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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです 第2話 

73 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:15:13 ID:nqepu3F.0

内藤家の一階には魔術の研究を行う工房があり、
今、そこに一騎のサーヴァントが召喚された。

(<`十´> 「問おう、お前が私のマスターか?」

雪原に擬態する真っ白なギリースーツを装備したサーヴァントは、
死神を連想させるマスクを覆った顔をブーンへと向けて尋ねた。

(;^ω^) 「そ、そうだお……僕が君のマスターだお」

150cm代と大柄のブーンと比べると酷く小柄な体型だったが、
それでもサーヴァントの放つ威圧感に彼は気圧されてしまい、
とっさに平静を装ったものの声が上ずってしまう。

(;^ω^) 「き、君は……アーチャーで間違いないのかお?」

(<`十´> 「如何にも」

(;^ω^) 「第二次世界大戦で、沢山人を―――」

ブーンは彼の生前について全く知らなかったのだが、
母親に教えられていたためその活躍ぶりは把握していた。
しかし、ブーンは争いを好まず戦争に嫌悪もしている。

大戦で戦った英雄に対して、そんな彼は抵抗を持たずにいられない。


74 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:16:16 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「マスター、一つ言っておくが。
      私は命じられたことを可能な限り最大限に遂行しただけだ」

それを察したのか、言葉を遮ってアーチャーは先手を打つ。

(;^ω^) 「で、でも……」

(<`十´> 「私達の生きる時代ではそれが正義だった。
      銃を取らねば、何も守れなかった。それだけだ」

(;^ω^) 「……」

つい出してしまった言葉に後悔しかけるが、
それでもブーンは戦争というものを肯定することは出来なかった。

……それは、これから聖杯戦争を戦う自分への否定でもあったのかもしれない。

(<`十´> 「マスター、名前は?」

ブーンが口籠ってしまったことで生まれた沈黙を破ったのは、
アーチャーの問いであった。


75 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:17:13 ID:nqepu3F.0

( ^ω^) 「僕は、内藤ホライゾン。みんなブーンって呼ぶからブーンでいいお」

(<`十´> 「ふむ……ブーンか。お前の口振りから見るに、私の名は知っているようだな。
      ならば、あえて名乗らん。顔を合わせることもそれほどないだろうしな」

(;^ω^) 「え……え!?」

アーチャーの何気ない言葉に、ブーンは驚愕した。
自分の言葉がどこまで彼を傷つけたのだろうかと心配するが、

(<`十´> 「む? 勘違いするな。お前の言葉に私は何の感慨も浮かばない。
      戦略的な問題だ。お前は聖杯戦争が終わるまでここで隠れていればいい。
      私が6人のマスターもサーヴァントも、全て仕留めてこよう」

(;^ω^) 「い、いや! それは!!」

(<`十´> 「マスターが死ねばサーヴァントに魔力供給がされなくなる。
      お前に死なれたら、私が困るのだ。だから、外に出歩かずここで隠れていろ」

(;^ω^) 「そんな甘いはずがないお! 6人を相手に君1人で立ち向かえるわけ……」


76 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:19:45 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「一度に相手にするわけではない。ゲリラ戦は私の得意手だ。
      もしものことがあれば私はマスターを援護するが……足手まといだ、お前は」

(;^ω^) 「……!」

正直に、包み隠しもせずにアーチャーに言われ、
ブーンは自分の足場が崩れ去ったような感覚を覚えた。

口から否定の言葉が出かけるが……、

(<`十´> 「違う、とは言わせぬぞ? どう見てもマスターの眼は戦う者の眼では無い。
      胸の内に、何か決めたことはあるのだろうが……戦いへの迷いも見えるぞ?」

ブーンは父であるシャキンの真意を知り、迷いを断ち切れたつもりでいたのだが、
アーチャーの問いにブーンは自信を持てなくなってしまったのだ。

元から、それは一過性のものでしかなかったのかもしれない。
いずれ壁にぶつかれば、脆くも崩れ去るだけの貧弱な覚悟だったのかもしれない。
しかし、"根源への到達"を"人々の為"に成そうとしていたのは、間違いなく彼の意思だ。

(;^ω^) 「……」

彼の意思に違いは無かったのだが、揺らいでしまった。
揺らいでしまったブーンはアーチャーに反論出来なかった。


77 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:25:12 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「どこに不都合がある? お前は手を汚さずに聖杯を手に入れられる。
      私はかつての大戦と同じように、可能な限り最大限に任務を遂行するだけだ」

(;^ω^) 「君一人じゃ……勝てないお」

(<`十´> 「マスターと一緒じゃ私は勝てん」

サーヴァントにも聖杯に託す願いがある。
だからこそ英霊の座より現世への召喚に応じるのだ。

叶えたい願いを、中途半端な覚悟で戦いに臨むブーンに妨げられるよりは、
己の腕を信じそれだけで聖杯戦争に挑むほうが、アーチャーにとっては堅実だった。

(<`十´> 「ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい」

そう言ってアーチャーは霊体化していき、姿を失っていくと、

(;^ω^) 「アーチャー!!」

文字通り、ブーンの前から消えてしまった。
令呪と魔術回路は繋がっており、まだ彼が近くにいることは理解できたが、
ブーンの呼ぶ声にアーチャーが応えることはなかった。


78 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:12 ID:nqepu3F.0

******

|/▼) 「問おう、汝が我を召喚せしマスターか?」

人気の無い円山の中腹で魔方陣を敷いたシィは、
儀式の際に莫大な魔力によって吹きすさんだ疾風が止んだかと思うと、
静まり返った夜闇の中心で、眩いほどの白さを放つローブを顔を覆うように纏った男に問われる。

(*;゚ー゚) (これが、サーヴァント……)

自らが行使した魔術が成功し、見事サーヴァントの召喚を成し遂げた高揚感に一瞬浸るが、
男の身から感じられる魔力の濃さに対する驚きのせいで、それは心の端へと追いやられてしまう。

(*;゚ー゚) 「えぇ、そうよ」

しかし、どれだけ高等な存在であっても所詮は使い魔である。
術者に行使される側である彼に、シィは魔術師らしく毅然とした態度で応えるが、
規格外の魔力量に尻ごみする気持ちは抑えられなかった。

|/▼) 「我は聖杯の招きに従い、"英霊の座"より現世へ"アサシン"のクラスを得て参上した」

アサシン。

気配遮断スキルを持ち、姿を見せず、気配も感じさせずにマスターを暗殺する、
名の通り暗殺者の英霊が就くクラスである。


79 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:58 ID:nqepu3F.0

正面切っての戦闘では、他のクラスに比べステータスで劣り不利ではあるが、
マスターが上手く暗殺者としての本領を発揮させてやれれば、充分に勝ち残っていけるクラスだ。

サーヴァントはマスターの魔力供給により現世に姿を留めることが出来、これを"現界"と言う。
マスターから魔力を与えられない限り、自力で補給することの出来ないサーヴァントは姿を保てず、
聖杯を手にすることは叶わずに消滅する羽目になる。

そこに、アサシンが付け込む隙があるのだ。
サーヴァントのステータスはいくら低くとも、人間が彼らに敵うことはない。

闇に溶け込みマスターを狙うアサシンは、聖杯戦争において魔術師の天敵と言っていいだろう。

(*゚ー゚) 「アサシン……」

しかし、セイバー、アーチャー、ランサーの"三騎士"と呼ばれるクラスには、
圧倒的にステータスで劣っていることに変わりは無い。

シィはいざ敵に襲われた際、このアサシンが撃退することは出来るのだろうかと不安を抱く。
姿を見せず暗躍すればいいのだが、何らかのアクシデントに見舞われ、
襲撃されてしまった場合はかち合いに弱いアサシンは頼りがいが無かった。

(*゚ー゚) (でも、ギコくんと合流できれば……)

しかし、アサシンほど情報収集能力に長けたサーヴァントもいないだろう。
戦闘面では役に立てないかもしれないが、ギコとさえ合流出来れば心強い戦力になるに違いない。

マスター殺しのサーヴァント、アサシンとギコのサーヴァントがいれば、
もはや敵はいないだろうとシィは考え直していき、安堵の息をひとまず吐いた。


80 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:28:57 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「なんだ、俺じゃあ頼り無いのかいお譲さん?」

先程の硬い口調とは打ってかわり、やけに砕けた声でアサシンが尋ねる。

(*゚ー゚) 「いえ、そんなことはないわ。貴方ほど便利なサーヴァントはいないもの。
     英霊の前で溜息なんて失礼だったわね、ごめんなさい」

|/▼) 「良いんだ、ステータスの低さには些か俺も不満を覚える。
    生きていた頃ならばこの程度の身体能力じゃあなかったんだが……」

(*゚ー゚) 「あら、残念ね。英霊になる前のほうが強かったの、貴方達は?」

|/▼) 「あぁ、現地での知名度やマスターとの相性など、
    様々な要因によって英霊は能力を限定され、サーヴァントとして召喚される。
    残念でならない、貴女のような女性に俺の全てを見せてやれないとは……」

フードの端から窺える口元を緩めたアサシンはシィの前で跪くと手を取り、
その甲へと静かに口づけていった。

(*゚ー゚) 「貴方、本当にアサシンなの……?」

シィが疑問に思うのも無理はない。

アサシンという割には服装は白いローブとよく目立ち、
何より、その振る舞いが彼女の想像していたアサシンの印象とはかけ離れていた。

|/▼) 「あぁ、アサシンさ。アサシン教団の長、ハサン・サッバーハの名を受け継いだ者の一人」


81 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:30:31 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「アサシンってもっと寡黙なイメージだったんだけど……。
     まぁ、いいわ。ステータスを見る限りアサシンであることは間違いないしね」

マスターとなった者にはサーヴァントのステータスが視えるようになる。
目に映る、というよりは意識に直接情報が刻まれてくるような感覚に近い。
これは敵のサーヴァントにも同様であり、"真名"や"宝具"といった例外以外は開示される。

シィの意識に、アサシンの保有するスキルとステータスが映し出されていく。


【クラス】 |/▼)アサシン
【マスター】シィ・C・ルボンダール
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】男性
【身長体重】
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 魔力D 敏捷A 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
           サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
           ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
         
【保有スキル】投擲(短刀):B
         短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。

         風除けの加護:A
         中東に伝わる台風避けの呪い。

【宝具】???


82 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:31:17 ID:nqepu3F.0

得た情報は記憶の片隅に記録され、意識すればいつでも見ることが出来る。
シィはアサシンのステータスを見るのを止めると、次に取るべき行動を命じていく。
これが、聖杯戦争が開始して初めての二人の作戦行動となる。

(*゚ー゚) 「アサシン、早速やって貰いたいことがあるの」

|/▼) 「何なりと、マスター」

跪いたまま、アサシンは演技っぽくそう応えた。
どうやらこのサーヴァントは主従の関係の通り動いてくれるらしい。
シィはそれに安堵して、彼を真っ直ぐに見据えて告げる。

(*゚ー゚) 「この写真の男の人を捜し出して」

そう言ってアサシンに見せたのは、

『 (,,゚Д゚) 』

かつてのギコの写真だった。
まだ少し幼さの残る顔立ちではあるが、眼には厳かな光が宿っている。

(*゚ー゚) 「昔の写真だけど、顔立ちはそれほど変わっていないはずよ。
     私達が勝ち残るには、彼と合流しないといけない。重要な仕事よ」

|/▼) 「……」

アサシンはその眼を見ただけで、生前の経験から、
この少年は腹に何かを抱え、自らに十字架を科して死地に赴いていく、
試練に生きる人間であることを察した。


83 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:32:01 ID:nqepu3F.0

が、特に何かを語るわけでもなく、口の端を少し緩めると、

|/▼) 「了解だ、マスター」

ただ、それだけを言葉にして跳躍の姿勢を取ったその時、

   「―――――――――ッ!!」

|/▼) 「ッ!」

夜の市外の静けさを打ち破る、地の果てにまで轟くような、
凶暴すぎる獣の雄叫びが二人の身を震わせた。

(*;゚ー゚) 「な、なに!?」

|/▼) (この空気の震え方、近いな……)

聞く者の恐怖心を煽るそれにシィは狼狽し、アサシンの表情は強張っていく。
先に判断を下したのは、マスターよりも実戦経験の豊富なアサシンの方だ。

|/▼) 「マスター、仕事は取りやめだ。安全な場所まで逃げるぞ」

(*;゚ー゚) 「敵がいるの……!?」

唐突に知らしめられた敵の存在にシィはただ動揺するばかりだ。

……ここのマナの豊富さが敵の魔力を紛れこませていたの?
やっと敵を察知したシィは冷静に分析していくが、
今はそんな悠長に構えていられる場合では無い。


84 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:03 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「何なのこの魔力の量、尋常じゃない! 一体何を召喚したっていうのよ……!」

|/▼) 「相手が何だろうが関係ない。早く逃げろ。
    サーヴァントが近付いてきていることだけは確実だ!」

(*;゚ー゚) 「そ、そうね! わかったわ」

シィは言葉と同時に力強く一歩踏みこんだが、アサシンはその場から動こうとはしない。
数メートル程駆けたあたりで気がつき振り返ると、

   「止まるな、そのまま走り続けていけ。俺は奴を食い止める」

両刃剣を背負った純白のローブの背はそう応える。

(*;゚ー゚) 「食い止めるって、貴方のステータスで大丈夫なの!?」

何度も言うように、アサシンのステータスでは三騎士に遥かに劣る。
もし相手のサーヴァントが三騎士であれば生還は絶望的だ。

   「良いから、俺を信じて背を向けろ。大丈夫だ。
    撤退するアサシンを追跡できるサーヴァントなどそうはいまい」

そんな不安要素を一切感じさせぬ、絶対的な自信を持った声で背は語る。


85 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:56 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「そ、それもそうね……危なくなったらすぐに逃げるのよ! 絶対よ!!」

      「分かっているさ、マスターは自分の身を心配していればよい。行け」

白衣のアサシンは落ちつき切っていた。
数多くの修羅場を超えてきた経験がそうさせるのだ。
暗殺者と言えども英霊である。状況の判断においては彼の方が一枚も二枚も上手だった。

言葉通り、自分の安全を優先することにしたシィは踵を返す。

     「一つ聞き忘れていた事があったな、マスター」

(*;゚ー゚) 「何!?」

     「俺は名乗った。だが、貴女の名は何と言うんだ、マスター?」

こんな時に、とシィは舌打ちをしたくなったが、
アサシンの声はどこか軽々しいものでも不快さは感じられず、
むしろ自身の緊張がほだされて表情が緩んでいった。

(*゚ー゚) 「シィよ、シィ・C・ルボンダール。それが、貴方のマスターの名前」

    「シィか。では、次に会うまでに覚えておこう。行くが良い。
     この場はアサシンのサーヴァント、ハサン・サッバーハが受け持った」

アサシンが言い切るよりも早く、木々の砕けていく音が鳴り響き、

    「――――――――――ッ!!」

雄叫びが近づいてきた。


86 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:35:33 ID:nqepu3F.0

本能的に、恐怖が命ずるままにシィは逃げ出していき、
アサシンは背中にかけていた鞘から大振りの両刃剣を引き抜く。
構えと激突はほぼ同時であった。

|/▼) 「くっ……」

フードに隠れた表情は想定以上の一撃の重みに歪んでいく。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

彼に襲いかかったのは憤怒とも狂気ともつかぬ、
人と言う枠組みから外れた形相をしたサーヴァントだった。

美しいはずの装飾を禍々しき闇色で曇らせた鎧兜を纏い
髪を血の色に染めて逆立たせたその男からは、英霊という風格が感じられない。

|/▼) 「"バーサーカー"か……面白い!」

召喚時に狂化を施し、理性が無くなる代わりにステータスを底上げされるクラス。
アサシンは一合打ち合って感じた剛力と狂気から、バーサーカーのサーヴァントであると察した。
真紅の瞳が彼を射抜き、目の前の"物体"を破壊するべく狂った英霊は剣を振りかぶる。

その一刀もかつては名剣と呼ばれた逸品であったのだろうが、
現世に狂化されて現われたことで輝きは失われ、
魔剣とでも呼ぶべき凶刃となってアサシンを襲う。


87 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:36:37 ID:nqepu3F.0

膨れ上がった筋肉を持つ巨体から繰り出す一撃は、
頭をかち割るべく真上から振られていく。

力任せの一撃だ。

単純ではあるが速度と威力には優れ、アサシンは迷わず避けた。
刹那、アサシンがいたはずの地面が爆撃でもされたかのように膨れ上がり、
石と土が重々しい音を立てて宙へと爆ぜる。

飛び上がったアサシンは木の幹へ着地するが、

|/▼) 「ちぃ……完全に避けてこれか」

屈むと同時に右肩から下腹部へかけて亀裂が走り、血が噴出した。
バーサーカーの剣圧によってカマイタチが生じ、肉を断たれたのだ。
最初に防いだ一撃も全身の骨を軋ませており、彼は確実にダメージを蓄積していた。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

だが、そんなこともお構いなしにバーサーカーは次の攻撃へと移り、
振った刃を返してアサシンの足場となる木を吹き飛ばす。

人間の力では決して折れぬであろう大樹は小枝のように呆気なく圧し折れ、
夜空に投げ出されたアサシンは超人的な身のこなしで体勢を立て直すと、
別の木に飛び移って敵を見直す。

以#。益゚以 「グゥゥゥウゥゥゥゥゥ……」

呻りをあげる狂気のサーヴァント。
そして暗殺者のサーヴァントの両者は一拍の間睨み合う。


88 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:38:31 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「動く者は全て殺す、とでも言いたげだな。意思も残ってはいまい」

以#。益゚以 「――――――――――ッ!!」

先に動き出したのはバーサーカーだ。
見失った獲物を捉えて、彼が襲いかからない理由は無い。

アサシンはその短絡な行動に苦笑するが、
ステータスの差は埋めようがなく、劣勢に立たされていた。

バーサーカーは、アサシンに止めを刺すべく咆哮をあげて突進していく。

|/▼) 「単純で狩りやすい。が、今は足を止められれば充分。
    ついでだ、貴様の真名――――探らせて貰うぞ!!」

それでも、彼の余裕は崩れなかった。

真っ正面から突っ込んでくるバーサーカーへ短刀を投げかけると同時、
アサシンは跳躍して背後を取っていった。

金属のぶつかり合う閃光と、叩きつけられる暴力の爆音が夜の円山で炸裂し、
聖杯戦争の初戦を飾るアサシンとバーサーカーの戦闘は白熱していく。


89 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:39:32 ID:nqepu3F.0

******

川 -) 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公―――」

闇の中で言葉が響く。

川 -) 「降り立つ風には壁を。
     四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

暗闇に満たされた室内の中央には魔方陣が刻まれ、
黒のドレスで着飾った長髪の女性は、令呪の宿る左手を前へとかざし、
言葉―――呪文を口ずさみ続けている。

川 -) 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)
     繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

呪文に触発されるように蟲の血で形成された魔方陣は輝きを放っていき、
部屋を赤く照らしてどこからともなく疾風が舞い込む。

その様を、ローブで身を包んだ男女が見守っていた。
ある者は興奮気味に、ある者は興味深く、ある者は願うように。

川 -) 「――――告げる」

彼らに"化物"と呼ばれる女性は体内を異物が巡っていく感覚を得る。
苦痛ではあるが、魔術を行使する上でそれは避けられないものだ。
逆に、その感覚がどれだけ魔力を練り上げられているか測る指標にもなる。


90 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:40:36 ID:nqepu3F.0

赤々と輝く魔方陣は不可思議な力を発していき、
陣内を稲光が走っていった。

聖杯が数十年もの年月をかけて蓄積してきた大魔力が注がれ、
この世と"あの世"を隔てる壁を打ち破り、かつての功績や伝説から集めた信仰により、
人間霊から精霊の粋にまで昇華された英霊を"英霊の座"より呼びだそうとしているのだ。

川 -) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
     聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

聖杯の強大なサポートを得ながら化物は英霊を現界させるべく、
己の体内から練り上げた魔力を魔方陣へ与え続けていく。

色香を漂わせる口から紡がれる呪文に応え、
英霊召喚の予兆はより一層激しくなり、風は暴風へ変化し、
稲光も強烈さを増して莫大な熱を撒き散らす。

川 -) 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
     我は常世総ての悪を敷く者」

この場を包むのはもはや闇では無く、青と赤の閃光だ。
測り知れぬエネルギーが部屋を満たしていき、それは最高潮へと達する。


91 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:41:36 ID:nqepu3F.0

川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
     汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―――」

そして召喚されるサーヴァントの理性を奪うかわりにステータスを上げる、
"狂化"の一文を付け加えると、

川 -) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」

川 -) 「天秤の守り手よ―――」

これまで込められ続けてきた魔力が堰を切った濁流の如く流れて行き、
その奔流がひときわ鮮烈な光を放つと人影が現われた。

あまりにも刺激の強すぎる閃光に多くの者は目を覆ったが、

川 -) 「……」

マスターである、この美しき化物だけは真っ直ぐに人影を見据えた。

以#。益゚以 「……」

光が散っていき、その姿が露わとなると、
ローブの男女は息を飲み、次いで歓喜した。

   「成功だ! 流石は"吸血鬼"と言ったところか。
    これで我が一族の大望をやっと果たせる」


92 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:42:33 ID:nqepu3F.0

川 -) 「……」

   「すっげぇ! これがサーヴァントかよぉ!!
    さっそく暴れさせようぜ! こいつならやれるよ!!」

以#。益゚以 「……」

しかし、彼らとは対照的にサーヴァントとそのマスターは、
不気味なまでに沈黙していた。

   「まぁ、待たんか。まずは情報の収集じゃ。
    ただ暴れさせるだけでは勝てるものも勝てん」

互いを見やる二人をよそにローブの男女は作戦を立てていくが、

   「そうね、じゃあ"クー"。バー―――」

川 ∀) 「……」

"クー"という化物の笑みが全てを壊した。

    「――――――――ッ!」

ローブの男の胴から上が、突如として振るわれた片刃剣に消し飛ばされたのだ。
彼らは息を飲み込み、剣の持ち主であるバーサーカーは、
闇と狂気に染まった黒刃を再び振りかざしていき、

    「―――――――――」

断末魔を上げる間も無くまた一人がその餌食となった。


93 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:43:27 ID:nqepu3F.0

    「どういうことだ!? 早く化物を鎮めろ!!」

生き残った二人の男女の内、まだ若い男がそう叫ぶと、
呆気にとられていた女は慌てて"化物"へと魔術を行使する。

    「嘘……暴走!? 催眠が効いていないっていうの!?
     そんな、意思なんて欠片くらいしか――――」

しかし、女の言葉は途中で途切れてしまう。
男が、バーサーカーに殴り飛ばされて壁に激突すると、
全身の骨を肉ごと粉砕されてしまったのだ。

息を飲み、潰れたトマトみたいになった男を看取った彼女は、

川 ∀) 「……」

振り返ると、口の端を釣り上げて禍々しい笑みを作ったクーに目を奪われた。
彼女がローブの女へと飛びかかったのだ。
押し倒され、馬乗りになったクーへ女は手をかざし、生き延びる為に魔術を行使した。

   「ひぃ……っ!」

これまでにない程の集中力だった。
まるですがるかのようにクーにかかった催眠を強めるが、
常人であれば廃人になりかねない強制力もクーには何の変化ももたらさない。


94 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:44:16 ID:nqepu3F.0

川 ∀) 「シネ……シネェ!!」

無駄だというのに魔術を使い続ける女の首を、クーは両手で締めあげた。
嗚咽を漏らし、口から唾液をしたたらせて悶える女を心底面白そうに見つめるクー。

舌舐めずりをしてから、クーは女の首筋に大口を開けて食らいついた。

   「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

肺が張り裂けんばかりの悲鳴を女が上げるが、
首に穴があいてしまった為にやがてそれはただの酸素となって漏れ出し、
息の根と共に止まっていった。

租借の度に女体が震え、淫猥な響きをもって血肉を散らしていく。
今のクーの胸にあるものは喜びだ。
空腹が満たされる食欲から与えられる幸福感を味わっていた。

人のそれと変わりない食欲を、クーは女の命を貪ることで満たす。

川 ゚∀゚) 「アッハッハッハッハッハ! マズイィ! マズイナァ!!」

骨の髄から血の一滴に至るまで貪り尽くしたクーは、
残った死体に唾を吐き捨てるとバーサーカーを一瞥した。

以#。益゚以 「……」


95 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:10 ID:nqepu3F.0

川 ゚ -゚) 「オマエモハラガヘッテイルダロウ、バーサーカー?」

声帯が人間の構造と違うのか、壊れているのか、
それとも精神の狂いのせいなのか、クーの声はどこか歪だ。

以#。益゚以 「……」

バーサーカーは沈黙を守っていた。
彼には狂化が施されている為、理性は残っていない。
マスター以外の存在を全て粉砕するだけの暴力の塊。

それが、今回の聖杯戦争で召喚されたバーサーカーというサーヴァントだった。

川 ゚ -゚) 「イクゾ、バーサーカー。ショクジヲシニイコウ」

以#。益゚以 「――――――――――――――ッ!!」

クーの言葉を命令と受け取ったのか、
バーサーカーは雄叫びを上げると剣を一度振るい、
天井をぶち破ってこの場を包む闇を晴らしていった。

天井に出来た穴からは夜空が覗けた。

そこから差し込む美しい月光がスポットライトのようにクーを照らしていき、
木々に覆われた景色を魅せていく。

どうやら、ここは山中に作られた地下施設のようであった。


96 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:58 ID:nqepu3F.0

跪いたバーサーカーはクーを肩に乗せると再び咆哮し、
外へと向かって飛び出していく。

川 ゚ -゚) 「ツギハオイシイモノヲタベヨウ。キットタノシイゾ、バーサーカー」

狂化のステータス向上の恩恵を受け、膨れ上がった筋肉に覆われた巨体を、
闇に染めたサーヴァントへとそう語りかけるクーに、

以#。益゚以 「―――――――――ッ!!」

応えるかのようにバーサーカーは獣じみた雄叫びを上げた。
そして彼は、空中から何者かを発見するともう一度叫ぶ。

|/▼)

応答ではなく、己の敵を発見した歓喜の咆哮を上げるバーサーカーは、
地に着地してクーを肩から降ろすと、その者へと向けて一目散に駆けだしていった。

川 ゚∀゚) 「ヌケガケナンテズルイゾ、バーサーカー」

その背を狂った笑みを浮かべて見送るクーは、ゆっくりと同じ方向へと歩き出す。


97 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:46:42 ID:nqepu3F.0

******

木々を震わす獰猛な叫びと連続して響き渡る破壊の音。
サーヴァントを召喚して間もなく、穏田ドクオ達は異変を感じていた。

('A`) 「こいつは……」

目,`゚Д゚目 「敵のサーヴァントに違いあるまい」

山道の外れにある広いスペース。
雪の敷き積もったその中心には土が露わとなった円形の部分があり、
そここそがドクオのサーヴァント"ランサー"が召喚された場である。

不自然に雪が融け上がって出来たクレーターに立つランサーは、
漆黒に塗られた当世具足と呼ばれる軽装の鎧を装備し、
肩には黄金で出来た数珠をぶら下げており、武者然としていた。

鹿の角を模した装飾のある兜をかぶった顔は、
敵の存在にさして脅威を感じていないのか威風堂々である。

同じくらいの目線に立つドクオを威厳に満ちた瞳で見据えたランサーは、

目,`゚Д゚目 「我が主よ、下知を。我が槍にて敵の首級を上げてみせようぞ」

そう指示を乞う。
冷静な声とは裏腹に、胸中では早速現われた敵との戦に燃えている様子だ。


98 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:49:40 ID:nqepu3F.0

('A`) 「いや、霊体化していろ。ランサー」

しかし、ドクオはそれを制する。
ランサーは少々面食らったようで抗議した。

目,`゚Д゚目 「むう、何故で御座るか? 拙者の力量を信用出来ぬとでも?」

('A`) 「違う、お前の強さは分かっている。敵の情報を探りたいだけだ。
    相手がどんなサーヴァントか、どんなマスターかもわからないんだぞ?」

目,`゚Д゚目 「しかし、それは相手も同じことであろう。
       兵は神速を尊ぶという。先手を制すれば優位であることに変わりない」

('A`) 「孫子か? 敵を知り、己を知れば百戦危うからずとも言うぞ。
    先手を制しても、仕留め切れなきゃ意味がねぇ」

目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孫子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」

('∀`) 「フフ……まぁ、そんなとこかな? 」

目;`゚Д゚目 「なんと! いやこれは失礼致した!」

('A`) 「いや、いい。今回は情報収集に専念だ。
    可能であるならば敵の排除を行う」


99 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:52:31 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「承知! では霊体化し偵察へ……」

('A`) 「行かなくて良い。偵察ならこいつらでやる」

親指を背後へ向けてドクオが言うと、ランサーはそちらへ振り返る。
視線を向けた先には、

('、`*川
  _
( ゚∀゚)

(゚、゚トソン

( ^Д^)

( ´∀`)

( ><)
 _、_
( ,_ノ` )

7人の仲間―――PMCインビジブルワンの傭兵達が武装しており、
あらゆる場所で一定の偽装効果を持つ、デシタルカモフラージュを施した迷彩服を着こんでいた。
手にはそれぞれ短機関銃や対物狙撃銃が構えられ、戦闘の準備は万端である。


100 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:53:48 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「これが貴殿の臣下で御座るか?」

('A`) 「まぁ、そんなとこか……」

('、`*川 「違うでしょ、ボス。私達は同志でしょうが」

( ´∀`) 「いや、ドクオの会社の社員である手前、
        そう言っても変わりないんじゃないかモナ?」
  _
( ゚∀゚) 「ボスがトノサマ? チョンマゲ似合わねーんじゃね?」

(゚ー゚トソン 「ぷっ、言えてますね、それ」
 _、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、軽口叩くな。ボス、今使い魔に敵を追跡させている。
      アンタがサーヴァントと話している間に放っておいた。映像を見てくれ」

渋澤が談笑し始めた彼らを制すと、ドクオに小型のノートパソコンを渡した。
画面には使い魔に取りつけたCCDカメラから送られる映像が流れていて、
複数のブラウザが立ち上がっていることから、駆り出された使い魔が一匹だけではないことがわかる。

('A`) 「おっ、気が効くな。仕事が早い」

('、`*川 「こっちでの潜伏生活が始まってから、非常時に備えてすぐ偵察出来るように、
      色んなところに仕掛けておいたのよーボスー」

('A`) 「お前達にも魔術を教えておいて良かったな、助かる」

言いながらも画面に目を走らせたドクオは、白いローブのサーヴァントと、
黒く禍々しい鎧を着こんだサーヴァントとの戦闘を眺めていく。
場所は、恐らくはこちらとは反対側の森の中だ。


101 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:54:30 ID:nqepu3F.0

('A`) (粉塵で見えんが……黒いのは恐らくバーサーカー。
    さっきの叫びもこいつのものだろう……が、こいつはなんだ?)

彼が疑問に思ったのは白いサーヴァントだった。
純白のローブで身を覆い、フードに隠れて顔は見えず、
軽装な防具を装備して両刃の大剣を構えてはいるがセイバーには思えない。

ならば、俊敏な身のこなしや短剣を投擲して戦う姿からアーチャーの可能性もあるが、
宝具を使用せずに戦闘しているライダーかもしれない。

いずれにせよ、既に召喚されているランサーとバーサーカー以外のクラスには間違いないが、
どのクラスであるか断じるには情報が少なすぎた。

電子機器越しにはサーヴァントのステータスが見られないことが悔やまれる。

('A`) (……今はこいつらよりも)

ドクオは別の窓へ目を移していく。
サーヴァント達の戦闘よりも重要な映像を見つけたのだ。

【 (*;゚ー゚) 】

白いダウンジャケットを着た薄ピンクのニット帽の女性だ。
帽子からはみ出した栗色の髪や雪のような肌から白人であることは明白である。
そして、右の手に宿る令呪を目敏く見逃さなかった。


102 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:55:37 ID:nqepu3F.0

('A`) 「こいつがマスターだな」

その言葉にインビジブルワンの傭兵達は目をギラつかせると、
己の標的を見定めて"部隊長"であるドクオに指示を乞う。
 _、_
( ,_ノ` ) 「ボス、指示を」

('A`) 「恐らくはこいつが白いやつのマスターだ。
    バーサーカーに襲われ逃走中、ってとこだろうな。
    バーサーカーのマスターが見えないのが気にかかるが、マスターには違いない」

('A`) 「このマスターの位置と動きから察するに、
    西から下山してそのまま10丁目方面に逃げ込むつもりだな。
    俺とジョルジュが追跡する。お前達は――――――――」

ドクオは情報をまとめ、仲間達へと指示を下していった。

目,`゚Д゚目 「どれ、我が主の手並みを拝見させて頂くかのう……」


103 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:56:26 ID:nqepu3F.0

******

(*;゚ー゚) 「はぁ……はぁ……っ」

シィは走っていた。

アサシンにその場を任せて逃走し、既に10分ほどが経過している。
その間一切速度を落とさずに全力で走り続けることで、
剣を交える金属音は途絶えたが、未だに木々を破壊する爆音は耳に届く。

(*;゚ー゚) (アサシンは大丈夫なのかしら)

森を抜け、市街に面した場所に到達したシィは、
ようやくサーヴァントの身を案じる余裕が生まれた。

背後を振りかえり山を見渡すと、土煙が立っているのが目立ち、
それは一般人には微かな変化にしか思われないだろうが、
彼女にはそこでサーヴァント同士の剣劇が繰り広げられていることが分かる。

(*;゚ー゚) 「アサシン、早く戻ってきて」

アサシンは充分に時間稼ぎの役割を果たした。
後は撤退し、シィの元に戻るのみだ。

サーヴァントを召喚した以上戦いの権利を放棄しない限り、
シィは狙われ続けることになる。

バーサーカーから逃げおおせたと言ってもアサシンが彼女の傍にいない以上、
残る5人のマスターに狙われた場合成す術も無く殺されてしまうだろう。
そんな状況で夜の街を歩くのは、シィには危険極まりない行為であった。


104 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:57:24 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) (とりあえず、どこかに隠れていなきゃ)

そう思ったシィは止めていた足を動かし、ひとまずどこかに隠れることにした。
魔術を使っているところを一般人に見られるのは、魔術師にとって禁忌である。
もっとも"証拠"さえ残さなければ問題はないのだが、人混みとあってはそうもいかない。

だからシィは、深夜でも人の多い場所を探して歩き続けた。
ビルの林立する10丁目通りを歩き続け、アスファルトに積もった雪に足跡を刻むシィ。

彼女は交差点に迫るとまだ灯りのつく場所を見つけた。

ほとんどの店はシャッターを降ろしていたが、
まだコンビニや一部のファーストフード店は開いている。

(*゚ー゚) 「そういえば!」

シィはここまでやって来る時、左側に曲がった先に、
コンビニがあったことを思い出すとスピードを上げた。

口からは荒い息が漏れ、心臓はもはや限界を迎え早鐘を打っていたが、
生き残る為に全力で走り続けた。
コンビニへ逃れようとする彼女はもはや縋りつく思いだ。

(*;゚ー゚) (人前じゃ、他のマスターも下手なことはしないでしょう)

交差点に差し掛かり、シィが後少しだと思った途端、胸の内に安堵が生まれた。
自分はサーヴァント同士の戦いに、生き残ったのだ。
これでかつての恋人と、ギコと合流できれば、聖杯を手にするのも夢ではない。


105 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:58:18 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「大丈夫、私はまだ戦える……これからも」

確かな自信を手にしたシィは笑みを作り出そうとすると、

(*゚ー゚) 「え……?」

音が響いた。
生々しい音だ。

衝撃が左肘から右半身へ響いていくと、次に強烈な熱量を左腕に感じる。

(*゚ー゚) 「なに……?」

走ることで生まれた熱ではない。
熱源へ目を配らせるが、彼女は事実を否定したくなった。

(*;゚ー゚) 「なん……なのよ……これ?」

灼熱を感じる左肘から先が地面に転げ落ちていたのだ。
血液がだくだくと流れ出る真っ赤なそこからは白い骨が飛び出していて、
それを目にしたシィは反射的に絶叫を上げそうになるが、

('A`) 「……」

濃緑色のモッズパーカーを羽織ったドクオに顔面を殴りつけられ、
口まで出かかっていた声は掻き消されてしまった。

自分の腕から噴出した血によって出来た水溜りに倒れ、
シィの白いダウンは赤黒く汚れていく。
血に塗れた彼女の傍らには、吹き飛ばされた己の腕がぽつりと並んでいる。


106 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:04:03 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「な……に……?」

('A`) 『狙撃は成功だ。これより移植を行う。周囲の警戒を怠るな』

シィは未だに事態が飲み込めていない様子だ。
だが、インカムを装着したドクオは彼女と打って変わり、
冷静に状況を仲間へ報告し、進めていく。
  _
( ゚∀゚) 「ボス、本当にそんなこと出来るのか?」

反対側、交差点から回り込んできたジョルジュがドクオに尋ね、
その間にも彼は雪の上に転がった令呪の宿るシィの左手を掴むと、

('A`) 「出来るさ、霊媒治療術は心得ている」

(*;´ー゚ナ) 「うっ……!」

身動きを取れぬよう彼女の身体を蹴りあげ、
踏みつけながらも魔術を練り上げて呪文を唱え出す。

シィはその様をただ眺めていることしか出来なかった。
ドクオの魔術によって、奪われてしまった自分の左手に宿る令呪が輝きだし、
  _
(;゚∀゚) 「……つッ!」

痛みと共にジョルジュの右手へと移植されていった。
今や、シィに宿っていた令呪は彼の手の甲で赤々と輝いている。


107 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:05:53 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「あっ……あぁ……」

言い知れぬ喪失感にシィは苛まれた。
サーヴァントも、聖杯も、ギコの力になるという想いも、
全て姑息な手で奪い取られてしまったのだ。

('A`) 「ジョルジュ、命じろ。令呪を使って、あの白いサーヴァントに」
  _
(;゚∀゚) 「……どうすればいいんだ?」

('A`) 「簡単だ。『マスターの変更を認め、前マスターを殺害せよ』と、
    令呪を意識して念じればいい。急げ、マスターの危機をサーヴァントは察知してくるぞ」
  _
(;゚∀゚) 「あいよ……」

言われた通り、ジョルジュは令呪の宿る手を抑えつけ、集中していく。
ドクオはシィの動きとサーヴァントの襲来に備え、警戒しながら彼を一瞥する。
  _
(;-∀-) 「令呪を以って命ずる……マスターの変更を認め、前マスターを殺害しろ……」

ジョルジュの言葉と共に令呪は一際大きな光を放ち、一画が失われた。
そして、残り二画となった令呪の前に――――

|/▼) 「……」

稲妻が生じたかと思ったその瞬間、サーヴァントが現われた。


108 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:06:49 ID:nqepu3F.0

('A`) 「ふん、アサシンだったか……」

マスターだけが持つサーヴァントのステータスを見る眼で、
疑問だった彼のクラスをドクオは確認した。
しかし、興味の無いような声で呼ばれたアサシンのサーヴァントは、

|/▼) 「……」

(*;´ー゚ナ) 「ひっ……あ、アサシン……嘘よね?」

淡々とシィの元へ近づいていき、ドクオは離れていく。
フードに隠れた顔を拝んだ彼は笑みを浮かべ、
アサシンは感情を窺わせぬ冷たい眼でシィを見た。

|/▼) 「……すまん、シィ」

(*´ー;ナ) 「いや……いやよ!」

横たわった彼女は涙を流し、必死に訴えかけた。
それでも、アサシンは令呪で命じられた通りに行動するしかなく、
その場で跪くとシィの首を掴んだ。

(*´ー;ナ) 「―――――」

何が起きたのか、掴まれた首には短刀の刃が突き立っており、
それはアサシンの右手の籠手から伸びていた。
引き離された白刃は血に塗れ――――


109 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:07:42 ID:nqepu3F.0

(* ーナ)

シィの命はその短刀によって奪われてしまった。
アサシンは首から離した手でシィの開きっぱなしの瞼を閉じてやり、

|/▼) 「眠れ、安らかに……」

亡骸へそう言葉をかけた。

その言葉は万人に等しく訪れる、死出の旅立ちが安らかであることを祈るものだ。
生前にアサシンが多くの暗殺対象へ向けて放った言葉でもある。

('A`) 「よくやったジョルジュ、アサシン。作戦は終了だ」

ドクオは仲間達へそう呼び掛けると、二人は速やかにその場を離れていく。

その迅速さは彼らが戦闘のプロフェッショナルであることの証明に他ならない。
死体や現場の後片付けは、聖堂協会と魔術協会の仕事だ。
死体一つ片付けることくらい、彼らにとっては造作もない。

ドクオがどのような汚いやり口でマスターを殺害しても、
聖杯戦争で生じた戦闘の後始末をするのは両教会の仕事であり、彼は利用しているのだ。
  _
( ゚∀゚) 「了解」

|/▼) 「……」

新たなマスターにジョルジュを迎えたアサシンは何も語らず、
実体を失って霊体へと変化していった。



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まとめteみた.【( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです】

73:◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土)13:15:13ID:nqepu3F.0内藤家の一階には魔術の研究を行う工房があり、今、そこに一騎のサーヴァントが召喚された。(「問おう、お前が私のマスターか?」雪原に擬態...

  • [2012/04/14 21:25]
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