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( ^ω^)大物バンドが来日したようです 

4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 22:59:44.16

十六日に待望の初来日を果たした米国を代表するロックバンド・VIPが昨日、
合計三十三カ国を巡る結成二十周年記念ツアーの日本公演を開始した。
この長期大型巡業は先日リリースされたアルバム『フロム・シベリア』の宣伝を兼ねており、
それもあってか新譜からの曲を大いに盛り込んだステージとなった。
キャリア初の日本でのライブということもあり会場に詰めかけた二万五千人のファンは熱狂。
改めてアメリカだけに留まらない世界規模のVIP人気を確認することになった。
既に各メディアはスケジュールを押さえ、彼らに直撃インタビューを敢行する構えである。

                                    (記事全文・鳥山クックル)



           4/18付 ニューソクスポーツ一面記事
 


5 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:00:26.17
~楽屋~


オツカレサマデシター

('A`)「テレビ局の取材は終わり、か……」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「ああ疲れた。朝から質問攻めで困るお」

( ^ω^)「おいマネージャー、次の予定はなんだお」

(-@∀@)「はい。えーと、ロック専門誌『ラウド・ラウンジ』のインタビューになりますね」

( ^ω^)「ああ、例の雑誌かお。何度か電話応対したことあるお」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「うるせぇ」

(´・ω・`)「ごめん」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:02:22.89

ついに来日したVIP。『最後の大物』と呼ばれるビッグネームであるだけに、
日本ツアーを待ち焦がれていたファンも多かったことであろう。
しかし、同時に現在の彼らに不安を抱いていたファンも少なからずいたはず。
長年看板を務め続けたボーカリスト、カイル・シャーキンの突然の脱退。
直後に伝えられた新ボーカル、フサ・ワイルドの加入。
多くの噂が渦巻いた交代劇であったが、それらの疑惑を含め、
ラウド・ラウンジ編集部がVIPに直撃独占取材を行った。



                    インタビュワー:猫原ギコ
                    訳:砂尾クール

9 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:05:39.86
――まずはバンド結成二十周年、おめでとうございます。

ブーン・ホライゾン
「ありがとう。といっても、個人的には二十年という月日に対して実感はないんだ。
 なぜなら僕たちがデビューしたのは結成から五年経った一九九七年のことだからね」

――バイオグラフィー的な意味も込めまして、当時のメンバーは?

ブーン
「一番初めからかい? そうだな。まず、今も残っているのは僕しかいないね。
 始まりはハイスクールの友人二人を集めたちっぽけなお遊びバンドだったんだよ。
 三人の頭文字を取って『BIP』と名乗っていたんだけれど、それじゃあまりにも間抜けだったから、
 『VIP』に名前を変えたのさ。特別な感じがするだろう?」

ドクオ・ウッツ
「俺が加入したのはベースをやっていた男が学業を優先するだかで抜けて、
 ブーンが誘ってきたのがきっかけだった。俺たちは何度かライブハウスで顔を合わせていたんだ」

ブーン
「それからしばらくスリーピース体制でのバンドが続いたよ」

ドクオ
「ああ。あの頃は俺とブーンが交互にボーカルを取り合うスタイルだった。
 演奏はクールだった自信はあるが歌は残念ながら不評だったよ(笑)」

12 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:12:39.25
――いつ頃から専任ボーカルを迎え入れることになったのですか?

ブーン
「バンドを組んで三年が経過した頃だね。VIPには歌のうまいボーカリストが必要と感じたんだ。
 理由は簡単で、僕が歌っていたのでは未来がなかったからさ」

ドクオ
「だが、そうそう名シンガーは捕まえられるもんじゃない。
 俺たちが求めるタイプのボーカリストは中々見つからなかった。
 だがある日、素晴らしい声の持ち主をテキサスで見つけたんだ」

ブーン
「それがカイル・シャーキンだった」

ドクオ
「俺たちは虜になったよ。ストロングなハイトーンボイスで、たまらなく扇情的に歌うんだ。
 これだ! と即座に思ったよ。だけどシャーキンは既に別のバンドで活動していた。
 だからまずは一ステージ二百ドルで雇って、少しずつ俺たちの中に溶け込ませていったのさ
 幸い、シャーキンは所属しているバンドよりも、VIPが気に入ってくれてね。そのまますんなり加入したんだ」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:20:13.97
ブーン
「シャーキンを迎えた僕たちはすぐにレコード会社の目に止まった。
 元々楽器陣のサウンドには自信を持っていたからね」

――それでファーストアルバムの『VIP』でデビューをしたんでしたね。

ブーン
「そう。だけど、知ってのとおりドラマーが病気を理由にこの一枚で辞めてしまってね。
 モナーが加入したのはその時期だ」

モナー・オールドマン
「夜中の三時に電話が掛かってきたから驚いたよ。
 酒を飲んでベッドで寝転がっていたらいきなり起こされてね。今でも覚えている(笑)」

ドクオ
「モナーの奴は当時から腕利きのドラマーだったが、いかんせん渡り鳥気質でね。
 ひとつのバンドに定住することはなかったんだ。
 フリーの期間が長い男だから、いちかばちか勧誘してみたんだよ」

モナー
「結局、それが俺の墓場になっちまったけどな(笑)」

16 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:34:32.72
ブーン
「僕、ドクオ、シャーキン、モナー。だからこれが、事実上のオリジナルメンバーになるかな。
 この四人で活動していた期間が一番長いからね。
 二十年のうちの、およそ半分はこの面子で過ごしてきた」

――ファンの間で名盤とされる『トゥー・ザ・ヘブン』『ウルヴズ』もこのメンバーによるものでした。

ドクオ
「セカンドアルバムとフィフィスアルバムだな。
 『トゥー・ザ・ヘブン』ではモナーのダイナミックなドラミングが聴ける。
 こいつは俺たちもお気に入りで、タイトルトラックはライブでは外せなくなっているよ」

ブーン
「『ウルヴス』は三十を過ぎて初めて作ったアルバムだったな。
 意識はしていなかったけど、落ち着いた雰囲気の作品に仕上がっている」

――そんな中、もう一人のギタリストとして招かれたのがショボン・オメガでした。

ブーン
「以前にも話したと思うけど、彼の加入は本当に必要に迫られてのことだったんだ
 VIPはギターを中心にすえたバンドだけれども、
 どうにも年々サウンドに厚みが足りなくなっているように感じたんだよ。
 それはギターを弾く僕自身が一番痛感していた」

18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:44:35.86
ショボン・オメガ
「そんな時、ブーンが僕に連絡をくれたんだ。二〇〇八年のことだ」

ブーン
「ショボンが売れっ子のスタジオミュージシャンとして活動していることは知っていたんだ。
 彼のような技術的に優れたギタリストが加わってくれれば、
 きっと僕に不足している部分を埋めてくれると、そう思ってね」

ショボン
「二つ返事でオーケイしたよ。VIPは国民的スターバンドだったからさ」

――翌年リリースされた『ノット・マネー』は好評でした。

ドクオ
「不安だった部分が大きかったからこのアルバムの成功には安堵したよ。
 今更メンバーを増やしてどうなるんだという声が大きかったのでね」

――確かに、ファンの間では「今になって?」という気持ちがあったことは否めません。
   ですが蓋を開けてみれば、煌びやかなギターサウンドはVIPに新しい風を吹き込んでいました。

ショボン
「それは心から喜べることだよ。VIPには”四人組”の印象が既に根付いていたからね。
 新参者に対してあまりよくない目が向けられるんじゃないかと内心おびえていたんだ。
 だからファンが僕の存在を受け入れてくれたことには今でも感謝している」

20 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/18(水) 23:52:49.59
――ショボンさんを迎えた新生VIPは、まさに磐石と呼べる体制でした。ですが……。

ブーン
「ああ。訊きたいことはわかる。なぜシャーキンが脱退したかだろう?」

――ええ。そのことに関して様々な噂が飛び交っているようですが。

ブーン
「そんなに厄介な問題じゃないんだ。喧嘩別れというわけでもないしね。
 ただ、彼が自分のペースで活動したいと僕たちに打ち明けたんだ。
 VIPは今でも年に百日以上はライブステージに立ち続けているから、
 きっと彼は自分の時間が欲しかったんだろうな。
 無理に引き止めるのもお互いにとってよくないだろうから、彼の申し出を了承したのさ」

モナー
「だから不仲というわけじゃない。むしろ未だに良好な関係は続いているよ。
 シャーキンのソロデビューアルバムに俺はドラムとして参加する予定だしな」

ブーン
「僕が製作しているソロアルバムでも、彼に一曲歌ってもらうつもりさ」

――それは安心しました。

23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:06:50.03
ドクオ
「そんなことより、俺たちとしては新メンバーのフサについて質問してほしいね」

――失礼しました。では、フサさんにインタビューさせてもらいます。

フサ・ワイルド
「よろしく頼むよ」

――プロフィールを見ますと、これといった経歴は見当たりませんが……?

「オーディションを受ける前はデトロイトの車の整備工場で働いて、
 地元のコピーバンドで週末ひっそりと歌うような、そんな生活だった。
 VIPがニューシンガーを探しているという一報を聞いたときも、駄目元で応募したんだよ。
 それがまさかの合格さ! 元々VIPのファンだったこともあって歓喜したよ」

モナー
「一人だけ飛びぬけてインパクトがあったからな。
 髭面で、とんでもなくパワフルな声で歌うもんだからさ」

ドクオ
「即決だったよ。こいつしかいねぇ! ってな(笑)いやいや実際衝撃的だった」


24 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:11:45.03
――『フロム・シベリア』を聴く限りでは、前任者とはタイプが大きく違いますよね。

ドクオ
「別物だね。シャーキンは伸びやかなハイトーンを武器にしていたけれど
 フサの歌唱スタイルはもっと攻撃的だ。声質もハスキーだしね」

ブーン
「僕たちは強烈な個性を求めていた。
 仮にシャーキンと同じタイプの人間を選んだとしても、シャーキンと比べられるだけだ。
 それよりは全く違うタイプのシンガーを迎えたほうが絶対にいいと思ったんだ」

ショボン
「うん。僕が言うのもなんだけど、VIPは現在進行形のバンドだからね。
 新しい要素を取り入れていくことで成長していくんだ」

ブーン
「だけど、声域自体にはなんの問題もないから過去の曲も歌いこなしてくれる。
 さすがに高音はシャーキンほど強靭じゃないけど、中音域で歌う曲はむしろフサのほうが向いている。
 これには驚いたよ。シャーキンの声を基準に作った曲がフサにぴったり合ってしまうんだからね」

フサ
「VIPの曲を、VIPのステージで、VIPのフロントマンとして歌っていることが今でも信じられないよ。
 毎日が夢心地さ。未だに慣れない(笑)」

26 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:19:46.87
――昨夜のステージでは堂々たる立ち振る舞いでしたが。

ブーン
「フサは逸材シンガーだよ。VIPのボーカルを立派に務め上げてくれている。
 彼によってVIPはますますいい方向へと進んでいくだろうね」

モナー
「新作ではこれまでのスタイルを踏襲した楽曲を収録したけれど、
 次回のアルバムではフサの意向を聞いて実験的なアルバムを作りたいね」

ドクオ
「もしかしたら彼自身にもペンを取ってもらうかもな」

――最後にこのページを読んでいる方にメッセージをお願いします。

ドクオ
「中々機会がなくて来れなかった日本にようやく来ることができて最高だ」

ブーン
「日本のファンにも是非僕たちのライブを楽しんでもらいたいね」

――本日はありがとうございました。

29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:24:58.26
~楽屋~


オツカレサマデシター

( ^ω^)「ようやく終わったお……はあ」

( ´∀`)「休憩まだー?」

(-@∀@)「次の予定はブーンさんとショボンさんだけですね」

('A`)「えっ、じゃあ俺は休めるの?」

(-@∀@)「ギター雑誌の取材ですから」

(´・ω・`)「日本のギターマガジンというと……あ、もしかしてロビー・ギターズ?」

(-@∀@)「そのまさかです」

( ^ω^)「あそこ慣れなれしいから苦手だお……」

33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:31:32.34

九七年のデビュー以来ハードロックサウンドの”王道”を行くVIP。
長年望まれていた来日公演がついに実現!
日本縦断ライブ・サーキット実施中という忙しいスケジュールの間隙をつき、
VIPサウンドの核を担うギターチームの二人に突撃インタビューを決行したぞ!!
ロビー・ギターズ読者の皆、刮目せよ!!




                        聞き手:河内ミルナ
                        訳:斉藤またんき

37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:40:29.21
――前作『ノット・マネー』から華やかなツインギター体制になったわけだけど、
   今回でもそのサウンドスタイルには変化なし?

ブーン・ホライゾン(以下BH)「当然」

ショボン・オメガ(以下SO)「むしろ、よりギターを前面に押し出してるよ(笑)」

――アルバム一曲目からリズミカルなリフが炸裂するね。
   耳にした感じでは、今までのVIPにはない新鮮なサウンドに聴こえたけども。

BH「そう! あのリフはショボンのアイディアだ。かなり技術的にも難しい」

SO「六弦から四弦にまたがる分、音程差がついて緊張感を演出できるんだ」

――今作ではシンガーの変更に合わせて意図的にサウンド面でも狙った部分はある?

BH「それは関係ないな。むしろ、フサ(・ワイルド)のアイディアはほとんど含まれていない。
   ショボンが参加して二枚目ということで、彼に自由にやらせてみた部分が大きいな」

SO「ブーンからは作曲面で多くのことを学んだから、僕なりの解釈を加えてみたんだ」

BH「俺以外にギターを弾ける人間がいるということは大きいよ。
   何よりレコーディングで楽できるしな(笑)」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:49:20.25
――ギターソロの配分はどんな感じ?

BH「俺は今回ほとんどソロは弾いていないな。十一曲中、二曲で掛け合いソロをやったくらいだ。
   というより仕事自体が今までと比べて圧倒的に少ない。
   ショボンとドクオが書いてきた曲にボーカルのメロディーラインを乗せた程度だよ」

――前作ではソロの割り当ては半々と語っていたけれど。

BH「『ノット・マネー』はショボン初参加ということで俺が手本になる必要があったが、
   彼がすっかり馴染んだものだから、俺は一歩引くことにしたんだ」

SO「おかげで伸び伸びとギターソロのレコーディングができたよ」

――確かにこれまでになくソロパートが充実しているね。
   特に四曲目ではかなり長い、それでいて飽きさせないギターソロがハイライトになっている。

SO「あのソロは僕にとってもフェイバリットだ。
   テクニックだけじゃなく、フィーリングがあるからね」

BH「ショボンが信じられないくらい凄いソロを弾くもんだから、
   スタジオで俺は引っくり返りそうになったよ」

40 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 00:59:35.57
――あとひとつ、演奏がいつもよりタイトに思えたんだけども。

BH「それはプロデューサーのモラル(・ギャクタイネン)のおかげだな。
   欧州にモラルという敏腕プロデューサーがいると小耳に挟んでね。、
   フィンランドのスタジオに機材を持ち込んで、そこでレコーディングしたんだ」

SO「それとジャック・ダニエルの瓶を大量にね」

BH「ああ、そいつを忘れてた。一番の重要物件だ!(笑)」

――(笑) 異国でのレコーディングはどうだった?

BH「特別苦労したことはないね。ただ、食べ物には少し困ったかな。
   特に俺の好物のピザだ! ヨーロッパのピザは薄いんだ。
   シカゴのディープディッシュピザが恋しかったよ」

SO「あれは最高。分厚い生地に、たっぷりチーズとミートソースを乗せてね。
   僕としてはニューヨークスタイルのピザのほうが若干好みだけどさ」

BH「そいつもいい。だけど俺はシカゴピザが一番なんだ」


41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:13:11.49
――では、今作における使用機材を。

BH「まずアンプはいつもと同様にメサ・ブギーのデュアルレクチファイアーを使った。
   何曲かでモラルが所有していたマーシャルのヘッドを使ったけれど、
   どの曲だったかは覚えていないな。クリーンはフェンダーのツインリバーブ」

――同じとは意外。音を聴いた限りでは何かしら変更があったように思ったけども。

BH「モラルのプロデュースのおかげだな。よりソリッドに聴こえただろう?
   ギターはこれまたいつもと同じ、ギブソンのエクスプローラー・ゴシックだ。
   フロント、リアともにEMGピックアップスがマウントしてある。
   俺はもう一本型番違いのエクスプローラー・ゴシックを持っているんだけど、
   そっちはネックがやや薄いから単音弾きの間奏に向いている。
   だからソロアルバムではそっちを使うつもりだよ。
   ペダルはワウくらいだ。あとはミックスダウン段階で掛けてもらっている」

SO「僕はバッキングのメインはスタジオにあったギブソンレスポールだ。
   弾き心地といい音といい素晴らしいギターでね、永久貸し出しを希望したくなったよ(笑)。
   それ以外だとポールリードスミスを何本か。アンプもブーンと同じメサ・ブギーだよ。
   あと、せっかくヨーロッパに来たということでドイツのメーカーであるエングルのアンプを試したりもした。
   エフェクターはチューブスクリーマー、モーリーのワウ、MXRのフェイズ90……色々使ったな」

43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:20:28.67
――ありがとうございした。最後に何か一言あれば。

BH「近頃は音の厚みを増すときはコードの裏でピアノを鳴らしたり、
   あるいは隙間をシンセサイザーで埋めたり……そういうやり方が主流だ。
   だけど俺たちは真っ向から否定するね。
   ギターに隙間があったら、ギターで埋めればいいんだ」

SO「ロックバンドの基本は骨太なギターサウンドだ。それを忘れちゃいけない」

BH「それと、ロックには酒が付き物だ。
   日本を訪れて一番でかいと感じた点はいつでもどこでも簡単にアルコールを買えるところだ!」

――飲みすぎには注意してよ(笑)

SO「どうだろうね。ブーンは暇があれば、片手にビール瓶を握り締めているような人間だから」

BH「まあな。ライブでは酔っぱらってまともに演奏できなくならないよう気をつけるよ(笑)」

44 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:25:45.63
~楽屋~


オツカレサマッシター

(;^ω^)「だるいお……なんで本番前にバテてるんだお僕は」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

( ^ω^)「もうちょっと隅っこで練習してくれお」

ミ,,゚Д゚彡「次のスケジュールはどうなっているんでしょう?」

(-@∀@)「今度は一般音楽総合誌の記者が来ます」

('A`)「ちっとも取材が途切れないな」

(-@∀@)「今度はリーダー単独ですね」

( ^ω^)「僕の休憩はいつなんだお」

46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:31:57.23

今月の洋楽特集記事は初来日となるロックバンド”VIP”にスポットを当てる。
年表と共に送るバンドの軌跡、ディスコグラフィーを中心に、
専門家が挙げる名盤とその解説などをお届けしていく。
洋楽初心者のあなたもこれを気に興味を持ってみてはいかがだろうか。
またバンドを率いるブーン・ホライゾン氏の独占インタビューも掲載。



                            記事全文:若枡ベルベット

48 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:42:17.85
――それでは、よろしくお願いします。

ブーン氏「よろしくお願いします」

――まずは簡単な略歴のほどをお願いできますでしょうか。

ブーン氏「我々は一九九七年にデビューアルバムを発表して以来、
      今日まで自分たちが思い描く理想のロック・ミュージックを追求してきました。
      今回、ようやく日本のファンの方々と触れ合える機会を設けてもらい、大変光栄に思っています」

――日本国内でも絶大な人気(※1)を誇っておりますが。
   (※1 洋楽チャートでは常に一位を獲得し、『フロム・シベリア』も例に漏れず初登場首位)

ブーン氏「非常に喜ばしいことです。我々はライブバンドであるという自負がありますので、
      そうした側面からのアピールを行ってないのにもかかわらず……ですから。
      ですので今回のツアーでは私たちの魅力を存分に伝えられると思います」

――ファンの間では前任ボーカリスト(※2)との確執が噂されています。
   誠に恐縮ですが、そちらについて語っていただけることは可能でしょうか。
   (※2 カイル・シャーキン氏。現在はVIPを離れソロ活動をスタートしている)

ブーン氏「いえ、関係が悪化したということはありません。彼とは現在も交流が続いています。
      音楽性の相違などというわけでもなく、ただ、単純に彼の心境、モチベーションの問題でした」


49 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 01:53:33.68
――では、新しいボーカリストであるフサ・ワイルド氏は、
   どのような経緯でVIPへの加入が決まったのでしょう?

ブーン氏「当初の予定では、私はフランス人シンガーのジョルジュ(※3)を誘うつもりでした。
      ですが、過去にアメリカとヨーロッパの混成バンドが、
      主に地理的な理由で失敗していくのを目にしていたために、これは白紙になりました。
      そこでオーディションを行うというアメリカ各地の紙面に掲載してもらったのです」
      (※3 フランスで活動するソロ・アーティスト)

――公募したのですね。

ブーン氏「そうなりますね。そこに、一通の手紙とCD-ROMが送られてきました。
      それこそがフサのデモ音源で、何曲かの私たちのナンバーを見事に、
      かつ大胆なアレンジで歌いこなしていたんですよ。
      私たち一同、稲光が走ったかのような衝撃を受けました」

――直接会ってオーディションも行ったと思います。どのような具合だったでしょう。

ブーン氏「はい。他に気になった人物と一緒にスタジオに招いて審査しましたが、
      やはりそこでもフサが群を抜いて素晴らしいパフォーマンスをしてくれました。
      彼しかいない、と満場一致で決まりましたね」


50 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:03:25.60
――新たなラインナップで望んだ新作『フロム・シベリア』ですが、
   こちらに関する率直な本人の感想はいかがでしょう?

ブーン氏「自画自賛になりますが、非常に気に入っています。
      何よりもフサの力強い歌唱が素晴らしい。
      この魅力を一人でも多くの方に、ライブ会場で生でお届けしたいと思います」

――やはりライブこそが本領なのですね。

ブーン氏「もちろん。最高のステージを用意することを誓います。
      セットリストは新作からの曲を中心に、人気の楽曲をプレイしていきます」

――ライブでの見所などありましたら。

ブーン氏「先程話したとおり、まずはフサの歌になりますね。
      他にはモナー・オールドマンのドラミングは円熟味を増し、
      今が全盛期といえるほどのサウンドを聞かせてくれますので注目してください。
      ドクオ・ウッツは普段は目立ちませんが、堅実な仕事をしてくれます。
      私とショボン・オメガのギターワークにも耳を傾けてくだされば嬉しいです」

――本日はお忙しい中本当にありがとうございました。

ブーン氏「はい。ありがとうございました」

53 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:07:27.17
~楽屋~


オツカレサマデシタ。コンゴモヨロシクオネガイモウシアゲマス

( ^ω^)「マネージャー!」

(-@∀@)「はいはい」

( ^ω^)「あとどのくらいあるんだお」

(-@∀@)「さっきので雑誌取材は終わりですよ」

ミ,,゚Д゚彡「では、そろそろ軽くリハでも……」

(-@∀@)「いや、まだテレビ向けの仕事が残ってますよ」

( ^ω^)「えー」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

('A`)「その曲しか弾けんのか」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:18:12.50
ナレーター:伊与田いょぅ


先日待望の初来日を果たしたアメリカのロックスター『VIP』が、
福岡のヤフーBBドームから北上する全国ツアーを開始しました。
生で見るド迫力のVIPのステージにファンは大・大・大熱狂~。
あらら、中には興奮して上半身裸になる人もいたりして!

そんなVIPのリーダーであるブーンさんから、
なんと日本語でメッセージが届いています!


( ^ω^)「ハイ! ニッホンノミナスァン、ヴィップノブーンディス。
      ボックータチノー、ライヴ、ミニキッテクダサーイネ。
      アッコニーオマカセー」

56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:19:02.56
あっこにおまかせワロタ

57 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:23:01.72
~~


オッツァッシター

( ^ω^)「変な外人って思われるんじゃないかお」

('A`)「気にするな」

( ^ω^)「そんなことより、さすがにもう終わりじゃないのかお!?」

(-@∀@)「まだDVDに収める特典映像のシューティングがありますよ」

( ´∀`)「寝たいモナ」

(-@∀@)「それとブーンさんはアルバムの宣伝用の映像撮影も行いますので」

( ^ω^)「僕の仕事量はどうなってるんだお」

(-@∀@)「円高だからジャパンマネーを存分に獲得してこいとの社長連絡が」

('A`)「外タレのいやらしいところを公開するな」

(´・ω・`)ギュイーンピロピロ

60 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:31:15.95
~女子校内~


ζ(゚ー゚*ζ「ねーねー、昨日のBS見た?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや見てないけど。何があったの?」

ζ(>ー<*ζ「VIPのライブがちょっとだけ流れたの! かっこよかったー!」

ξ゚⊿゚)ξ「あー、あんたあのバンド好きだったっけ」

ζ(゚ー゚*ζ「早く見に行きたいなぁ……名古屋公演が待ち遠しいな」

从 ゚∀从「なになに、なんの話? 混ぜて混ぜて」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、今来日してるっていうVIPの話題」

从 ゚∀从「おっ、聞いたことあるな。弟の読んでる雑誌に載ってたっけ」

(*゚ー゚)「日曜日にお昼の番組に少しだけ出てたよ」

ζ(゚ー゚*ζ「嘘っ!? バイトさぼればよかった~」

62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:38:07.85
ξ゚⊿゚)ξ「そんなはまるもんかね」

ζ(゚ー゚*ζ「一回聴いたらわかるよ!
       って、ツンにはアルバム新作以外全部貸してるでしょ」

ξ゚⊿゚)ξ←GEOに売った

ξ゚⊿゚)ξ「うん、まあ、そのうちわかるかな、うん」

(゚、゚トソン「そんなデレのためにラウド・ラウンジの今月号を買ってきましたよ」

ζ(゚ー゚*ζ「わっ! 十四ページもインタビューがある! 完全に私得!」

(*゚ー゚)「む、貪るように読むね……」

(゚、゚トソン「私も参考にと思って拝見させていただきましたが、
     これは熱意のある方しか読破できないのではないかというほど濃密な内容でした」

从 ゚∀从「あんなおっさんによくそこまで入れ込めるわい」

(*゚ー゚)「確かにおじさんだったかな……ちょっと太めの」

ξ゚⊿゚)ξ「デレ=中年マニア説浮上」

ζ(゚ー゚;ζ「ひどっ! もう、みんなVIPにどんなイメージ持ってるのよ」


63 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:44:05.13
从 ゚∀从「えっ、どんなイメージって……」

(゚、゚トソン「ううん……」

(*゚ー゚)「ええと、素直な感想でいい?」

ξ゚⊿゚)ξ「私がいつも買ってる雑誌にも特集載ってたけど、それ読んだ感じだと」

ζ(゚ー゚*ζ「うんうん」

(゚、゚トソン「真面目かつ相当に弁が立つ方かと」

从 ゚∀从「酒浸りの荒っぽいオヤジ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんかロックっぽくないめちゃくちゃ丁寧で腰低そうな人」

(*゚ー゚)「面白い外人さん」

ζ(゚ー゚*ζ「なにそれ」







                               ~おわり~

65 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2012/04/19(木) 02:46:27.07
あとがき

みんな翻訳記事には気をつけよう
一人称「I」を平気で僕・俺・私で使い分けてキャラクターを後付けしてくる
奴等は危険だ




ブーンお誕生日おめでとう!


目次へ

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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第8話 

245 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:19:15 ID:lvNlMSaA0


絶望の淵にあったホムンクルスを救ったのは一人の少女。

ある事件をきっかけに、少女もまた不死の存在となる。

二人の物語は永遠に続くはずだった…………。


ホムンクルスは生きるようです


──少女編最終話





8 ホムンクルスと少女のようです



二人の愛の行方は────


246 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:20:03 ID:lvNlMSaA0



リリの傷口から体内に染み込み、その定義が彼女の体を変質させていく。
見た目は変わらないまま。


傷口は完全に消えたとき、リリの顔に血の気が戻った。

(;´・ω・`) 「リリ?」

僕の呼びかけに応えるかのように、彼女は目を開けた。

⌒*リ´- -リ 「ショ……ボン? 私は……?」

「あ、あ、有り得ない……。奇跡だ!」

(´;ω;`) 「奇跡じゃ……ありません。……錬金術です」

リリの手がゆっくりと傷口に触れた。
そこにはもう、何もない。

万能に見える錬金術も、死者を元通りに生き返らせることはできない。

(´ ω `) (リリを生かしてくださったことを感謝します)


247 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:21:49 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´- -リ 「……助けてくれたんだね。ありがとう」

(´;ω;`) 「当たり前だ」

リリの手を強く握った。
もう二度と手放さないと、決意して。

⌒*リ´ v リ 「……これで、私もショボンも同じだね」

既に彼女は"知っている"
自分がもはや人間ではないと言うことを。

殺しても死なず、朽ちゆくことのない存在だと。

知った上での、優しい微笑み。
ただそれだけで許された気がした。

(´・ω・`) 「……行こう。ここに長居は出来ない」



⌒*リ´*・-・リ 「……はい」


248 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:23:10 ID:lvNlMSaA0


ベッドから起きあがったリリに寄り添って支え、教会を出る。
腰を抜かした司祭はそのまま置いてきた。

馬は一頭しかいないが、しばらくは急ぐ必要もないだろう。

自由気ままな旅が楽しめるはずだ。

(´・ω・`) 「当初の予定通り、港へ向かおう。そこから先は、またその時に考えればいい」

⌒*リ´*・-・リ 「ショボンと一緒なら、どこまででも」



・  ・  ・  ・  ・  ・


249 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:28:32 ID:lvNlMSaA0




僕らは二人で、世界中を旅した。いろんな国を見て回った。いろんな出来事があった。

数万人が住む都市で商売をして、数百人もいない村で暮らした。


錬金術を用いて人助けをし、知識を授けて平和に一役買った。


神と崇められて、悪魔と罵られながら。


幸せだった。
二人で笑って、泣いて、生きて。


(´・ω・`) 「…………君と一緒でよかった」



⌒*リ´ v リ 「私もだよ」


250 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:30:50 ID:lvNlMSaA0



気づいたのはいつ頃だったか。
100年は経っていなかったと思う。

リリの様子が少しおかしいことに気づく。。
僕の前では明るく振る舞っていたけれど、何かを隠しているのは明らかだった。

だから彼女に直接聞いた。
どんなに悪いことだろうと、一人で背負わす訳にはいかなかった。

(´・ω・`) 「リリ。言いたいことがあるのなら、言ってくれ」

⌒*リ´・-・リ 「……。ショボン……。
        なんでも……ないよ」

(´・ω・`) 「隠すなよ」

⌒*リ#´・-・リ 「何でもないったら!」

リリは答えてくれなかった。
それどころか、こんなに怒らせてしまったのは数年ぶりのことだ。


251 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:35:15 ID:lvNlMSaA0


(´-ω-`) 「……ごめん」

⌒*リ´- -リ 「私こそごめん……」

微妙な空気が僕らを包む。
お互いの距離感を測りかねていた。

強引にでも聞くべきなのか、そうでないのか、僕にはわからない。

(´-ω-`) (いつからだったかなぁ……)

最初の数年は喧嘩なんて一度もなかった。
一緒に過ごす年数が二桁になるころに何回か喧嘩をした。

つまらないことだったけど。
長く一緒にいるから、お互いのことはよく知っている。

だからこそ、違和感を感じる。
僕のことじゃなく、自分のことで悩んでいるのだと。
そう確信できるものが、心の中で渦巻いてる。

(´-ω-`) (でも、どうすれば……)


252 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:36:42 ID:lvNlMSaA0


僕らが出会った村よりも、ずっとずっと南西にある小さな漁港。
ここで過ごし始めてもう20年にもなる。

⌒*リ´ - リ 「……ちょっと……出掛けてくるね」

それだけ言うと、リリは外に歩いていった。
外はまだ明るいし、心配はいらないだろう。

(´・ω・`) 「ふぅ……」

思わずため息が漏れる。


思い当たることがないわけではない。
一年365日ほとんど一緒にいるのだ。

むしろ喧嘩の理由が無い方がおかしい。

(´・ω・`) (寂しいのかな……)


253 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:39:38 ID:lvNlMSaA0



最初の頃はずっと一緒に暮らしていた。
錬金術を使ってお金を稼ぎながら。

二人でどちらがより売れるか競い合ったり、共同で新しいものを作ったり。

彼女はホムンクルスの僕には無いアイデアで錬金術を行っていた。

リリにとって新鮮だった錬金術は、数年もすればつまらないものになった。
それから僕らは世界中を旅行した。

先人達の偉大な歴史を見て回った。
リリにも純粋に旅行として楽しんでもらえたと思う。

それでもやっぱり定住意欲の方が強くて、旅行先に何度か住み着いた。
だけど十数年が限界だった。

年をとらない僕らは、年数がたてばたつほど怪しまれる。
今住んでいるこの地だって、しばらく住めば離れなければならない。

最近、僕は食べ物の調達によく狩りに出掛けている。
リリは家の近くで野菜を作っていることが多く、そのせいかもしれない。

(´・ω・`) (寂しさを紛らわす方法か……)


254 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:41:31 ID:lvNlMSaA0



椅子から立ち上がって、家の外に出た。

雲一つない真っ青な空に、まだ雪の解けていない白い峰。
まるで自然の美しさが今この景色に凝縮されているかのようだ。
牛は暢気に草をはみ、羊は少し長い昼寝を楽しんでいる。

少し歩いた先にリリはいた。
大樹に寄り添って座っている。













聞き覚えのあるメロディが、風にのって届く。



僕の、一番好きな調べ。


255 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:46:55 ID:lvNlMSaA0




春の陽のように優しく

雪解け水のせせらぎのように心地よい


立ち止まって耳を傾けていた。


パキ


演奏は歪な音で中断された。

⌒*リ´ - リ 「…………」

(´・ω・`) 「…………リリ」

リリの胸には二つに割れた横笛が抱かれていた。


256 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:50:50 ID:lvNlMSaA0


⌒*リ´ - リ 「仕方ありません……いずれ朽ちてしまうものです。
        形を変えないものなどないのですから……」

(´・ω・`) 「まだ、直るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「いえ、いいんです。もう、充分です。休ませてあげましょう」


(´・ω・`) 「……僕が新しいのをプレゼントするよ。
      上手に作れる自信はないけれど……。
      錬金術じゃなくて、僕の手で」

⌒*リ´*・v・リ 「ありがとうございます」

(´・ω・`) 「家に帰ろう」

僕らは並んで家に帰った。
壊れてしまったリリの横笛は、大事にしまい込んだ。


257 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:52:45 ID:lvNlMSaA0




(´・ω・`) 「リリ、あのさ…………子どもを作ろうか」

⌒*リ´・-・リ 「!?」

⌒*リ´//-/リ 「あ、あああああ、あの……そういうのは……ですね……えっと……」

動揺して真っ赤になるリリ。
慌てすぎてて舌が回ってない。

⌒*リ´//-/リ 「えーあーそのーえーでも……うん……」

(´・ω・`) 「まぁ落ち着いてよ。別に今すぐどうのこうのってわけじゃないし」

⌒*リ´//-/リ 「ま、まだ昼なんだから当たり前です!」

論点がずれていた。
リリが落ち着くのを待ち、それから話を進める。

(´・ω・`) 「僕は君を寂しがらせてるんじゃないかって。
      子どもがいれば、そんなことはないんじゃないかな」

⌒*リ´・-・リ 「……」

(´・ω・`) 「人間と同じように子供を作ることはできないけれど、僕なら……」


258 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:54:31 ID:lvNlMSaA0



黙っていたリリはゆっくりと口を開いた。


⌒*リ´・-・リ 「その子供は、人間ですか? それとも、ホムンクルスですか?」

その静かな質問の答えを、僕はもっていなかった。
ただ彼女のことだけを考えていた僕には、答えることができなかった。


⌒*リ´・-・リ 「人間の子どもを私達が育てた時、大きくなったその子は何を思うでしょうか。
        親が不老不死の人外だと知って、その子はまだ自分が人間だと信じられるでしょうか」

(´-ω-`) 「………………」



⌒*リ´・-・リ 「ホムンクルスの子どもは一生子供のままです。もし、大人になるとしても彼もまた不老不死なわけですよね。
        私は、ショボンの言うとおり寂しいと感じています。
        友人もいない、家族もいない、愛する人とたった二人でいるには、あまりにも長すぎる時間を過ごしてきました」



違う、とは言えない。
彼女の言うことは正しい。
そして、その言葉は僕を苦しめる。


259 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:01:18 ID:lvNlMSaA0



(´-ω-`) 「………………」

⌒*リ´・-・リ 「でも、だからと言って、私は、自分のエゴのためにそのような存在を生み出すことを良しとしません。
        ショボンの心遣いはとても嬉しいです」


窓から差し込む陽光を眺めつつ、リリは口を開いた。




⌒*リ´・-・リ 「……怖いのです」

⌒*リ´・-・リ 「死ぬことのない私たちは、いつまで生きればよいのですか?」

(´-ω-`) 「…………」

⌒*リ´・-・リ 「人が死に絶え、植物が腐り落ち、世界が滅んだら、私たちはどうなるのでしょう」


⌒*リ´・-・リ 「この数十年は、この考えが頭から離れません」

だから、僕の心遣いは嬉しかった、と。

(´・ω・`) 「それは……」

続ける言葉もないのに、声を発してしまった。


260 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:05:39 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「……リリは……」

⌒*リ´・-・リ 「ショボンを責めているわけではないです。
        むしろ死んでいたはずの私にこれほどまでに多くの幸せを下さって、とても感謝しています」

⌒*リ´・-・リ 「私がいなければ、ショボンは一人で生きていくことになってしまいますから。
        ただ少し、そう少しだけ、疲れてしまったのかもしれません」

今になってようやく気づいた。


リリは人間の心を持つホムンクルスだ。
人の心は数百年を生きるようにはできていない。
長生きすることを想定して作られた僕とは、決定的に、絶望的に違う。

今はまだ『少し疲れた』程度かもしれない。でも、いずれは……。

深く沈んだ僕の表情を見て、リリは言った。


261 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:11:06 ID:lvNlMSaA0
]


⌒*リ´*・-・リ 「心配しないで下さい。そうそう簡単に負けたりしませんから」

(´ ω `) 「うん……」

ただ頷き返すことしかできなかった。

リリの心を人間の時そのままに残したのは、彼女の心に干渉したくなかったからだ。
僕によって強く作りかえられた心は、果たしてリリのものなのか。
そういう疑問を持ちたくなかった。

だから、彼女の精神には何も施さなかった。
それが今のこの状況を作り出している。

何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなってしまった。
静かに泣いていた僕を、彼女は優しく抱きしめてくれた。



・  ・  ・  ・  ・  ・


262 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:26:20 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´*・-・リ




⌒*リ´・-・リ




⌒*リ´ - リ




 リノ´ -川


263 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:20:57 ID:lvNlMSaA0


・  ・  ・  ・  ・  ・



僕とリリはただひたすらに生きた。

そこに神様が願いを聞いてくれて幸せになる奇跡はなく、
悪魔と戦って生きる意味を知るような物語もない。

平凡で、それ故に平和な百数十年だった。
長い年月で得たものは、両手では持ちきれないほどの思い出。
それとは逆に、リリの心は少しずつ磨耗していった。



 リノ´ -川 「ごめんなさい、ショボン……」



一番聞きたくなかった言葉が容赦なく鼓膜を震わせる。

ただぼーっと指をくわえて見ていたわけではない。
心の劣化を防ぐ研究を、元へ戻す研究を続けてきた。


264 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:23:00 ID:lvNlMSaA0



ついぞ答えを見つけることはできなかった。
いずれの手段をとるにしろ、彼女の性格を手付かずで残すことができないのだ。
心とは性格そのものだと言うことを、理解した。

(;´・ω・`) 「頼む! もう少しだけっ!」

そう言ってリリを引き留めた。
何度も。何度も。


265 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:25:30 ID:lvNlMSaA0












 リノ´ -川 「…………ごめんなさい」










.


266 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:31:57 ID:lvNlMSaA0


研究に疲れて寝ていた僕が、そのことに気づいたのは、次の日の朝だった。

(´-ω-`) 「リリ……?」

扉が強く叩かれる音で目を覚ました。

(´+ω-`) 「ん……」

普段ならリリが対応するはずだが、姿が見えない。
仕方なく机から起きあがり、来訪者を迎え入れた。

「ショボン様、リリ様が……」

村人の尋常でない様子から、リリの身に何か起きたのだと悟る。

(#´・ω・`) 「何があった!?」

まどろみから一瞬で覚めた。
語気を荒くして問う。

「リリ様が……川に」

(;´・ω・`) 「っ! どこだっ! 案内しろっ!」


267 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:32:56 ID:lvNlMSaA0



連れてこられたのは、村に流れ込む大きな川。
流れは早く、リリの姿は見あたらない。

(;´・ω・`) 「いつの話だ?」

「つい先程です。一人ふらふらと歩いてこられて……」

(;´・ω・`) 「リリっ……くそっ……リリぃっ!!」

叫んでも返事はない。
水の流れる音だけが、聞こえていた。

(;´・ω・`) 「しばらく家を空ける。村の者にも伝えといてくれ」

「わかりました」

河口へは遠く、この辺りはかなりの深さがある。
おまけに急流ともなれば、川底を調べるのは不可能だ。

(;´・ω・`) (どこから探せば……)

家に戻って旅支度を整える。
必要なものはまとめて革袋へ放り込んだ。

そこで一枚の紙切れが目に付いた。
手に取って見てみると、リリの字で書かれた手紙だった。


268 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:34:43 ID:lvNlMSaA0












「ショボンへ。あなたに救ってもらったこの命を、無駄にしてしまうことを許して下さい。とても幸せでした。さようなら」











.


269 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:48:47 ID:lvNlMSaA0







(´;ω;`) 「っ…………」

涙が止まらなかった。
短い手紙には、リリの苦労が一言も書かれていなかった。
彼女は、僕を気遣ってくれたのだ。
エゴで彼女を苦しめた僕を。

罵詈雑言で埋め尽くされていてもおかしくなかった。
呪いの言葉を残されても自業自得だ。

それなのに彼女は……。

(´・ω・`) (探さなきゃ……こんな終わり方は駄目だ……)

ホムンクルスの命を終わらせる方法なんてわからない。
それでも、リリが本当に死を望むなら、見つけなきゃならない。
水底で眠るのは一時的な逃避だ。数百年後、数千年後にさらにひどいことになるかもしれないのだから。

(´・ω・`) (必ず見つける。見つけて、二人で最善な道を探すんだ。
       それがもし離れ離れになってしまうことだとしても。僕が逃げてはいけない)


270 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:12:09 ID:lvNlMSaA0


手紙も袋の中にしまい込み、まずは川下へ向かって歩くことにした。
人の体は浮くものだし、どこかで引っかかっているかもしれないからだ。
乾季になれば、少しは水の量が減る。それまでの凡そ三カ月は川の周辺を調べるしかない。

数百キロの途方もない道のりも、リリを想えば容易かった。

(´・ω・`) (見つけて、今度こそリリを救う)

彼女が、彼女らしく生きていけるように。
彼女が、彼女らしく死ねるように。



僕は……もう逃げない。


271 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:41:57 ID:lvNlMSaA0



日の出ている間は、ひたすら川下に向かって歩いた。
下降にある港町まで二週間かけて歩いたけれど、リリの持ち物一つ見つけることすらできなかった。

港町で聞き込みをする。

海に流れ込む河口は人を運ぶだけの勢いも、深さもない。
ここまで流れ着いていれば、誰かが気づくはずだ。

(´・ω・`) 「すいません、普段町で見ない女の子を知りませんか? 
       リルケット・リファリアという名前なのですが」

「いや。交易都市だからなぁ。人の出入りも激しいし、それだけの情報じゃわからない」

(´・ω・`) 「そうですか……ありがとうございました」

(´・ω・`) 「すいません、あの……」


「いや、知らない」

「知らんなぁ」

「わからん」


272 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:49:46 ID:lvNlMSaA0


聞き込みの成果はゼロだった。
リリの姿形を表現できる手段がなければ、当たり前かもしれない。
かといって絵が描けるわけでもない。
状況は最悪だった。

(´・ω・`) (しばらく、ここで暮らすか……)

いつ彼女が流れ着くかわからない。
焦って何往復もするよりは、このほうが良いはずだ。

用意していた金銀をもってギルドに建築の依頼をする。
中心部から離れた、河口を見下ろせる丘の上に小さな小屋を建ててもらうことにした。

完成するまでの一週間は宿屋に泊まり、朝から晩まで河口を眺めて過ごした。

「ショボンさん、でしたっけ。注文通りの家を完成させました」

きっちり一週間後、職人が報告しに来た。
残りの代金を払い、あらかじめ予約していた錬金術の道具店へ向かう。
錬金術師が広く知られていないこの時代に、こうした店を見つけることができたのは運が良かった。


273 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:58:59 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「フラスコを10、試験管を12、固定具を2、ランプを2、用意できてますか?」

「ああ、新しい研究所を作る人だったけな。全部できとるよ」

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

「サービスにフラスコと試験管二つずつ増やしといたから。また利用してくれよ」

(´・ω・`) 「はい、そうさせていただきます」

両手いっぱいの器具を抱えつつ、家に帰った。
全てを使いやすいように並べて一息つく。
ふと、西側の窓から河口を見下ろす。

川で水遊びをしている子どもたちが目に入った。
覚悟を決めて手元の器具に目線を映す。

(´・ω・`) 「ホムンクルスの研究を一からしよう……」

僕はホムンクルス、ひいては賢者の金属について知らないことはないだろう。
だが、今ある知識だけでは足りない。
リリを見つけたときのために、全てを知っておかなければならない。



・  ・  ・  ・  ・  ・


274 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:01:17 ID:lvNlMSaA0





数十年の年月はあっという間だった。
一匹の兎を検体として百を越える実験をし、千を越える種類の薬品を投与した。


その何一つとして有効な結果は得られなかった。

調べれば調べるほど、ホムンクルスの不死性は完璧な論理の上に組みあがっていた。

(´・ω・`) 「くそっ……」

書きあげた式を破り捨てる。
これもうまくいかなかった。

未だリリを見つけることも出来ていない。
一年に一度、彼女が身を投げた村まで川を遡っていが、手掛かりはない。

リリは記憶を失ってどこか別の場所で生きてるんじゃないだろうか。
どこかで、一人苦しんでいるのではないだろうか。

そんな考えが浮かんでは消えていく。

ここにいれば彼女が見つかる、そう信じていた。
でももう、それすら信じられない。

港町に長居し過ぎたせいで、僕の名もだいぶ知られてしまっている。
ここも安全ではない。


275 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:02:02 ID:lvNlMSaA0
(´・ω・`) (世界中を巡って、不死の解決の手段を探す)

流通する品は限られている。
ここにいたままでは手に入らない素材は山ほどあるし、知らない植物も旅の途中で多く見て来た。
それならば、新しい発見を求めて。

(´・ω・`) (世界を歩き、リリの痕跡を見つける)

それが、僕の今すべきことだ。


でもその前に、やることがある。

ここに僕がいた証を残そう。
リリの手掛かりになるように。

(´・ω・`) (ただ彷徨うのではなく、帰ってこれるように)

買ってきた塗料で家の壁に大きく文字を書く。
ここが、僕の家だとわかるように。


Death is only the begining except for Us


276 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:03:55 ID:lvNlMSaA0


そして家を守るための仕組みを作った。
家を中心に二重の黒線を描き、そこに錬金術を組み込む。

それは人間の意識を逸らす。
定期的に帰って来なければならないが、これで家は残されるはずだ。


(´・ω・`) 「ふぅ…………」

勢いつけて起きあがり、机の上の紙を全て暖炉に放り込んだ。
実験道具に残っていた研究素材も全て。

炎の色は夜のように黒く、紫の煙を出して燃え上がる。

最後に机の上に丁寧に横笛を置いた。
砕けてしまった、彼女の最も大切な物。

欠片を繋ぎ合わせ、接着した。
別れてしまった僕らが再び出会えるように願いを込めて。




最後に一度だけ振り返り、家を出発した。


277 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:04:57 ID:lvNlMSaA0









8 ホムンクルスと少女のようです  End

             

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( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです 第2話 

34 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:41:13 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.


35 :ミス:2012/04/15(日) 02:41:55 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


.


36 :またミスった:2012/04/15(日) 02:42:37 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.


37 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:44:51 ID:wghgvI3cO
落ち着けwww

38 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:46:40 ID:n.kWS84w0
( ゚ω゚)「どえええええええええええええええ!!!」

(゚ω゚ )「どええええええええええええええええええええ!!!」

( ゚ω゚ )「ドエエエええエエエエエええええええええええええええええええええ!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「こっち見んな」

(;^ω^)「ちょちょ、ちょ、マジで言ってるのかお!?」

ξ゚⊿゚)ξ「大マジよ。社長さん」

(;^ω^)「でも、歯車王がなくなったらうちは…」

ξ゚⊿゚)ξ「やっていけなくなるの、クー?」

川 ゚ -゚)「いや。むしろ右肩上がるな」

('A`)「そりゃそうだ」

ξ゚⊿゚)ξ「つーかね、このままじゃやっていけなくなるのは会社のほうよ」

(;^ω^)「うぐ…そりゃそうだけどお…」

ξ゚⊿゚)ξ「会社潰しますか?パイロット辞めますか?」

(;^ω^)「……」


39 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:53:22 ID:n.kWS84w0
('A`)「まぁ待てってツン。そう急展開にしなくてもいいだろうよ」

('A`)「お前だって歯車王に愛着とか未練とか、全くないわけじゃないはずだ」

ξ゚⊿゚)ξ「…それはもちろん、そうよ」

('A`)「クーだって同じだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。というか元より、私はツンに賛成した覚えもない」

('A`)「だよな。というわけで、この件は一旦保留」

ξ゚⊿゚)ξ「でも…」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「…わかったわ。保留にしましょう。私も突然こんなこと言っちゃって悪かったと思ってるし」

('A`)「もう少し早く思っててくれたら、ダメージの少ない発表の仕方もあったと思うんだが」

ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはいすいませんでした。どうせ私は単細胞ですよ」

('A`)「言外の意思をそこまで汲み取らなくてもよろしい」

41 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:59:01 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「…ごめんだお。僕のせいで」

ξ゚⊿゚)ξ「あー…別にあんたのせいって言ってるわけじゃないから。そこんとこは勘違いしないでよね」

川 ゚ -゚)「ツンデレきたな」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、黙れ?」

川 ゚ -゚)「はい」

('A`)「ま、次の定期整備まで一週間ある。まずはそこがポイントだろう」

川 ゚ -゚)「定期整備までは歯車王の維持費もかからないからな。存分に悩むといい」

( ^ω^)「おー…」

('A`)「うし、じゃ俺は出撃後整備にかかるからよ。解散解散」

ξ;゚⊿゚)ξ「げ、もう退勤時間過ぎてるじゃない。またサビ残かぁ…」

( ^ω^)

川 ゚ -゚)「ツン、このタイミングでそれを言うのはただの追い討ちだぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ごめん…ついうっかり…」


42 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:04:40 ID:n.kWS84w0
('A`)「…ふー。出撃後整備完了、っと」

( ^ω^)「お疲れ様だお。ほい、コーラ」

('A`)「なんだよ、まだいたのか。サンキュー」

プシッ

( ^ω^)「…昼間はごめんだお、ドクオ。保留にしろ何にしろ、僕が言わなきゃいけないことだったのに…」

('A`)「気にしちゃいねぇよ。お前はああいうの慣れてないからな」

( ^ω^)「だお」

('A`)「まして親父さんの形見だ。そう間単に決められるこっちゃねぇ」

( ^ω^)「…でも、決めないといけないお」

('A`)「だな。それはお前に任せた。つーわけで帰って抜いて寝るわ」

( ^ω^)「抜く報告はいらんお」


43 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:06:26 ID:n.kWS84w0


            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠


( ^ω^)

( ^ω^)「歯車王」

( ^ω^)

( ^ω^)「ごめん、だお…」


44 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:10:20 ID:n.kWS84w0
そして一週間の月日が流れた。

('A`)「さぁやって参りました運命の進退発表ターイム!」

川 ゚ -゚) パフパフー

ξ;゚⊿゚)ξ「クー、別に律儀に鳴らさなくてもいいのよ?」

川 ゚ -゚)「鳴らしたらジュース一本と言われたので」

ξ;゚⊿゚)ξ「安いんだか高いんだかわからないわね…それ…」

('A`)「いや、一週間怪獣が出なくて良かったな。おかげで安心して考えられた」

( ^ω^)「そうだおね」

ξ゚⊿゚)ξ「…決めたの?」

( ^ω^)「うん。決めたお。売るって」

ξ゚⊿゚)ξ「そう…」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「いや、もう少し溜めろよ。おい」


45 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:17:17 ID:n.kWS84w0
('A`)「えらいあっさりだなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「葛藤するタイミングをくれよ!『ああ、やっぱり…』とかさぁ!思う時間くれよ!見せ場作れよ!」

川 ゚ -゚)「何で怒ってるんだ?」

( ^ω^)「色々考えたけど、やっぱり皆を路頭に迷わせるわけにもいかないし…」

('A`)「いや、俺はここなくなっても知り合いの工場があるから」

ξ゚⊿゚)ξ「私もツテを頼ればなんとか」

川 ゚ -゚)「実家帰る」

('A`)「路頭に迷うのはお前だけだ」

( ^ω^)

( ^ω^)「何だそれ」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ決断してくれて助かったわ!さぁそれじゃ売る算段を付けるわよ!」

( ^ω^)「何だそれ」

('A`)「まぁまぁ」


46 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:24:38 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「で、何かあてはあるのか?」

( ^ω^)「…ぶっちゃけ歯車王ってレトロロボだし。なかなか需要ないと思うんだけどお」

('A`)「いや、逆に高く売れるんじゃないか?その手のマニアにさ」

ξ゚⊿゚)ξ「その通り!実は取引先の人がレトロマニアでね。歯車王のことも気に入ってるらしいの」

ξ゚⊿゚)ξ「いらなくなったら是非私に!って何回も言われたわ」

川 ゚ -゚)「なるほど。逆に言えば、そのあてがあったから今回のことを考え付いたわけだな」

( ^ω^)「マニアの人なら大切に扱ってくれそうだし…」

('A`)「異論はないらしいな」

ξ゚⊿゚)ξ「オッケーオッケー。満場一致ね」

( ^ω^)「それで、その人はどこの人なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「皆さんご存知、『荒巻製作所』の荒巻さんよ」


47 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:30:40 ID:n.kWS84w0
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんくださーい」

/ ,' 3「おお、津野さん…とと、今日は皆さんお揃いでしたか」

( ^ω^)「ご無沙汰してますお」

('A`)「どうも」

川 ゚ -゚)「こんにちは」

ξ゚⊿゚)ξ「荒巻さん。歯車王が欲しいって前におっしゃってましたよね」

/ ,' 3「ええ。皆さんの前で言うのも恐縮ですがの」

ξ゚⊿゚)ξ「歯車王、荒巻さんに売るってことで可決しました」

/ ,' 3「…本気ですか?」

( ^ω^)「はい。社長以下全員の総意ですお」

/ ,' 3「…そうですか。わかりました。まさか本当にこの日が来るとは」

ξ゚⊿゚)ξ「それで、売値の方なんですけ川 ゚ -゚)「これぐらいでいかがでしょうか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「(…さすが経理…)」

49 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:46:18 ID:n.kWS84w0
/ ,' 3「む…いやいや、これはちょっと。歯車王はその…やや、古い機体ですしの」

川 ゚ -゚)「ええ、そうですね。しかしあなたにとって重要なのは年代じゃないんでしょう?」

/ ,' 3「……」

川 ゚ -゚)「歯車王はかなり特殊な機体です。理由は簡単」

川 ゚ -゚)「歯車王は、『一切量産されていない』」

川 ゚ -゚)「つまり、歯車王に使われているいくつかのパーツは完全に固有の部品です」

川 ゚ -゚)「そして我が社の経営事情もあって、そういったパーツは交換歴がありません。当然生産している工場も現存しない」

川 ゚ -゚)「だからこそ価値がある。実用性度外視のコレクションとしてね」

(;^ω^)「…そうなのかお?」

('A`)「らしいな。そういうパーツって、痛みにくい部位のなんだよ。だから固有でもそんな困らないってわけ」

('A`)「(ま、本当はうちにも交換用のストックが残ってるんだけどな…黙っとくか…)」

川 ゚ -゚)「安値で買い叩くつもりなら無駄ですよ。パーツの相場は全て調べてありますから」

/ ,' 3「…ははは、参りましたなぁ。そこまでバレてちゃしょうがない。その金額で出しましょう」

川 ゚ -゚)「わかっていただけたようで何よりです。オークションで競るよりは安いと思いますよ」

/ ,' 3「その通りですな」


50 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:53:07 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「と、いうわけだ。この金額でいいそうだぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「うお!これ私が考えてた見積もりの五倍ぐらいあるんだけど!」

川 ゚ -゚)「ナメすぎだろ…常識的に考えて…」

/ ,' 3「これはわしの方から少し上乗せして買い取ってたレベルですぞ…」

('A`)「今更だけどあいつに営業任せて大丈夫なの?」

川 ゚ -゚)「ツンは値切りの技術に長けてるからな。あと野生の勘」

( ^ω^)「後者も否定できないお」

ξ゚⊿゚)ξ「あたしを何だと思ってるわけ?」

川 ゚ -゚)「ともかく、これで成立だ。さっさと歯車王を運搬してこよう。あ、運搬費もそちら持ちということで」

/ ,' 3「…しっかりしてますなぁ…」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、本当に」


51 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:58:01 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「ね、ブーン。私が聞くのもなんだけど、本当に良かったの?」

( ^ω^)「…うん。満足だお」

('A`)「嘘が下手だなお前は。そういう顔してねぇぞ」

( ^ω^)「…ごめん」

川 ゚ -゚)「謝ることはない。お前の気持ちはわかる」

( ^ω^)「クー…」

川 ゚ -゚)「安心しろ社長」

川 ゚ -゚)b「歯車王は、もっと高く売ってやる」

( ^ω^)

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「は?」


52 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:03:05 ID:n.kWS84w0
/ ,' 3「…ふむ…やはり、興味深い」

/ ,' 3「歯車王が作られたのは、もう何十年も前のはず」

/ ,' 3「にも関わらず、この機体の能力は現在の物のそれとほとんど変わらない…」

/ ,' 3「この秘密…恐らく、歯車王の最深部に…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


/ ,' 3『最深部に…』

川 ゚ -゚)「よし、カメラ・マイク共に調子は良好だな」

ξ゚⊿゚)ξ「これって…歯車王のカメラ映像?」

川 ゚ -゚)「ああ。データをこっちにも送信するよう、ドクオに改造させておいた」

('A`)「ちょちょいとな」

( ^ω^)「でもなんでこんなことを?」

川 ゚ -゚)「今荒巻さんがご丁寧に説明してくれたんだが…まぁいい」

54 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:09:52 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「歯車王はブーンの親父さんが設計・開発した機体だ。つまり何十年も前の機体になる」

川 ゚ -゚)「にも関わらず。機体スペックは妙に高い」

('A`)「そうだなぁ。現場に出さえすりゃ、怪獣もちゃんと倒せるし」

川 ゚ -゚)「しかもこのスペック、年々上がっているんだ。社外秘だけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「え、そうなの?」

( ^ω^)「マジで?」

川 ゚ -゚)「気付けよ」

('A`)「俺が出してる社内用のスペックデータ見てないのかよ」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「「うん」」

('A`)「俺の仕事って何なの?」

川 ゚ -゚)「愚痴るのは後にしろ。ともかく、だ」

川 ゚ -゚)「私はこれは、CPU周りに原因があると見ている。歯車王のCPUもオリジナルの一点物なんだ」


55 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:15:50 ID:n.kWS84w0
ξ゚⊿゚)ξ「なら取り出して調べてみれば良かったんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「資金に余裕があればそうするつもりだったさ」

('A`)「分解して組み立て直すなんて無駄なことする金、うちにはねぇもん」

( ^ω^)「本当に申し訳ない」

川 ゚ -゚)「だからちょっと汚い手段に出ることにした」

ξ゚⊿゚)ξ「んん…読めてきた。つまり、荒巻さんに分解して調べてもらっちゃおうってことね?」

川 ゚ -゚)「ああ。そして本当にCPUに価値があるようなら、値段を吊り上げる」

川 ゚ -゚)「機体は引き渡したが、まだ売買契約は済んでないしな。吊り上げて断るようなら歯車王を返してもらう」

(;^ω^)「えげつない…」

川 ゚ -゚)「なんとでも言え。これも内藤重工のためだ。一応法には触れないギリギリのラインだぞ?」

('A`)「ギリギリの時点でどうかと思うけどな…ま、CPUは俺も興味あるからいいけど」


56 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:24:29 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「…それにしても、なんで荒巻さんは一人で分解を進めてるんだお?」

川 ゚ -゚)「それこそCPUに価値がある証拠だろう。頭数が増えれば分け前が減る」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ここまでして価値がなかったらショックでしょうね」

川 ゚ -゚)「部品のコレクションも増えるからいいんじゃないか?荒巻さんにとってはどっちに転んでもプラスだ」

('A`)「クソッ、リスクを背負って回ってるうちの会社とは大違いだぜ。なぁブーン」

( ^ω^)「そこで僕に振るのは嫌がらせの一種かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「で、この分解作業ってどれぐらいかかるの?」

('A`)「一人でやるとなると、かなりかかるな。俺もやろうとしたけど、人員と設備がなくて諦めたぐらいだから」

( ^ω^)「カメラがバレなきゃいいんだけどお…」

川 ゚ -゚)「何、バレたら『誤作動』とでも誤魔化しておけばいい。向こうも歯車王の真の価値を黙ってたんだ、おあいこだろう」

( ^ω^)「…今更だけど、クーって金が絡むと怖いお」

ξ゚⊿゚)ξ「あたしもそう思う」

川 ゚ -゚)「褒め言葉ありがとう」


57 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:32:12 ID:n.kWS84w0
荒巻による分解作業は実に三日間にも及んだ。
その間、クーがカメラの映像から目を離すことは一瞬たりともなかった。

川 ゚ -゚)

ξ;゚⊿゚)ξ「ほんとこの子ってどういう神経してんの?」

(;^ω^)「金が絡むと怖いとは言ったけど、ここまでとは…」

('A`)「つーかツンよ。請求関係はいいのか?こんな後回しにしちまってよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あれなら何回もわざとミスって書き直して先延ばしにしてるから」

(;'A`)「…人のこと言える神経かお前?」

ξ゚⊿゚)ξ「営業はしたたかじゃないとね」

(;^ω^)「したたかってレベルじゃねーお」

川 ゚ -゚)「…む。どうやら、分解が済んだようだぞ」

/ ,' 3『これが…内藤の遺産か…』

( ^ω^)「……」

59 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:39:59 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「…このカメラで追えるのはここまでだな。恐らくCPUの性能試験を行うんだろうが」

('A`)「カメラが分離して自走できるようにしておくべきだったか」

(;^ω^)「そこまでしなくていいお」

('A`)「わかってるよ。どうせ予算もねぇし」

( ^ω^)← グサッ

ξ゚⊿゚)ξ「あ、刺さった」

川 ゚ -゚)「また何日かしたら、CPUのことについてカマかけに訪問してみよう」

('A`)「容赦ねぇな」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ請求はもう少し先延ばしておくわね」

川 ゚ -゚)「頼む。できるだけ先延ばせ」

(;'A`)「訴えられたら負けるな…こりゃ…」

( ^ω^)

(;'A`)「あとお前は立ち直れよ…俺が悪かったって…」


60 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:41:38 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


       ┏
          終
             ┛

62 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:45:27 ID:n.kWS84w0



       ┏
          次回
               ┛


       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第参話      遺されたCPU
              ┛              ┛


.


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目次へ
第3話へ→

( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:04:26 ID:n.kWS84w0



                       ― 西暦20XX年 ―



突如として地球に現れた謎の存在『怪獣』の攻撃により、人類は未曾有の大打撃を受けていた。

次々に壊滅させられていく都市。逃げ惑う人々。

絶望の日々に終止符を打ったのは、ある『兵器』の登場であった。

それは、全ての少年の夢と希望を具現化した、馬鹿げた『兵器』。


2 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:06:15 ID:n.kWS84w0





                   『巨大ロボット』である。




.


3 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:07:30 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


.


4 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:11:45 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

( ^ω^)「!」

('A`)「ブーン!非常警報だ!」

( ^ω^)「聞こえてるお!怪獣が出たんだおね!?」

('A`)「いや、違う。お前の部屋にお母さんが入った」

( ゚ω゚)「うわああああああ!!!非常事態だああああああああああ!!!」

ドタドタドタ

('A`)「ふう…ブーン一家の平和はわしが守った」

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、いい加減自分の部屋に親が入ったら警報が鳴るってシステム止めない?」

川 ゚ -゚)「私は構わないぞ。親父が入ってきても困る」

('A`)「三対一だな。残念ながらお前の提案は却下だ、ツン」


5 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:17:12 ID:n.kWS84w0
ここは『秘密株式会社内藤重工』。
巨大ロボットの生産から操縦、果てはメンテナンスまでを担当する株式会社である。社員は以下の四名。

( ^ω^) 内藤ホライゾン

愛称ブーン。内藤重工の若社長である。担当はパイロット。

('A`) 鬱田ドクオ

内藤重工開発課課長。担当は機械整備。

ξ゚⊿゚)ξ 津野ツン

内藤重工営業課課長。担当は部品調達。

川 ゚ -゚) 素直クー

内藤重工経理課課長。担当は経理。


6 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:21:23 ID:n.kWS84w0
彼らは日夜、粉骨砕身の精神で地球の平和のために戦っているのである。

(;^ω^)「ふー…なんとか危険物の隠蔽には成功したお」

ξ゚⊿゚)ξ「危険物ねぇ…」

('A`)「アダルトグッズなんて危険物以外の何物でもないだろ」

川 ゚ -゚)「というか、何故見つかるようなところに隠すんだ?」

( ^ω^)「や、いざという時に手が伸びるところに置いてるから…」

ξ;゚⊿゚)ξ「どういう『いざ』に対応しようとしてんのよ?」

('A`)「そりゃ色々あるだろ。それこそ怪獣とかよ」

川 ゚ -゚)「もっと持ち出すべき物があるだろう」

('A`)「ねぇ」

ξ;゚⊿゚)ξ「ないのかよ!」


7 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:24:32 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

(;^ω^)「うわ!また侵入者かお!?」

(;'A`)「いや、違う!これは!」

ξ゚⊿゚)ξ「怪獣?」

(;゚A゚)「俺 の 家 の 方 だ ! ! !」

ドタドタドタ

ξ゚⊿゚)ξ「…ここからドクオの家までどれくらいだっけ?」

川 ゚ -゚)「全力で走って十五分ってところだな」

( ^ω^)「ドクオの体力じゃ倍はかかるお」

ξ゚⊿゚)ξ「もうどうしようもないな」

( ^ω^)「うん」


8 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:27:26 ID:n.kWS84w0
一時間後。

('A`)

( ^ω^)「どうだったお?」

('A`)「顔見てわかれ」

ξ゚⊿゚)ξσ「ブサイク」

('A`)「正解」

川 ゚ -゚)「どうやら死に目には会えなかったらしいな」

('A`)「それも正解」

( ^ω^)「まぁそう気を落とすなお。給料日までもうすぐだし」

('A`)「俺はこの会社に入って以来給料日が楽しみだったことがないんだが」

(;^ω^)「う…面目ない」

川 ゚ -゚)「経理担当としても面目ない」

ξ゚⊿゚)ξ「全然面目ない顔してないけど」


9 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:29:37 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

( ^ω^)「やたら非常警報の鳴る日だおね」

ξ゚⊿゚)ξ「毎日一回は必ず鳴ってると思うけど…」

川 ゚ -゚)「今度はなんだ?開発課長殿」

('A`)「うむ。怪獣だ」

( ^ω^)「ふーん」

ξ゚⊿゚)ξ「なんだ怪獣かぁ」

川 ゚ -゚)「そうか」

('A`)

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)


10 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:32:42 ID:n.kWS84w0
( ゚ω゚)「怪獣じゃねぇかああああああああああああああああああ!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「怪獣じゃねぇかああああああああああああああああああ!!!」

川 ゚ -゚)「そうだな」

( ゚ω゚)「そういう非常事態はもっと緊迫した顔と声色で言えお!!!」

('A`)「ごめん」

ξ;゚⊿゚)ξ「出動準備出動準備!!!」 グイグイ

川 ゚ -゚)「押すな。ちゃんと準備はやる」

( ^ω^)「先にコクピット乗ってるお!」

('A`)「あいよ。ほれ、起動キー」

ポイ

パシッ

( ^ω^)「受け取ったお!」


11 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:36:45 ID:n.kWS84w0
プシュー

( ^ω^)「よっ、と」

プシュー

『認証開始……認証中……認証終了』

『パイロットを内藤ホライゾンと認証』

『起動キーを挿入してください』

( ^ω^)「お!」

グイ カチャ

『起動キー認証』

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)「……」

13 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:41:29 ID:n.kWS84w0
('A`)「よーし、出撃準備だ」

ドサッ

『巨大ロボット出撃マニュアル ~出撃直前編~』

ξ;゚⊿゚)ξ「はぁ…相変わらずとんでもない量ね…この出撃直前点検マニュアル…」

('A`)「巨大ロボットの出撃に際しては法律遵守でお願いいたします。とよ」

川 ゚ -゚)「うちのような零細企業にとっては悪法もいいところだ、全く」

ξ゚⊿゚)ξ「愚痴ってても仕方ないわね。やりましょ!」

('A`)「はいはい」

川 ゚ -゚)「担当はいつも通りでいいな?」

ξ゚⊿゚)ξ「当然!出撃直前点検開始します!」

('A`)「オーバー」

川 ゚ -゚)「右に同じ」


14 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:43:00 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』


15 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:46:12 ID:n.kWS84w0
~一時間後~

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令受理。起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』


16 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:49:15 ID:n.kWS84w0
( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてくださξ#゚⊿゚)ξ『起きろデブがあああああああああああああああああ!!!』

( ゚ω゚)「のわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ『何気持ち良さそうに寝てんのよ!!!とっくに点検完了してるっつーの!!!』

(;^ω^)「ご、ごめんだお…」

('A`)『いいからさっさと起動キー入れろって』

川 ゚ -゚)『横で騒がれてる私たちの身にもなってくれ』

( ^ω^)「了解!歯車王、出撃するお!」

ξ#゚⊿゚)ξ『帰ってきたら説教だからね!』

(;^ω^)「勘弁してくれお…」

ゴゴゴゴゴ…


17 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:53:30 ID:n.kWS84w0
ガシャン!!!



            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠



秘密株式会社内藤重工製造乙型巨大ロボット

形式名:BR-GK01

通称:歯車王


18 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:57:09 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「各システムオールグリーン!歯車王、目標に向けて前進!」

ξ゚⊿゚)ξ『やってやりなさい!』

( ^ω^)「あったりまえだお!」

('A`)『あー…盛り上がってるとこ悪いんだが』

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)『目標ってどれのことよ?』

( ^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)『周りを見てみろ』

|::━◎┥ ウィーン…

┝◎━::| ウィーン…

( ^ω^)

( ^ω^)「怪獣いねぇ…」

20 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:01:52 ID:n.kWS84w0
ξ;゚⊿゚)ξ『ちょ、どういうことよ!?』

('A`)『もちっとよく見てみろ』

( ^ω^)「スギウラの人たちが忙しなく動いてるのが見えるお…」

ξ;゚⊿゚)ξ『また!?なんなのよあいつら!』

('A`)『スギウラロボティクス。日本の巨大ロボット産業のトップを牽引する大企業様』

ξ#゚⊿゚)ξ「そーいうことを聞いてるわけじゃないっつーの!」

川 ゚ -゚)『どうやらもう事後処理に入ってるらしいな。さすがは大企業』

(;^ω^)「ていうかどんどん仕事早くなってないかお?あの会社…」

('A`)『ま、年商も右肩上がりらしいからな。羨ましいこった』

川 ゚ -゚)『とりあえず帰還しろ、内藤。邪魔だ』

(;^ω^)「了解…」

ξ#゚⊿゚)ξ『もー!!あんっっっっっっっっっっっっっなに時間かけて点検したのにー!!』

22 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:08:10 ID:n.kWS84w0



                       ― 西暦21XX年 ―



突如として地球に現れた謎の存在『怪獣』の攻撃により、人類は未曾有の大打撃を受けていた。

のは、昔の話。

世界の技術は皆様もご存知の通り目覚しい成長を遂げ、今や巨大ロボット市場は大きなマーケットとなっていた。

結果として企業間の競争も激化の一途を辿っていくこととなり、弱肉強食の様相を呈していったのである。


23 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:13:24 ID:n.kWS84w0
('A`)「オラーイ、オラーイ」

ガチャン…

( ^ω^)「ただいまー」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりー」

ξ#゚⊿゚)ξ「じゃ、ねーよ!!学校帰りか己は!!」

(;^ω^)「ご、ごめんなさい!」

川 ゚ -゚)「まぁそう荒ぶるな。お茶だ」

( ^ω^)「ありがとだお」

ξ#゚⊿゚)ξ「もー、ほんっと気に入らないわスギウラのやつら!ちょっとばかし右肩上がりだからって!」

('A`)「ちょっとどころじゃねぇけどな」

川 ゚ -゚)「うちも平坦ではあるんだがな」

(;^ω^)「低空飛行で平坦じゃ意味ないお…」

25 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:22:37 ID:n.kWS84w0
ξ-⊿-)ξ「…すぅ」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ…」

ξ゚⊿゚)ξ「よし。落ち着いた」

('A`)「しっかしやっぱスギウラはすげーな。怪獣出現から出動までの平均タイム三十秒だってよ」

川 ゚ -゚)「あの点検マニュアルを三十秒でか」

ξ゚⊿゚)ξ「一体何人で点検してんだって話よね…」

( ^ω^)「人数もそうだけど設備もうちとは雲泥の違いだと思うお…」

川 ゚ -゚)「ま、今更だけどな」

('A`)「そうそう。つーかこれだけ格差があるのに生き残ってるだけ俺らはマシだぜ」

( ^ω^)「ほぼ内職で生き残ってるようなもんだけどお」

ξ゚⊿゚)ξ「…あのさ。私から一つ、提案なんだけど」


26 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:24:47 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「うちの財政を圧迫してる一番の原因ってなんだかわかる?」

川 ゚ -゚)「当然歯車王だろ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。それはみんなわかってるわよね」

( ^ω^)「だからなんだって言うんだお?」

('A`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとあんたって察しが悪いのね…要するに私が言いたいのはね、ブーン」


27 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:25:40 ID:n.kWS84w0





            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠




  「歯車王を売っちゃいましょうよってことよ」


28 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:27:17 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


       ┏
          終
             ┛

31 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:33:40 ID:n.kWS84w0


       ┏
          次回
               ┛


       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.



目次へ
第2話へ→

从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第8話 

134 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:38:52 ID:joHtc6/k0
椅子に縛り付けられた俺は、改めて流石兄弟のアジトを見回してみた
世間一般の「流石兄弟のアジト」に対するイメージといえば、盗品で埋め尽くされた雑多な空間だろう
しかし実際はそんな事はなく、綺麗に整えられた調度品(恐らく盗品だろう)、染み一つない床etcetc……
一目見てここが大泥棒のアジトだと想像できる人間はいないだろう

(´<_` ) 「あめぞう」って知ってるか?

「あめぞう」。ニューソク建国以前に実在した国の名だ

从 ゚∀从 この国でその言葉を聞いたことがない奴なんて聾者か幼児くらいのもんだろうさ

(´<_` ) ……まあ、そうだろうな

从 ゚∀从 ……

(´<_`;) ……

从 ゚∀从 で、それがどうしたんだよ

(´<_`;) あ、いや、その

( ´_ゝ`) 女と話すの慣れてないからって遠まわしに行き過ぎだろ弟者

(´<_`;) うむ、すまん

わかった、こいつら絶対童貞だ


135 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:39:45 ID:joHtc6/k0
(´<_` ) あんたにはいくつか聞きたいことがある

从 ゚∀从 それはもう聞いた

(´<_`;) ……あんたを殺すつもりはない。ちゃんと答えてくれたらすぐに解放しよう

(´<_` ) あんたは何者だ?

从 ゚∀从 秘密

(´<_` ) どうしてこの場所がわかった?

从 ゚∀从 内緒

(´<_` ) 能力は?

从 ゚∀从 知らねぇな

(´<_` ) 何なのこの子全然話してくれない


136 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:40:43 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) (おい、しっかりしろ弟者)

(´<_`;) (そうは言っても、尋問なんてやったことないぞ)

从 ゚∀从 ところでお前ら、どうやって俺をこんな風に椅子に縛りつけることができたんだ?

(;´_ゝ`) (おい、逆に質問されてるぞ弟者)

(´<_`;) (どうすればいいんだ、これ)

从 ゚∀从 教えてくれよ。お前らが教えてくれたらこっちも質問に答えてやるよ

( ´_ゝ`)そ !! Σ(´<_` )

(´<_` ) (……どうしよう兄者)

( ´_ゝ`) (お前の能力はバレたからどうなるってもんでもないだろう)

( ´_ゝ`) (どうやってここに来たのかを聞き出すことの方が重要だ)

( ´_ゝ`) (これが分からないままだったらいつ捕まってもおかしくない)

(´<_` ) (それもそうだな)

(´<_` ) いいだろう、教えてやるよ

138 :>>137ミス:2012/04/15(日) 06:42:22 ID:joHtc6/k0
(´<_` ) 明晰夢って知ってるか?

从 ゚∀从 夢の中で意識があるってやつだろ?

(´<_` ) そうだ

(´<_` ) 俺はその明晰夢を自由に見ることができる

(´<_` ) 夢の世界の景色は俺が眠りに落ちる瞬間と全く同じ物になっているんだが……

(´<_` ) その世界での俺の行動が全て、俺が目覚めた瞬間に反映される

从 ゚∀从 ポカーン

(´<_` ) わからんか?じゃあ例に出して説明してやるよ

(´<_` ) そこのテーブルの上に林檎がひとつあるだろう?

(´<_` ) 俺が夢の中でその林檎をナイフで四等分、かわいいうさちゃんの形に皮を剥いたとする

(´<_` ) この時現実世界ではまだりんごはその形を保っている

(´<_` ) 俺が目を覚ますと同時に、テーブルの上の林檎はうさちゃん林檎に姿を変えるのだ

(´<_` ) 名付けt从 ゚∀从なるほどな、お前を襲った時に俺は止めを刺すべきだったって訳だ

(´<_` ) ……わかってくれたなら良い


139 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:43:39 ID:joHtc6/k0
从 ゚∀从 それにしても恐ろしい能力だねぇ、殺し屋のが向いてるんじゃねーか?

(´<_` ) 誰かに命を狙われたら俺一人じゃ戦えないんでね。命の危険は無い方がいいのさ

( ´_ゝ`) 起きてる時は一般人みたいなもんだし、俺が守るにも限度があるしな

从 ゚∀从 よしわかった、じゃあ今度はそっちのば……ん……

从ill∀从 だ……あれっ……?体……が……

(´<_`;) おいどうした……ってうわ!お前血が!

(´<_`;) 考えてみれば落ちた腕で戦ってたんだ。出血が無いわけがない

从ill∀从 無理……し過ぎちまったみたいだわ……

(´<_`;) くそっ、死なれちゃ困る。とりあえず応急処置だ

そう言うと奴は俺を拘束していた縄を解き、それを使って俺の両腕をきつく縛った
視界が霞む。流石に血を使いすぎたか


140 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:44:50 ID:joHtc6/k0
(´<_`;) よし、今のところはこれで大丈夫だろう。後で救急車呼んでやるから

从ill∀从 何のつもりだ?情報が手に入ったら俺は用済みなんじゃないかい?

(´<_` ) 俺等は悪人だが殺人はしない

(´<_` ) 恨みを買いたくないし、何より寝覚めが悪いからな

从ill∀从 へぇ、優しいねぇ

从ill∀从 優しいついでに足のロープも解いてくれないか?少し横になりたいんだ

(´<_` ) うーん、まあいいだろう

(;´_ゝ`) ……!!待て弟者!!

(´<_` ) 別にいいじゃないか兄者、この状態で抵抗ができるとは思えん

(;´_ゝ`) いや、駄目だ。何か引っかかる

(;´_ゝ`) 何か……何か……あっ!

(´<_` ) 何か思いついたか?


141 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:47:22 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) 無いんだ

(´<_` ) 無いって、何がだ?

(;´_ゝ`) ……俺がこいつと戦っていた辺りには血の跡がないんだ

(´<_`;) ッ!

(;´_ゝ`) おかしいだろ?戦闘中は出血がなくて縛られたら血を流し始める

(;´_ゝ`) こいつは念動力者だ。拘束を外させるためにわざと血を流したとも考えられないか?

从il゚∀从 おせぇよ

(;´_ゝ`) !! (´<_`;)

足のロープを解くことはできなかったが仕方ない。十分に準備はできた
拘束を解くことはあくまでついで。本当の狙いは別にあるのだ
体から流れ出た血液が流石兄弟の体を這い上がり、両手両足を拘束した

从il゚∀从 お前らの能力がわかってて良かったぜ

从il゚∀从 こうやっちまえば手も足も出ねえんだろ?

从il゚∀从 その体勢で抵抗できるならやってみな!


142 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:48:08 ID:joHtc6/k0
从il゚∀从 「英雄の骨」はどこだ?

血液の鎖が流石兄弟の体を締め上げる

(; _ゝ) 窓際の、金庫の中

足のロープを解かせて金庫に向かうと、確かにそこには「英雄の骨」が置いてあった

从il゚∀从 確かに返してもらったぜ……ところでお前ら知ってるかい?

(; _ゝ) ? (<_ ;)

从il゚∀从 「大怪盗」流石兄弟の指名手配は「生死問わず」

从il゚∀从 これがどういう意味を持つか、分からないわけじゃないよな?

血液の鎖に、力を込める
ぎしり、と、骨が軋む音が聞こえた


143 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:48:58 ID:joHtc6/k0
( ゚д゚ ) ふむ、夢の中の行為が現実になるという能力で一度は犯行を許してしまう

( ゚д゚ ) しかしその後犯人のアジトを暴き「英雄の骨」の奪還に成功

( ゚д゚ ) その他にも盗品とみられる調度品他数十点を回収

( ゚д゚ ) なお、犯人の流石兄弟は抵抗したため已むを得ず殺害

( ゚д゚ ) なるほど、報告書に間違いはないな?

从 ゚∀从 おう

( ゚д゚ ) よし、ご苦労

( ゚д゚ ) 帰還直後に出血多量で医務室に運ばれたと聞いている

( ゚д゚ ) 今度こそしっかり休むといいだろう。任務もしばらくお預けだ

从 ゚∀从 そりゃーありがたいね。腕の動かし方も忘れかけてた頃さ


144 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:51:03 ID:joHtc6/k0
( ゚д゚ ) さて、俺はこれから忙しくなるな

从 ゚∀从 そりゃまたどうして?

( ゚д゚ ) 流石兄弟といえば犯罪者でありながらファンクラブが存在するほどのビッグネームだ

( ゚д゚ ) それ故に彼らの逮捕……いや、死亡はそれ自身が重大な「事件」となる

( ゚д゚ ) だから今回の件は私が直接世間に一部始終を伝える必要があるのだ

( ゚д゚ ) ……お前の報告書通りにな

从 ゚∀从 ……

( ゚д゚ ) 用が済んだなら出て行け。今言った通り私は忙しいんだ

从 ゚∀从 ……了解

从 ゚∀从 失礼しましたーっと ガチャッバタン

从 ゚∀从 ……ふぅ


145 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:53:38 ID:joHtc6/k0
('A`) どうだった、ハイン?

从 ゚∀从 総理の野郎、全部察してやがった

('A`) へぇ、流石は「勇者」ってところだな

从 ゚∀从 全く、頭に来るくらい優秀だよあの野郎は

( ´_ゝ`) おいおい何の話してるんだ?

(´<_` ) 俺等も混ぜてくれよ、寂しいじゃないか

('A`) なるほど、あんたらがあの流石兄弟か

( ´_ゝ`) そういう君は「リビングデッド」

(´<_` ) 名前はよく聞くよ、よろしく頼む

从 ゚∀从 仲良くしろよ、これから一緒に仕事をする仲間なんだから

('A`) ああ、よろしく

('A`) ところでハイン、いつまでそんな血塗れの服を着てるつもりだ?

从 ゚∀从 ああ、それもそうだな。ちょっと着替えるわ ヌギッ


146 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:54:35 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) えっあのハインさん、ここで着替えんの?

(´<_`;) ほら、どっか別の部屋行ったほうがよくね?

从 ゚∀从 何言ってんだ、お前らは俺の腕の断面まで見てんだぜ? ヌギヌギ

从 ゚∀从 今更下着見られたくらいどうってことねーよ ヌギヌギ

(;'A`) いや、その理屈は

从 ゚∀从 なんだお前ら初心だな全く。ほらサービスだ、パンt

そこから先は何も覚えていない
ただ何か恐ろしい出来事があったってことしか思い出せないんだ
――流石兄者 ある日の日記

148 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 07:00:05 ID:joHtc6/k0
おまけ 仲間図鑑その1

( ´_ゝ`)

「大怪盗」流石兄者

狙った獲物は逃がさない「大怪盗」流石兄弟の兄の方
能力は弧の動きの強化。能力名は「スピーディー・ワンダー」
洋楽が好きらしい
「刑務所に入るよりは……」とハインの仲間になる


149 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 07:03:20 ID:joHtc6/k0
おまけ 仲間図鑑その2

(´<_` )

「大怪盗」流石弟者

狙った獲物は逃がさない「大怪盗」流石兄弟の弟の方
夢の中の行為が現実に反映される能力を持つ。能力名は「ドリームズ・カム・トゥルー」
邦楽が好きらしい。せっかく考えた能力名をハインに聞いてもらえなくてちょっとがっかりしている
「兄者がそうするなら……」とハインの仲間になる


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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです 第2話 

73 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:15:13 ID:nqepu3F.0

内藤家の一階には魔術の研究を行う工房があり、
今、そこに一騎のサーヴァントが召喚された。

(<`十´> 「問おう、お前が私のマスターか?」

雪原に擬態する真っ白なギリースーツを装備したサーヴァントは、
死神を連想させるマスクを覆った顔をブーンへと向けて尋ねた。

(;^ω^) 「そ、そうだお……僕が君のマスターだお」

150cm代と大柄のブーンと比べると酷く小柄な体型だったが、
それでもサーヴァントの放つ威圧感に彼は気圧されてしまい、
とっさに平静を装ったものの声が上ずってしまう。

(;^ω^) 「き、君は……アーチャーで間違いないのかお?」

(<`十´> 「如何にも」

(;^ω^) 「第二次世界大戦で、沢山人を―――」

ブーンは彼の生前について全く知らなかったのだが、
母親に教えられていたためその活躍ぶりは把握していた。
しかし、ブーンは争いを好まず戦争に嫌悪もしている。

大戦で戦った英雄に対して、そんな彼は抵抗を持たずにいられない。


74 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:16:16 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「マスター、一つ言っておくが。
      私は命じられたことを可能な限り最大限に遂行しただけだ」

それを察したのか、言葉を遮ってアーチャーは先手を打つ。

(;^ω^) 「で、でも……」

(<`十´> 「私達の生きる時代ではそれが正義だった。
      銃を取らねば、何も守れなかった。それだけだ」

(;^ω^) 「……」

つい出してしまった言葉に後悔しかけるが、
それでもブーンは戦争というものを肯定することは出来なかった。

……それは、これから聖杯戦争を戦う自分への否定でもあったのかもしれない。

(<`十´> 「マスター、名前は?」

ブーンが口籠ってしまったことで生まれた沈黙を破ったのは、
アーチャーの問いであった。


75 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:17:13 ID:nqepu3F.0

( ^ω^) 「僕は、内藤ホライゾン。みんなブーンって呼ぶからブーンでいいお」

(<`十´> 「ふむ……ブーンか。お前の口振りから見るに、私の名は知っているようだな。
      ならば、あえて名乗らん。顔を合わせることもそれほどないだろうしな」

(;^ω^) 「え……え!?」

アーチャーの何気ない言葉に、ブーンは驚愕した。
自分の言葉がどこまで彼を傷つけたのだろうかと心配するが、

(<`十´> 「む? 勘違いするな。お前の言葉に私は何の感慨も浮かばない。
      戦略的な問題だ。お前は聖杯戦争が終わるまでここで隠れていればいい。
      私が6人のマスターもサーヴァントも、全て仕留めてこよう」

(;^ω^) 「い、いや! それは!!」

(<`十´> 「マスターが死ねばサーヴァントに魔力供給がされなくなる。
      お前に死なれたら、私が困るのだ。だから、外に出歩かずここで隠れていろ」

(;^ω^) 「そんな甘いはずがないお! 6人を相手に君1人で立ち向かえるわけ……」


76 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:19:45 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「一度に相手にするわけではない。ゲリラ戦は私の得意手だ。
      もしものことがあれば私はマスターを援護するが……足手まといだ、お前は」

(;^ω^) 「……!」

正直に、包み隠しもせずにアーチャーに言われ、
ブーンは自分の足場が崩れ去ったような感覚を覚えた。

口から否定の言葉が出かけるが……、

(<`十´> 「違う、とは言わせぬぞ? どう見てもマスターの眼は戦う者の眼では無い。
      胸の内に、何か決めたことはあるのだろうが……戦いへの迷いも見えるぞ?」

ブーンは父であるシャキンの真意を知り、迷いを断ち切れたつもりでいたのだが、
アーチャーの問いにブーンは自信を持てなくなってしまったのだ。

元から、それは一過性のものでしかなかったのかもしれない。
いずれ壁にぶつかれば、脆くも崩れ去るだけの貧弱な覚悟だったのかもしれない。
しかし、"根源への到達"を"人々の為"に成そうとしていたのは、間違いなく彼の意思だ。

(;^ω^) 「……」

彼の意思に違いは無かったのだが、揺らいでしまった。
揺らいでしまったブーンはアーチャーに反論出来なかった。


77 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:25:12 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「どこに不都合がある? お前は手を汚さずに聖杯を手に入れられる。
      私はかつての大戦と同じように、可能な限り最大限に任務を遂行するだけだ」

(;^ω^) 「君一人じゃ……勝てないお」

(<`十´> 「マスターと一緒じゃ私は勝てん」

サーヴァントにも聖杯に託す願いがある。
だからこそ英霊の座より現世への召喚に応じるのだ。

叶えたい願いを、中途半端な覚悟で戦いに臨むブーンに妨げられるよりは、
己の腕を信じそれだけで聖杯戦争に挑むほうが、アーチャーにとっては堅実だった。

(<`十´> 「ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい」

そう言ってアーチャーは霊体化していき、姿を失っていくと、

(;^ω^) 「アーチャー!!」

文字通り、ブーンの前から消えてしまった。
令呪と魔術回路は繋がっており、まだ彼が近くにいることは理解できたが、
ブーンの呼ぶ声にアーチャーが応えることはなかった。


78 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:12 ID:nqepu3F.0

******

|/▼) 「問おう、汝が我を召喚せしマスターか?」

人気の無い円山の中腹で魔方陣を敷いたシィは、
儀式の際に莫大な魔力によって吹きすさんだ疾風が止んだかと思うと、
静まり返った夜闇の中心で、眩いほどの白さを放つローブを顔を覆うように纏った男に問われる。

(*;゚ー゚) (これが、サーヴァント……)

自らが行使した魔術が成功し、見事サーヴァントの召喚を成し遂げた高揚感に一瞬浸るが、
男の身から感じられる魔力の濃さに対する驚きのせいで、それは心の端へと追いやられてしまう。

(*;゚ー゚) 「えぇ、そうよ」

しかし、どれだけ高等な存在であっても所詮は使い魔である。
術者に行使される側である彼に、シィは魔術師らしく毅然とした態度で応えるが、
規格外の魔力量に尻ごみする気持ちは抑えられなかった。

|/▼) 「我は聖杯の招きに従い、"英霊の座"より現世へ"アサシン"のクラスを得て参上した」

アサシン。

気配遮断スキルを持ち、姿を見せず、気配も感じさせずにマスターを暗殺する、
名の通り暗殺者の英霊が就くクラスである。


79 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:58 ID:nqepu3F.0

正面切っての戦闘では、他のクラスに比べステータスで劣り不利ではあるが、
マスターが上手く暗殺者としての本領を発揮させてやれれば、充分に勝ち残っていけるクラスだ。

サーヴァントはマスターの魔力供給により現世に姿を留めることが出来、これを"現界"と言う。
マスターから魔力を与えられない限り、自力で補給することの出来ないサーヴァントは姿を保てず、
聖杯を手にすることは叶わずに消滅する羽目になる。

そこに、アサシンが付け込む隙があるのだ。
サーヴァントのステータスはいくら低くとも、人間が彼らに敵うことはない。

闇に溶け込みマスターを狙うアサシンは、聖杯戦争において魔術師の天敵と言っていいだろう。

(*゚ー゚) 「アサシン……」

しかし、セイバー、アーチャー、ランサーの"三騎士"と呼ばれるクラスには、
圧倒的にステータスで劣っていることに変わりは無い。

シィはいざ敵に襲われた際、このアサシンが撃退することは出来るのだろうかと不安を抱く。
姿を見せず暗躍すればいいのだが、何らかのアクシデントに見舞われ、
襲撃されてしまった場合はかち合いに弱いアサシンは頼りがいが無かった。

(*゚ー゚) (でも、ギコくんと合流できれば……)

しかし、アサシンほど情報収集能力に長けたサーヴァントもいないだろう。
戦闘面では役に立てないかもしれないが、ギコとさえ合流出来れば心強い戦力になるに違いない。

マスター殺しのサーヴァント、アサシンとギコのサーヴァントがいれば、
もはや敵はいないだろうとシィは考え直していき、安堵の息をひとまず吐いた。


80 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:28:57 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「なんだ、俺じゃあ頼り無いのかいお譲さん?」

先程の硬い口調とは打ってかわり、やけに砕けた声でアサシンが尋ねる。

(*゚ー゚) 「いえ、そんなことはないわ。貴方ほど便利なサーヴァントはいないもの。
     英霊の前で溜息なんて失礼だったわね、ごめんなさい」

|/▼) 「良いんだ、ステータスの低さには些か俺も不満を覚える。
    生きていた頃ならばこの程度の身体能力じゃあなかったんだが……」

(*゚ー゚) 「あら、残念ね。英霊になる前のほうが強かったの、貴方達は?」

|/▼) 「あぁ、現地での知名度やマスターとの相性など、
    様々な要因によって英霊は能力を限定され、サーヴァントとして召喚される。
    残念でならない、貴女のような女性に俺の全てを見せてやれないとは……」

フードの端から窺える口元を緩めたアサシンはシィの前で跪くと手を取り、
その甲へと静かに口づけていった。

(*゚ー゚) 「貴方、本当にアサシンなの……?」

シィが疑問に思うのも無理はない。

アサシンという割には服装は白いローブとよく目立ち、
何より、その振る舞いが彼女の想像していたアサシンの印象とはかけ離れていた。

|/▼) 「あぁ、アサシンさ。アサシン教団の長、ハサン・サッバーハの名を受け継いだ者の一人」


81 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:30:31 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「アサシンってもっと寡黙なイメージだったんだけど……。
     まぁ、いいわ。ステータスを見る限りアサシンであることは間違いないしね」

マスターとなった者にはサーヴァントのステータスが視えるようになる。
目に映る、というよりは意識に直接情報が刻まれてくるような感覚に近い。
これは敵のサーヴァントにも同様であり、"真名"や"宝具"といった例外以外は開示される。

シィの意識に、アサシンの保有するスキルとステータスが映し出されていく。


【クラス】 |/▼)アサシン
【マスター】シィ・C・ルボンダール
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】男性
【身長体重】
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 魔力D 敏捷A 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
           サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
           ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
         
【保有スキル】投擲(短刀):B
         短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。

         風除けの加護:A
         中東に伝わる台風避けの呪い。

【宝具】???


82 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:31:17 ID:nqepu3F.0

得た情報は記憶の片隅に記録され、意識すればいつでも見ることが出来る。
シィはアサシンのステータスを見るのを止めると、次に取るべき行動を命じていく。
これが、聖杯戦争が開始して初めての二人の作戦行動となる。

(*゚ー゚) 「アサシン、早速やって貰いたいことがあるの」

|/▼) 「何なりと、マスター」

跪いたまま、アサシンは演技っぽくそう応えた。
どうやらこのサーヴァントは主従の関係の通り動いてくれるらしい。
シィはそれに安堵して、彼を真っ直ぐに見据えて告げる。

(*゚ー゚) 「この写真の男の人を捜し出して」

そう言ってアサシンに見せたのは、

『 (,,゚Д゚) 』

かつてのギコの写真だった。
まだ少し幼さの残る顔立ちではあるが、眼には厳かな光が宿っている。

(*゚ー゚) 「昔の写真だけど、顔立ちはそれほど変わっていないはずよ。
     私達が勝ち残るには、彼と合流しないといけない。重要な仕事よ」

|/▼) 「……」

アサシンはその眼を見ただけで、生前の経験から、
この少年は腹に何かを抱え、自らに十字架を科して死地に赴いていく、
試練に生きる人間であることを察した。


83 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:32:01 ID:nqepu3F.0

が、特に何かを語るわけでもなく、口の端を少し緩めると、

|/▼) 「了解だ、マスター」

ただ、それだけを言葉にして跳躍の姿勢を取ったその時、

   「―――――――――ッ!!」

|/▼) 「ッ!」

夜の市外の静けさを打ち破る、地の果てにまで轟くような、
凶暴すぎる獣の雄叫びが二人の身を震わせた。

(*;゚ー゚) 「な、なに!?」

|/▼) (この空気の震え方、近いな……)

聞く者の恐怖心を煽るそれにシィは狼狽し、アサシンの表情は強張っていく。
先に判断を下したのは、マスターよりも実戦経験の豊富なアサシンの方だ。

|/▼) 「マスター、仕事は取りやめだ。安全な場所まで逃げるぞ」

(*;゚ー゚) 「敵がいるの……!?」

唐突に知らしめられた敵の存在にシィはただ動揺するばかりだ。

……ここのマナの豊富さが敵の魔力を紛れこませていたの?
やっと敵を察知したシィは冷静に分析していくが、
今はそんな悠長に構えていられる場合では無い。


84 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:03 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「何なのこの魔力の量、尋常じゃない! 一体何を召喚したっていうのよ……!」

|/▼) 「相手が何だろうが関係ない。早く逃げろ。
    サーヴァントが近付いてきていることだけは確実だ!」

(*;゚ー゚) 「そ、そうね! わかったわ」

シィは言葉と同時に力強く一歩踏みこんだが、アサシンはその場から動こうとはしない。
数メートル程駆けたあたりで気がつき振り返ると、

   「止まるな、そのまま走り続けていけ。俺は奴を食い止める」

両刃剣を背負った純白のローブの背はそう応える。

(*;゚ー゚) 「食い止めるって、貴方のステータスで大丈夫なの!?」

何度も言うように、アサシンのステータスでは三騎士に遥かに劣る。
もし相手のサーヴァントが三騎士であれば生還は絶望的だ。

   「良いから、俺を信じて背を向けろ。大丈夫だ。
    撤退するアサシンを追跡できるサーヴァントなどそうはいまい」

そんな不安要素を一切感じさせぬ、絶対的な自信を持った声で背は語る。


85 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:56 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「そ、それもそうね……危なくなったらすぐに逃げるのよ! 絶対よ!!」

      「分かっているさ、マスターは自分の身を心配していればよい。行け」

白衣のアサシンは落ちつき切っていた。
数多くの修羅場を超えてきた経験がそうさせるのだ。
暗殺者と言えども英霊である。状況の判断においては彼の方が一枚も二枚も上手だった。

言葉通り、自分の安全を優先することにしたシィは踵を返す。

     「一つ聞き忘れていた事があったな、マスター」

(*;゚ー゚) 「何!?」

     「俺は名乗った。だが、貴女の名は何と言うんだ、マスター?」

こんな時に、とシィは舌打ちをしたくなったが、
アサシンの声はどこか軽々しいものでも不快さは感じられず、
むしろ自身の緊張がほだされて表情が緩んでいった。

(*゚ー゚) 「シィよ、シィ・C・ルボンダール。それが、貴方のマスターの名前」

    「シィか。では、次に会うまでに覚えておこう。行くが良い。
     この場はアサシンのサーヴァント、ハサン・サッバーハが受け持った」

アサシンが言い切るよりも早く、木々の砕けていく音が鳴り響き、

    「――――――――――ッ!!」

雄叫びが近づいてきた。


86 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:35:33 ID:nqepu3F.0

本能的に、恐怖が命ずるままにシィは逃げ出していき、
アサシンは背中にかけていた鞘から大振りの両刃剣を引き抜く。
構えと激突はほぼ同時であった。

|/▼) 「くっ……」

フードに隠れた表情は想定以上の一撃の重みに歪んでいく。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

彼に襲いかかったのは憤怒とも狂気ともつかぬ、
人と言う枠組みから外れた形相をしたサーヴァントだった。

美しいはずの装飾を禍々しき闇色で曇らせた鎧兜を纏い
髪を血の色に染めて逆立たせたその男からは、英霊という風格が感じられない。

|/▼) 「"バーサーカー"か……面白い!」

召喚時に狂化を施し、理性が無くなる代わりにステータスを底上げされるクラス。
アサシンは一合打ち合って感じた剛力と狂気から、バーサーカーのサーヴァントであると察した。
真紅の瞳が彼を射抜き、目の前の"物体"を破壊するべく狂った英霊は剣を振りかぶる。

その一刀もかつては名剣と呼ばれた逸品であったのだろうが、
現世に狂化されて現われたことで輝きは失われ、
魔剣とでも呼ぶべき凶刃となってアサシンを襲う。


87 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:36:37 ID:nqepu3F.0

膨れ上がった筋肉を持つ巨体から繰り出す一撃は、
頭をかち割るべく真上から振られていく。

力任せの一撃だ。

単純ではあるが速度と威力には優れ、アサシンは迷わず避けた。
刹那、アサシンがいたはずの地面が爆撃でもされたかのように膨れ上がり、
石と土が重々しい音を立てて宙へと爆ぜる。

飛び上がったアサシンは木の幹へ着地するが、

|/▼) 「ちぃ……完全に避けてこれか」

屈むと同時に右肩から下腹部へかけて亀裂が走り、血が噴出した。
バーサーカーの剣圧によってカマイタチが生じ、肉を断たれたのだ。
最初に防いだ一撃も全身の骨を軋ませており、彼は確実にダメージを蓄積していた。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

だが、そんなこともお構いなしにバーサーカーは次の攻撃へと移り、
振った刃を返してアサシンの足場となる木を吹き飛ばす。

人間の力では決して折れぬであろう大樹は小枝のように呆気なく圧し折れ、
夜空に投げ出されたアサシンは超人的な身のこなしで体勢を立て直すと、
別の木に飛び移って敵を見直す。

以#。益゚以 「グゥゥゥウゥゥゥゥゥ……」

呻りをあげる狂気のサーヴァント。
そして暗殺者のサーヴァントの両者は一拍の間睨み合う。


88 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:38:31 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「動く者は全て殺す、とでも言いたげだな。意思も残ってはいまい」

以#。益゚以 「――――――――――ッ!!」

先に動き出したのはバーサーカーだ。
見失った獲物を捉えて、彼が襲いかからない理由は無い。

アサシンはその短絡な行動に苦笑するが、
ステータスの差は埋めようがなく、劣勢に立たされていた。

バーサーカーは、アサシンに止めを刺すべく咆哮をあげて突進していく。

|/▼) 「単純で狩りやすい。が、今は足を止められれば充分。
    ついでだ、貴様の真名――――探らせて貰うぞ!!」

それでも、彼の余裕は崩れなかった。

真っ正面から突っ込んでくるバーサーカーへ短刀を投げかけると同時、
アサシンは跳躍して背後を取っていった。

金属のぶつかり合う閃光と、叩きつけられる暴力の爆音が夜の円山で炸裂し、
聖杯戦争の初戦を飾るアサシンとバーサーカーの戦闘は白熱していく。


89 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:39:32 ID:nqepu3F.0

******

川 -) 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公―――」

闇の中で言葉が響く。

川 -) 「降り立つ風には壁を。
     四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

暗闇に満たされた室内の中央には魔方陣が刻まれ、
黒のドレスで着飾った長髪の女性は、令呪の宿る左手を前へとかざし、
言葉―――呪文を口ずさみ続けている。

川 -) 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)
     繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

呪文に触発されるように蟲の血で形成された魔方陣は輝きを放っていき、
部屋を赤く照らしてどこからともなく疾風が舞い込む。

その様を、ローブで身を包んだ男女が見守っていた。
ある者は興奮気味に、ある者は興味深く、ある者は願うように。

川 -) 「――――告げる」

彼らに"化物"と呼ばれる女性は体内を異物が巡っていく感覚を得る。
苦痛ではあるが、魔術を行使する上でそれは避けられないものだ。
逆に、その感覚がどれだけ魔力を練り上げられているか測る指標にもなる。


90 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:40:36 ID:nqepu3F.0

赤々と輝く魔方陣は不可思議な力を発していき、
陣内を稲光が走っていった。

聖杯が数十年もの年月をかけて蓄積してきた大魔力が注がれ、
この世と"あの世"を隔てる壁を打ち破り、かつての功績や伝説から集めた信仰により、
人間霊から精霊の粋にまで昇華された英霊を"英霊の座"より呼びだそうとしているのだ。

川 -) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
     聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

聖杯の強大なサポートを得ながら化物は英霊を現界させるべく、
己の体内から練り上げた魔力を魔方陣へ与え続けていく。

色香を漂わせる口から紡がれる呪文に応え、
英霊召喚の予兆はより一層激しくなり、風は暴風へ変化し、
稲光も強烈さを増して莫大な熱を撒き散らす。

川 -) 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
     我は常世総ての悪を敷く者」

この場を包むのはもはや闇では無く、青と赤の閃光だ。
測り知れぬエネルギーが部屋を満たしていき、それは最高潮へと達する。


91 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:41:36 ID:nqepu3F.0

川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
     汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―――」

そして召喚されるサーヴァントの理性を奪うかわりにステータスを上げる、
"狂化"の一文を付け加えると、

川 -) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」

川 -) 「天秤の守り手よ―――」

これまで込められ続けてきた魔力が堰を切った濁流の如く流れて行き、
その奔流がひときわ鮮烈な光を放つと人影が現われた。

あまりにも刺激の強すぎる閃光に多くの者は目を覆ったが、

川 -) 「……」

マスターである、この美しき化物だけは真っ直ぐに人影を見据えた。

以#。益゚以 「……」

光が散っていき、その姿が露わとなると、
ローブの男女は息を飲み、次いで歓喜した。

   「成功だ! 流石は"吸血鬼"と言ったところか。
    これで我が一族の大望をやっと果たせる」


92 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:42:33 ID:nqepu3F.0

川 -) 「……」

   「すっげぇ! これがサーヴァントかよぉ!!
    さっそく暴れさせようぜ! こいつならやれるよ!!」

以#。益゚以 「……」

しかし、彼らとは対照的にサーヴァントとそのマスターは、
不気味なまでに沈黙していた。

   「まぁ、待たんか。まずは情報の収集じゃ。
    ただ暴れさせるだけでは勝てるものも勝てん」

互いを見やる二人をよそにローブの男女は作戦を立てていくが、

   「そうね、じゃあ"クー"。バー―――」

川 ∀) 「……」

"クー"という化物の笑みが全てを壊した。

    「――――――――ッ!」

ローブの男の胴から上が、突如として振るわれた片刃剣に消し飛ばされたのだ。
彼らは息を飲み込み、剣の持ち主であるバーサーカーは、
闇と狂気に染まった黒刃を再び振りかざしていき、

    「―――――――――」

断末魔を上げる間も無くまた一人がその餌食となった。


93 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:43:27 ID:nqepu3F.0

    「どういうことだ!? 早く化物を鎮めろ!!」

生き残った二人の男女の内、まだ若い男がそう叫ぶと、
呆気にとられていた女は慌てて"化物"へと魔術を行使する。

    「嘘……暴走!? 催眠が効いていないっていうの!?
     そんな、意思なんて欠片くらいしか――――」

しかし、女の言葉は途中で途切れてしまう。
男が、バーサーカーに殴り飛ばされて壁に激突すると、
全身の骨を肉ごと粉砕されてしまったのだ。

息を飲み、潰れたトマトみたいになった男を看取った彼女は、

川 ∀) 「……」

振り返ると、口の端を釣り上げて禍々しい笑みを作ったクーに目を奪われた。
彼女がローブの女へと飛びかかったのだ。
押し倒され、馬乗りになったクーへ女は手をかざし、生き延びる為に魔術を行使した。

   「ひぃ……っ!」

これまでにない程の集中力だった。
まるですがるかのようにクーにかかった催眠を強めるが、
常人であれば廃人になりかねない強制力もクーには何の変化ももたらさない。


94 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:44:16 ID:nqepu3F.0

川 ∀) 「シネ……シネェ!!」

無駄だというのに魔術を使い続ける女の首を、クーは両手で締めあげた。
嗚咽を漏らし、口から唾液をしたたらせて悶える女を心底面白そうに見つめるクー。

舌舐めずりをしてから、クーは女の首筋に大口を開けて食らいついた。

   「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

肺が張り裂けんばかりの悲鳴を女が上げるが、
首に穴があいてしまった為にやがてそれはただの酸素となって漏れ出し、
息の根と共に止まっていった。

租借の度に女体が震え、淫猥な響きをもって血肉を散らしていく。
今のクーの胸にあるものは喜びだ。
空腹が満たされる食欲から与えられる幸福感を味わっていた。

人のそれと変わりない食欲を、クーは女の命を貪ることで満たす。

川 ゚∀゚) 「アッハッハッハッハッハ! マズイィ! マズイナァ!!」

骨の髄から血の一滴に至るまで貪り尽くしたクーは、
残った死体に唾を吐き捨てるとバーサーカーを一瞥した。

以#。益゚以 「……」


95 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:10 ID:nqepu3F.0

川 ゚ -゚) 「オマエモハラガヘッテイルダロウ、バーサーカー?」

声帯が人間の構造と違うのか、壊れているのか、
それとも精神の狂いのせいなのか、クーの声はどこか歪だ。

以#。益゚以 「……」

バーサーカーは沈黙を守っていた。
彼には狂化が施されている為、理性は残っていない。
マスター以外の存在を全て粉砕するだけの暴力の塊。

それが、今回の聖杯戦争で召喚されたバーサーカーというサーヴァントだった。

川 ゚ -゚) 「イクゾ、バーサーカー。ショクジヲシニイコウ」

以#。益゚以 「――――――――――――――ッ!!」

クーの言葉を命令と受け取ったのか、
バーサーカーは雄叫びを上げると剣を一度振るい、
天井をぶち破ってこの場を包む闇を晴らしていった。

天井に出来た穴からは夜空が覗けた。

そこから差し込む美しい月光がスポットライトのようにクーを照らしていき、
木々に覆われた景色を魅せていく。

どうやら、ここは山中に作られた地下施設のようであった。


96 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:58 ID:nqepu3F.0

跪いたバーサーカーはクーを肩に乗せると再び咆哮し、
外へと向かって飛び出していく。

川 ゚ -゚) 「ツギハオイシイモノヲタベヨウ。キットタノシイゾ、バーサーカー」

狂化のステータス向上の恩恵を受け、膨れ上がった筋肉に覆われた巨体を、
闇に染めたサーヴァントへとそう語りかけるクーに、

以#。益゚以 「―――――――――ッ!!」

応えるかのようにバーサーカーは獣じみた雄叫びを上げた。
そして彼は、空中から何者かを発見するともう一度叫ぶ。

|/▼)

応答ではなく、己の敵を発見した歓喜の咆哮を上げるバーサーカーは、
地に着地してクーを肩から降ろすと、その者へと向けて一目散に駆けだしていった。

川 ゚∀゚) 「ヌケガケナンテズルイゾ、バーサーカー」

その背を狂った笑みを浮かべて見送るクーは、ゆっくりと同じ方向へと歩き出す。


97 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:46:42 ID:nqepu3F.0

******

木々を震わす獰猛な叫びと連続して響き渡る破壊の音。
サーヴァントを召喚して間もなく、穏田ドクオ達は異変を感じていた。

('A`) 「こいつは……」

目,`゚Д゚目 「敵のサーヴァントに違いあるまい」

山道の外れにある広いスペース。
雪の敷き積もったその中心には土が露わとなった円形の部分があり、
そここそがドクオのサーヴァント"ランサー"が召喚された場である。

不自然に雪が融け上がって出来たクレーターに立つランサーは、
漆黒に塗られた当世具足と呼ばれる軽装の鎧を装備し、
肩には黄金で出来た数珠をぶら下げており、武者然としていた。

鹿の角を模した装飾のある兜をかぶった顔は、
敵の存在にさして脅威を感じていないのか威風堂々である。

同じくらいの目線に立つドクオを威厳に満ちた瞳で見据えたランサーは、

目,`゚Д゚目 「我が主よ、下知を。我が槍にて敵の首級を上げてみせようぞ」

そう指示を乞う。
冷静な声とは裏腹に、胸中では早速現われた敵との戦に燃えている様子だ。


98 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:49:40 ID:nqepu3F.0

('A`) 「いや、霊体化していろ。ランサー」

しかし、ドクオはそれを制する。
ランサーは少々面食らったようで抗議した。

目,`゚Д゚目 「むう、何故で御座るか? 拙者の力量を信用出来ぬとでも?」

('A`) 「違う、お前の強さは分かっている。敵の情報を探りたいだけだ。
    相手がどんなサーヴァントか、どんなマスターかもわからないんだぞ?」

目,`゚Д゚目 「しかし、それは相手も同じことであろう。
       兵は神速を尊ぶという。先手を制すれば優位であることに変わりない」

('A`) 「孫子か? 敵を知り、己を知れば百戦危うからずとも言うぞ。
    先手を制しても、仕留め切れなきゃ意味がねぇ」

目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孫子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」

('∀`) 「フフ……まぁ、そんなとこかな? 」

目;`゚Д゚目 「なんと! いやこれは失礼致した!」

('A`) 「いや、いい。今回は情報収集に専念だ。
    可能であるならば敵の排除を行う」


99 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:52:31 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「承知! では霊体化し偵察へ……」

('A`) 「行かなくて良い。偵察ならこいつらでやる」

親指を背後へ向けてドクオが言うと、ランサーはそちらへ振り返る。
視線を向けた先には、

('、`*川
  _
( ゚∀゚)

(゚、゚トソン

( ^Д^)

( ´∀`)

( ><)
 _、_
( ,_ノ` )

7人の仲間―――PMCインビジブルワンの傭兵達が武装しており、
あらゆる場所で一定の偽装効果を持つ、デシタルカモフラージュを施した迷彩服を着こんでいた。
手にはそれぞれ短機関銃や対物狙撃銃が構えられ、戦闘の準備は万端である。


100 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:53:48 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「これが貴殿の臣下で御座るか?」

('A`) 「まぁ、そんなとこか……」

('、`*川 「違うでしょ、ボス。私達は同志でしょうが」

( ´∀`) 「いや、ドクオの会社の社員である手前、
        そう言っても変わりないんじゃないかモナ?」
  _
( ゚∀゚) 「ボスがトノサマ? チョンマゲ似合わねーんじゃね?」

(゚ー゚トソン 「ぷっ、言えてますね、それ」
 _、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、軽口叩くな。ボス、今使い魔に敵を追跡させている。
      アンタがサーヴァントと話している間に放っておいた。映像を見てくれ」

渋澤が談笑し始めた彼らを制すと、ドクオに小型のノートパソコンを渡した。
画面には使い魔に取りつけたCCDカメラから送られる映像が流れていて、
複数のブラウザが立ち上がっていることから、駆り出された使い魔が一匹だけではないことがわかる。

('A`) 「おっ、気が効くな。仕事が早い」

('、`*川 「こっちでの潜伏生活が始まってから、非常時に備えてすぐ偵察出来るように、
      色んなところに仕掛けておいたのよーボスー」

('A`) 「お前達にも魔術を教えておいて良かったな、助かる」

言いながらも画面に目を走らせたドクオは、白いローブのサーヴァントと、
黒く禍々しい鎧を着こんだサーヴァントとの戦闘を眺めていく。
場所は、恐らくはこちらとは反対側の森の中だ。


101 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:54:30 ID:nqepu3F.0

('A`) (粉塵で見えんが……黒いのは恐らくバーサーカー。
    さっきの叫びもこいつのものだろう……が、こいつはなんだ?)

彼が疑問に思ったのは白いサーヴァントだった。
純白のローブで身を覆い、フードに隠れて顔は見えず、
軽装な防具を装備して両刃の大剣を構えてはいるがセイバーには思えない。

ならば、俊敏な身のこなしや短剣を投擲して戦う姿からアーチャーの可能性もあるが、
宝具を使用せずに戦闘しているライダーかもしれない。

いずれにせよ、既に召喚されているランサーとバーサーカー以外のクラスには間違いないが、
どのクラスであるか断じるには情報が少なすぎた。

電子機器越しにはサーヴァントのステータスが見られないことが悔やまれる。

('A`) (……今はこいつらよりも)

ドクオは別の窓へ目を移していく。
サーヴァント達の戦闘よりも重要な映像を見つけたのだ。

【 (*;゚ー゚) 】

白いダウンジャケットを着た薄ピンクのニット帽の女性だ。
帽子からはみ出した栗色の髪や雪のような肌から白人であることは明白である。
そして、右の手に宿る令呪を目敏く見逃さなかった。


102 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:55:37 ID:nqepu3F.0

('A`) 「こいつがマスターだな」

その言葉にインビジブルワンの傭兵達は目をギラつかせると、
己の標的を見定めて"部隊長"であるドクオに指示を乞う。
 _、_
( ,_ノ` ) 「ボス、指示を」

('A`) 「恐らくはこいつが白いやつのマスターだ。
    バーサーカーに襲われ逃走中、ってとこだろうな。
    バーサーカーのマスターが見えないのが気にかかるが、マスターには違いない」

('A`) 「このマスターの位置と動きから察するに、
    西から下山してそのまま10丁目方面に逃げ込むつもりだな。
    俺とジョルジュが追跡する。お前達は――――――――」

ドクオは情報をまとめ、仲間達へと指示を下していった。

目,`゚Д゚目 「どれ、我が主の手並みを拝見させて頂くかのう……」


103 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:56:26 ID:nqepu3F.0

******

(*;゚ー゚) 「はぁ……はぁ……っ」

シィは走っていた。

アサシンにその場を任せて逃走し、既に10分ほどが経過している。
その間一切速度を落とさずに全力で走り続けることで、
剣を交える金属音は途絶えたが、未だに木々を破壊する爆音は耳に届く。

(*;゚ー゚) (アサシンは大丈夫なのかしら)

森を抜け、市街に面した場所に到達したシィは、
ようやくサーヴァントの身を案じる余裕が生まれた。

背後を振りかえり山を見渡すと、土煙が立っているのが目立ち、
それは一般人には微かな変化にしか思われないだろうが、
彼女にはそこでサーヴァント同士の剣劇が繰り広げられていることが分かる。

(*;゚ー゚) 「アサシン、早く戻ってきて」

アサシンは充分に時間稼ぎの役割を果たした。
後は撤退し、シィの元に戻るのみだ。

サーヴァントを召喚した以上戦いの権利を放棄しない限り、
シィは狙われ続けることになる。

バーサーカーから逃げおおせたと言ってもアサシンが彼女の傍にいない以上、
残る5人のマスターに狙われた場合成す術も無く殺されてしまうだろう。
そんな状況で夜の街を歩くのは、シィには危険極まりない行為であった。


104 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:57:24 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) (とりあえず、どこかに隠れていなきゃ)

そう思ったシィは止めていた足を動かし、ひとまずどこかに隠れることにした。
魔術を使っているところを一般人に見られるのは、魔術師にとって禁忌である。
もっとも"証拠"さえ残さなければ問題はないのだが、人混みとあってはそうもいかない。

だからシィは、深夜でも人の多い場所を探して歩き続けた。
ビルの林立する10丁目通りを歩き続け、アスファルトに積もった雪に足跡を刻むシィ。

彼女は交差点に迫るとまだ灯りのつく場所を見つけた。

ほとんどの店はシャッターを降ろしていたが、
まだコンビニや一部のファーストフード店は開いている。

(*゚ー゚) 「そういえば!」

シィはここまでやって来る時、左側に曲がった先に、
コンビニがあったことを思い出すとスピードを上げた。

口からは荒い息が漏れ、心臓はもはや限界を迎え早鐘を打っていたが、
生き残る為に全力で走り続けた。
コンビニへ逃れようとする彼女はもはや縋りつく思いだ。

(*;゚ー゚) (人前じゃ、他のマスターも下手なことはしないでしょう)

交差点に差し掛かり、シィが後少しだと思った途端、胸の内に安堵が生まれた。
自分はサーヴァント同士の戦いに、生き残ったのだ。
これでかつての恋人と、ギコと合流できれば、聖杯を手にするのも夢ではない。


105 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:58:18 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「大丈夫、私はまだ戦える……これからも」

確かな自信を手にしたシィは笑みを作り出そうとすると、

(*゚ー゚) 「え……?」

音が響いた。
生々しい音だ。

衝撃が左肘から右半身へ響いていくと、次に強烈な熱量を左腕に感じる。

(*゚ー゚) 「なに……?」

走ることで生まれた熱ではない。
熱源へ目を配らせるが、彼女は事実を否定したくなった。

(*;゚ー゚) 「なん……なのよ……これ?」

灼熱を感じる左肘から先が地面に転げ落ちていたのだ。
血液がだくだくと流れ出る真っ赤なそこからは白い骨が飛び出していて、
それを目にしたシィは反射的に絶叫を上げそうになるが、

('A`) 「……」

濃緑色のモッズパーカーを羽織ったドクオに顔面を殴りつけられ、
口まで出かかっていた声は掻き消されてしまった。

自分の腕から噴出した血によって出来た水溜りに倒れ、
シィの白いダウンは赤黒く汚れていく。
血に塗れた彼女の傍らには、吹き飛ばされた己の腕がぽつりと並んでいる。


106 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:04:03 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「な……に……?」

('A`) 『狙撃は成功だ。これより移植を行う。周囲の警戒を怠るな』

シィは未だに事態が飲み込めていない様子だ。
だが、インカムを装着したドクオは彼女と打って変わり、
冷静に状況を仲間へ報告し、進めていく。
  _
( ゚∀゚) 「ボス、本当にそんなこと出来るのか?」

反対側、交差点から回り込んできたジョルジュがドクオに尋ね、
その間にも彼は雪の上に転がった令呪の宿るシィの左手を掴むと、

('A`) 「出来るさ、霊媒治療術は心得ている」

(*;´ー゚ナ) 「うっ……!」

身動きを取れぬよう彼女の身体を蹴りあげ、
踏みつけながらも魔術を練り上げて呪文を唱え出す。

シィはその様をただ眺めていることしか出来なかった。
ドクオの魔術によって、奪われてしまった自分の左手に宿る令呪が輝きだし、
  _
(;゚∀゚) 「……つッ!」

痛みと共にジョルジュの右手へと移植されていった。
今や、シィに宿っていた令呪は彼の手の甲で赤々と輝いている。


107 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:05:53 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「あっ……あぁ……」

言い知れぬ喪失感にシィは苛まれた。
サーヴァントも、聖杯も、ギコの力になるという想いも、
全て姑息な手で奪い取られてしまったのだ。

('A`) 「ジョルジュ、命じろ。令呪を使って、あの白いサーヴァントに」
  _
(;゚∀゚) 「……どうすればいいんだ?」

('A`) 「簡単だ。『マスターの変更を認め、前マスターを殺害せよ』と、
    令呪を意識して念じればいい。急げ、マスターの危機をサーヴァントは察知してくるぞ」
  _
(;゚∀゚) 「あいよ……」

言われた通り、ジョルジュは令呪の宿る手を抑えつけ、集中していく。
ドクオはシィの動きとサーヴァントの襲来に備え、警戒しながら彼を一瞥する。
  _
(;-∀-) 「令呪を以って命ずる……マスターの変更を認め、前マスターを殺害しろ……」

ジョルジュの言葉と共に令呪は一際大きな光を放ち、一画が失われた。
そして、残り二画となった令呪の前に――――

|/▼) 「……」

稲妻が生じたかと思ったその瞬間、サーヴァントが現われた。


108 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:06:49 ID:nqepu3F.0

('A`) 「ふん、アサシンだったか……」

マスターだけが持つサーヴァントのステータスを見る眼で、
疑問だった彼のクラスをドクオは確認した。
しかし、興味の無いような声で呼ばれたアサシンのサーヴァントは、

|/▼) 「……」

(*;´ー゚ナ) 「ひっ……あ、アサシン……嘘よね?」

淡々とシィの元へ近づいていき、ドクオは離れていく。
フードに隠れた顔を拝んだ彼は笑みを浮かべ、
アサシンは感情を窺わせぬ冷たい眼でシィを見た。

|/▼) 「……すまん、シィ」

(*´ー;ナ) 「いや……いやよ!」

横たわった彼女は涙を流し、必死に訴えかけた。
それでも、アサシンは令呪で命じられた通りに行動するしかなく、
その場で跪くとシィの首を掴んだ。

(*´ー;ナ) 「―――――」

何が起きたのか、掴まれた首には短刀の刃が突き立っており、
それはアサシンの右手の籠手から伸びていた。
引き離された白刃は血に塗れ――――


109 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:07:42 ID:nqepu3F.0

(* ーナ)

シィの命はその短刀によって奪われてしまった。
アサシンは首から離した手でシィの開きっぱなしの瞼を閉じてやり、

|/▼) 「眠れ、安らかに……」

亡骸へそう言葉をかけた。

その言葉は万人に等しく訪れる、死出の旅立ちが安らかであることを祈るものだ。
生前にアサシンが多くの暗殺対象へ向けて放った言葉でもある。

('A`) 「よくやったジョルジュ、アサシン。作戦は終了だ」

ドクオは仲間達へそう呼び掛けると、二人は速やかにその場を離れていく。

その迅速さは彼らが戦闘のプロフェッショナルであることの証明に他ならない。
死体や現場の後片付けは、聖堂協会と魔術協会の仕事だ。
死体一つ片付けることくらい、彼らにとっては造作もない。

ドクオがどのような汚いやり口でマスターを殺害しても、
聖杯戦争で生じた戦闘の後始末をするのは両教会の仕事であり、彼は利用しているのだ。
  _
( ゚∀゚) 「了解」

|/▼) 「……」

新たなマスターにジョルジュを迎えたアサシンは何も語らず、
実体を失って霊体へと変化していった。



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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第7話 

118 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:45:57 ID:Ww94jgIc0
【流石兄弟アジト】

( ´_ゝ`) さっき運転席に座っていたあの女

(´<_` ) 下着の持ち主だな

( ´_ゝ`) 果たしてあいつは自分がパンツを履いていないことに気づいていたのだろうか

(´<_` ) ……どうでもよくないか?

( ´_ゝ`) いや、重要なことだ。想像してみろ

( ´_ゝ`) もし気づいていないとしたらこうなる

( ´_ゝ`) あの女は自分の不注意で「英雄の骨」を奪われ怒りに燃えている

( ´_ゝ`) あの様子じゃ俺達を殺してでも取り戻そうとしているに違いない

( ´_ゝ`) 俺達に敵意をむき出しにして追ってくる女

( ´_ゝ`) ただしその女は自分がパンツを履いていないことに気づいていない

( ´_ゝ`) 一見なんでもないように見えて実はパンツを履いていない

( ´_ゝ`) 俺達が直接それを見ることはできないが、確かにパンツは履いていない

( ´_ゝ`) ……なんか、いいだろ?

(´<_` ) 天才か、兄者


119 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:46:37 ID:Ww94jgIc0
( ´_ゝ`) しかし、この骨は何に使うんだろうな?

(´<_` ) さあ、俺等はただ頼まれただけだからなぁ

( ´_ゝ`) まあ金さえくれりゃあ別に問題はないんだが、気になるよなぁ

(´<_` ) やめとけ兄者、変なことに首を突っ込んでも碌なことがない

( ´_ゝ`) そんなもんか

(´<_` ) そんなもんだ

( ´_ゝ`) だけどな弟者、俺は嫌な予感がするんだ

彡( ´_ゝ なんか取り返しのつかないことになりそうな、全部がダメになりそうな

(    )クルッ このまま放っておくと最悪の事態を迎えることになるような、そんな予感だ

(    ) 死ぬのは別にいいんだ。いや、死にたいってわけじゃないがこういう仕事してるからには覚悟してる

(    ) だが、命よりもっと大事なものが失われてしまうんじゃないかって思うんだ

(    ) それだけを俺は恐れている

(    ) まあ根拠はないんだけどな

(    ) どう思うよ弟者?


120 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:47:20 ID:Ww94jgIc0
…………

(    ) おい弟者、返事しろ

…………

( ´_ゝ彡 ……弟者?

( <_ ill)

(;´_ゝ`) 弟者!どうした!?

(;´_ゝ`) ……脈はある。気を失っただけか

(;´_ゝ`) 首に絞められたような痕……一体誰が……って

从 ゚∀从

( ´_ゝ`) お前しかいないよな

从 ゚∀从 よう、久しぶり

( ´_ゝ`) どうしてこの場所がわかったんだ?

从 ゚∀从 そいつは企業秘密、ってやつだな


121 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:48:09 ID:Ww94jgIc0
从 ゚∀从 ほら、さっさと返せ。今なら半殺しで許してやるぞ

( ´_ゝ`) ……!ピコーン

( ´_ゝ`) ……返すって、何を?

从#゚∀从 あ?「英雄の骨」に決まってんだろ、舐めてんのか?

( ´_ゝ`) ……

( ´_ゝ`) ……

(*´_ゝ`) そうかそうか、骨だよな骨!確かにそうだ!

从;゚∀从 っそうだよ!わかったら大人しく返しやがれ!

( ´_ゝ`) いや、そういうわけにも行かんのだよなぁ。こっちも仕事だし

从#゚∀从 へぇ、抵抗しようってのかい面白ぇ

从#゚∀从 コソ泥が俺に勝てると思ってんのか!?

( ´_ゝ`) ふん、流石兄弟の戦闘担当、流石兄者の力を思い知れ

从#゚∀从 死んでも恨むんじゃねぇぞ!


122 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:48:53 ID:Ww94jgIc0
死んでも恨むな、とは言ったが実際に殺してしまうのはマズイ
大怪盗といえど所詮は窃盗犯。殺してしまうとそれっぽい名前の団体から非難を受けるらしい
政府の犬として働くとその辺りにも気を使わないといけないのだとか。全く、煩わしい

从#゚∀从 オラァッ!

( ´_ゝ`) なんだ優しいじゃないか、素手で向かってきてくれるだなんて

( ´_ゝ`) インファイトなら俺も得意だぞ

そう言った瞬間、目の前から奴の姿が消えた
瞬間移動で遠くに逃げた、というわけでもないのだろう。こういう場合は大方……

从#゚∀从 後ろか!?バッ

从;゚∀从 ……いない?

( ´_ゝ`) 上だよ

从;゚∀从 なっ……

声の方向に目を向けると、奴が右足を真っ直ぐに振り下ろして来るのが見えた
……空中踵落し。そんなもん格ゲーでしか見たことねぇぞ

从;゚∀从 くっ……!バッ

( ´_ゝ`) 両手を出してガードか、まあそうだろうな

( ´_ゝ`) 無駄だけど


123 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:49:36 ID:Ww94jgIc0
接触の瞬間痛みを感じなかったのは、両腕の神経がまだ繋がっていなかったからだろうか
……それとも、あまりの衝撃で俺の両腕が再び千切れ飛んでしまったからだろうか

从; ∀从 

(;´_ゝ`) ……えっ?あの、ごめんそこまでするつもりはなかったんだけども

俺の能力でそれっぽく見せてはいるが、もともと糸で繋がれただけの手足だ。大したダメージはない
問題はそこではなく、こいつの常識離れした蹴りの威力
もし腕が早々に千切れていなければ、被害はもっと大きかったに違いない
手足が完治する前にこいつと戦えたのは、運が良かったといえるだろう

从 -∀从 ふぅ

从 ゚∀从 安心しな、この両手はもともと千切れてたもんだ。気にしなくていい

(;´_ゝ`) 腕落とされて気にしなくていいって、お前なんでそんな寛容なの?

从 ゚∀从 続き行くぞ。腕は……このままでいいか

戦闘には支障はない。むしろこっちのほうが都合がいいくらいだ
帰ってからもっかい付け直せばいいさ

( ´_ゝ`) うわなにそれこわい。なんで腕浮いてんの

从 ゚∀从 知りたきゃ教えてやるよ、俺の能r( ´_ゝ`) あ、念動力か

从 ゚∀从 ……ああ

125 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:50:50 ID:Ww94jgIc0
( ´_ゝ`) そんじゃあこっちも教えてやろうかなー

从 ゚∀从 いらねぇよ

どうせ身体強化かなんかだろ。両腕を操り3方向から一斉に襲い掛かる

( ´_ゝ`) まあそう言うなって、俺の能力h

从#゚∀从 オラァッ!

( ´_ゝ`) うおっあぶね ヒョイッ

( ´_ゝ`) いやだから聞いてくれよ、俺の能r

从#゚∀从 まだまだっ!

( ´_ゝ`) 俺n ヒョイッ

从#゚∀从 ちょこまか避けてんじゃねーぞ!

( ´_ゝ`) おr ヒョイッ

从#゚∀从 死ね!

( ´_ゝ`) 何なのこの子全然話聞いてくれない


126 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:51:45 ID:Ww94jgIc0
( ´_ゝ`) ほいっ

从;゚∀从 えっ



気の抜けた掛け声とともに男は飛び上がり、重力法則を無視するような速度で俺の背後に着地した
空中で加速?こいつも念動力者なのか?

( ´_ゝ`) 話を聞かないからこうなるんだよ

声が聞こえて急いで振り返る俺。しかし、振り返ったとき奴の姿はそこには無く

从;゚∀从 どこだテメェ!

( ´_ゝ`) どどんまい☆

从; ∀从 グェッ……

再び背後から声が聞こえてきたその瞬間、奴の拳が俺の脇腹に突き刺さった
人体が浮き上がる威力のフック。体内に乾いた音が響く。肋骨がやられたのだろう


127 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:52:39 ID:Ww94jgIc0
( ´_ゝ`) 俺の能力は弧の動きの強化

( ´_ゝ`) 弧を描く軌道で動くもの全てがその対象になる

( ´_ゝ`) 車は誰にも追いつけないコーナリングスピードを出すし、投げ上げられた物体は空中で加速する

( ´_ゝ`) まあ、実際には投げられた物体は放物線を描くから弧とは多少違った動きをする

( ´_ゝ`) 完全な弧の軌道じゃないから多少威力は落ちるが、ご覧の通り実用には十分ってわけだ

( ´_ゝ`) ちなみにさっきの蹴りと今のフックは我ながら綺麗な弧になったと自負しているぞ

(*´_ゝ`) 超高速で繰り出される幻想的な弧の動き、名付けて

(;´_ゝ`) ……って、聞いてる?

从;ill∀从 …………

(;´_ゝ`) あの、出来たら諦めて帰って欲しいんだけど。そういう趣味ないし

(;´_ゝ`) 弟者は怒るだろうけど俺が何とかするから今のうちに「俺がどうかしたか兄者」

(;´_ゝ`) 弟者、目が覚めたのか?

(´<_` ) うん、いい夢見たわ


128 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:53:28 ID:Ww94jgIc0
――最悪だ
二対一の状況になってしまったこともそうだが、それ以上に悪いこと
ついさっきまで俺は床の上に倒れていたはずなのに、いつの間にか椅子に座った状態で縛り付けられていた
何が起こってんだ?

(´<_` ) 流石兄弟、盗み担当の弟者だ。よろしく

从ill゚∀从 ……ああ、よろしく

(;´_ゝ`) おい弟者、あんまり手荒な真似は

(´<_` ) 別にそんなつもりはないよ。いい思いさせてもらったし

( ´_ゝ`) そうか、それならよかった

(´<_` ) 能力わからないからとりあえず縛り付けたけど、これで大丈夫なのか?

( ´_ゝ`) いや、そいつは千切れた腕飛ばして攻撃してきたからそっちも縛っとこう

(´<_` ) なにそれグロいの苦手なんだけど

( ´_ゝ`) 男の子なんだから我慢しなさい……よし、これで大丈夫だ

(´<_` ) よし、それじゃあまずはあんたの名前を聞こうか

从 ゚∀从 ……ハインリッヒ高岡


129 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 22:54:31 ID:Ww94jgIc0
(´<_` ) オーケーオーケー

(´<_` ) それじゃあハインリッヒ高岡、あんたにはいくつか聞きたいことがある

(´<_` ) まず……







(´<_` ) 「あめぞう」って知ってるか?


131 :名も無きAAのようです:2012/04/12(木) 23:02:06 ID:Ww94jgIc0
おまけ ヒール図鑑その2

( ´_ゝ`)

「大怪盗」流石兄者

狙った獲物は逃がさない「大怪盗」流石兄弟の兄の方
能力は弧の動きの強化。能力名は「スピーディー・ワンダー」
洋楽が好きらしい
頑張って考えた能力名をハインに聞いてもらえなくてちょっとがっかりしている



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从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第6話 

99 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 01:59:27 ID:l2YspRjg0
「カーテン」と呼ばれる水のゲートをくぐればそこはもう夢の国
首都ヴィップにある「VIP水族館」は、年間の観客動員数が2000万人を超える国内最大のアミューズメント施設だ
「水族館」と銘打ってあるがその他にも巨大プール、遊園地、劇場など様々な施設がその敷地内には存在する
今回用があるのはその中の一つである「カコログ博物館」

从 ゚∀从 で、これがその「英雄の骨」ってやつか

(`・ω・´) はい。かの「英雄」ヒロユキの骨といわれている物です

俺と博物館の館長(この気合の入った顔のおっさん)の間には、ヒロユキの物である(とされる)頭骸骨が置かれている

(`・ω・´) ヒロユキは死の間際、彼亡き後の国を案じて近しいものに遺言を残しました

(`・ω・´) 彼の死後、その遺骸は遺言通り防腐処理を施され、国家繁栄のシンボルとして祀られました

(`・ω・´) 死してなお国を見守り続ける彼の姿はすべての国民に勇気と希望を与えました

(`・ω・´) しかし残念なことにその遺骸は一度歴史からその姿を消します

(`・ω・´) 200年前に起こった内乱。当時の人口の2/3を失うこととなった「暗い1年」

(`・ω・´) その混乱の中で遺骸は行方不明となってしまいました

从 ゚∀从 で、つい最近その遺骸と思われるものが発見され、今俺達の目の前にあるって話だろ

(`・ω・´) はい。焼け落ちた協会の中からこの頭蓋骨のみが発見され、DNA鑑定の結果……という話です

从 ゚∀从 しかし、こんなものを盗んで何がしたいんだろうねぇ

(`・ω・´) さぁ……

101 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:00:45 ID:l2YspRjg0
俺が前回の任務から帰還する直前に、VIP水族館から警察に通報があったらしい
なんでも「近いうちに英雄の骨を盗みに行くんでよろしく」という文面の犯行予告が届いたとか
これだけならただのイタズラで済まされるのだが、問題はそこに書いてあった名前
送り主は流石兄弟。その筋の人間なら知らぬ者などいない大怪盗だ
真昼間の銀行から現金を盗み出したとか、ステージの上のアイドルの下着がいつの間にか消えていたとか
一度予告をしたら絶対に成し遂げるとんでもない奴らだ
もちろん警察も全力で奴らを追っているが、未だにその足取りを掴めてはいない
まあとにかくこれは一大事ということで、急遽俺が護衛として派遣されたらしい

从 ゚∀从 傷が治り次第、とか言っておきながら休ませる気なんてさらさらないってわけだ

四肢欠損の大怪我の治療に要した時間は丸二日
手術時間じゃねぇぞ?ドクオを連れ帰った二日後にはもう病院のベッドから追い出されたって意味だ
神経だってまだ繋がってねーから能力でそれっぽく動かしてる状態だ。ブラックってレベルじゃねぇぞ
ちなみにドクオはまだベッドの上で唸ってる。結局何なんだよお前の能力は

(`・ω・´) まあ安心してください。このカコログ博物館は最新鋭のセキュリティシステムによって守られています

(`・ω・´) 死角の無いように設置された監視カメラ、どのような微細な動きも見逃さない警報装置

(`・ω・´) そして何より超一流のガードマン達が不審者の侵入を許しません

(`・ω・´) それに警察の方々も協力してくれている。何を恐れることがありましょうか

从 ゚∀从 ……ふーん


102 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:02:04 ID:l2YspRjg0
(`・ω・´) しかし、本当に来るのでしょうか

从 ゚∀从 ん?

(`・ω・´) 流石兄弟の名を騙ったイタズラだとは考えられませんか?

从 ゚∀从 ……まあ、その可能性も無くはないな

从 ゚∀从 あいつらが狙うのは主に金目の物、または有名な女優の私物

从 ゚∀从 野郎の頭蓋骨なんて盗むとは考え難い

(`・ω・´) でしょう?

从 ゚∀从 だが、奴らについてはまだわからないことが多すぎる。用心に越したことはないだろう

(`・ω・´) ……そうですね

(`・ω・´) それでは、出しっぱなしにしておくのも無用心ですし今のうちに金庫にしまっちゃいm……

从 ゚∀从 おう、そうだn……



……あれ、骸骨どこ行った?


103 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:02:47 ID:l2YspRjg0
ついさっきまで目の前にあったはずの骸骨がなくなっている
……盗まれた!どんな手を使ったかわからないが、こんなことができるのは流石兄弟以外にいない

(;`・ω・´) と、とにかくモニター室と連絡を!

そう言って館長はポケットから無線機を取り出した

(モブ▼-▼) 『はい、こちらモニター室』

(;`・ω・´) 『私だ、「英雄の骨」が盗まれた!』

(モブ;▼-▼) 『なんですって!?』

(;`・ω・´) 『監視カメラに不審な人物は!?』

(モブ;▼-▼) 『確認できませんでした!センサーも反応はありません!』

(;`・ω・´) 『馬鹿な……』

(モブ;▼-▼) 『……あっ!たった今一台のスポーツカーが猛スピードで「カーテン」を通過しました!』

从;゚∀从 それだ!追うぞ!


104 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:03:55 ID:l2YspRjg0
(*´_ゝ`)b 流石だよな、俺等 d(´<_`*)

(*´_ゝ`) いやーこんなにうまく行くとは思わなかった!

(´<_`*) あいつら骸骨出しっぱなしで世間話してたぞwww超マヌケwwwww

(*´_ゝ`) マジかよwwwアホスwwwwwww

(´<_`*)ノ▼ あとこれ見ろwwwこれwwwww

(*´_ゝ`) ん?なんだそれwww

(´<_`*) 盗みに入ったら女いたからwwwww下着も盗んできたwwwwwwww

( ´_ゝ`)

(´<_` ) 

( ´_ゝ`) ……

(´<_` ) ……

(*´_ゝ`) やるじゃんwwwwwwwwwwww

(´<_`*) ヒョーーーーウwwwwwwwwwwwwwww


105 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:04:44 ID:l2YspRjg0
ウーウーウーウー

( ´_ゝ`) お、この音は

(´<_` ) サイレンだな、追ってきたみたいだ

[スピーカー]<マチヤガレテメェラァァァァァァ!!

( ´_ゝ`) 追いつかれてきてるな

(´<_` ) うむ、予想以上に速い

( ´_ゝ`) やばくね?

(´<_` ) いや、大丈夫だろ、この先大きなカーブが続くし

( ´_ゝ`) ああ、なるほど

( ´_ゝ`) 俺の出番ってわけだ

(´<_` ) そういうことだ


106 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:06:23 ID:l2YspRjg0
从;゚∀从 なっ……

モニター室からの報告を受け急いでパトカーに乗り込んだ俺は、エンジン全開で流石兄弟を追った
ニューソク警察のパトカーは特別製。スポーツカーなんか相手にならないレベルのモンスターマシンだ
奴らの車との距離は徐々に縮まり、もうすぐ手が届く……はずだった
俺達がカーチェイスを繰り広げているこの道路には大きなカーブがいくつもあるのだが……
そのカーブの一つに入った途端、奴らの車が一気に加速した



(´<_` ) 流石だな、兄者

( ´_ゝ`) カーブで俺に勝とうなんて100万光年早い……ところで弟者、パトカーの運転席に女がいたが

(´<_` ) 察しがいいな兄者、下着の持ち主はあの女だ

( ´_ゝ`) 2万で買おう

(´<_` ) それは無理だ、もう俺が穿いてる

( ´_ゝ`) ……

(´<_` ) ……

( ´_ゝ`) 急ぐぞ

(´<_` ) おう


107 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:07:07 ID:l2YspRjg0
ヒュウンッ

(-´_ゝ`) ん?

(T´_ゝ`) タラッ

[スピーカー]<シネッ!シネヤオラァ!! パァン!パァン!

(´<_`;) 早く頭を隠せ兄者!撃ってきてるぞ!

(T´_ゝ`) なにこれすっげー痛い

(´<_`;) 車にも何発か当たってるな。タイヤをやられないように蛇行運転してくれ

(T´_ゝ`) 任せろ。実は普通に走るよりこっちの方が速い

(´<_` ) ……なんでもっと早くやらなかったんだ?

(T´_ゝ`) ……さあ?


108 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:08:14 ID:l2YspRjg0
蛇行運転をし始めた奴らの車は、恐らく何らかの能力によるものだろう、急激に加速した
直線道でもカーブでも、最新鋭のモンスターマシンが一般的なスポーツカーに圧倒されている
為す術もないまま奴らと俺たちの距離は開き、5分後、俺達は完全に奴らを見失った

从 ゚∀从 が、まあ、最低限の仕事はできた

俺が撃った銃は殺傷を目的としたものではない
総理から渡された特殊な物で、銃弾そのものが発信機の役割を果たすらしい
この場で捕まえるのが一番だったが、こうなってしまっては仕方がない



多少の危険は伴うのだろうが、奴らのアジトへお邪魔するとしよう

110 :名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 02:15:57 ID:l2YspRjg0
おまけ ヒーロー図鑑その3

( ゚д゚ )

「勇者」コッチミルナ

圧倒的支持率を誇るヒーロー出身の総理大臣
能力を持たず、己の肉体のみで悪を挫くその姿に人々は尊敬の念を覚えずにはいられなかった
下戸


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( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです 第5話 

151 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 14:06:19 ID:C/CnSiRIO
( ・∀・)「……さて」

( ・∀・)「金は溜まったな」

(´・ω・`)「うん」

( ^ω^)「お」

( ・∀・)「……本丸、攻めるか」

( ^ω^)「……行きますか」

(´・ω・`)「……あぁ」


( ・∀・)「さよなら数万円!!僕たちは今から最高の幸せを手にしてきまあああああす!」

僕らの財布の中の諭吉さんは、今すぐにでも財布から出たがっているように見えた。

153 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 14:08:53 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです

その五「性欲豚、遊郭に行く」


154 :>>152 ごめんなさい、ながらなの……。:2012/04/09(月) 14:14:19 ID:C/CnSiRIO
~数日前~


先日の馬鹿勝ちの後に、モララーがこんな事を言い出した。

( ・∀・)「ビッパー新地行こうぜ!」

(´・ω・`)「いいね!なんたってお金はあるからね!」

( ^ω^)

( ^ω^)「あの、ビッパー新地ってなに」

( ・∀・)「やっぱそこから入るのか……」


155 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 14:26:05 ID:C/CnSiRIO
( ・∀・)「ビッパー新地は、売春防止法の厳しいVIP県の中で唯一!」

( ・∀・)「……最後まで出来ちゃうところなんだよ……」

( ^ω^)「……最後というと」

( ・∀・)「そう……」

( ・∀・)「Cだ!!」

( ^ω^)「C!!」

(´・ω・`)「まぁ昔風に言えば遊郭だね」

( ^ω^)「遊郭!!」

( ・∀・)(……ところでこいつ、なんかだんだんノリ良くなってきてないか?)

(´・ω・`)(吹っ切れたんだろうね)

162 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 18:12:57 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)「そんなもんがまだ日本にあるのかお……!」

( ・∀・)「うん。あるんだおあるんだお。といっても糞高ぇんだよな」

( ^ω^)「高いってなに?お金が?」

( ・∀・)「うん。お金が」

( ^ω^)「……とりあえず相場だけ聞かせてくれお」

( ・∀・)「うん。12000~15000円くらいかな」

( ^ω^)「うん……高いな……ホテヘル以上かお」

( ・∀・)「15分でな」

( ^ω^)

( ^ω^)

(;゚ω゚)「!!?」


163 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 18:28:02 ID:C/CnSiRIO
(;゚ω゚)「じッ……15分」

(´・ω・`)「あ、30分なら20000ちょっとくらいだよ」

(;゚ω゚)「狂気の沙汰だお……」

( ・∀・)「いや、価値はある」

( ・∀・)「女の子が超絶可愛いんだよ」

(;^ω^)「お……値段に見あった可愛さなのかお?」

( ・∀・)「アイドル級だぜ、アイドル級」

(;^ω^)「おお……そうなのかお……」

( ・∀・)「どうだ、行きたくなっただろ?」

(;^ω^)「う……ううん……?」


164 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 18:40:02 ID:C/CnSiRIO
( ・∀・)「まぁまぁ、とりあえず行くだけ行けばいいじゃないの」

(´・ω・`)「そうそう。気に入る子がいなけりゃそのまま帰ればいいし」

( ^ω^)「お……まぁそりゃあ、確かに」

( ・∀・)「今までの店と違って女の子を直で見れるから、歩くだけでも楽しいぜ」

( ^ω^)「ほぅ」

(´・ω・`)「そうそう。楽しいよ」

( ^ω^)「じゃあまあ、行くかお……」

( ・∀・)「うん、そうしよう」


165 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 18:49:12 ID:C/CnSiRIO

プシュー。

「西ビッパー、西ビッパーです。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」


( ∵)( ∵)( ∵)西ビッパー駅到着(∵ )(∵ )(∵ )

( ・∀・)「とうちゃーく!」

(´・ω・`)「ついたね」

( ^ω^)「普段通り過ぎてる駅で散策とかワクワクするお」

( ・∀・)「とりあえず、行きますか!」

(´・ω・`)「さっそく?」

( ・∀・)「もちろんだろ!行くしかねぇ!」

( ^ω^)「絶倫すぎワロタ」


166 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 18:58:00 ID:C/CnSiRIO

というわけで、僕たちはいくつかの地下鉄を乗り継ぎ、西ビッパー駅にやってきた。
地上改札口不気味なくらい物静かな世界を目の当たりにする。
今は、時刻で言えば19時。
ところどころに人が歩いているのを見かけるが、都会らしい華々しさがない。

モララーとショボンが先導する中、辺りを見回してそう感じていた。

( ^ω^)「まだつかないのかお?」

( ・∀・)「もうちょい。あの先、あそこを右に曲がったらへんからスタートだな」

( ^ω^)「スタートって?」

(´・ω・`)「とりあえず行けばわかるさ。なんせ、そこらへん一体が風俗店だからね」

( ^ω^)「……右も左も風俗って事?」

( ・∀・)「右も左も曲がる先も忍び込んだ通路も風俗。ねーちゃんが待ってるぞ」

(;^ω^)「うおお……まじか」


167 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:06:46 ID:C/CnSiRIO

そうして雑談しながら歩く事5分。
モララーが「スタート」と言った曲がり角を曲がってその先を見てみる。
すると、世界がだんだんピンクに染まっていくのがわかった。

今まで感じなかった人影も、ずいぶん多くなってくる。
賑わいを見せる風俗街。

ビッパー新地、スタート。

( ^ω^)「うおおおお……」

( ・∀・)「はは、今日は可愛い子いるかなー」

(´・ω・`)「安くしてくれるおばちゃんもね」

( ^ω^)「うおおおおお……!」

思わず、息が漏れた。

時代に取り残されたかのような古き建物たち。

その建物たちの一つ一つの中に、女の子がいた。

横開きの玄関扉が取り除かれ、その中から見えるには

从 ゚∀从

綺麗に化粧をし、ちょこんと座ってこちらを見る女の子と

(゜д゜@

同じく隣に座ってるおばちゃん。

(;^ω^)

お……おばちゃん?


168 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:13:43 ID:C/CnSiRIO
(゜д゜@「あらやだ」

目が合った。話しかけられた。

(;^ω^)「えっ?」

(´・ω・`)(あっバカ反応すんなよ)

(;^ω^)「えっ?なんで?」

(゜д゜@「お兄さん、この子どう?気に入った?可愛いでしょ?」

(;^ω^)「え?あ、え…ああ、可愛いですおね」

从 ゚∀从ノシ

(゜д゜@「そうでしょ、いいこだよ。この子が11000円だよ。安いからちょっとイチャイチャしていきなよ」

(゜д゜@「ホントは12000円だけど、お兄さん若いから安くしたげるよ。これ逃したら次ないよ」

(;^ω^)

思いっきり捕まった。

(^ω^;)「モラ……!」

(・∀・ )))(・ω・` ))) スス……

助けを求めようとしたやつらは逃げようとしていた。
あらやだ。

(^ω^;)(あの野郎ども!!)


169 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:17:43 ID:C/CnSiRIO
(゜д゜@「にしても若いねぇ、大学生?大学生ならお金ないでしょ。ないよねぇ」

(゜д゜@「ならフラフラ迷ってチャンス逃すよりここでスパッと決めて満足して帰る方がいいわよ」

(;^ω^)「あ、でもすいません、友達が行っちゃうし……また後で」

(゜д゜@「気ぃ使ってくれたんでしょ。なおさらここでイっちゃいなさいよ」

うっわめんどくせぇこのおばちゃん。

(;^ω^)「いや、また後で……」

(゜д゜@「あらやだ。また後で来てよ?ちゃんと。待ってるからね」

从 ゚∀从ノシ

女の子は手を振ってくれていた。
かなり可愛い。


170 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:26:15 ID:C/CnSiRIO
(´・ω・`)「お帰り。降り切れてよかったね」

( ・∀・)「押しに弱いお前ならやられると思ってたが、よく生き延びたな」

先を歩いていたモララーとショボンに、ようやく追いついた。
しれっとしやがって、こいつら。

(;^ω^)「冗談じゃねえお、システムを先に言えよお前ら……ハァ……ハァ」

( ・∀・)「まぁ今ので体感しただろ」

(;^ω^)「おお。女の子がいて、横にマネージャー的におばちゃんがいるのがデフォなんだおね」

( ・∀・)「そゆこと」

(;^ω^)「そんな感じのやつが、ここの通り中に広がってるってのか……」

( ・∀・)「ああ。こんな感じの店があと100か200はあるぜ」

(;^ω^)「そんなに!?」

( ・∀・)「ああ。だって、まだ俺らが通ってるここの通りだって1つ目の通りだもん。まだ10本は通りがあるぞ」

(;^ω^)「……想像を遥かに超える規模だお」

(´・ω・`)「でも楽しいでしょ。こうやって自分で吟味して女の子選べる。パネルマジックが無いのはいいよね」

(;^ω^)「……まぁ」

正直、かなりわくわくする。
どちらを見ても女の子が座りこみ、こちらを見ているこの通りが、あと10本もあると言うのだから。
比喩でなく、異世界に飛ばされた気分だ。


171 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:33:43 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)「おお……見てあれ可愛くね?」

( ・∀・)「そうか?俺茶髪の子はあまり好きじゃねえな……」

(・ω・` )「モララーはあっちの子の方が好みでしょ。見て見て」

(・∀・* )「ん?どれどれ……ってうっほぉ!ナースちゃんじゃねえか!」

( ^ω^)「コスプレしてる子もいるんだおね。ありゃあ可愛いお……」

ノシ 

( *・∀・)ノシ「あっちの着物美人は手ぇ振ってんぞ!可愛ええええ!」

( *^ω^)ノシ「確かに!納得の可愛さ!ってかうなじエロっ!」

(´・ω・`)「あっ、手ふるなよばか」

(゜д゜@「あらやだ!あなたたち、着物好き?だったらこの子にうんたらかんたらぺちゃくちゃぺちゃくちゃ」
↑呼び込みのおばちゃん。さっき見た気がするのは気のせいry

(;・∀・)(;^ω^)(ギャアアアアアア!!!!)


172 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 19:44:35 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)「……にしてもホントに女の子のレベル高いんだおね……」

(´・ω・`)「だろ。どこぞの48人に負けず劣らずって感じだろ」

( ^ω^)「お……こんなとこで働かずに、アイドル目指した方がいいだろうに……」

(´・ω・`)「そこは人には話せない事情があったりするところなのさ」

( ^ω^)「切ねぇ……」

( ・∀・)「……まぁまぁ」

( ・∀・)「今から通るこっちの通りは、少しレベルが下がるぞ」

(´・ω・`)「通称『妖怪通り』だからね……」

( ^ω^)「ほう……妖怪って……」

( ・∀・)「言わせるな。察しろ」

( ^ω^)「そうしようか」

175 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 20:00:32 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)「う……うおお……」

( ^ω^)「か、カーチャン……?」

妖怪通り。
そこに並ぶ姫達を見流していき、僕は感想としてそう言った。

( ・∀・)「いや、俺らのカーチャンよりは若いはずなんだけどな……」

(´・ω・`)「……あ、あのひと西川史子に似てる」

( ・∀・)「それ思った」

( ^ω^)「言い方悪いけど、人来るのかお……ここ……」

(´・ω・`)「あ、ほら、いまサラリーマン入ってったよ」

(;^ω^)「うおっまじだ!……勇気あるなぁ……」

( ・∀・)「よくやるな。頑張れリーマン」

(;^ω^)「……世の中、いろんな性癖があるんだおね……」


176 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 20:10:46 ID:C/CnSiRIO
心なしか皆だんだん早歩きになり、すぐに妖怪通りを抜けた。
そしてようやく着いたのが、ビッパー新地メインストリート街だ。

( ・∀・)「本番はこっからだな」

(;^ω^)「……すっげ」

通称、青春通り。
街を歩いていれば振り返り、勇気あらば声をかけたくなるような
そんな極上レベルの可愛い女の子達がずらりと見えた。


(;^ω^)「……」

こんな可愛い子たちが、金さえ払えば自分と性行為をしてくれるのだ。

なんという世界だろう。


(;^ω^)「15分そこらで1万が飛ぶのも頷けるお……」

(´・ω・`)「……うわ!あの子めちゃくちゃ可愛くね?」

( ^ω^)「お」

ノシ

OL姿の女の子が、体育座りでこちらを見ていた。
扇情的な視線。やらしい。
そして何より、太ももの間にギリギリ見えない魔の三角形。
バミューダ・トライアングル……!

思わず愚息も反応しそうになる。

(´・ω・`)「決めた。ぼくあの子と遊んでくる」

( ・∀・)「おう。いてらー」

(;^ω^)「お……」

このただの観光にまずショボンが、いちぬけた。


177 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 20:46:36 ID:C/CnSiRIO
( ^ω^)「ぼくも早く決めないと……」

( ・∀・)「そーだな。ちと迷うけど……ここらへんで決めちまうのがベストか」

( ^ω^)「緊張するお……お」

( ・∀・)「おや!」

( ・∀・)( ^ω^)「「あの子可愛っ……」」

( ・∀・)(^ω^ )「「……」」

从'ー'从ノシ

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「……どうする?」

( ・∀・)「……ブーン」


( ・∀・)「 真 剣 勝 負 だ」

( ^ω^)「 望 む と こ ろ」


178 :名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 20:54:08 ID:C/CnSiRIO

从'ー'从


(゜д゜@「あらやだ。お兄さん、この子に決めたの?見る目あるねぇ」
↑呼び込みのおばちゃん。どk(ry

( ^ω^)「おっ。可愛いですお……」

モララーとの真剣勝負(じゃんけん)を制した僕は、この子にこぎつける事が出来た。

( ^ω^)「おいくらですかお?」

(゜д゜@「あらやだ。値段を言うの忘れてたわね」

(゜д゜@「15分12000円ね」

(;^ω^)「えぇ~。おばちゃんまじで?ぼく、遅漏だからなぁ……なんとか時間、伸びない?」

(゜д゜@「伸ばして欲しいの?なら20分でもいいけど」

( ^ω^)「さすが!決まりだお!」

ついでにモララーに教わった交渉術を駆使し、少し時間も伸ばせた。
完璧だ。

186 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:38:56 ID:FqTR.QVMO
(゜д゜@「決まりね。ささ、上がって上がって」

从^ー^从「どうぞ」

(;^ω^)「お……」

笑いながら手を取られ、二階に連れていかれた。
その先にあったのは、小さな和室。

从'ー'从「じゃあこちらに」

簡素な座布団を示され、座る。
部屋は……うまい例えが浮かばないけど、修学旅行で泊まった和室にそっくりだと感じた。
本当に、時代に取り残された場所のようだ。

从'ー'从「まずは、来てくれてありがとうございます。今日は時間は20分でいいの?」

(;^ω^)「う、うん。いいお」

しかし改めて近距離で見ても、めちゃくちゃ可愛い。
緊張から思わず目を反らしてしまう。
それがバレたのか、そのまま軽く笑われてしまった。

从^ー^从「ふふ、飲み物はどうしますか?」

(;^ω^)「あ……いらないお」

从'ー'从「わかりました。じゃあ、ちょっと待っててね。準備してくるね」

( ^ω^)「お」

そう言って姫は、がらりと障子扉を開けて出ていく。
僕はどぎまぎしながら見つめているだけだった。
やべ、緊張でたたないかも。
大丈夫か……と股間を一人で確認する辺り、やはり物悲しい。


187 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:47:13 ID:FqTR.QVMO

从'ー'从「あ、そう言えば」

(;゚ω゚)「ふぉおおっ!」ビクッ

踵を返すように、姫が今閉めた再び障子扉を勢い良くあけるので
心配そうに股間いじいじしてるのを見られた。

从;'ー'从「!? どうかしました?」ビクッ

(;^ω^)「い、いや、なにも……!なんだお?」

从;'ー'从「あ、いや……そう言えば、お金もらうの忘れちゃって」

(;^ω^)「あ、ご、ごめんお」

从;^ー^从「い、いえいえ、ホントはさっきもらっとかなきゃいけなかったんだけど……私、ちょっと抜けてて。えへへ」

( ^ω^)

( *^ω^)(……くそ、可愛いこの子……)

恋愛ニートである僕は、こんなとこにもキュンと来てしまうのであった。

( ^ω^)つ「はいお」

从^ー^从「ありがとうございます。じゃあ、また行ってきますね」

( ^ω^)「もう忘れものはない?」

从;^ー^从「ないですよう。からかわないでください……」

( ^ω^)(……めちゃくちゃ可愛い)


188 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:56:06 ID:FqTR.QVMO
すると今度は、すぐに帰ってきた。

从'ー'从「ただいま」

( ^ω^)「お……」

その手には小さな盆があり、上にはおしぼりと……饅頭?あと、水が置いてある。

( ^ω^)「? 饅頭?」

从'ー'从「うん」

( ^ω^)「なんで饅頭なんだお?」

从'ー'从「お客さん、ビッパー新地は初めて?」

(;^ω^)「……うん」

从^ー^从「ふふ、じゃあ、説明したげる」

从'ー'从「あのね、ホントは法律ではね、えっちな店でも最後までしちゃダメなの」

( ^ω^)「え?じゃあ」

从'ー'从「だからね、このお店は、一応形は料亭なんだよ~」

(;^ω^)「りょ……料亭」

从'ー'从「料亭だよ。私は女将さん。お客さんはご飯を食べにくるの」

从'ー'从「そこで『たまたま』出会った女将とお客さんが『恋に落ちて』、『お互いの合意の上で』えっちな事しちゃうんだよ~」

(;^ω^)「な、なるほど……」

なんともまぁ、強引な話だと思った。
これでまかり通っているあたりが、法律の意味の無さを感じさせる。
なんだか、切ない気分だ。

しかし。

从*'ー'从「うふふ、だからね」

从* ー 从「わたしとあなたは、いまから恋に落ちちゃうんだよ……」

耳元で小声で呟かれ、全ての理性は吹き飛ばされた。


189 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:06:42 ID:FqTR.QVMO
気づけば僕は布団の上。

从* ー 从「うふふ」

手際良く脱いで、いや、脱がされ?どっちだっけ。
わかった事は、極度の興奮は人の記憶すら飛ばしてしまうらしい事。
こんなに可愛い子に、話しかけられる事すらほとんどなかった人生。
既に愚息はこれでもかと元気を主張している。

从*'ー'从

姫は無言のままに、まずはその愚息をウェットティッシュで拭いていく。

(;*^ω^)「ぅあ」

从* ー'从「うふ……」

時たま意地悪い手つきで愚息をこねくりまわし、こちらの反応を伺っている。
そして。

从*'ー'从つo「じゃあ……ぱんぱかぱーん」

(;^ω^)「お」

手には、コンドームだ。

从*  从「じゃあ……」

それを口にくわえる。
一瞬、何がしたいのかわからなかった。口に入れたって美味しいものでもなかろう、と。
しかし口にコンドームをくわえたまま、元気な愚息に被せてくる。
するすると、降りていくコンドーム。

( *゚ω゚)(ッ……これは……)

戦闘準備完了。
口だけで、僕にコンドームを装着したのだ。

从*  从「んふふ」

そしてそのまま、ゴムの上からフェラを開始した。


190 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:13:01 ID:FqTR.QVMO

正直、気持ち良さで言えば……一人で皮オナしてるのが一番だ。
でもこれは、違う。
可愛い子にしてもらってるという、満足感。愉悦。快感。

( *゚ω゚)(うわ……うわああああああああああ!)

頭の中に、声にならない声が流れる。
少し油断すると、現実にも声が出てしまいそうなくらいだった。

从*'ー'从「ふふ……もういいかな?」

( *゚ω゚)「おっ……」

从*'ー'从「じゃあ……」

服がすとんと床に脱ぎ散らされていく。

姫は寝転び、そしてゆっくり股を開いていく。

そして、手を広げて……こう言った。

从*'ー'从「……来て」

( *゚ω゚)


191 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:17:57 ID:FqTR.QVMO

ぼくは初めて、女の子の中に入った。
その快感と来たら、たまったものではない。

柔らかい何かがしたたる液と一緒に、僕の愚息を搾り取るようにして快感を与えてくる。

それは今までの人生で、一番の快楽だった。

195 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:29:40 ID:FqTR.QVMO

( *^ω^)「……ふぅ」

ネット上にはよくネタで、イッた事を意味する為に「ふぅ……」と書き込まれる。
しかしこれがなかなかどうして、現実でも漏れてしまうものだった。


正直、少しの不安があった。
ぶっちゃけて言えばこれまでいった店……ピンサロでもホテヘルでも、僕はただイッた。

うまく言葉に出来ないが……例えるならいつもやるオナニーと変わらない、作業のようにただイッたような印象だ。

しかし今回のこれは比べものにならない。

それは幸せの真っ只中。
まだまだ楽しんでいたいのにと、我慢出来ずに達してしまった。

( *^ω^)「……いやぁ、楽しかったお。もっと、長く遊んでたかった」

从*'ー'从「あたしもだよ。お兄さんみたいな若い人、あんまりいないから……。また来てくれると嬉しいな」

( ^ω^)「お……そうなのかお?」

从'ー'从「うん。お兄さん、22くらいでしょ?そんな人って、あんまり来ないよ」

( ^ω^)「あ、惜しい。20だお」

从'ー'从「そうなの?めちゃくちゃ若いね~」


196 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:33:19 ID:FqTR.QVMO
そして好奇心からか、僕は気になっていた質問をしてみた。
……してしまった。

( ^ω^)「……君はいくつくらいなんだお?正直、僕より若く見えるけど……」

从^ー^从「え?……うふふ」


从^ー^从「じゅーはち、だよ」


( ^ω^)


( ^ω^)


その瞬間、とても切ない気分になった。
年齢を聞いただけ。
それがたまたま年下であっただけだ。

ではなぜこんなにも……胸が痛いのだろう。

これがいわゆる、賢者モードの働きなんだろうか。


197 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:39:35 ID:FqTR.QVMO

( ^ω^)「じゃあ……」


―――じゃあ君は、どうしてこんなところで働いてるの?


軽く口から出てしまいそうだった。

しかし、言えない。
そんなの言えるわけがない。

今まで沸いた事の無い感情がそこには在った。

从'ー'从「ん?」

(;^ω^)「いや、なんでもないお。また来たいだけだお」

从^ー^从「ふふふ……ありがと」

姫は今一度ぼくを抱きしめ、そして唇にキスをしてきた。

(;^ω^)「うっ?」

いきなりでびっくりしたが、それがキスだと理解した時には、また愚息が復帰していた。
僕もまだまだ若いという事らしい。

……でも。

从*'ー'从「ふふ、ホントはダメなんだよ?お客さんとちゅーするの。これ、サービスだからね」


極上に可愛い子にこんなセリフを言われても。

( ^ω^)「……ありがとうお」


なぜか、悲しいだけだった。

199 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:47:24 ID:FqTR.QVMO

( ・∀・)y-・~「……よっ、どうだった」

出ると、モララーが既にベンチに座って待機していた。

モララーは僕に気付くと携帯灰皿にタバコをぐりぐりと擦り、そのまましまった。

( ・∀・)「どうだった?初体験」

( ^ω^)「…………最ッッッ」

( ^ω^)「ッッッッッッッ~~~~~~~~」

( ^ω^)「~~~~~ッ高だったお!」

( ・∀・)「そうかいwww何よりだ」

( ^ω^)「……でもなんか、切ねぇお。こんなめちゃくちゃ可愛い子が……なんというか、その」

( ・∀・)「……まぁ気持ちは分かるけどな」

( ^ω^)「……」

隣には、僕と同じくらいの大学生であろう集団がいる。
彼らは僕らがそうしていたように、女の子を見ている。

あの子が可愛い。この子タイプ。

端から見れば、よくわかる。

僕は今になって、自分に恥ずかしさを覚えるくらいだ。

( ^ω^)「……まるで」

そう、これはまるで。
僕らが女の子を見る目は、まるで。

( ^ω^)「動物園の……檻の中の動物を見てるみたいに、女の子を見るんだおね」

( -∀・)「……」


200 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:49:58 ID:FqTR.QVMO
( ^ω^)「なんだか、この町は切ないお」

( ^ω^)「そりゃ今までいろんな店があったけど……中でも特に、女の子が並ぶここは」

( ・∀・)「考えすぎ。お前、賢者モードで理性働いてるからそうなるんだよ」

(;^ω^)「お」

( ・∀・)「……第一な」

( ^ω^)「?」

( ・∀・)「動物園気分なのは、何も俺だけじゃねえよ」


201 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:54:01 ID:FqTR.QVMO
「あいつらに取ったって、ここは動物園みたいなもんだろ」

「どう言う意味だお?」

「だってさ、ここを通るやつ全て、右も左も、豚しかいねぇじゃん。性欲にまみれた豚さ」

「あいつら姫達にも、ここは豚しかいない動物園みたいに見えてんだろ」


後からモララーに聞いた話だが、途中であの姫がお金を忘れたのは、わざとらしい。
僕が延長した5分を潰す為の時間稼ぎだった、というのがモララーの言った言葉だった。
風俗の説明も、ちょっとした時間稼ぎだったのだろうか。


どうしようもない、何か切ない気分になった。


202 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 01:55:37 ID:FqTR.QVMO




こうして僕は、最高の場所で童貞を捨てた。


でも少し胸が痛いのは、僕がオトナに一歩近付けた証なのだろうか。






おしまい。


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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:47:16 ID:U5Z4bAHs0

潮の香る港に、日本人とはかけ離れた二人の男が降り立った。

ここ、小樽の港には日本人以外にも出稼ぎにきたロシア人も多く、
外国人はそう珍しいものでもなかったのだが、
二人の異色は際立っている。

( ´_ゝ`) 「いやー気持ち悪かったなー。揺れる揺れる。
       船旅ってのはどうにもすかんね、俺は」

2月末とはいえ雪のまだ積もるこの土地で、
極彩色の派手なアロハシャツを羽織り、麦わら帽子を被った短パンの男と、

(´<_` ) 「アニジャ、静かにしろ。任務中だ。目立つ様な真似はするな」

対照的に、どこに売っているのかもわからない、
足首まで丈がある、フード付きの真っ青なローブをきた男の二人組。

( ´_ゝ`) 「はいはーい、わかってますよオトジャくん。
       そんじゃ、粛々と静かーに会話もなく黙々と目的地目指しますか」

アニジャ、と呼ばれたアロハ男は軽く手を振るだけで、
なんら悪びれもせずに歩き出す。

その背をオトジャというローブの男が追い、

(´<_` ) 「分かったのなら行動で示してくれ」

愛想の無い口調でそうたしなめた。
目を引く二人ではあるが、港を少し離れていくと車道を走る車ばかりで、
人通りは少なくなっていき、彼らを気に掛けるものはいなくなった。


2 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:48:55 ID:U5Z4bAHs0

( ´_ゝ`) 「なぁ、もう口開いていい?」

(´<_` ) 「あぁ、ここらへんでいいだろう」

倉庫や工場に挟まれた路地に辿りつくと、二人は立ち止まる。
座る場所はなどないが、アニジャは地面の汚さに構わず座り込む。

( ´_ゝ`) 「あー雪がひんやりして気持ちいい。
       なんだか目覚めちゃいそう」

(´<_` ) 「勝手に目覚めて貰っても構わんがもう少し緊張しろ。
       聖杯戦争は、これから始まるんだぞ」

( ´_ゝ`) 「まーまー、肩の力抜けよ。今のとこ俺達が一番乗りだ」

( ´_ゝ`) 「聖杯戦争に参加するであろう内藤も津出も、
       まだサーヴァントを召喚したとの報告は受けていない。
       始まってもいないのに殺し合うメリットなんて無いだろ?」

(´<_` ) 「楽観的すぎるんだ、アニジャは。どこに"アサシン"がいるのかもわからないんだぞ?」

( ´_ゝ`) 「だから、サーヴァントは召喚されていないって。
       気配遮断スキルを持つとはいっても、召喚されればわかるようになってんの」

(´<_` ) 「違う、そいつじゃない。だからアニジャは楽観的だと言ったんだ」


3 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:51:39 ID:U5Z4bAHs0

( ´_ゝ`) 「……あぁ、"あいつ"か。"あいつ"のことか」

"あいつ"、と口にした途端、アニジャは表情を変えた。
憎しみにも近い、嫌悪感を隠しもしない口振りで、

( ´_ゝ`) 「例え"あいつ"が出てきたとしても"双璧の全属性"が相手だ。
       あんな畜生なんぞに負けるはずはあるまいよ。
       俺の炎と風、オトジャの水と地の魔術、そして互いの空があれば奴が敵うはずはないんだ」

(´<_` ) 「で、あればいいんだがな。"あいつ"の為に一体どれほどの魔術師が犠牲になったかしれん。
       用心しておくことだ、アニジャ。だからこそ、俺達が魔術協会から選ばれたんだからな」

( ´_ゝ`) 「わかっているよ、オトジャ。七騎のサーヴァントが揃う前に死んだとなれば、末代までのお笑い草だ」

(´<_` ) 「気をつけてくれればいいんだ。頼んだぞ、アニジャ」

言いつつ、弟者は長いローブの袖を巻くって腕時計を見た。
時刻は9時を示しており、予定通りにことは運んでいるようで、
弟者は薄っすらと笑みを浮かべると、

(´<_` ) 「そろそろ迎えが来る頃だな。兄者、手筈通り札幌には一人で向かうんだぞ。
       俺も全サーヴァントが召喚され次第向かう。
       令呪がお互いに現われて、敵同士になってはかなわんからな」

遅刻すんなよ、とアニジャはからかおうとしたが、
それよりも速く車が二人の前に停車し、言葉を止めた。


4 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:53:03 ID:U5Z4bAHs0

从・∀・ノ!リ人 「おっきい兄者、ちっちゃい兄者、迎えにきたのじゃ」

(´<_` ) 「イモジャはかしこいなぁ。時間ばっちりだ」

後部座席が自動で開くと、アニジャは乗り込んでいく。

( ´_ゝ`) 「お前も、遅刻するなよ。
       サスガファミリー総がかりでも、サーヴァントで襲われては刃が立たん」

そこで、ようやくからかうタイミングが出来て、
麦わら帽子を手に取ったアニジャは満足げな表情で弟者を見た。

(´<_` ) 「アニジャが言うなよ」

( ´_ゝ`) 「……この帽子をお前に預ける。
       俺の大切な帽子だ、いつかきっと返しに来い。立派な魔術師になってな」

その帽子を、オトジャに被せるとアニジャはそのままドアを閉める。
苦笑いを浮かべ、弟者は二人の乗った車が発進していくのを見送り……。

まず感じた物は音だった。聴覚を殴りつける轟音。
次いで、身を吹き飛ばす熱風と衝撃波。
それらをオトジャが感じたのは一瞬のことだ。

車の下部に取り付けられたプラスチック爆薬から引き起こされた炎は、
ガソリンに引火すると酸素を次から次へと求めて大炎上となり、
恐るべきその運動は爆発と爆風となって二人を飲み込み、オトジャを弾き飛ばした。


5 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:54:11 ID:U5Z4bAHs0

( <_ メ;) 「―――――」

アスファルトの上を10メートル近く転がったオトジャは、
声を出すが、肺を焼かれてしまった為にそれは言葉にはならなかった。

考える間も無い、あまりにも唐突で残酷な出来ごとに、
思考が追いつかずパニックに陥ることも出来ない。

そんな中で彼が取った行動は本能的なもので、うつ伏せになった身を返し、
損傷した臓器への負担を軽減して苦痛を和らげるというものだ。
仰向けになると青い空が見えた。空気は乾燥していて、寒い風が吹いてはいるものの太陽は眩しい。

( <_ メ;) 「……?」

(  )

冷静に、落ちついて事態を把握しようとしていたオトジャの目に、太陽を遮る物が現れる。

人だった。
顔はフードを被っていてわからないが、
濃緑色のモッズコートに身を包む、170cm程の小柄な男だ。

小柄、とは言っても弟者の住む国からすれば、という意味で、
この国の平均的な体格ではあり、コートの上からでもわかる鍛え抜かれた肉体が、
一口に小柄とは言い切れない逞しさを放っている。


6 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:56:46 ID:U5Z4bAHs0

( <_ メ;) 「……ッ! ギザ……マ……!!」

フードの奥にある顔に目を凝らせば、見覚えのある顔をしていた。
多くの魔術師達を暗殺し、魔術協会と真っ向から敵対する、
魔術師界隈では指名手配をされ、オトジャが危険視していた男の顔である。

その男が、その"魔術師"こそが……。

(  ) 「聖杯は俺を選んだ。この土地に着いてから、すぐさま令呪が俺には刻まれた」

この惨事の中でも淡々とした口調で語れることからも、
この男がアニジャとイモジャの二人の命を奪ったことは明白であった。

そして彼はこれから、オトジャの命をも奪う。

魔術師達が嫌う近代科学によって生み出された、
ハンドガンの9mmパラベラム弾に眉間を撃ち抜かれることで。

銃声はグロック26の銃口から伸びる、サプレッサーによって減少され、
肉と頭蓋を穿つ生々しい音が響くのみであった。
魔術師と言えども人間であり、頭を撃たれれば血と脳を地面にこぼして死んでしまう。

( <_ メ) 「  」

爆破によって身体機能を著しく低下させられ、
尚且つ冷静な判断力を欠いたオトジャには魔術を使う間もなかった。

魔術師といえども、実際に命を奪い合う戦闘を経験した者は稀である。
それが、それこそがこの男との決定的な力量の差であった。
濃緑色のコートを羽織った男は、ジーンズからケータイを取り出すと発信し、


7 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:58:00 ID:U5Z4bAHs0

(  ) 『作戦完了、これより目標地点へ向かう。
     起爆装置は問題なく作動した。よくやった』

通話相手にそう告げる。
淀みない、機械的なやりとりの中でも、
最後の一言には微かに相手を労う気持ちが込められていた。

    『お疲れ様。みんなお待ちかねよ。船旅はどうだった?』

彼のケータイから聞こえる声は、
落ち着きがある中にも陽気さを感じさせる女の声だ。

(  )『問題は無い。誰も俺に気付きやしなかった』

    『あんた、目立たないもんね。懸賞金も掛けられてるのに、
     今まで生き残ってこられたのはその存在感の薄さのおかげかしら』

(  )『俺の魔術のおかげだ。万が一ということもある。
     無駄話はやめて、作戦に移るぞ』

    『はいはい、了解ですボス。じゃあ開始しましょ』

(  )『あぁ―――聖杯戦争を開始するぞ』

男はケータイを切ると駅へと向かって歩き出す。
フードを外すと隠されていた無表情が露わとなり、涼やかな眼の奥からは切なる願いの火と、
大いなる野望の火が、炎となって燃え盛っているような輝きが放たれていた。


8 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:58:55 ID:U5Z4bAHs0

******

札幌市東区。

中央区よりの位置にある東区役所方面を南下し、
VIP高校へ登校する生徒達は皆、春の近づきを感じながらも、
冬の寒気の入り混じる複雑な気候から身を護る為、それぞれ防寒着で身を固めている。

VIP高の生徒達の中で、垂れ眉のショボクレた顔をした少年、
ショボンは雪溶けで濡れた歩道に眉をひそめながら、
水溜りを避けるようにして歩いていく。

(´・ω・`) 「最近になって雪が溶けてきたね」

( ^ω^) 「暖かくなってきたからだお。
       まだ2月の末だけど、徐々に春は近付いてきてるんだお」

その隣を歩く大柄の少年ブーンは、
雲一つない青空を一度見やると、丸顔をショボンへと向ける。

(´・ω・`) 「暖かいのはいいことだけど、これじゃ靴がビチャビチャになっちゃうよ。
      僕も君みたいに安全靴を履いてくれば良かったかな。見た目は悪いけど」

( ^ω^) 「機能性はいいお。冬でもスニーカーじゃ、濡れちゃうのは当然だおね」

細い、笑みを作ったかのような目でショボンの足元を見て、
染みの出来た白のスニーカーを指して言う。


9 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:59:36 ID:U5Z4bAHs0

(´・ω・`) 「僕はスニーカーが好きだからさ」

こんなに暖かいのなら、道がびちゃ濡れになっているのはわかりきっていただろうに。
あえてスニーカーを履くという選択はショボンの洒落っ気ではあったのだが、
機能性を優先するブーンには理解し難い奇行でしかない。

(´・ω・`)σ 「どうやらツンも雪解けに苦戦しているみたいだよ」

ξ;゚⊿゚)ξ

指を差す先には金髪を縦にロールした、
色白の女生徒ツンがおり、水溜りを避けるようにして進む姿から、
どうやら彼女もこの道に苦戦を強いられているようであった。

(* ^ω^) 「おっ! ツン、おはようだお!!」

ξ゚⊿゚)ξ 「あ……おはよう、ブーン……」

(´・ω・`) 「おはよう。元気が無いみたいだけど、水溜まりにでも突っ込んだかい?」

ξ゚⊿゚)ξ 「いえ……別に、何でもないわ」

(; ^ω^) 「大丈夫かお? 体調悪いのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「何でも無いって。それより、ブーン。
       今日の放課後、時間を頂けるかしら?」

(* ^ω^) 「わかったお! ツンの為ならいつだって暇にするお!」

ξ゚⊿゚)ξ 「……そう。じゃあ放課後に、ね」


10 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:01:02 ID:U5Z4bAHs0

ξ゚⊿゚)ξノシ

( ^ω^)ノシ


(´・ω・`) 「……なんだ、付き合いの悪い。
      クラスが同じなんだから一緒に登校してもいいのに」

( ^ω^) 「ツンは、やっぱり体調が悪いんだお。
       だから心配させまいと、一人で行っちゃったんだお」

(´・ω・`) 「そうかな? 確かに顔色はあまり良くなかったけど。
       それに、急に呼びだしてなんなんだろうね。
       もしかして、ブーンに告白するとか?」

(;^ω^) 「いやいやいや! それはないお。ツンに限っては、絶対!!」

(´・ω・`) 「幼馴染属性とか羨ましいよ」

(;^ω^) 「エロゲに限る話だお、そういうのは」

(´・ω・`) 「そうかい? もしかしたら、緊張のあまりに体調悪くしてるとか、
      ツンのことだし、あると思うんだけどなー」

( ^ω^) 「うーん……たしかに、何か悩みがあるかもってのは頷けるお」

(´・ω・`) 「……」

( ^ω^) 「うーん……」


11 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:01:49 ID:U5Z4bAHs0

(´・ω・`) 「まさか……」

( ^ω^) 「まさか、なんだお?」

(´・ω・`) 「僕達の関係に気付いたっていうわけじゃ……ないかな」

(;^ω^) 「え……?」

突然、僕達の関係、と言われてブーンは戸惑った。
普通の何一つ変わらない友人との関係の何を気付いたというのか。
ツンは何に合点がいったと言うのか、真剣に思考していくが、

(´・ω・`) 「うん、それなら僕らと登校しないというのも合点がいく。
      二人の邪魔をしちゃあ悪いと、ツンもそう思ったんだろう。
      カップルが二人で登校、というイベントを妨害してはいけないからね」
  _, ,_
( ^ω^) 「は? カップル?」

予想外の答えにブーンは戸惑いを通り越えて呆れた。
ただ、呆れた。呆れ果てた。

(´・ω・`) 「さぁ、手でも繋ごうか、ブーン。
      気を使ってくれたツンにも悪いし……さぁ」

( ^ω^) 「ショボンは、そっち系のエロゲ脳だったかお……勘弁してくれお」

手を繋ぐことを強要してくる友人に、気色悪さを感じたブーンは、
彼を無視して足早に学校へと一人で向かっていった。


12 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:02:51 ID:U5Z4bAHs0

******

学校に到着し、ツンに何の用事か問いただしては見たものの、
結局答えては貰えず、幼馴染の勘からいくら聞いても答えてはくれないと、
ブーンは諦めることにした。

ツンの申し出のことが頭に引っかかったまま最後の授業を受けていると、
終業のベルが校内に鳴り響き、ホームルームが始まる。

( ´ー`)「今日は小樽のほうで自動車の爆発事故があったようだ。
      整備不良が原因らしいけど、お前らも駐車している車を見かけたら、
      爆発しないかどうか気をつけながら帰宅しろヨ」

担任のシラネーヨの言葉は生徒の身を気遣っているのだろうが、
どこか冗談めかしたもののような響きを持っている。、
しかし、今のブーンの耳に届いてはいなかった。

( ´ー`)「最近物騒なんだからな~。寄り道も程ほどにしておけよ~。
      じゃあ、ホームルーム終わりだーヨ……散!」

     「きりーつ、礼~」

今度は完全に受けを狙いにいった発言であったが、
日直である女生徒は冷たい目を担任へ突き刺すと、
号令を終えた途端にそそくさと帰っていってしまう。


13 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:04:19 ID:U5Z4bAHs0

(;´ー`) 「……さようなら」

教室内にはまだ生徒が大勢残っていたが、
シラネーヨは居心地の悪さを感じたのかすぐさま退散し、
その背中をネタに一部の生徒達は会話に花を咲かせていく。

ξ゚⊿゚)ξ 「ブーン、ちょっといいかしら?」

そんな中で、ブーンにとってツンの声がやけにクリアに聞こえた。
やっときたか、という思いを胸に秘めたまま彼は振り返る。

( ^ω^) 「お、早速かお」

(´・ω・`) 「僕もいい?」

ξ゚⊿゚)ξ 「……来ないで。大事な話があるの、ブーンに」

(´゚ω゚`) 「大事な話……やはり!」

(;^ω^) 「すまんお、ショボン……」

(´゚ω゚`) 「ぶ、ブーン……」

ξ゚⊿゚)ξノシ 「じゃあね、諸本くん」

(;^ω^)ノシ「じゃ、じゃあ……また明日だお」


14 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:05:25 ID:U5Z4bAHs0

(´゚ω゚`) 「ブーン……君は、大人の階段をこうして登っていくんだね……」

呪詛のようなものが浴びせられながらも、
ブーンの背中はツンに率いられるまま教室を出ていき、
外気に備える為二人は手袋をつけ、校門をくぐっていった。

( ^ω^) 「ツン、話しってなんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「……」

道中、彼がそう問いかけても、
ツンは口を固く閉ざして何も語ることは無かったのだが、
住宅の多い地帯を進み、路地へと入って人気が少ないのを確認すると、

ξ゚⊿゚)ξ 「ブーン、貴方……聖杯戦争に参加するの?」

西洋系の血の混じった彼女の碧眼が、語気と共に鋭さを増した。

( ^ω^) 「……そうじゃないかと、薄々思っていたお。
        そうであって欲しくないとも、思っていたけど……」

ξ゚⊿゚)ξ 「どうなの?」

( ^ω^) 「ツンはどうなんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「質問に質問で返さないでくれるかしら?」

( ^ω^) 「まだ、決めかねているお」


15 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:06:56 ID:U5Z4bAHs0

ξ゚⊿゚)ξ 「呆れたわ。おばさまも、同じ気持ちでしょうね。
       せっかく貴方にはおじさまの権利も、魔術刻印も継承されたというのに」

( ^ω^) 「ツンのお母さんはなんて言ってるんだお?
       願い事の為に、魔術師7人も集めて殺し合うことに賛成なのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「当たり前じゃない魔術師なら。
       これは根源への到達を……魔術師達の、
       お父様達の長年の悲願を達成出来るかもしれないのよ」

( ^ω^) 「御三家が勝手に始めたことだお。
       僕達は彼らとは違う。それにとーちゃんとモララーおじさんは、
       僕やツンが殺し合いに参加することを良しとすると思うかお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「そうに決まっているじゃない。根源への到達は偉業も偉業。
       私達の後の世代にまでそれは語り継がれ、魔術師として最高の栄誉を手に出来る。
       魔術師ならそんなこと、迷うはずないじゃない」

( ^ω^) 「僕は、とーちゃんが戦争で死んだ時から、ずっと考えてきたお。
       どんな気持ちで、どんな願いを抱いて死んでいったのだろうかって」

( ^ω^) 「僕なら……そんな血塗れの名声よりも、
       美味いもん食って好きな人達に囲われて死んでくれたほうが、
       親としては嬉しいことなんじゃないかなって、今はそう考えているお」

ξ゚⊿゚)ξ 「逃げるの? ブーン」


16 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:08:15 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) 「……逃げる?」

ξ゚⊿゚)ξ 「えぇ、そんなもの逃げているだけじゃない。
      貴方は怖いだけじゃない。戦う事を怖がって自分に都合の良いこと言って、
      逃げようとしてるだけじゃない」

(;^ω^) 「そんなことはないお!!」

思わず、ブーンは声を荒げた。
自分なりに父の気持ちをずっと考えてきて出した結論なのに、
逃げる言い訳だと吐き捨てられてはたまったものではない。

ξ゚⊿゚)ξ 「いいえ、それは本当に単なる逃げなのよ。魔術師がそんな口を叩くはずがないもの。
       いい? 例え相手がどんな魔術師で、どんなサーヴァントを召喚してきたとしても、
       根源への到達を成し遂げてみせる。それが父から託された私達子の宿命ってものじゃない?」

ξ゚⊿゚)ξ 「そんな普通の、何も成し遂げることが出来ずに死んでいくような生き方のほうが、
       何倍も怖いじゃない。ブーンはただの臆病者よ。自分には出来ないと諦めてしまった愚か者」

( ^ω^) 「違うんだお、ツン。それは誤解だお。絶対に違うんだお、それだけは」

ξ-⊿-)ξ 「ふん……じゃあ貴方は聖杯戦争には出ないのね?」

(;^ω^) 「うっ……それは、まだ決まっては……」

ξ゚⊿゚)ξ 「監督役のロマネスクおじさんから連絡が来てると思うけど、
       今日くる連絡が最後通告になるわよ」

(;^ω^) 「……」


17 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:09:16 ID:U5Z4bAHs0

ξ゚⊿゚)ξ 「続々とこの札幌に、魔術師達がやってくるわ。
       内藤と津出がこの土地で聖杯を発見したことで得た、この令呪」

ツンが制服の右の袖を巻くっていくと白く細い腕が現れ、
その二の腕には赤々とした紋章が刻まれていた。

そして、ブーンはそれに応えるように手袋を脱いでいくと、
包帯の巻かれた右手が現われ、それを解いていくと似たような紋章が掲げられる。

一月前、痛みと共に"いきなり"刻まれた紋章。

ξ゚⊿゚)ξ 「貴方も間違いなく聖杯に選ばれた魔術師の一人。
       戦わないというのなら"内藤"は早く放棄することね」

それが、それこそが聖杯に認められた魔術師の証。
聖杯戦争に挑む為のチケットであり、サーヴァントを制御する三つの刻印。
サーヴァントを使役する"マスター"の"令呪"である。

( ^ω^) 「僕に諦めろというのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「既に、諦めているじゃない」

( ^ω^) 「諦めたわけじゃないお……」

諦めたわけじゃないが、二つだけ懸念することが彼にはあった。
一つは、自分の願いである。

万能の願望機と呼ばれる聖杯に託す願いが、果たして根源への到達などで良いのだろうか?
たしかにそれは父達の願いでもあり、究極の知識を求める魔術師達の悲願。
きっととてつもない力を手に入れることが出来るのだろうと、漠然とではあるが想像がつく。


18 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:10:34 ID:U5Z4bAHs0

しかし、そんなもので幸福になれるのかと問われれば、ブーンにはわからなかった。

あらゆる願いを叶えられると言うのに、そんな願いを果たしていいのだろうか。
これはまだ、解決できる問題かもしれない。

だが、どうしても避けられない問題というものもある。
それが、二つ目だ。

願いを諦めてでも、戦いを避けてでも直面したくない問題。

ξ゚⊿゚)ξ 「まぁ、いいわ。貴方が棄権しようが参戦しようが、
       私にとって敵の一人に貴方が加わるか、
       別の誰かが敵になるかの違いでしかないから」

そう、この少女と戦うことだけは、ブーンにはどうしても許容出来なかった。
幼いころより、父達が古い友人ということで付き合いのあった、
この幼馴染と魔術を競い合うことが彼にとって、一番怖いことだった。

ξ゚⊿゚)ξ 「貴方が戦うというのなら、共闘を申し出ようかとも思ったんだけど……。
      仕方、ないわよね……それじゃあさようなら、魔術師内藤ホライゾンくん。
      戦場になるこの土地で、せいぜい巻き添えを食わないようにすることね」

手を振ることもせず、冷たい態度と言葉で突き放したツンは、
踵を返すとそのままブーンの目の前から立ち去っていってしまった。

( ^ω^) 「……さようならだお、ツン」

大柄の彼と比べると少女の小さすぎる背中は華奢ではあったが、
身に纏う雰囲気はれっきとした魔術師のそれであった。

ブーンには、その遠くなっていく彼女の後姿を引き留めることは、出来なかった。


19 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:11:26 ID:U5Z4bAHs0

******

真っ白なダウンジャケットの前を閉じ、
薄ピンクのニット帽から栗色のショートカットを覗かせた女性は、
新千歳空港に降り立つと頬を赤らめさせた。

彼女の住むロンドンよりもこの土地が冷え込む証拠であり、
身体は正直にその温度差に反応する。

キャリケースを受け取り出口を目指すと、まずはバスを探した。

(*゚ー゚) 「ここが、日本の北海道……」

外に出ると空からは広大に見えた大地も呆気ないものだが、
陸から見る白銀の世界は彼女、シィを感嘆させるに足るものだった。

どこまでも続くような真っ直ぐに伸びた道路は氷に覆われ、
建築物の屋根には例外なく分厚い雪を被せられた、雪景色。
0度を下回る氷点下に吹く風は冷たさを痛みへと変える。

(*゚ー゚) 「こんなところで貴方は戦うというのね、ギコくん……」

ギコ、彼はシィのかつての恋人だ。

時計塔と呼ばれる、魔術協会の総本山で学びあった魔術師同士の恋人。
――――数年前に突然別れを切り出され、ギコが姿を消すことで破局してしまった。
が、シィは未だに諦めがつかず、消息不明だった彼が札幌に現われると聞き遥々やってきたのだ。

その彼がこんな極東の島国にやってくる目的とは――――


20 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:13:00 ID:U5Z4bAHs0

(*゚ー゚) (聖杯戦争……まだ、夢を諦めていないの? ギコくんは。
      797番目の聖杯。聖堂協会は贋作だと言っていたけど、
      それが集めてきた高度な魔力だけは本物)

(*-ー-) (魔術協会の調べたデータによれば、あらゆる願いを叶える願望機としての性能は確実にある。
      貴方の願いは、これを手にすれば確実に叶えられるはず……)

でも、とシィは思う。
ギコの想いを知るが故に彼女は思うのだ。

(*-ー-) (それは貴方にとって、私を捨ててまで手にするべきものだったの……?)

その願いとは、自分よりも大事なものなのだろうか、
自分は彼にとってどのような存在であったのだろうか、と。

聖杯戦争はシィにとってどうでもいいものだ。
参戦するつもりはもとよりない。
ギコと再会することだけが彼女の目的なのだ。

そして問いただす。
ギコにとって己の存在とは何であるのか?―――と。

(*゚ー゚) (聖杯を求めてやってきた魔術師に会うかもしれない。
     戦場になる札幌で戦いに巻き込まれることもあるかもしれない。
     でも、私は……貴方にもう一度会いたいの……ギコくん)

シィの家系は魔術師としてまだ四代ほどしか続いていない。
魔術師としてはまだ幼く、世代を重ねていくことで強力になっていく、
魔術師の力の証とも呼べる魔術刻印は大した力を持ち合わせていない。


21 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:13:47 ID:U5Z4bAHs0

腕に自信のある魔術師が集うことになる聖杯戦争に、
巻き添えを食らってしまった場合心許ない力ではあるが、
シィには磨いてきた技と魔術の知識で切り抜ける、自信があった。

ましてやこの力に不満を持ったことなどない。
その未熟さで時計塔では迫害され、疎んじられ、嘲笑されもしたが、
だからこそ彼との出会いを果たせたのだから。

(*゚ー゚) (ギコくん、私、強くなったんだよ?
      貴方と別れてから、ずっと、ずっと私は一人で戦ってきたの。
      私は、家柄を鼻にかけてふんぞり返る連中より……ずっと強くなったわ)

その想いが故に、切磋琢磨してきた経験による自信が故に、
戦場へと足を踏み入れることを、彼女は躊躇わなかった。

札幌行きのバスを見つけると荷物を預けて乗り込み、2分後に発車した。
最後部にはまだ空いている席があるのを見つけ、窓際のそこへ腰かける。

離れていく空港を眺めながら、徐々に前へと視線を移していった。
前には街が広がっている。雪に塗れた千歳の街が。
そしてこのバスが進む先には札幌があり、そこにギコもいるはずだ。

シィは逸る気持ちを抑えながら、瞼を閉じて仮眠をとっていく。
時間はまだまだかかる。休める時に休んでおこう、といった考えからだった。

座席にまで伝わるエンジンの振動と暖房が心地よく、
興奮した心にリラックスをもたらし、やがて眠りへと落ちていくが……。


22 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:14:31 ID:U5Z4bAHs0

(*;゚ー゚) 「ッ!」

咄嗟に右手を抑えた。そこに熱を感じたのだ。
次いで刃物がそこを這っていったような鋭利な痛みが来て、
抑えた手から血が漏れ出てくる。

(*;゚ー゚) 「……まさか」

恐る恐る彼女が左手を離していくと、赤い物が見えた。
ハンカチを取り出して拭うと、血は不思議なことにもう止まっている。
だが赤い物はまだそこにある。赤く輝く三画の紋章がそこにはある。

(*;゚ー゚) 「"令呪"……? 私に……?」

シィは戸惑いを隠せなかった。

令呪とは聖杯から与えられるサーヴァントに対する絶対命令権であり、
この一画一画に膨大な魔術が込められ、
マスターの魔術回路と接続されることで機能する。


23 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:15:14 ID:U5Z4bAHs0

聖杯は聖杯に相応しい者を自ら選び、この令呪を与えるのだ。

つまり、シィもまた聖杯戦争に参加する権利を得た、ということであり、
棄権しない限り戦わなければならないということである。

聖杯を望んでなどはいない。願望機を使って叶えたい願いもない。
しかしシィは聖杯に選ばれ令呪を与えられてしまった。
その事実が彼女に混乱をもたらしたのだが、シィは強かであった。

(*゚ー゚) (聖杯なんて望んじゃいない。でも……これさえあれば私は、
     サーヴァントを召喚して"ギコくん"の力になることも出来る)

右手の甲に宿った令呪を見て、彼女は薄っすらと笑みを浮かべる。
ギコに会いたいと思う気持ちは、彼を支えたいという決意へと変貌を遂げた。

(*゚ー゚) 「待ってて、ギコくん」

こうして、札幌の地にマスターが一人舞いおりていった。


24 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:16:06 ID:U5Z4bAHs0

******

東8丁目通りを境目とし、南側に位置する家屋の並ぶ通りがあった。

発展の止まったこの町には近代化の兆しが見えるが、
大江戸マートと呼ばれる古びた酒屋や個人経営の和菓子屋、
老夫婦がひっそりと営む理容室に、割烹着に身を包む妙齢の女性が切り盛りする弁当屋などが並び、
昭和の名残が色濃く刻まれていてどこか、不思議な暖かみを感じさせる町となっていた。

和と洋の入り混じる昭和の日本建築が形成する町の中に、
一つだけ異質な建造物がひっそりと置かれている。

民家の並ぶ通り、そこの一画に小さな駐車場を構え、
沈み始めてきた太陽の光を受け、真っ白に輝く尖塔を持つそれは教会だ。
ロマネ札幌キリスト教会と呼ばれるそこに、ロマネスク神父はいた。

礼拝堂には40人ほどの人が座ることが出来るのだが、
日曜でもなければ訪れる人は大しておらず、
神父は暇を持て余し長椅子に腰かけていた。

( ФωФ)旦 「……」

落ちついた色の壁には聖画が並び、中央にはキリスト象が置かれ、
その象と背後に嵌められたステンドグラスは、小さな教会にしてはたいへん立派なものだ。

ロマネスクはそれらを眺めながら茶をすする。

番茶で、高価な物でもないが近所の老婆が孫が世話になっているから、
といった理由で、断ったものの押しつけられる形で受け取ってしまった手前、
こうしてありがたく神父は頂いているのであった。


25 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:18:49 ID:U5Z4bAHs0

彼はこの土地に古くから住み着いており、小中高と札幌で学んだ。
両親は熱心なクリスチャンで北海道に布教へやってきたことで、
彼の生活がスタートし、その生涯も今年で42年目を迎えようとしていた。

信仰を尊び、よく学び、少林寺拳法を究める若かりし頃の彼が大学には進まず、
海外へと渡って聖堂協会に加わり代行者となったのは、
その信仰心から鑑みれば当然のことだったのかもしれない。

( ФωФ)旦 「……ブーンか?」

突如、神父は口を開く。

目はキリスト象へと向けられており、
両の手は湯呑みを握り二口目を運ぼうとしているところだった。

(;^ω^) 「ロマおじさん……相変わらず鋭いお」

( ФωФ)旦 「私は一応、君の拳法の師匠でもある。
          長い付き合いであるが故に、気配がすればわかる」

火傷痕の残る神父の鋭い両目が、ゆっくり近づいてきたブーンを見つめると、
彼は父性を感じさせる柔らかな笑みを作り出し、
自分の腰かけている長椅子の隣に座るよう手で促す。

( ^ω^) 「お邪魔しますお」

( ФωФ) 「少し待っていろ、今お茶を淹れてこよう。番茶でよければな」

(;^ω^) 「あっ、そんな。構わなくっていいお」


26 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:20:29 ID:U5Z4bAHs0

( ФωФ) 「今のブーンの顔からはどこか翳りが見える。
        長い話になりそうなのでな。気を落ち着かせる為にも、お茶が必要だ」

そう返すと神父は礼拝堂から出ていき、
手持無沙汰にブーンは聖画やステンドグラスを眺めていく。

( ^ω^) 「お見通し、かお……」

呟きにはどこか自嘲がこもっていて、ブーンの耳に重く響いたのだが、
礼拝堂には大した音響にもならずに虚しく消えていった。

華々しいステンドグラスはいつもブーンを圧倒させる。
普段のブーンならば、この輝きに感嘆させられるばかりであるのだが、
今はただ自分のちっぽけさを思い知らされるだけであった。

十字に磔にされたキリスト像にすら嘲笑されているような気持ちに陥る。
少林寺拳法の師匠ロマネスクに似ず、彼は信仰心というものを持ち合わせてはいなかった。

( ФωФ)旦 「祈ってみるか?」

お盆に湯呑みを二つ乗せたロマネスクが戻ってくるなり、
ブーンへとそう問いかける。

( ^ω^) 「お祈りなんて、する必要ないお……」

( ФωФ)旦 「神は迷える子羊を救ってくださる。信じてさえいれば、な」

言うなり、ロマネスクは自分の席に戻り、ブーンへと茶を差し出した。


27 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:21:39 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) 「ありがとうございますお」

( ФωФ) 「それで、ブーン。君は私に何の用事があって訪ねてきたのだ?」

( ^ω^) 「……聖杯戦争についてですお」

( ФωФ) 「ふむ、やはりか……棄権するのか?」

( ^ω^) 「いや、僕は棄権するつもりはないんだお……。
       でも戦うつもりも……いや戦う理由がないんだお」

( ФωФ) 「内藤家と津出家は、根源への到達に意欲を燃やしていたが?」

( ^ω^) 「それは、とーちゃん達の話だお。それを、僕の願いにしていいのかわからないんだお。
       親の遺志を子が継ぐ、立派な話しだお。でも、そこに僕の意思はない。
       だったら、そんな物に命を賭ける価値は、人の命を奪ってでも叶える価値があるのか、わからないんだお」

( ФωФ) 「此度の聖杯戦争の監督役である私に、どうこう口出しする権利はないが……。
        魔術師という者は、皆、根源への到達を目指しているのではないのか?
        ならば、それだけで理由にはなりえると思うが」

( ФωФ) 「他者を討ち果たし、他者よりも強いことを証明する。
        そして皆の羨望を勝ち得る。人間の闘争本能からすれば、至極自然だ」

( ^ω^) 「僕は……そんなもの要らないお」

( ФωФ) 「ふむ……そうか。そう答えるとは思っていたが、
        やはりそう育ってしまったか、ブーン」


28 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:22:49 ID:U5Z4bAHs0

( ФωФ) 「私は君が聖杯戦争に参戦することを見越し、
        シャキン……君の父に代わって君の肉体を鍛え上げ、拳法の技を授けたが、
        どうやら君を強くすることは出来ても、優しさを忘れさせることは出来なかったようだ」

( ^ω^) 「……すいませんお」

( ФωФ) 「違う、責めているわけではない。むしろ誇ってもらいたいくらいだ。
        君は君らしく、内藤の名に恥じぬ見事な男に成長した。
        魔術師としては未熟と言っていいかも知れんが、君は内藤に相応しい」

( ФωФ) 「後は覚悟と決断を伴えば、一人前の男だ。
        自分の誇りを持って、争うがよい」

(;^ω^) 「ロマおじさん……僕は戦いたくないって……」

( ФωФ) 「聖杯戦争の監督役ではなく、君の父の友人として、君の友人として言わせてもらおう。
        それは君に誇りがないからだ。君に馴染む理想が魔術の教えにはなかったからだ。
        だからこそ胸に手を当てて考えるがよい、君自身の想いを、何をしたいかを」

(;^ω^) 「僕の……想い?」

( ФωФ) 「君はシャキンに似ている。シャキンが君に何を教えてきたか、
        "何と言って教えてきたか"を思い出せ。そこに君の理想があるはずだ」

(;^ω^) 「とーちゃん……?」

言われるがままに、ブーンは自分の胸に手を当て、瞼を閉じて思考していく。
心の奥底にあるものを、埃にまみれた古い記憶を手繰り寄せる。


29 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:23:55 ID:U5Z4bAHs0

*(  )*

そうすると、ある女の子のことが脳裏をよぎった。
だが、それは違うと断じた。

かつてそう願ったことはあったが、魔術の無力さを噛みしめて呪い、
不可能なのだと悟った。あの時の血の臭いと残酷な景色は、
胸に深々と刻まれた無念は、忘れてはいない。

(  ω ) (……違うんだお。僕が心のどこかで願っていることはわかっているお。
       僕が叶えたいもの……それは……)

己の真なる願いを探すべく、彼は更に自分自身へ耳を傾ける。

すると、ある声が蘇ってきた。

(` ω ´) 「ブーン、魔術はな―――――――――なんだよ。魔術は―――の為に、
       ――――てきた。俺達の先祖は―――――――だから――――」

父、シャキンの言葉だ。
だが断片的で、古い記憶をはっきりと思い返すことは出来ない。
しかし、次の父の言葉はブーンは鮮明に覚えていた。

(`・ω・´) 「魔術よ人の為に斯くあれ―――これが内藤の教えだ。
        俺達は先祖がそうしてきたように人々の為に魔術を行使し、
        苦しむ人々を救わねばならない。それが、魔術を使う者の責任だ」

( ^ω^) (……そうか、そうだったのかお)

31 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:25:01 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) (かーちゃんもよく、魔術の稽古をつけてくれる時、よく言っていたお。
       とーちゃんが根源への到達を果たそうとしていたのは、
       きっと、この内藤の教えを成そうとしていたからだお……)

でも、とブーンは思う。

( ^ω^) (それが僕の願いで……いいのかお?)

彼はまだ、答えを出せずにいる。
自分が六人の魔術師を倒してでも、幼馴染を殺してしまうかもしれないとしても、
果たすべき、果たしたい願いとは一体なんなのだろうか、と。

( ФωФ) 「……ブーン、答えは出たか?」

(;^ω^) 「あっ、いや、あの……まだ……だお」

自問自答を繰り返しているうちに、すっかり日が暮れてしまったようだ。
北海道の2月はまだ夜が早い。きっとすぐにでも真っ暗になってしまうことだろう。
ロマネスクから貰ったブーンのお茶は、もう冷え切っていた。

( ФωФ) 「では、棄権するか?」

(;^ω^) 「は……あー……いや……まだ、わかりませんお」

( ФωФ) 「で、あるのならば、それが答えだ」


32 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:27:23 ID:U5Z4bAHs0

(;^ω^) 「え……?」

( ФωФ) 「君は勝った後の願いに悩むが、棄権しようとは決してしない。
        ならば、戦う意思があるということだ。
        今は、それが答えでいいのではないか?」

(;^ω^) 「えっと……つまり、願いは勝った後に考えろ……ってこと?」

( ФωФ) 「あぁ、そうだ」

Σ(;^ω^) 「そういうわけにもいかないお!!」

( ФωФ) 「だが、棄権はしないのだろう?
        ならば戦いながらでも考えるがいい」

( ФωФ) 「君からは闘志を感じる。
        何か大きなことを果たしてやろうという、野望にも似たそれが、な」

(;^ω^) 「うぅ……」

( ФωФ) 「ブーン、すまないがもう遅いから今日は帰れ」

Σ(;^ω^) 「あっ! あぁ、すいませんお長々と」

( ФωФ) 「私が迷惑しているから、というわけではない。
        君の身を案じて言っているんだ。
        内藤家に参戦の意思があることは、この聖杯戦争を知る者には知れていることだ」


33 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:28:11 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) 「?」

( ФωФ) 「帰り道に気の早い他のマスターに殺されかねん。
        ここは中立地帯で安全ではあるが、棄権しない限り匿ってやることは出来んしな」

Σ(;^ω^) 「……ッ!!」

( ФωФ) 「さぁ、分かったなら早く帰れ」

(;^ω^) 「わ、わかったお……すいませんでしたおロマおじさん」

( ФωФ) 「いや、いい。気が向いたらまた来るといい。
        望めば稽古をつけてやることも出来る」

( ^ω^) 「もちろんだお、ありがとうございました……先生」

そう言って立ち去ろうとするブーンの背は、
どこか怯えており、横顔からはいまだ翳りが覗けた。

( ФωФ) 「……まだ悩んでいるのなら、母にも同じことを打ち開けてみると良い。
        私よりも遥かに力となってくれることだろう」

そんな彼が気にかかったロマネスクは、背を押すように声を張り上げる。
ドアに手を掛けていたブーンは振り返り、

(* ^ω^)ノシ

人懐っこい笑みを浮かべて会釈をし、手を振った。
そのまま礼拝堂から出ていき、ロマネスクから姿が見えなくなってしまう。


34 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:29:04 ID:U5Z4bAHs0

が、

( ФωФ) 「神の御前だぞ、そんな物騒な物はしまっておけ」

ロマネスクは再び口を開き、語りかけた。
鋭い目つきは更に鋭くなっていき、語気にも力が籠る。

すると、どこから忍び込んだのか、懺悔室の扉から二人の人影が礼拝堂に現われ、
ステンドグラスの前に躍り出るとその姿が露わとなった。

(,,゚Д゚) 「久しいな、まさか貴様が、本当に監督役をやっているとは思わなかったぞ」

180cmほどの長身に引き締まった肉体を持つ、
茶色い皮のライダースジャケットを着た男がそう言った。
短く刈られた黒髪のせいで、野獣のようにギラついた目が際立つ。

今、その視線はロマネスクへと向けられているが、
ロマネスクの目は彼を見てはいなかった。

( ФωФ) 「ギコよ、それが貴様のサーヴァントか?」

ギコと呼ばれた男はそちらのほうをちらりと窺うが、
すぐに視線をロマネスクへと戻し、

(,,゚Д゚) 「あぁ、こいつが俺のサーヴァントだ。
      剣のサーヴァント……セイバー」

<人リ゚‐゚リ


35 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:30:01 ID:U5Z4bAHs0

宣言をした。

聖杯に選ばれ、英霊をサーヴァントとして召喚し、
自分は聖杯戦争を戦う準備が整った、との宣言に他ならない。

眩い金髪を丸く束ね、動きやすい髪形は戦いに不便をもたらさず、
それでいて美しさを損なわない、機能性と装飾性を兼ねた美を持つ、
甲冑姿のこの少女こそがギコの召喚した、セイバーのクラスのサーヴァントである。

( ФωФ) 「セイバーか、それは心強いな」

(,,゚Д゚) 「そうだ。今すぐあの時の決着をつけるには、申し分ないサーヴァントだ」

( ФωФ) 「ふっ……生憎、今の私は監督役。サーヴァントは持ち合わせていない。
        貴様との勝負は、貴様が此度の聖杯戦争を生き延びてからにさせてもらおう」

(,,゚Д゚) 「気に食わんな、道化が……」

( ФωФ) 「ならばセイバーに命じて私を殺してみるか?
        "正義の便利屋"」

(,,゚Д゚) 「違う、そんな用事でわざわざここまできてやったわけじゃあない。
      貴様の事は心底憎い。今すぐこの場で殺してやりたいくらいだ……」

(,,゚Д゚) 「だが、今の俺に貴様を殺す理由は無い。
      貴様に釘を刺しにきてやった、それだけだ」

( ФωФ) 「ほう、それはそれは……御苦労なことだ」


36 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:31:12 ID:U5Z4bAHs0

(,,゚Д゚) 「……今度は邪魔をするなよ」

( ФωФ) 「忠告、痛みいる」

(,,゚Д゚) 「……」

この時、ギコの眉間が、僅かにではあるがピクリと動いた。
過去に味わわされた屈辱が脳裏を過ぎったのだ。
だが、ここで刃を振るい私闘に興ずることだけは、彼の"正義"が許さなかった。

(,,゚Д゚) 「……さらばだ」

苦い溜飲を飲み下し、ギコはそう告げると、
セイバーは実体を失って霊体化して消えていく。

( ФωФ) 「ふむ……」

瞬きの間にギコもその場から消え、彼の気配をロマネスクは感じなくなった。
                   はにや
( ФωФ) 「"正義の便利屋"刃児耶ギコ……やはり、彼もまた己の理想を諦めきれずにいるのか。
        津出の悲願成就の為迷わぬツンに、内藤の教えから己なりの信念を模索するブーン」

コツ、コツと礼拝堂の中をロマネスクの皮靴が音を響かせる。
そして、ステンドグラス越しに月光を浴び、
夜空を見上げる彼は、懐かしい感覚を胸に得て呟く。


37 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:31:58 ID:U5Z4bAHs0

( ФωФ) 「我々が争った"中東の聖杯戦争"、聖堂協会と魔術協会双方が全力でぶつかりあい、
        多くの犠牲を出した"聖杯戦争前哨戦"、
        その遺伝子が此度の"雪国の聖杯戦争"の中で駆け巡っている」

( ФωФ) 「そしてまた、新たなる犠牲を作り出していく……多くの信念と意地をぶつけあって。
        シャキン先輩、モララー先輩。あの子らはやるさ、きっとやる。
        貴方らの代役を任された時は戸惑った。正直今もこれで良かったのか悩む」

( ФωФ) 「だが、今日のブーンの背中と笑顔を見て、俺は確信したよ。あの子らは立派に戦う。
        ……約束は果たしたよ。後は、見届けるだけだ。
        杉浦ロマネスクではなく、この聖杯戦争の監督役として」

視線をキリスト像に移したロマネスクは、雑念を消して、祈った。
信念の為とはいえ血肉を散らし、この地で争いを繰り広げる者達へ、
神父である彼は何を願うのだろうか。

( -ω-) 「……」


その願いは、神のみぞが知る――――


( ФωФ) 「では、聖杯戦争の始まりを見守ろうか」

ロマネスクの呟きを聞く者は、彼が祈りを捧げるキリストが聞くのみであった。


38 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:34:07 ID:U5Z4bAHs0

******

(;^ω^) 「かーちゃん! ただいまだお!」

J( 'ー`)し 「お帰り、ブーン。今日は遅かったねぇ」

(;^ω^) 「かーちゃん、今すぐ聞きたいことがあるんだお。
      これはとっても大事なことなんだお、だから真剣に聞いて欲しいんだお」

帰宅したブーンは開口一番、疑念と想いを吐き出していく。
愛する我が子は何か焦っているようだが、とても真剣そうな顔をしていたので、
母は読んでいた本をテーブルに置くと正座したままゆっくりと振り返り、真っ直ぐに彼を見据る。

J( 'ー`)し 「ブーン、まずは落ち着いて、正座しなさい」

(;^ω^) 「あ、うん……」

聞きたくて仕方がない、そう言った風体であったが、
母の威厳か、ブーンは気圧されてしまいその場で正座した。

J( 'ー`)し 「で、ブーン。話ってなんだい?」

( ^ω^) 「とーちゃんのことなんだお……」

J( 'ー`)し 「とーちゃんの?」

( ^ω^) 「うん……とーちゃんは聖杯を見つけてから、
      ずっと根源への到達を目指していたって聞いてるお」

J( 'ー`)し 「そうだねぇー……あの人は、それはもう熱心だったわ」


39 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:35:12 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) 「でも、僕は思い出したんだお。
      とーちゃんが生きてた時、僕にいっつも言い聞かせてたことを。
      ちょっと前までかーちゃんが魔術を教えてくれてた時も教えてくれたこと」

J( 'ー`)し 「……内藤家の家訓かい?」

( ^ω^) 「そうだお、"魔術よ人の為に斯くあれ"だお。
      根源への到達の為に魔術を使っているのだから当然のことだお。
      根源から得られる膨大な知恵を手にすれば、きっと"魔法"を成すこともできる」

( ^ω^) 「とーちゃんは、だから根源への到達を目指したのかお?
       功名心や後世に名を残す為とか、そういうんじゃなくって」

J( 'ー`)し 「……とーちゃんはね、シャキンは、それはもう人の為に人の為にって、
      いっつも一所懸命な人だったんだよ。あの人が魔術師だって知らなかった時から、
      私にはあの人の優しさが眩しかったよ」

(;^ω^) 「かーちゃん……?」

J( 'ー`)し 「あの人はきっと、魔術なんてものが無くても人様を幸せにしようと挑み続けたはずさ。
      自分の幸せよりも人の幸せを望む人だった。だからこそ、私はあの人を選んで、
      あの人を幸せにしたいって思えたんだ……」

J( 'ー`)し 「だからね……ブーン。全くもって、その通りさ。
      とーちゃんはね、根源から得た知恵で人々を幸せにする為に戦ってたんだ。
      幼稚な理想で、正義の味方気取りな馬鹿な人だったけど……」

J( 'ー`)し 「あの人は心の底から人類の幸福を望んだ、立派な男だったよ」


40 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:36:14 ID:U5Z4bAHs0

( ^ω^) 「……そうかお。それが聞けて、良かったお」

J( 'ー`)し 「今になって、急にどうしてそんなことを聞いてくるんだいブーン?
       私には、何となくわかる気がするけど、ブーンの口から聞かせておくれよ」

聞かれ、少し言い淀んでから、覚悟をして、
ブーンは口を開いていった。

( ^ω^) 「かーちゃん……僕は、聖杯戦争に挑むお」

J( 'ー`)し 「ふふふ、やっぱりね。私が聞いても何も答えてはくれなかったくせに、
      男の子ってのはどうしてこう、いきなりなのかね。
      でも、かーちゃんはブーンが決意してくれて嬉しいよ」

J( 'ー`)し 「もし、ブーンが戦う時がきたら……私は今日までずっとその時を待ち続けてきたんだ」

「ちょっと待ってなさい」と言ったかーちゃんは居間を離れ、
ブーンは痺れかけてきた足をのばし、少し揉んでから胡坐をかく。

その頃にはかーちゃんは戻ってきており、手には一丁の銃が握られていた。


41 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:37:09 ID:U5Z4bAHs0

(;^ω^) 「え、かーちゃん……それ……何?」

ゴト、と鈍い音を立てて、黒光りする銃身がテーブルに置かれる。
古臭い、どこか歴史を感じさせる銃にブーンは釘付けとなり、疑問が浮かぶばかりだ。

J( 'ー`)し 「こいつの名前はスオミ KP/-31
      とーちゃんが生前見つけてきて、今回の聖杯戦争に使うはずだったものさ」

(;^ω^) 「魔術師が銃を!?」

魔術師とは近代科学を嫌う習性がある。

それは魔術で行えることに何故機械を使う必要があるのか、
という単純に必要がないからといった理由もあり、
魔術を扱える自分達が何故凡人達の使う物を使わねばならないのか、
という特権階級的意識が根底にあるからである。

だから魔術師同士の戦いに銃を持ち出すなど到底考えられないことでもあり、
真剣に魔術を競い合っているのにそんな物を使うなど、恥ずべき行為なのだ。

魔術を扱えるのにわざわざ凡人共の武器を持ち出すとは。
内藤も落ちぶれたな、と一笑に付されてしまうに違いない。


42 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:39:31 ID:U5Z4bAHs0

(;^ω^) 「かーちゃんマジかお!?」

J( 'ー`)し 「マジもマジ、大真面目よ。でも、こいつをそのまま使うわけじゃあないわ。
      この銃は見てくれはただの古臭い銃だけど、
      これを使っていたある英雄にこそ価値があるの」

9mmパラベラムと呼ばれる弾薬を扱う、口径の小さなサブマシンガン。

未だにこんな銃を使い続ける者など、正規軍では決してありえない。
これよりも遥かに優れた貫通力を持つ銃弾を撃てて、
装弾数にも恵まれたサブマシンガンは今や数多く出回っているのだ

実戦で使う為に用意したとなれば言語道断だが、
それは魔術師であるブーンの知る由もないこと。

では、その銃の価値とは?

J( 'ー`)し 「この銃を使っていた英雄は―――――」

過去の英雄を英霊の座から呼び出し、使い魔とするサーヴァント。

ブーンの英雄や英霊といったイメージを覆す、
自らのサーヴァントとなるその英雄の名を……彼は知らなかった。


43 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:41:24 ID:U5Z4bAHs0

******

古い記憶。

少女の住む国は内戦の絶えない国だった。
力ある者達が聖戦と声高に叫んで違う考えを持つ者達を殺し、
異端と蔑んで徹底的に"浄化"していたのだ。

そんな国は家族を失う子供で溢れかえっており、少女もその一人だった。
行き場を失った子供達は大人達に銃を持たされて戦うか、奴隷として売り出されるかのどちらかだ。

少女は奴隷の道を歩まされてしまう。
食事をし、働き、家族みんなで普通に暮らしていたところ、
ある日突然やってきた"聖戦士"達に平穏を壊され、少女は全てを奪われてしまう。

襲われたことに混乱した。犯されることに恐怖もした。
屈辱の時間は続いたが気付けばことは済み、全ては突風のように過ぎ去っていた。
そして何時の間にか少女は奴隷市場の商品として並べられていたのだ。

   「……」

少女は呆けたように空を眺めていた。
太陽の眩い輝きに目を奪われているようだ。

一瞬で何もかもが崩れ去ってしまった為、幼い脳が処理に追いつけていないのかもしれない。

そんなふうに空を見ていた折、店主に腕を引っ張られた。
力強く、太い腕だ。少女は自分の細腕が脱臼してしまいそうな程の痛みを感じる。
だが抵抗する力も心も、今の彼女には残ってはいない。


44 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:42:56 ID:U5Z4bAHs0

店主はこの少女を力強く宣伝したが、客のノリはイマイチである。
そこで、彼はこう提案する。

  「じゃあ、味見していっておくれよ。
   その上でこの商品がいかに上物であるか判断してくれ」

  「ッ!?」

少女は驚愕したが、店主は下卑た笑みを浮かべて、

  「ただし手を出すからには買ってもらうぜ、冷やかしはよしておくれよ」

そう言うなり、少女の服とも言えないような布切れに手をかけ、
力を込めると引き裂いていく。布が甲高い音を立たせて、
少女の成長段階にある身体が見物客達の前に晒されていってしまうと、

  「ま、待った! そいつはいくらだ!? 俺が買う!!」

客の波から割って出てきた、若い黒髪の兵士が名乗りをあげた。

この時の少女には金のことはわからなかったが、
市場で、魚が10匹以上は買えるくらいの金額を店主に払った彼は、
少女の手を引いてその場を急いで去っていく。

  「……」

  「危ないとこだったな、君」

黒髪の兵士はしばらく歩き続けると手を離し、少女へとそう語りかける。


45 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:44:43 ID:U5Z4bAHs0

  「……」

だが彼女は口を固く閉ざし、応えようとはしなかった。

  「成り行き上、買っちゃったけどさ。家に帰っていいよ」

  「……」

  「……じゃあ、元気でな」

男の肌の色はこの国の物とは違って少し白かった。
黄色人種のものかもしれないが、この国の人間では無いことだけはたしかで、
おそらくは傭兵で、若さゆえに先程のような行動をとってしまったのだろう。

少女はその男が背を向け、去っていくのを立ち止まって見続けていた。
ついさっきまで太陽を見ていたのと同じように。

  「お家無い……」

すると、彼女の口から自然と声が出た。

虫が鳴くような小さな声ではあったが、それは確かに兵士へ届いていたようで、
少女のほうを振りかえって来た道を戻ってくる。

  「そうか……そうだよな……」

そして彼女の目の前で立ち止まると、心底困り果てたように頭を抱えた。
少女もまた困惑していて、二人は結論を出せずにそのまま立ちつくしてしまう。


46 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:46:47 ID:U5Z4bAHs0

  「あの……お兄さんは私を買ったんだから、連れて帰るものじゃないんですか?」

  「いや……アレは、ちょっとした気の迷いだ……。
   君、俺と同じ目の色で、髪の色も一緒だったからさ……、
   その、見ていられなくて……」

  「私、お母さんもお父さんもいなくなっちゃった……」

  「……」

少女が何を言いたいのかは、若いこの男にも痛いほどよくわかった。
どうしてやるのがこの少女にとって最善のことなのか、
初めからわかりきってはいたのだが、それをしてやれるほどの決心はこの男にはなかった。

だがこの少女の目を見ていると、彼は過去を思い返し、
心臓が鷲掴みにされたような苦しみを覚えるのだ。

何とかしてやりたいが、という思いと、無理だという思いが男の中でせめぎ合っている。

しかし、

  「……私、どうしたらいいの?」

少女のその一言が男に覚悟を持たせた。
責任を最後まで果たし切る、という重い覚悟だ。
だからその証として、彼はしゃがみ込んで少女と同じ目線に立つと、

  「じゃあ、君に名前をつけよう」

そう言って辺りをキョロキョロ見回すと、一旦空を見てから少女を見直して、


47 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:50:40 ID:U5Z4bAHs0

  「君の名前は、今日からクウだ」

  「……クォーォ?」

  「そうだ、俺の国の言葉で、空って意味だよ。
   恐らくは、君の祖先を辿れば俺と同じ国に住む人種のはずさ。
   似合うと思うが……どうだ?」

川 ゚ -゚) 「うん……なんとなく、懐かしい感じがする。
      クーォ?……クゥー?……クゥー……クー……クー……」

     「そうそう、まっ、多少イントネーションは違ってもいいか……」

川 ゚ -゚) 「でも私……」

     「うん?」

川 ゚ -゚) 「……」

少女は、いや、クーは自分には両親から貰った名前がある、
と、そう言いかけたが、胸の奥から刺々しい過去の痛みが引きずり出てきて、
喉に何かがつっかえたように苦しくなって、声が止まってしまう。

川 ゚ -゚) 「ううん……何でも無い」

だから彼女は、この時この名前を受け入れて、新たなる人生を歩むことを決意した。

     「そうか……じゃあ自己紹介だ。俺の名前は――――――」


48 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:52:26 ID:U5Z4bAHs0

******

真っ暗な空間。
四角形を描くこの場所はどこかの地下室だ。

闇の中では黒々とした小さな多足生物がうごめいており、
触覚やその沢山の足をうねらせて何かへと集まっていた。
空間の中心には1m程の盛り上がりがあり、そこに"何か"がいることは確かである。

地下室の扉が開き重低音が響く。
すると、前方だけを照らす小さな灯りをもった人々が続々と降りてきて、
虫達は一瞬だけ機敏な反応を示したが、害がないことを悟ると中央の"エサ"に没頭し続ける。

人々はそれぞれローブをきており、マスクをしている為、
顔を見ることはかなわなかった。

彼らがマスクをしている理由は単純である。
この部屋は臭うのだ。鼻腔から頭までを満たす血の粘つく臭いと、
嗅覚を突き刺すようなアンモニア臭と糞尿の悪臭、それに混じる淫靡なメスの臭い。

何も知らずに入ってしまえば卒倒してしまうだろう。
それら全てを少しでも軽減させる為、彼らはマスクを装着しているのだ。

  「どうやら、間に合ったようだな」

一人が口を開く。男の、年齢を感じさせる鈍い声だ。


49 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:54:19 ID:U5Z4bAHs0

  「えぇ、急ピッチで苗床となる工程を進めていきましたから。
   下手をすればこの"魂蟲"に肉も残さず食い殺されてしまっていたでしょうが、
   被験体の肉体的強度と治癒力の高さのおかげで、どうやら成功しそうです」

次にしたのは女の声だ。
まだ若く、少々幼さは残るがどこか艶を感じさせる声である。

  「実験中だったこの蟲が使えるとはな。
   常人……いや"人間"であれば、恐らく一瞬で肉体を食らい尽くされていただろう。
   俺達は良い拾い物をしたな。まだ人間でなくなってから日が浅く、上手く適応出来たようだ」

   「これなら我々が聖杯戦争を勝ち抜くことも充分に可能だ。
    後は、我々の命令通り動けるかどうかだが……」

  「ご心配なく、三日三晩かけて私が催眠をかけましたから。
   最も、この"化物"に魂蟲の苗床になった後、自我が残っていればの話しですが」

  「残っておらずとも、他の六人のマスターを始末さえしてくれればいい。
   聖杯が現われたところを蟲にこいつを殺させ、俺達が頂いちまえばいいのさ」

   「そう言えば、残っていたと言えばこいつが持っていた魔術刻印、どうなったんだ?
    欠片みたいなもので、魔術回路などは二割程度しか引き継がれてはいないようだったが」


50 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:56:30 ID:U5Z4bAHs0

   「問題は無い、体内に入り込んだ魂蟲が魔術回路の代替物となり、
    術に必要な魔術を送り込むことになるが、元々あった回路もそのまま使える。
    水道の蛇口がいくらあろうとも、ダムに不都合は起きんよ」

   「へぇ……なるほど。じゃあこの最終調整さえ終われば、
    サーヴァントを召喚して化物を戦わせられるというわけか」

    「そういうこと。呪文は催眠の時に刷り込んだし、やるべきことをやってくれるでしょ。
     同じ"バーサーカー"同士、文字通り死ぬまで暴れ回ってくれるわ」

    「そうなりゃ、俺達一族が根源への到達を成し遂げるってわけか……。
     この土地で内藤と津出が聖杯を発見したって聞いてから、
     潜伏しつづけた苦労もこれで報われるぜ。ここ、寒くて仕方がないんだよ」

    「ふっふ、まだ気が早いぞ。……集中しろ、目を凝らして見ておくが良い。
     そろそろ、最終調整が終わるところだ。目覚めるが良い、我らの美しき獣よ……」

最年長の者がそう言うよりが早いか、虫達に変化が起きる。
中心部へと集まるそれらが次々と吸収されていったのだ。

部屋で蠢いていた虫達の姿は徐々に消えていき、
やがて"苗床"となった化物の姿が露わとなっていくと……、


51 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:57:54 ID:U5Z4bAHs0

川  ) 「 」

    「おぉ、四肢がついているぞ。五体満足だ」

部屋と同じ、闇色のドレスを見に纏ったその美しき化物が立ち上がり、
その様に彼らは感嘆の声を上げていく。

    「なんだあのドレス。あれ、爺さんの趣味かい?」

    「いや、あれは私の趣味。折角の私達の力作なんだから、
     美しく着飾ってあげたいじゃない?」

    「そんなことはどうでもよい、早くサーヴァントを召喚させるぞ。
     サーヴァントの召喚は椅子取りゲームだ。急いで準備しろ」

慌ただしく動き始める彼らの目には、もうその化物は移っておらず、
サーヴァント召喚の儀式の用意をしていく。

川  ) 「……」

今まで意識を失い、覚醒したばかりの化物は、
自分の左手の甲に宿る赤々とした紋章を不思議そうに見つめる。
その視線はどこか煽情的で、"令呪"の放つ輝きに目を奪われているようだった。

聖杯戦争の為に精製されたこの最悪の怪物は、こうして札幌の地で目覚めたのだ。


52 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:02:25 ID:U5Z4bAHs0

******

円山は市街地に面していながら、そのほとんどの面積が山と、
原生林に覆われた自然の豊かな土地であり、北上すればそちらへ、
北東へと向かえば北海道の陸路の要である札幌駅へ向かう事も出来る。

自然と科学が混然一体となり、田舎的でもない都会的でもない、
小奇麗さと小汚さが相まって不思議な静けさを醸し出す土地だ。

原生林の中には公園があり、その入り口付近にはマンションが建てられていた。
そこの一室こそが魔術師、隠田ドクオの隠れ家が一つである。

髪も瞳も黒く、日系人らしい顔立ちをしていたが、
彼の浅黒い肌の色と独自の雰囲気には日本人らしからぬものがあり、
人種を判別させることは難しかった。

しかし170cm程の身長は平均的な日本人男性のそれで、
彼はオリーブドラブのモッズコートを羽織り、裾を悠然と翻して歩く。

前を開いたままのその姿は寒そうに思われるが、しかしどこか様になっている。

それがこの男の国籍の特定を難しくさせる要因でもあった。


53 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:03:54 ID:U5Z4bAHs0

('A`)ノ 「……」

ドクオはマンションの玄関へ辿りつくと、暗証番号を押してセキュリティーを解き、
ドアをくぐっていくと階段を登って目的の部屋に向かう。

二階の203号室であり、彼がそこを選んだ理由は戦略的に優位をとれるからだ。
二階ならばいざ襲撃を受けた祭も脱出するのに適し、外部の敵を早期発見することも可能で、
風の影響も上のフロアに比べて少ない。

最上階のほうが敵の索敵に優れるという意見もあるだろうが、
それならば屋上へ行けばいい話だ。それよりも、上階に居を構え、
万が一敵に火攻めをしかけられた時に脱出できなくては困る。

リスクを最小限に抑え、最大限のメリットを得るには、
ドクオの持論では二階がベストだったのだ。

聖杯戦争に挑むにあたって、彼に妥協は一切なかった。
あらゆる事態に備え、念入りに計画を立ててきた。

その最後の一押しが今日の"仕事"である。

ドクオは目的地の前に到達すると、ノックをした。
すると5秒と待たずに扉の向こう側から気配が生まれ、

   「"愛国者は?"」

そう問われた。
唐突すぎる問いであり、要領を得ないものであるが……、


54 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:05:29 ID:U5Z4bAHs0

('A`) 「"らりるれろ"」

ドクオは迷わずに合言葉を答える。

すると素早く扉が開かれていき、

('、`*川 「……尾行は?」

女性が現われるなりそう尋ねた。
砂色の髪が美しい、緑色の目をした彼女は、
ドクオの仲間であるペニサス・イトーだ。

('A`) 「一切無い。追っ手は送られていないようだ」

('、`*川 「入って」

言って、彼を招き入れると周辺を油断のない眼つきで見回し、
そっと扉を閉めていった。

廊下をドクオは進んでいき、その背後にペニサスがつく。
168cmと女性として高身長の部類に入る身体はYシャツ姿であり、
白い生地からは豊かな膨らみが作られている。

鍛えられているのか引き締まった体型をし、
しなやかな筋肉を持ち合わせているのだが女性らしさも併せ持つ。
真の肉体美というのは、こういうことを言うのかもしれない。

('、`*川 「お帰りなさい、ボス。自分の目で現地を見てきて、どうだった?」


55 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:06:41 ID:U5Z4bAHs0

('A`) 「悪くない土地だ。都市開発されていながら自然も残っていて"マナ"が豊富だ。
    これなら存分に魔術を行使することができるだろう。
    高層建築物も多く、偵察も容易そうだ。……もっとも、お前達はもう知っているだろうが」

ドアを開くと、キッチンとダイニングが一緒になったそこは、
左手側がダイニング、右手側がキッチンとなり、ダイニングの中心にはテーブルが置かれ、
それを囲うようにソファーが配置されていて、テレビと向き合うようになっていた。

今、テーブルの上ではトランプが忙しなく動きまわり、
6人の男女がそれぞれカードゲームに興じている。
  _
( ゚∀゚) 「おぉ! ボス、お帰り」

(゚、゚トソン 「お帰りなさいませ、ドクオさん」

 ( ^Д^) 「お帰り~。 あ、革命で」

(;><) 「ちょ……! あ、あぁ、お帰りなさいなんですボス」

( ´∀`) 「お帰りモナ、ドクオ」

('A`) 「……楽しそうだな」
 _、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、手を止めろ。ボス、すまん」

('A`) 「いや、何も悪いとは言っていない。お前達もよく働いてくれたしな。
    だが……なんだそれ? ポーカーじゃないのか?」


56 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:09:16 ID:U5Z4bAHs0

 ( ^Д^) 「日本のゲームでな、大富豪ってんだ。ボスもやるか?」

('A`) 「後でな、今は報告と会議が先だ」

ドクオが彼らにボスと呼ばれるのは、そのままの意味だ。
ペニサスを含め、口を開いた順からジョルジュ、トソン、プギャー、ビロード、
モナー、渋澤と言い、この七名はドクオにとって仲間でもあるが同時に部下でもある。

彼の興した、ある会社の社員なのだ。

社長に対して敬意の欠いた口振りをする者が多いが、
それは生死を賭けた場面を共に切り抜けてきた仲間である、という意識からくるもので、
ドクオもまた同じ認識をしていて、仕事以外で上下関係を強要したことはない。

仕事となれば彼らの行動は素早く、散らばっていたトランプを集めて、
姿勢を整えると一斉にドクオのほうを皆が見た。

('A`) 「まずはみんな、三ヶ月前からの潜入任務、御苦労だ。
    お前達のおかげで魔術師が動いてる素振りを見せることもなく、
    準備を進めることが出来、俺は"サスガブラザーズ"の追跡に専念出来た」

('A`) 「ありがとう。奴らを始末することで一つ席が空き、これで聖杯戦争に参戦出来る。
    令呪もこの通りだ。俺はこれから、サーヴァントの召喚を行う。
    ペニサス、例の物を持ってきてくれ」

('ー`*川 「了解」

笑みを作って応えた彼女は、ダイニングから姿を消す。
ペニサスが戻ってくるまでの間、
ドクオは改めて説明をしようと口を開く。


57 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:10:47 ID:U5Z4bAHs0

('A`) 「聖杯は魔力を溜めこみ、奇跡を引き起こすことを可能にする。
    英霊の召喚はその膨大な魔力による奇跡の一端と言えるだろう。
    俺達魔術師は聖杯に選ばれて令呪を得ることで、マスターになる」

('A`) 「令呪とは三画からなる聖痕のようなもので、サーヴァントへの絶対命令権を持つ。
    命令は単純で短期なものであるほどその効力は強く、例えば遠く離れた場所から"来い"と命じれば、
    瞬間移動をしたように即座に目の前に現われる。逆に、複雑で長期にわたるものほど令呪の効果は薄い」

('A`) 「一度令呪を使うと一画が消費されてしまう。三度限りの命令権だ。
    これがあるからこそ魔術師は英霊を従えることが出来る。
    自害しろ、と命じられればそれまでだ。だから英霊達はマスターに従う」

('A`) 「英霊は聖杯に呼びだされ、使い魔、サーヴァントになるが元は英雄だ。
    気性の荒い奴もいればプライドの高い奴もいる、扱いは気をつけろよ。
    それでだ、サーヴァントにはクラスというものがあって……」

そこでドクオはペニサスが戻ってきたことに気付き、言葉を区切った。
長々とした話しではあったが、これから行う戦いのこととあって、
仲間達は真剣な面持ちで聞いてはいるが、退屈しているに違いない。


58 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:11:48 ID:U5Z4bAHs0

('、`*川 「ボス、持って来たわよ」

ペニサスはそう言って、布に覆われた棒状の何かを両手でドクオに差し出す。
受け取ったドクオは包みを解きながら、再び口を開く。

('A`) 「サーヴァントにはクラスがあり、セイバー、ランサー、アーチャー、
    ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーの七つだ。
    俺がこれから呼びだそうとしているのは……」

布を全て払い去る。

そして、皆の前でドクオは掲げた。
現われたものは3m近くある槍であり、古びたそれは中世の英雄の愛槍であったものだ。

('A`) 「ランサーだ。この遺物で俺はある英霊を召喚する」

この槍を寄り代に使えば、確実にドクオの意中の英霊を召喚することが出来るだろう。
彼はその英霊を何故狙うのか充分に説明すると、この街の中でもマナが特に豊富であり、
人気の少ない原生林へと向かい、召喚の儀式の用意を仲間と共に始めていく。

PMC(傭兵企業)"インビジブルワン"を率いる魔術師、隠田ドクオ。
傭兵を部下として使うこの魔術師は、必勝の為の布石を打っていく。


59 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:13:05 ID:U5Z4bAHs0

******

その夜、聖杯戦争に挑むべく、
五人のマスターがサーヴァント召喚の儀式を開始する。

ある者は自宅にある魔術工房で―――――


( ^ω^) 「大丈夫、大丈夫だお。この聖遺物があれば、確実にあの英霊が召喚できる。
       とーちゃんとかーちゃんに託された物、今こそ全て引き継ぐお」

ブーンは、自ら描いた召喚の陣と向き合い、集中力を高める。
魔方陣の中央には母より預かったあのサブマシンガンが設置され、
それを一瞥したブーンは頭の中で召喚の手順を反芻していく。


ある者は人気のない大地で―――――


(*゚ー゚) 「ギコくん……待ってて。今度は、私が力になるから……」

シィに願いなどは無かった。だが想いだけはある。

かつての恋人の力となるべく、病院からこっそりと拝借した輸血パックから血を垂らし、
魔方陣を描いていき、それを終えると万が一の為に用意しておいた聖杯戦争の文献をもう一度読みこみ、
召喚の呪文を間違えぬよう、しっかり脳へと刻む。


60 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:14:19 ID:U5Z4bAHs0

ある者は整えられた闇の中で――――


    「いい? 貴女はこれからサーヴァントの召喚をするの」

川 -) 「……」

黒いドレスを見に纏う、かつて"クー"と名付けられた"化物"は、
召喚の陣に向かわされて、催眠に従ってサーヴァントの召喚に備えていた。

   「魔方陣は用意した。後は狂化の一文を忘れずに挟むこと――――始めて」

女に指示されるがままに、化物は一度だけ頷くと、口を開いていく。
口ずさむのは召喚の呪文だ。


ある者は最もマナの豊富な場所で―――――


('A`) 「サーヴァントの召喚に大掛かりな術式は必要ない。
    聖杯が魔力を供給してくれるから、魔術師は呼びだすだけだ」

そう語るドクオではあるが、魔方陣に手抜かりは無く、
彼はその出来に満足すると再び口を開く。
水銀を用いて作られた魔方陣へと向かい手をかざし、

('A`) 「どんな大魔術が使われるのか、と期待してたんだろうがな」


61 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:15:49 ID:U5Z4bAHs0

('A`) 「じゃあ、儀式を始めるぞ――――」

その言葉に部下達は首肯を返し、ドクオが呪文の詠唱を開始していく。


('A`) 「告げる」

( ^ω^) 「告げる」

(*゚ー゚) 「告げる」

川 -) 「告げる」


( ^ω^) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に――――」

(*゚ー゚) 「聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば答えよ――――」

('A`) 「誓いを此処に。我は常世全ての善となる者、我は常世全ての悪を敷く者――――」

川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
     汝狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――――」


( ^ω^) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

呪文の結びをつけるとともに、ブーンは身体を流れる魔力の奔流を限界まで加速させた。
サーヴァントをこの世に導きだし、そして繋ぎとめる為に大量の魔力を必要とする為だ。


62 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:16:54 ID:U5Z4bAHs0

逆巻く風と稲光。

吹き飛ばされそうな風圧に耐えるブーンの前で、召喚の紋様が輝きを放つ。
魔方陣の中に出来た道はついに"あの世"へと繋がったのだ。

工房から溢れんばかりの光の奥から、現われ出でるものがある。

(;゚ω゚) 「成功……した?」

(<`十´>


それは――――白き戦闘服を纏う立ち姿。

(*゚ー゚) 「これが、サーヴァント……!」


|/▼)


それは――――純白のローブに防具を備えた男の姿。

川 -) 「……」


以#。益゚以


それは――――禍々しき輝きで黄金の鎧を曇らせた狂戦士の姿。


63 :名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 23:18:43 ID:U5Z4bAHs0


目,`゚Д゚目


それは、男の狙い通りの鎧武者の姿。

険しい眉間に荒々しさを感じさせる相貌は、
快活さを感じさせる笑みを一瞬見せ、膝を突く。

目,`゚Д゚目 「問おう。貴殿が拙者を招いたマスターか?」

全て思うがままにことが運び、達成感から笑い声の一つでも上げてもおかしくないのだが、
ドクオは憮然と己の召喚したランサーを見返し、仲間を見渡すと宣言した。


('A`) 「あぁ―――聖杯戦争を開始するぞ」


聖杯戦争の火蓋は切られ、夜が更けその第一日目が始まろうとしていたその時、
札幌の街に、どこまでも響き渡るような獰猛な雄叫びが放たれていった。

聞く者を恐怖させる獣の轟きに、不穏な空気が漂い始めていく中――――


――――聖杯戦争は、開始される。



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