいかない。料理の味で喧嘩をしてしまった」


「彼がイノシシを仕留めてきた。今夜は御馳走」


「娘が生まれた。大変だったけど、これからは家族三人で幸せに暮らそう」


「娘が初めて言葉を喋った。ママだった。ちょっぴり優越感」


「娘の額が熱い。夜遅くに、彼が医者のいる隣村まで連れて行った。不安で寝れない」


「娘が元気になって帰ってきた。何よりもうれしい」


「今日は5才の誕生日。お祝いの準備をしなきゃ」


書き連ねられているのは今の彼女と全く違う姿。
結婚し、子どもができ、幸せな家庭を築いていた。

何が彼女を変質させたのか。
それは次のページをめくってわかった。


84 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:04:49 ID:Yr1wJzE.0

「彼が流行病にかかった。医者は治せな……
そんなそんなそんなそんなそんなそんなそんなそんなそんな」

ところどころ筆がにじみ、紙が皺っていた。


「近隣で一番有名な錬金術の先生のところへ行く。
そこでも治せないと言われた」


「苦しそうに呻いている……。助けてあげたいのに、私には何もできない」


「彼が死んだ……これからは娘と二人で生きていく」


日記はそこで終っていた。
おそらく娘も流行病で失ったのだろう。

だからこそ、ホムンクルスの秘術を求めた。
応用すれば、人を生き返らせることができると信じて。

机の上の小さな箱。
その中にあるのがこの森の鍵なんだろう。

(´・ω・`) 「骨……か」

小さな骨と大きな骨が一つずつ。


85 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:14:09 ID:Yr1wJzE.0

(´・ω・`) 「……人間は愚かだ」

死者の魂は失われてしまっている。
ホムンクルスの秘術を駆使したって戻ってくることはない。

(´・ω・`) 「……」

ハインに与えられた苦痛は、もう忘れていた。

研究室に戻ってハインの体を持ち上げ、机の上に寝かせた。

(´・ω・`) 「せめて少しでも……」

最期に夢を見させてやりたかった。
愛する人のために、人の道から飛び出した女。
それは苦しい道だったに違いない。

だからこそ、報いてやりたかった。
それが自己満足だとしても。

簡単な延命治療で、彼女の苦痛を和らげる。

(´・ω・`) (ブーン、君の研究は役に立つかもしれない)

時間は無い。
それでも僕はやってみせる。

うろ覚えの術式を紙に写しだし、材料を用意する。
幸いにして優秀な術師であったハインの研究室には、
必要な物が全てあった。


86 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:24:38 ID:Yr1wJzE.0

何度かの失敗を重ね、完成させるのに一週間もかかってしまった。

ハインはまだ、生きている。
おそらく、精神力だけで持ちこたえているんだろう。

(´・ω・`) 「ハイン…………これは僕のエゴだ。許してもらおうとは思わない」



琥珀色の液体を、ハインの喉に流し込んだ。
小さく喉が動き、液体は彼女に吸収される。


延命治療の苦しさに、歪んでいた顔の皺は取り除かれ、穏やかな顔で寝ていた。

心の支えを失った肉体は、じきに生命活動を停止するだろう。
それでも僕は、彼女を夢の世界に連れて行ってあげたかった。

せめて夢の中で、幸せであることを祈りつつ。

(´・ω・`) 「さようなら……」

森の術式の解明は終わっていた。
だから僕は二つの鍵を彼女の横に並べて家を出た。


87 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:25:58 ID:Yr1wJzE.0


3 ホムンクルスは抗うようです  終了


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第2話 

29 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:41:46 ID:HknsixXc0



2 ホムンクルスは稼ぐようです

30 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:48:58 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「金がない……」

当たり前か。
道にぶっ倒れて気を失っていたけれども、目が覚めた時にお金が残っているほどイイ時代じゃない。

(´・ω・`) (どこかで稼ぐ必要があるな)

お金を稼ぐのは簡単だ。
僕にはおおよそ人の及びもつかない錬金術の知識がある。

できれば使いたくはないのだが、資金調達のためならば仕方ない。
ホムンクルスであってもエネルギーを必要とするんだから。

(´・ω・`) 「一番近い……町は……いい所があるじゃないか」

ローマの土を踏むのはこれが二度目になるな。

(´・ω・`) (あれから少しは変わっているのだろうか……)

あの場所の賑やかな喧騒は忘れられない。
後頭部が痛むけれども、関係ないか。

(´・ω・`) 「彼は元気にしているだろうか、いやしているのだろうな」


31 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 07:55:36 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「大体予想どおりかな」

三日三晩歩いてやっと城壁が見えてきた。
世界の中心とは名の通りに、ここいらの道はしっかりと舗装されていて歩きやすい。

後ろから来る馬車にさえ気をつけていればいいのだから。

(´・ω・`) 「まずは……いつもの場所かな」

僕が稼ぐのにローマによる理由はいくつもあるけれども、一番大きいのは友の存在だ。
僕が生み出してしまった罪の存在であるにもかかわらず、彼はとてもよくしてくれる。

「感謝してもし足りないくらいだ! あんたがいなけりゃ俺は生まれてなかった!」

彼はいつもそう言ってくれた。
久しぶりに見る友を思い浮かべると、嬉しくなってくる。

(´・ω・`) 「こんにちわ」

ローマに入るのに許可はいらない。
そんなことをしていたら、大量の物資が腐ってしまうこともあるからだ。

ここは365日いつでも騒がしい。


32 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:02:02 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ふむ」

軽いノックを三回して扉を開けた。
中は昔訪ねた時と変わらない。

僕ですら用途の知らない実験器具が所狭しと並べられている。
それは所々怪しい煙を噴きだしていた。

毒々しい煙を払って奥に進むと、目当ての人物がソファーに寝ていた。

(´・ω・`) 「起きろよ、久しぶりに来たんだ」

声で僕だと気づいてくれたみたいだ。
大仰に立ち上がり、肩を抱き寄せてくる。

この厚かましさが、僕には心地いい。

( ^ω^) 「久しぶりだお! 元気にしてたかお?
       かれこれ35年ぶりかおね」

(´・ω・`) 「36年ぶりだね、ここに来るのは」

彼こそが僕の友人、兼兄弟。
奇跡の種から生まれた人にあらざるもの。


33 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:11:12 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「調子はどうだい?」

( ^ω^) 「いやね、最近思いついたんだお。仮面をつけて人前に出れば、年は見られなくなるお。
       だから、ずっとこの一か所で商売を続けることができるお」

彼、ブーンはホムンクルスだ。
僕が所在を明確に知っているただ一人の。

(´・ω・`) 「なるほど、それでもばれるんじゃないかい?」

( ^ω^) 「荒稼ぎをしてなきゃ目をつけられることもないお。
       ちゃんと、コレもしてるしね」

右手の親指と中指をくっつけて円を作る。
賄賂をあらわす彼の独自の動作だ。

( ^ω^) 「久しぶりに寄ってくれたんだお。まぁ、ゆっくりしてけお」

(´・ω・`) 「そうさせてもらうよ」

ブーンが入れてくれたコーヒーを啜りながら、僕はこの40年に届くほどの旅の話をした。
珍しく獣に襲われた話、海を見に行った話、人間と仲良くなった話。

そのどれもを楽しそうに聞いてくれるブーンは聞き上手なのだろうな。


34 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:18:48 ID:HknsixXc0

( ^ω^) 「またいろんなところに行ったみたいだおね」

(´・ω・`) 「うん、色んなことが分かった。生きている意味も見つかるかもしれない」

僕が旅をする理由は自分の存在理由を知るためだ。
暗い研究室の中で、土塊から生み出された不死の僕の存在は、一体何なのだろうか。

( ^ω^) 「また顔が暗くなってるお? つまらないことを考えるなおー」

(´・ω・`) 「ああ……すまない。ところで、今は何をしているんだい?
       どうやら寝ていたみたいだけど」

僕らホムンクルスは睡眠を必要としない。
勿論、寝ることはできるけれども。

( ^ω^) 「ああ、面白いものを作ったんだお……ショボンもどうだお?」

ニヤニヤと降格を釣り上げるブーン。
そこで初めて、僕はコーヒーに細工をされたことを知った。

(´・ω+`) 「くそっ……覚えてろよ豚野郎!」

睡魔が襲ってくると言うのはこういうことなのかと僕は理解した。
意識は無理やり切られた。


35 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:27:10 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ここは……」

真っ暗な場所に立っていた。
一切の光がなく、一寸先すら見えない。

(´・ω・`) 「夢……か……?」

不思議とここに来る前のことは明確に覚えている。
ブーンに怪しい薬を飲まされ、意識が途切れたのだ。

もしこれが眠っているということならば、ここは夢の世界と言うことになるだろう。
僕達ホムンクルスは夢見る存在ではないのに。

耳に響く不快な音は雨の音だろうか。
人間は情報の大部分を視力から得ていると言うが、
それは体の構造が基本的に同じホムンクルスにも当てはまる。

(´・ω・`) 「っ!」

爆音とともに一条の閃光が空を駆け抜けた。
たった一瞬の光が部屋の中を明るくさらけ出す。

(´・ω・`) 「はぁ……、まさかこの光景をまた見るとは……」


36 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:32:29 ID:HknsixXc0

木張りの床は血液で真っ黒に染められ、ばらばらになった人間が散在している。
その中には子どもの骸もあった。

人形を両手に抱いたまま、頭部を失って絶命している。

(´・ω・`) 「帰ったら何回か殺してやらなきゃな」

どうせ殺しても死なないのだ。
傷もすぐに完治するのなら、少々は教育だろう。

決して、この死体のようになることはないのだから。

(´・ω・`) (僕は、予想以上に冷静だな……)

二度と見たくない、考えたくないと思っていた情景が目の前にあって、
未だ絶望という感情を抱いていない僕はなんなのだろうか。

ブーンが僕に飲ませたのは何なのだろうか。

(´・ω・`) 「普通に考えたら睡眠薬だろうけど、それじゃ説明がつかない」

夢の中で夢だと断言できる状態にあること。
これを明晰夢だと言うらしいけれど、これはその状態にぴったりだ。

(´・ω・`) 「明晰夢を見させる薬……ってところか」


37 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:41:13 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「薬の効果はどれくらいできれるのだろうか」

どれだけ僕は、ここにいなければならないのだろうか。
この光景を、もうすでに目に焼き付けているこの光景を、どれだけ眺めさせられるのだろうか。

(´・ω・`) 「いや、僕の夢なら、僕自身の力で終らせることができるはずだ。
       願わくば、一番幸せだったあのころの夢を……」

目を閉じ、願う。
その場に立っている自分を想像し、その匂いを、音を、空気を、思い出す。

(´・ω・`) (……っ!)

頬に感じた衝撃で僕は……目を覚ました。
目の前に豚が一匹、僕を覗きこんでいる。

そのニヤケ面の余りの気持ち悪さに、思わず右手を振り抜いていた。

(メ ゚ω゚) 「へぶっ!」

錐揉み上に吹っ飛んでいくブーンだが、それだけでは許せない。
夢の世界で誓った行為を実現に移すため、足元の重量のある金属棒を拾い上げた。


38 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:46:32 ID:HknsixXc0

(メ ゚ω゚) 「まままままm、まてお! それは死ぬ! 間違いなく死ぬお!」

両手をあげて降参の意を示していたが、そんなものは関係ない。
僕は珍しく、怒っていたのだろうな。
知りうる限りで最も残虐な表情を張りつけ

(´゚ ω ゚`) 「死ね」

右手で持ちあげた棒を全力で振り下ろした。

(メ ゚ωメ) 「はぶんっ」

一撃目で脳が露出した。
成程、いい威力だ。

二撃目は肋骨を折るべく、胴体に叩きこんだ。

(メ ゚ωメ..,, 「っぶぇぇ」

三撃目はもう一度頭に。
殴って殴って、殴り続けた。


,....,;:。ω;∵。.,,

40 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 08:54:59 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「ふぅ……」

何とか落ち着きを取り戻した時、部屋は惨殺現場も吃驚なほど汚れていた。
飛び散った血液も、脳漿も、骨片も、全て粒子となり、ブーンを再構成する。

さながら時を巻き戻すかのように。

(; ^ω^) 「死ぬかと思ったお……」

(´・ω・`) 「何であんなものを飲ませた?」

(; ^ω^) 「いや、明晰夢を見れる薬を作ったのだけれど、自分だけが被験者だと心許なかったので」

謝る気はないようだった。

(´・ω・`) 「何の夢を見たんだ……?」

自分だけがあんな夢を見るのだろうか……。
同じホムンクルスのブーンはどんな夢を見たのか非常に気になった。

(//^ω^) 「内緒だおっ」

声に楽しげな響きが混ざっていたから、僕ほど悪い夢ではなかったのだろう。
腹が立ったので、右手の金属棒を再び持ち上げようとする。

それを察知してか、ブーンは夢の内容を話しだした。


41 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:02:52 ID:HknsixXc0

(; ^ω^) 「その……女の娘と……ゴニョゴニョ……」

こいつはなんて俗物なのだろう。
僕と同じホムンクルスであるのに、その人生に迷いがない。

酒を飲み、飯はたらふく食べ、人と同じように生きている。
女を抱き、庶民と賭け事をする。

そんなブーンが、僕は羨ましいのだろう。
だから、つい金属棒を投げてしまった。

(  ゚ω^) 「何か言うことは?」

頭の左側を吹っ飛ばしてやるつもりだったのだが、どうやら加減を間違えたようだ。
僅かな傷跡をつけるだけであった。

(´・ω・`) 「ごめん、つい」

( ^ω^) 「ショボンは難しく考え過ぎなんだお。
       人間が楽しめる行為は僕達も楽しめるんだお。生憎、まだ子供はできていないけど。
       できるかどうかも、分からないけど」

いつか子育てをするのが僕の夢だお、とブーン嬉しそうに語った。


42 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:09:58 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) (いつか、僕も彼のように笑って暮らせるのだろうか……)

不安は、顔に出さないように押しとどめた。

(´・ω・`) 「で、話を変えるけど、今回寄ったのは資金調達だよ。たんまり稼いでるんだろう?
       少しくらい分けてくれてもいいんじゃないか?」

このままだとブーンの話を長々と聞く羽目になるだろうと思って、本題を提示した。

( ^ω^) 「んー構わないけど、条件があるお」

彼の居場所によったことは何度もあるけど、
常に無償で資金提供を続けてくれていたから、今回もそうだと思っていたんだけどな。

(´・ω・`) 「何?」

彼は僕よりもずっと優秀なホムンクルスだ。
長年の研究で僕よりもはるか高みにいる。
旅ばかりしている僕に役立てるようなことなどないと思ってた。

( ^ω^) 「この薬、売るの手伝ってくれお」

彼の提示した条件は、酷く簡単なものに思えた。


43 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:14:47 ID:HknsixXc0

明晰夢を見る薬。
それを売ることなどブーン一人いれば十分ではないのか。
効力も、充分以上に体感した。

(´・ω・`) 「ああ……」

そこで気付いた。
この薬は飲まないと効力を発揮しない。
でも、飲んだものが必ずしも本当のことを言うとは思えない。

何もなかった、嘘つきが。

そう言われてしまえば、今後の商売にもかかわるわけだ。

(´・ω・`) 「で、何をすればいいの?」

( ^ω^) 「有り体に言えば、実演してほしいんだお」

そういうことか。
僕がブーンの薬を最初に買い、皆の前で飲む。
そうすれば、この薬の効力を信じるに違いない。

そして、この薬は正真正銘、明晰夢を見せる力がある。

( ^ω^) 「いつもの市場に行くお。この仮面をつけてくれお」

ブーンが投げてよこしたのは木彫りの面。
それを顔につけ、僕らは出発した。


44 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:24:47 ID:HknsixXc0

( ^ω^)) 「ここだお」

ブーン声は仮面越しのせいでくぐもって聞こえる。
案内されたのは市場の中心。
小さな机と椅子がならべてあるだけの場所だった。

(´・ω・`)) 「こんなぼろいところが……?」

周りの商店は煌びやかな装飾が施されている。
これじゃあまるで貧乏店にしか見えない。

( ^ω^)) 「失礼だおね。錬金術師の店はここいらにたくさん並んでいるけれども、
        本物はブーンのところだけだお」

(´・ω・`)) 「ふぅん……」

確かに周りに見えるところで売っている商品はつまらないものばかりだ。
肌が潤うだとか、お金が増えるだとか、そんなつまらないものばかり。

( ^ω^)) 「じゃあ始めるお。 寄ってくるおー! 稀代の錬金術師!
        ブーンの夢見薬! 安いし買っていくおー」

ひとたびブーンが口を開けば、辺りには人だかりができた。
どうやらここらでも人気の錬金術師のようだ。
本物なのだから、当然だけれども。


45 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:28:53 ID:HknsixXc0

( ^ω^)) 「この薬、なんと飲めば見たい夢が見れるようになるんだお!」

ブーンが箱から取り出したのは小さな瓶に詰められた琥珀色の液体。
同じものが、30ほど並んでいる。

( ^ω^)) 「じゃあ早速飲んでもらうお」

僕はその手から瓶を受け取り、一口だけ飲んだ。
全開と同じように、強烈な眠気がやってくる。

(´・ω+`)) 「よろし……く」

ブーンに体を預けるようにして座り込んだ。
意識は深海に溶けていく。


46 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:34:45 ID:HknsixXc0

目が覚めたのはどの位経ってからだろうか。
客の様子を見ると、先程から変化していないからそう時間は立っていないのだろう。

( ^ω^)) 「何の夢を見たかお?」

ぼやけていた夢を思い出そうとする。

(´・ω・`)) 「空を……飛んでいた。次に、海を潜って魚と遊んでいたところで目が覚めた」

( ^ω^)) 「ということだお! みんな、買ってくれお!」

あちこちから声がかけられる。
瞬く間に完売してしまいそうな勢いだった。

「おうおうおう! 効果があるわけねーだろ!」

「夢の中のことなんて、いくらでも嘘つけるんじゃねーか!」

野次を飛ばしていたのは近隣の似非錬金術師の集団。
こちらに客を取られた腹いせをしてくる。

「みなさーん、そこの錬金術師は嘘をついているー。二人グルになっているからなー」

( ^ω^)) 「そ、そんなことないお! ちゃんと効力があるお!」

必死に抵抗するブーンだけど、人数が違いすぎる。


47 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:40:01 ID:HknsixXc0

(´・ω・`)) 「ブーン、立場が悪いよ。明日にしよう。
       今日使ってくれた人が明日は味方になってくれるはずだ」

( ^ω^)) 「しょ、ショボンの言うとおりだお……。今日の販売はこれで終わりだお!
        明日も来るから、また買いに来てほしいお!」

購入できなかった人から罵声が飛んでくるけど、こればかりは仕方ない……。
効果を分かってくれる人がいれば、明日からも売れるはずだ。

家まで逃げるように帰ってきて、僕たちは椅子に倒れ込んだ。

( ^ω^)) 「予想してた通りだけど、いつもよりひどいお……」

うっとおしい面を投げ捨てる。

(´・ω・`) 「いつもあんな感じなのかい?」

( ^ω^) 「大体そうだお。あいつら、ブーンの販売の邪魔ばっかりするんだお……。
       自分達は碌なものも作れないのに」

(´・ω・`) 「ちなみに君、今まで何作ったの?」


48 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:47:45 ID:HknsixXc0

( ^ω^) 「夢見薬だお。 後は胡椒の味がする魔法の粉、水が綺麗になる濾し機。他にもいろいろ作ったお?」

思わずため息が出てしまった。
ブーンのことだから、全て事実なのだろうけど、あまりにも胡散臭すぎる。

(´・ω・`) 「もっと現実に即したものを作りなよ……」

( ^ω^) 「錬金術はロマンだお。普通にできないことをするから面白いんだお!」

同じ錬金術師としてその言い分もわかる。
だが、現実的な道具に絞れば、あいつらも邪魔できないのにとは思う。

(´・ω・`) 「まぁいいや。さっさとお金ちょうだいよ」

( ^ω^) 「まだまだいっぱい残ってるおー」

ブーンが指差す先には、今日薬を運んだ箱が10以上積まれていた。
それを全部売りさばくとなれば、明日だけでは済まないだろう。

(´・ω・`) 「全部?」

( ^ω^) 「8割売れたら解放してやるお」

8割なら我慢しようか。
その日は夜まで販売戦略を相談し、僕らは寝ることにした。

内藤は薬を使っていたようだが、僕はやめておいた。


49 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 09:54:06 ID:HknsixXc0

僕の予想は大いに外れた。
内藤と売り場に向かうと、そこには甲冑に身を包んだ数人の男が待っていた。

( ^ω^)) 「僕の売り場に何の用だお?」

「貴様か、この売り場の錬金術師は!」

「販売していた薬をすべて回収させてもらう!
強制的に人を眠りに落とす薬は危険すぎると判断された!」

(; ^ω^)) 「そんなっ! むちゃくちゃだおっ!」

(´・ω・`)) 「流石に酷すぎませんか?」

金属音と同時に僕らに槍が向けられた。
丁寧に磨かれたそれは人間ならばただの一刺しで殺しうるだろう。

「逆らうなよっ! 逆らえばこの場で処刑することも出来るのだ!」

騎士と言うのはどの場所でも傲慢なのだな。
大人しく従うか、と荷を下ろしたショボンだが、ブーンは驚くべき行動を取っていた。

(; ^ω^)) 「こ、これは研究の成果だお! 僕にはこれを売る権利があるお!」

箱を腹の下に抱え、うずくまって守るブーン。
上から騎士の蹴りが何度も振り下ろされる。


50 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:03:44 ID:HknsixXc0

「さっさと、それを離せ!」

(; ^ω^)) 「嫌だおっ!」

周りで見ている連中は笑っているばかりで助けようともしない。
おそらく似非錬金術師が雇った人ごみで、中の様子が見えないようにされているのだろう。

「こいつっ……!」

騎士はその穂先を振りあげた。

(´・ω・`)) (まずいっ!)

ブーンがホムンクルスだとばれてしまえば、この先の商売は難しくなる。
最悪、捉えられて切り刻まれるのは分かっていた。

(; ^ω^)) 「ショボン!」

その声で斬られたのだと知った。
吹き出した血は赤く大地を濡らすが、それは一時的なもの。

僕の傷が回復していくことに、混乱の声が大きくなっていくのが分かる。

「化物めっ……!」


51 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:06:37 ID:HknsixXc0

(´・ω・`) 「僕は……ホムンクルスだ。殺しても死なない。
       あんたの支配は受けないよ。僕は僕の生みの親である───様に従う!」

黙って見ていろ、とブーンにはアイコンタクトで伝える。

(; ^ω^)) 「…………」

(´・ω・`) 「行きずりの所を変な錬金術師に拾われたが、助かったよ。
       もう十分利用させてもらったからね。これは、せいぜいの恩返しさ」

ホムンクルスを作ることは禁止されている。
ブーンの安全と地位を守るには、こうするしか方法がなかったのだ。

「貴様っ! 誰に生み出されたっ!」

ほら、簡単に引っかかった。
騎士と言うのは頭の弱い奴が多い。
僕の……嫌いなタイプだ。


(´・ω・`) 「───様と言ったのさ。こんなゴミみたいな錬金術師にホムンクルスが作れるわけがないだろう」

「さぁ! 我等と一緒に王城まで来てもらおうか!」

またしばらく会えないかもな、ブーン。
元気で。

(´・ω・`) 「それは……断る!」


52 :名も無きAAのようです:2011/12/01(木) 10:15:08 ID:HknsixXc0

槍の間をくぐり抜け、全速力でローマ市街を駆け抜ける。
重装備をしている騎士なんかに後れを取るはずがない。

もともと長旅で鍛え抜かれている身体だ。

門をくぐり抜け、暫く走り続けた。

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」ここまでくればすぐには追いかけてこないか……
       身体が予想以上に重いな……」

お金は手に入らなかったけれど、まぁ問題ない。
ブーンの立場が守れたかどうかだけが気になる。

(;´・ω・`) 「また、時が経ってから見に来るかな……」

旅先は決めていないが、今までもずっとそうだった。
これからもきっとこうだろう。

それにしてもなぜこんなに体が重いのだろうか。
その原因は服にあった。

(;´・ω・`) 「馬鹿なのか賢いのか……」

大量の金貨が服の裏地に仕込まれている。
何かあった時のために、ブーンが用意してくれていたのだろうか。

姿見えぬ友に礼を言い、彼はローマを後にした。



2 ホムンクルスは稼ぐようです  終了


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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:02:05 ID:kQM0QRhk0
錬金術によって生み出された、奇跡の種。

数多の研究と試行の結果から生み出されたそれの製造方法は不明。
作り出した術師は既にこの世にいない。

それから生まれる人の形を模した者は


──決して老いず

──決して衰えず

──決して死なず


己の存在理由を知るために、ただ生き続けている。

人はそれをホムンクルスと呼んだ。

2 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:02:55 ID:kQM0QRhk0


1 ホムンクルスは戦うようです


3 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:11:34 ID:kQM0QRhk0


(´・ω・`) 「ここはどこだ……?」

目が覚めたらベッドに寝ていた。
一体ここに来る前に僕は何をしていたのだろうか。

全く思い出せない。

部屋の中は綺麗に整頓されている。
家具類は少なく、持ち主を特定できそうなものは無い。

どこの家にも当たり前にあるものばかりだ。

身体を布団から起こそうと思ったけれども、力が入らなかった。
首だけを動かして窓の外を見る。

どうやら都市ではなく辺鄙な村のようだ。
耳を澄ませば、川の流れが聞こえてくる。

僕は、僕自身が誰なのか覚えていた。
だから、記憶喪失じゃないだろう。

(´・ω・`) 「ふむ……」

やはり動けないので、諦めて天井を見ていた。

暫くして、ノックとともに扉が開く。

5 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:21:06 ID:kQM0QRhk0

('、`*川 「失礼します」

入ってきたのは妙齢の女性。
見た目で言えば、僕より二つ三つ年上だろうか。

年をとらない僕基準に考えても仕方ないか。
おそらく20と少しといった雰囲気を感じるけれども、
そういった年齢を予想するのはあまり得意じゃない。

(´・ω・`) 「どうして僕はここに?」

('、`*川 「うちの夫が山から連れて来たんです。どうやら倒れていたそうで……」

(´・ω・`) 「ああ……」

やっぱりか、といったところ。
また、腹をすかせて倒れてしまったようだ。

不死のホムンクルスと言えども、エネルギーがなくちゃ動けない。
家がない僕は、こうして倒れたことが何度もあった。

そのたびに、こうやって見ず知らずの人にお世話になっているわけだ。

(´・ω・`) (それにしても戦争が無くてよかった……)

('、`*川 「とりあえず、これでも食べてください」


6 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:29:30 ID:kQM0QRhk0

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

差し出された料理をゆっくりと口に運ぶ。
この家の料理は今までで三番目に美味しいかな、と失礼なことを考えていた。

('、`*川 「お口に合いますでしょうか?」

(´・ω・`) 「ええ、とても」

('、`*川 「それはよかったです……。ところで、どうして山の中に倒れていたんですか?」

その質問には答えられない。
何で山にいたのか僕にも思い出せないからだ。

(´・ω・`) 「旅の途中だったんですよ。食料を切らしてしまって」

('、`*川 「それはそれは、どうぞこんな料理でよければどんどん食べてください」

お言葉に甘えて、おかわりをいただくことにした。
なかなか僕好みの味付けであり、少しばかり旦那さんを羨ましく思ってしまう。

('、`*川 「これからはどうされるんですか?」

特に決めていなかったけれど、いつもと同じように答える。
どの道、僕にすることは他にないんだから。

(´・ω・`) 「旅を続けます」


7 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:40:51 ID:kQM0QRhk0

('、`*川 「そうですか。どのようなところに行かれてきたのですか?」

見ず知らずの他人に対し、ここまでかまってくれるのも珍しい方だな。
食事の礼はどうせなにもできないのだから、せめて話くらいはするべきか。

(´・ω・`) 「余り大した所入ってません。都にはいくつか行きましたけれど。
       崖の上に立つ町や、堅牢な城などですかね」

('、`*川 「城ですか……私らには縁のない場所ですね……」

別段いい所でもなかったけどね、と付け加えるのはやめておいた。
他人の憧れをわざわざ壊すほど無粋じゃない。
ホムンクルスだって空気くらいよめる。

(´・ω・`) (しかもあの時は、掴まって強制連行だったからね……)

楽しむに楽しめない背景があったことは忘れておきたい。

('、`*川 「私も夫も、生まれも育ちもこの村ですから。
      そういう暮らしをしている方は憧れます」

(´・ω・`) 「ここは……いい村ですね」

お世辞では無かった。
多くの場所を見て回ってきたけど、ここほど安穏とした場所は無かった。
戦争で営みを破壊された村もあったし、疫病で全滅している村もあった。
領主に苦しい生活を強いられているところも。


8 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:48:31 ID:kQM0QRhk0

('、`*川 「ええ。昔からずっと平和な村でした。これからも、きっと平和なんでしょう」

(´・ω・`) 「そうだといいですね……」

長い時を生きていた僕にとって、変化という存在は身近なものであった。
この女性はそうではないのだろう。
だから、、これからもずっと平和だと信じて疑わない。

人は変わる。

町は変わる。

国は変わる。

(´・ω・`) (それを知らないのは、幸せかもしれないな……)

(´・ω・`) 「ごちそうさまでした。何もお礼をできませんが、助けていただき本当にありがとうございました」

('、`*川 「いえいえ。もしよろしければ、ゆっくりしていってくださってもかまいませんよ」

(´・ω・`) 「それには及びません。旦那さんにもよろしくお願いします」

礼を言って立ち去ろうとしたところだった。
ガタン、とひときわ大きな音が聞こえ、熊と見間違えるような大男が入ってきた。

思わず腰の剣に手を伸ばしたが、その手は空を切る。


9 :名も無きAAのようです:2011/11/29(火) 23:54:55 ID:kQM0QRhk0

ミ,,゚Д゚彡 「がっはっは!! 目が覚めたか! 倒れていた時は死んでいるのかと思ったわ!」

村中に響いてるんじゃないかと思えるほどの大声で、男は話しかけてきた。
肩に担いでるのは巨大な斧。

(´・ω・`) (というか人間かよ……僕よりもずっと化物じみてるじゃないか)

('、`*川 「あら、御帰りなさい」

ミ,,゚Д゚彡 「飯はまだか!!」

('、`*川 「ごめんなさい、お客様が全部食べてしまわれたわ。
      今から作り直すし、ちょっとまっててくれる?」

ミ,,゚Д゚彡 「なにぃ!?」

獣のようにぎらつく瞳に睨まれる。
大男が一歩動いた時、僕は殺されるかと思った。
……死なないけれども

ミ,,゚Д゚彡 「あれを全部食ったのか! なかなかいい食いっぷりだ!!
       晩飯はあれだ、俺んとこでくっていけ坊主!」

坊主と呼ばれるほどの年でも見た目でもないつもりだったが、
この人に比べれば僕はまだまだ子供だろう。

10 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:02:15 ID:MSPMHhSQ0

ミ,,゚Д゚彡 「晩飯は大量に頼む。あと酒も用意しておいてくれ」

('、`*川 「わかりました」

(;´・ω・`) 「いや、おいとますると……」

僕の抵抗は空しく終わった。
どの道、剣がなければ旅が続けられない。

ミ,,゚Д゚彡 「ああそうだ、お前さんの剣な、ちぃっと預からせてもらったぞ」

ほい、と軽く放り投げてくるそれは、何とかして受け取った。
旦那さんの方は割と常識人なのかもしれない。

ミ,,゚Д゚彡 「こんな大層な剣持って、どこからきたんでぇ」

(;´・ω・`) 「遠くからです……」

生まれ故郷の地名は覚えていない。
あの時は逃げるのに必死だったから。

ミ,,゚Д゚彡 「ほう……?」

まずはその大斧を置いていただきたい。
そんな物を持って見つめられるこちらの気にもなってほしい。

12 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:09:55 ID:MSPMHhSQ0

ミ,,゚Д゚彡 「まぁいいや。今夜はうちに泊まっていきねぇ。ただし……」

ただでさえ鋭い眼光が一層鈍く光る。

ミ,,゚Д゚彡 「うちの嫁に手を出したら殺す」

(;´・ω・`) (出さないよ……)

そもそも、僕はどちらかといえば年下が好みだ。
とはいっても、ほとんどの人間は僕より年下なんだろうけど。

ミ,,゚Д゚彡 「んで、どこに行くんだ?」

(;´・ω・`) (だから早く斧を置いてくれ……)

僕の視線に気づいたんだろうか、大男は斧を床に────刺した。

(;´・ω・`) (それいいのかよ……?)

ミ,,゚Д゚彡 「どこに行くんだ?」

(;´・ω・`) 「決めてませんよ……風の向くまま気の向くままに進むだけです」

ミ,,゚Д゚彡 「がーっはっはっは!! 気に入った!!」

どうやらこの熊男に気に入られてしまったようだ。
まぁ食事にあずかれるのは素直にうれしいし、話し相手くらいにはなろう。


13 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:17:47 ID:MSPMHhSQ0

大男は聞くよりも話す方が好きらしく、僕は聞き役に徹することになった。
九割が嫁自慢で、一割がこの村のことだった。

ちなみに、嫁の話を区切ったら張り手が飛んできた。
座っていたはずなのに、床に頭を打ち付けるとは……。

(;´・ω・`) (人間だったら死ぬだろ)

この村は自給自足で暮らしており、どこの領主にも属していないそうだ。
それ故に年貢もなく、不自由なく暮らしているらしい。

ミ,,゚Д゚彡 「俺の仕事は概ね狩りだな。他には力仕事とか」

(;´・ω・`) (でしょうね……)

いつの間にか夜になっていた。
どんだけ話が長いんだよこのおっさん……。

('、`*川 「食事ができましたよ」

女性の声が聞こえ、部屋を移動した。
机の上には所狭しと料理が並べられており、酒も大量に用意されている。

ミ,,゚Д゚彡 「さぁ、好きなだけ食ってくれ」

(´・ω・`) 「いただきます」


14 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:29:25 ID:MSPMHhSQ0

(´・ω・`) 「明日の朝、出発します。ほんとにありがとうございました」

ミ,,゚Д゚彡 「おう、そうか」

男は瓶から直接酒を流し込んでいた。
見た目通りの大食感らしい。

('、`*川 「少ないですけど、どうぞ」

差し出されたのは携帯できる食料。
ありがたく受け取って、懐にしまう。

ミ,,゚Д゚彡 「まぁ、なんだ。いつでも遊びに来いよ」

(´・ω・`) 「ええ、また寄らせていただきます」

今までに同じ土地へ戻って来ようと思った事は無かったけれど、
食事もうまくで町も平和なここなら、たまに来てもいいかな、そう思った。

ミ*,,゚Д゚彡 「今度は子どもがいるかもな!! がっはっはっ!!!!」

('、`*川 「あなたったら……お客さんの前で……」

(´・ω・`) ショボーン

別に嫁が欲しいとか思わないけど。
ホムンクルスだからね……。

16 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:46:25 ID:MSPMHhSQ0

結局朝まで酒を酌み交わすことになるとは……。
鼾もまた破格の大音響だな。
それでも平気で寝ている奥さんも奥さんだけれど。

(´・ω・`) 「さて、久々に楽しかったですよ……」

(´・ω・`) (僕は栄養摂取の構造が若干違うからどれだけ飲んでも酔うことは無いんだけどね)

別れを惜しむ気持ちはあるけれども、ずっと同じ地にいることは不幸しか呼ばない。
それは嫌と言うほどよくわかっていた。

(´・ω・`) (さようなら……)

音をたてないようにして家を出た。
あれだけ飲んでればすぐには起きないだろうけどね。

(´・ω・`) 「ん?」

朝日の向こうに何かが見える。

(´・ω・`) 「…………」

僕はすぐにそれが何か分かった。
馬に乗って武装している集団……俗に言う盗賊ってやつだ。

19 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 00:54:07 ID:MSPMHhSQ0

(´・ω・`) 「人数は……5……6人ってところか」

どこからかこの平和な村の噂を聞きつけて来たんだろう。
朝も早いし、村人も寝ているだろう。真っ直ぐにこちらへ向かってくる。

僕の後ろには一軒の家がある。
僕にとって少しだけ特別な家が。

その主は平時ならあんな集団ものともしないだろう。
今は酔いつぶれている。
ほかでもない、僕のせいで。

ならば、僕のすることは一つ。

(´・ω・`) 「ここは通せない」

馬をとめた彼らと相対する。
僕に気付いた盗賊たちはそれぞれの武器を手に取った。
どうやら話し合う余地は無いようだ。

<ヽ`∀´> 「そこをどくニダ、死にたくないのなら」

(´・ω・`) 「死んでもどかないよ。死なないけどね」

<ヽ`∀´> 「何を言ってるニダ!」

振り下ろされた剣は、僕にとって何ら驚異じゃない。


20 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 01:02:33 ID:MSPMHhSQ0

<ヽ`∀´> 「!?」

(´・ω・`) 「この程度の実力なら、なんら脅威でもない」

僕は不死のホムンクルスだ。
どんだけ斬られようとも、刺されようとも、殴られようとも死なない。

(´・ω・`) 「でもっ! 痛いのは嫌なんだよねっ!」

軽く受け流し、反撃を試みる。

「親方っ!」

残念、僕の突きはぎりぎりで避けられたみたいだ。

<;ヽ`∀´> 「全員でやるニダ!」

ここからだな……。

右から来た男の剣が僕の右腕を跳ね飛ばした。
腹部に三回、そして多分後ろからも切られた。

留めと言わんばかりに、親方と呼ばれた男が僕の首を貫く。

<;ヽ`∀´> 「どうニダ……。さっさと盗んで次行くニダよ」

(メ ω `) 「          」


21 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 01:12:58 ID:MSPMHhSQ0

<;ヽ`∀´> 「?」

ああ、喉を潰されてたんだった。
なんて言ったか聞こえないよね。

(メ ω・`) 「待てって言ったんだよ」

数秒のタイムラグで僕の身体は元通りになる。
斬り落とされた右腕は粒子となって再び僕の一部として。

(´・ω・`) 「その家に触るな」

<;ヽ`∀´> 「ひぃぃぃ!! 化物!! 化物ニダ!!」

人間なんて、こんなものだ。
これだけ見せたら、暫くは近寄ってこないだろう。

「殺せ!! 殺せぇ!!」

僕の予想は大きく外れた。
鋭い痛みを感じたけれど、目が見えないせいで確認ができない。

いや、目を斬られたのか、と痛みで気づいた。

どれだけ時間が立ったのだろうか。
復活した僕の目の前には疲れ果てて、怯えた盗賊たちがいた。


22 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 01:21:48 ID:MSPMHhSQ0

<;ヽ`∀´> 「お前はなにニダ!? 何で死なないニダ!?」

(´・ω・`) 「ホムンクルスだよ」

僕は殺され続けていたんだろう。だから、気づかなかった。
脳まで破壊され続けていたから、時間の経つ感覚が欠如していたのだ。

ミ,,゚Д゚彡 「お前……」

(;´・ω・`) 「!?」

助けに来てくれた男の存在に。
その顔を見れば、全て見てしまったであろうことは容易に想像がつく。

<;ヽ`∀´> 「ヒィィィィ!!」

盗賊の男は仲間を引き連れて逃げて行った。
この場に残されたのは二人。

(´・ω・`) 「失礼します……」

軽く頭を下げて背を向けた。
かけるべき言葉などない。
人間ではない僕を人間が恐れるのは当たり前だからだ。

だけど違った。

ミ,,゚Д゚彡 「……また……」


23 :名も無きAAのようです:2011/11/30(水) 01:29:38 ID:MSPMHhSQ0

ミ,,゚Д゚彡 「また来い…………いつでもだ」

その男は言ってくれた。
こんな僕でも、また来ていいと。

今喋ったら、声が震えてしまうだろう。
だから僕は、立ち去りながら手を振った。

また来るよ、そう言った意味を込めて。

ミ,,゚Д゚彡 「ありがとうっ」

背に男の声を受けて。


人のために戦い、何度も傷ついてきた。

体も、心も。


たった一言で報われた気がした。
救われた気がした。
また来よう、そう心の中で誓って僕はこの村を去ることにした。


1 ホムンクルスは戦うようです  終了



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