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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第8話 

245 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:19:15 ID:lvNlMSaA0


絶望の淵にあったホムンクルスを救ったのは一人の少女。

ある事件をきっかけに、少女もまた不死の存在となる。

二人の物語は永遠に続くはずだった…………。


ホムンクルスは生きるようです


──少女編最終話





8 ホムンクルスと少女のようです



二人の愛の行方は────


246 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:20:03 ID:lvNlMSaA0



リリの傷口から体内に染み込み、その定義が彼女の体を変質させていく。
見た目は変わらないまま。


傷口は完全に消えたとき、リリの顔に血の気が戻った。

(;´・ω・`) 「リリ?」

僕の呼びかけに応えるかのように、彼女は目を開けた。

⌒*リ´- -リ 「ショ……ボン? 私は……?」

「あ、あ、有り得ない……。奇跡だ!」

(´;ω;`) 「奇跡じゃ……ありません。……錬金術です」

リリの手がゆっくりと傷口に触れた。
そこにはもう、何もない。

万能に見える錬金術も、死者を元通りに生き返らせることはできない。

(´ ω `) (リリを生かしてくださったことを感謝します)


247 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:21:49 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´- -リ 「……助けてくれたんだね。ありがとう」

(´;ω;`) 「当たり前だ」

リリの手を強く握った。
もう二度と手放さないと、決意して。

⌒*リ´ v リ 「……これで、私もショボンも同じだね」

既に彼女は"知っている"
自分がもはや人間ではないと言うことを。

殺しても死なず、朽ちゆくことのない存在だと。

知った上での、優しい微笑み。
ただそれだけで許された気がした。

(´・ω・`) 「……行こう。ここに長居は出来ない」



⌒*リ´*・-・リ 「……はい」


248 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:23:10 ID:lvNlMSaA0


ベッドから起きあがったリリに寄り添って支え、教会を出る。
腰を抜かした司祭はそのまま置いてきた。

馬は一頭しかいないが、しばらくは急ぐ必要もないだろう。

自由気ままな旅が楽しめるはずだ。

(´・ω・`) 「当初の予定通り、港へ向かおう。そこから先は、またその時に考えればいい」

⌒*リ´*・-・リ 「ショボンと一緒なら、どこまででも」



・  ・  ・  ・  ・  ・


249 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:28:32 ID:lvNlMSaA0




僕らは二人で、世界中を旅した。いろんな国を見て回った。いろんな出来事があった。

数万人が住む都市で商売をして、数百人もいない村で暮らした。


錬金術を用いて人助けをし、知識を授けて平和に一役買った。


神と崇められて、悪魔と罵られながら。


幸せだった。
二人で笑って、泣いて、生きて。


(´・ω・`) 「…………君と一緒でよかった」



⌒*リ´ v リ 「私もだよ」


250 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:30:50 ID:lvNlMSaA0



気づいたのはいつ頃だったか。
100年は経っていなかったと思う。

リリの様子が少しおかしいことに気づく。。
僕の前では明るく振る舞っていたけれど、何かを隠しているのは明らかだった。

だから彼女に直接聞いた。
どんなに悪いことだろうと、一人で背負わす訳にはいかなかった。

(´・ω・`) 「リリ。言いたいことがあるのなら、言ってくれ」

⌒*リ´・-・リ 「……。ショボン……。
        なんでも……ないよ」

(´・ω・`) 「隠すなよ」

⌒*リ#´・-・リ 「何でもないったら!」

リリは答えてくれなかった。
それどころか、こんなに怒らせてしまったのは数年ぶりのことだ。


251 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:35:15 ID:lvNlMSaA0


(´-ω-`) 「……ごめん」

⌒*リ´- -リ 「私こそごめん……」

微妙な空気が僕らを包む。
お互いの距離感を測りかねていた。

強引にでも聞くべきなのか、そうでないのか、僕にはわからない。

(´-ω-`) (いつからだったかなぁ……)

最初の数年は喧嘩なんて一度もなかった。
一緒に過ごす年数が二桁になるころに何回か喧嘩をした。

つまらないことだったけど。
長く一緒にいるから、お互いのことはよく知っている。

だからこそ、違和感を感じる。
僕のことじゃなく、自分のことで悩んでいるのだと。
そう確信できるものが、心の中で渦巻いてる。

(´-ω-`) (でも、どうすれば……)


252 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:36:42 ID:lvNlMSaA0


僕らが出会った村よりも、ずっとずっと南西にある小さな漁港。
ここで過ごし始めてもう20年にもなる。

⌒*リ´ - リ 「……ちょっと……出掛けてくるね」

それだけ言うと、リリは外に歩いていった。
外はまだ明るいし、心配はいらないだろう。

(´・ω・`) 「ふぅ……」

思わずため息が漏れる。


思い当たることがないわけではない。
一年365日ほとんど一緒にいるのだ。

むしろ喧嘩の理由が無い方がおかしい。

(´・ω・`) (寂しいのかな……)


253 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:39:38 ID:lvNlMSaA0



最初の頃はずっと一緒に暮らしていた。
錬金術を使ってお金を稼ぎながら。

二人でどちらがより売れるか競い合ったり、共同で新しいものを作ったり。

彼女はホムンクルスの僕には無いアイデアで錬金術を行っていた。

リリにとって新鮮だった錬金術は、数年もすればつまらないものになった。
それから僕らは世界中を旅行した。

先人達の偉大な歴史を見て回った。
リリにも純粋に旅行として楽しんでもらえたと思う。

それでもやっぱり定住意欲の方が強くて、旅行先に何度か住み着いた。
だけど十数年が限界だった。

年をとらない僕らは、年数がたてばたつほど怪しまれる。
今住んでいるこの地だって、しばらく住めば離れなければならない。

最近、僕は食べ物の調達によく狩りに出掛けている。
リリは家の近くで野菜を作っていることが多く、そのせいかもしれない。

(´・ω・`) (寂しさを紛らわす方法か……)


254 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:41:31 ID:lvNlMSaA0



椅子から立ち上がって、家の外に出た。

雲一つない真っ青な空に、まだ雪の解けていない白い峰。
まるで自然の美しさが今この景色に凝縮されているかのようだ。
牛は暢気に草をはみ、羊は少し長い昼寝を楽しんでいる。

少し歩いた先にリリはいた。
大樹に寄り添って座っている。













聞き覚えのあるメロディが、風にのって届く。



僕の、一番好きな調べ。


255 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:46:55 ID:lvNlMSaA0




春の陽のように優しく

雪解け水のせせらぎのように心地よい


立ち止まって耳を傾けていた。


パキ


演奏は歪な音で中断された。

⌒*リ´ - リ 「…………」

(´・ω・`) 「…………リリ」

リリの胸には二つに割れた横笛が抱かれていた。


256 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:50:50 ID:lvNlMSaA0


⌒*リ´ - リ 「仕方ありません……いずれ朽ちてしまうものです。
        形を変えないものなどないのですから……」

(´・ω・`) 「まだ、直るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「いえ、いいんです。もう、充分です。休ませてあげましょう」


(´・ω・`) 「……僕が新しいのをプレゼントするよ。
      上手に作れる自信はないけれど……。
      錬金術じゃなくて、僕の手で」

⌒*リ´*・v・リ 「ありがとうございます」

(´・ω・`) 「家に帰ろう」

僕らは並んで家に帰った。
壊れてしまったリリの横笛は、大事にしまい込んだ。


257 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:52:45 ID:lvNlMSaA0




(´・ω・`) 「リリ、あのさ…………子どもを作ろうか」

⌒*リ´・-・リ 「!?」

⌒*リ´//-/リ 「あ、あああああ、あの……そういうのは……ですね……えっと……」

動揺して真っ赤になるリリ。
慌てすぎてて舌が回ってない。

⌒*リ´//-/リ 「えーあーそのーえーでも……うん……」

(´・ω・`) 「まぁ落ち着いてよ。別に今すぐどうのこうのってわけじゃないし」

⌒*リ´//-/リ 「ま、まだ昼なんだから当たり前です!」

論点がずれていた。
リリが落ち着くのを待ち、それから話を進める。

(´・ω・`) 「僕は君を寂しがらせてるんじゃないかって。
      子どもがいれば、そんなことはないんじゃないかな」

⌒*リ´・-・リ 「……」

(´・ω・`) 「人間と同じように子供を作ることはできないけれど、僕なら……」


258 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:54:31 ID:lvNlMSaA0



黙っていたリリはゆっくりと口を開いた。


⌒*リ´・-・リ 「その子供は、人間ですか? それとも、ホムンクルスですか?」

その静かな質問の答えを、僕はもっていなかった。
ただ彼女のことだけを考えていた僕には、答えることができなかった。


⌒*リ´・-・リ 「人間の子どもを私達が育てた時、大きくなったその子は何を思うでしょうか。
        親が不老不死の人外だと知って、その子はまだ自分が人間だと信じられるでしょうか」

(´-ω-`) 「………………」



⌒*リ´・-・リ 「ホムンクルスの子どもは一生子供のままです。もし、大人になるとしても彼もまた不老不死なわけですよね。
        私は、ショボンの言うとおり寂しいと感じています。
        友人もいない、家族もいない、愛する人とたった二人でいるには、あまりにも長すぎる時間を過ごしてきました」



違う、とは言えない。
彼女の言うことは正しい。
そして、その言葉は僕を苦しめる。


259 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:01:18 ID:lvNlMSaA0



(´-ω-`) 「………………」

⌒*リ´・-・リ 「でも、だからと言って、私は、自分のエゴのためにそのような存在を生み出すことを良しとしません。
        ショボンの心遣いはとても嬉しいです」


窓から差し込む陽光を眺めつつ、リリは口を開いた。




⌒*リ´・-・リ 「……怖いのです」

⌒*リ´・-・リ 「死ぬことのない私たちは、いつまで生きればよいのですか?」

(´-ω-`) 「…………」

⌒*リ´・-・リ 「人が死に絶え、植物が腐り落ち、世界が滅んだら、私たちはどうなるのでしょう」


⌒*リ´・-・リ 「この数十年は、この考えが頭から離れません」

だから、僕の心遣いは嬉しかった、と。

(´・ω・`) 「それは……」

続ける言葉もないのに、声を発してしまった。


260 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:05:39 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「……リリは……」

⌒*リ´・-・リ 「ショボンを責めているわけではないです。
        むしろ死んでいたはずの私にこれほどまでに多くの幸せを下さって、とても感謝しています」

⌒*リ´・-・リ 「私がいなければ、ショボンは一人で生きていくことになってしまいますから。
        ただ少し、そう少しだけ、疲れてしまったのかもしれません」

今になってようやく気づいた。


リリは人間の心を持つホムンクルスだ。
人の心は数百年を生きるようにはできていない。
長生きすることを想定して作られた僕とは、決定的に、絶望的に違う。

今はまだ『少し疲れた』程度かもしれない。でも、いずれは……。

深く沈んだ僕の表情を見て、リリは言った。


261 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:11:06 ID:lvNlMSaA0
]


⌒*リ´*・-・リ 「心配しないで下さい。そうそう簡単に負けたりしませんから」

(´ ω `) 「うん……」

ただ頷き返すことしかできなかった。

リリの心を人間の時そのままに残したのは、彼女の心に干渉したくなかったからだ。
僕によって強く作りかえられた心は、果たしてリリのものなのか。
そういう疑問を持ちたくなかった。

だから、彼女の精神には何も施さなかった。
それが今のこの状況を作り出している。

何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなってしまった。
静かに泣いていた僕を、彼女は優しく抱きしめてくれた。



・  ・  ・  ・  ・  ・


262 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:26:20 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´*・-・リ




⌒*リ´・-・リ




⌒*リ´ - リ




 リノ´ -川


263 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:20:57 ID:lvNlMSaA0


・  ・  ・  ・  ・  ・



僕とリリはただひたすらに生きた。

そこに神様が願いを聞いてくれて幸せになる奇跡はなく、
悪魔と戦って生きる意味を知るような物語もない。

平凡で、それ故に平和な百数十年だった。
長い年月で得たものは、両手では持ちきれないほどの思い出。
それとは逆に、リリの心は少しずつ磨耗していった。



 リノ´ -川 「ごめんなさい、ショボン……」



一番聞きたくなかった言葉が容赦なく鼓膜を震わせる。

ただぼーっと指をくわえて見ていたわけではない。
心の劣化を防ぐ研究を、元へ戻す研究を続けてきた。


264 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:23:00 ID:lvNlMSaA0



ついぞ答えを見つけることはできなかった。
いずれの手段をとるにしろ、彼女の性格を手付かずで残すことができないのだ。
心とは性格そのものだと言うことを、理解した。

(;´・ω・`) 「頼む! もう少しだけっ!」

そう言ってリリを引き留めた。
何度も。何度も。


265 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:25:30 ID:lvNlMSaA0












 リノ´ -川 「…………ごめんなさい」










.


266 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:31:57 ID:lvNlMSaA0


研究に疲れて寝ていた僕が、そのことに気づいたのは、次の日の朝だった。

(´-ω-`) 「リリ……?」

扉が強く叩かれる音で目を覚ました。

(´+ω-`) 「ん……」

普段ならリリが対応するはずだが、姿が見えない。
仕方なく机から起きあがり、来訪者を迎え入れた。

「ショボン様、リリ様が……」

村人の尋常でない様子から、リリの身に何か起きたのだと悟る。

(#´・ω・`) 「何があった!?」

まどろみから一瞬で覚めた。
語気を荒くして問う。

「リリ様が……川に」

(;´・ω・`) 「っ! どこだっ! 案内しろっ!」


267 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:32:56 ID:lvNlMSaA0



連れてこられたのは、村に流れ込む大きな川。
流れは早く、リリの姿は見あたらない。

(;´・ω・`) 「いつの話だ?」

「つい先程です。一人ふらふらと歩いてこられて……」

(;´・ω・`) 「リリっ……くそっ……リリぃっ!!」

叫んでも返事はない。
水の流れる音だけが、聞こえていた。

(;´・ω・`) 「しばらく家を空ける。村の者にも伝えといてくれ」

「わかりました」

河口へは遠く、この辺りはかなりの深さがある。
おまけに急流ともなれば、川底を調べるのは不可能だ。

(;´・ω・`) (どこから探せば……)

家に戻って旅支度を整える。
必要なものはまとめて革袋へ放り込んだ。

そこで一枚の紙切れが目に付いた。
手に取って見てみると、リリの字で書かれた手紙だった。


268 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:34:43 ID:lvNlMSaA0












「ショボンへ。あなたに救ってもらったこの命を、無駄にしてしまうことを許して下さい。とても幸せでした。さようなら」











.


269 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:48:47 ID:lvNlMSaA0







(´;ω;`) 「っ…………」

涙が止まらなかった。
短い手紙には、リリの苦労が一言も書かれていなかった。
彼女は、僕を気遣ってくれたのだ。
エゴで彼女を苦しめた僕を。

罵詈雑言で埋め尽くされていてもおかしくなかった。
呪いの言葉を残されても自業自得だ。

それなのに彼女は……。

(´・ω・`) (探さなきゃ……こんな終わり方は駄目だ……)

ホムンクルスの命を終わらせる方法なんてわからない。
それでも、リリが本当に死を望むなら、見つけなきゃならない。
水底で眠るのは一時的な逃避だ。数百年後、数千年後にさらにひどいことになるかもしれないのだから。

(´・ω・`) (必ず見つける。見つけて、二人で最善な道を探すんだ。
       それがもし離れ離れになってしまうことだとしても。僕が逃げてはいけない)


270 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:12:09 ID:lvNlMSaA0


手紙も袋の中にしまい込み、まずは川下へ向かって歩くことにした。
人の体は浮くものだし、どこかで引っかかっているかもしれないからだ。
乾季になれば、少しは水の量が減る。それまでの凡そ三カ月は川の周辺を調べるしかない。

数百キロの途方もない道のりも、リリを想えば容易かった。

(´・ω・`) (見つけて、今度こそリリを救う)

彼女が、彼女らしく生きていけるように。
彼女が、彼女らしく死ねるように。



僕は……もう逃げない。


271 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:41:57 ID:lvNlMSaA0



日の出ている間は、ひたすら川下に向かって歩いた。
下降にある港町まで二週間かけて歩いたけれど、リリの持ち物一つ見つけることすらできなかった。

港町で聞き込みをする。

海に流れ込む河口は人を運ぶだけの勢いも、深さもない。
ここまで流れ着いていれば、誰かが気づくはずだ。

(´・ω・`) 「すいません、普段町で見ない女の子を知りませんか? 
       リルケット・リファリアという名前なのですが」

「いや。交易都市だからなぁ。人の出入りも激しいし、それだけの情報じゃわからない」

(´・ω・`) 「そうですか……ありがとうございました」

(´・ω・`) 「すいません、あの……」


「いや、知らない」

「知らんなぁ」

「わからん」


272 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:49:46 ID:lvNlMSaA0


聞き込みの成果はゼロだった。
リリの姿形を表現できる手段がなければ、当たり前かもしれない。
かといって絵が描けるわけでもない。
状況は最悪だった。

(´・ω・`) (しばらく、ここで暮らすか……)

いつ彼女が流れ着くかわからない。
焦って何往復もするよりは、このほうが良いはずだ。

用意していた金銀をもってギルドに建築の依頼をする。
中心部から離れた、河口を見下ろせる丘の上に小さな小屋を建ててもらうことにした。

完成するまでの一週間は宿屋に泊まり、朝から晩まで河口を眺めて過ごした。

「ショボンさん、でしたっけ。注文通りの家を完成させました」

きっちり一週間後、職人が報告しに来た。
残りの代金を払い、あらかじめ予約していた錬金術の道具店へ向かう。
錬金術師が広く知られていないこの時代に、こうした店を見つけることができたのは運が良かった。


273 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:58:59 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「フラスコを10、試験管を12、固定具を2、ランプを2、用意できてますか?」

「ああ、新しい研究所を作る人だったけな。全部できとるよ」

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

「サービスにフラスコと試験管二つずつ増やしといたから。また利用してくれよ」

(´・ω・`) 「はい、そうさせていただきます」

両手いっぱいの器具を抱えつつ、家に帰った。
全てを使いやすいように並べて一息つく。
ふと、西側の窓から河口を見下ろす。

川で水遊びをしている子どもたちが目に入った。
覚悟を決めて手元の器具に目線を映す。

(´・ω・`) 「ホムンクルスの研究を一からしよう……」

僕はホムンクルス、ひいては賢者の金属について知らないことはないだろう。
だが、今ある知識だけでは足りない。
リリを見つけたときのために、全てを知っておかなければならない。



・  ・  ・  ・  ・  ・


274 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:01:17 ID:lvNlMSaA0





数十年の年月はあっという間だった。
一匹の兎を検体として百を越える実験をし、千を越える種類の薬品を投与した。


その何一つとして有効な結果は得られなかった。

調べれば調べるほど、ホムンクルスの不死性は完璧な論理の上に組みあがっていた。

(´・ω・`) 「くそっ……」

書きあげた式を破り捨てる。
これもうまくいかなかった。

未だリリを見つけることも出来ていない。
一年に一度、彼女が身を投げた村まで川を遡っていが、手掛かりはない。

リリは記憶を失ってどこか別の場所で生きてるんじゃないだろうか。
どこかで、一人苦しんでいるのではないだろうか。

そんな考えが浮かんでは消えていく。

ここにいれば彼女が見つかる、そう信じていた。
でももう、それすら信じられない。

港町に長居し過ぎたせいで、僕の名もだいぶ知られてしまっている。
ここも安全ではない。


275 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:02:02 ID:lvNlMSaA0
(´・ω・`) (世界中を巡って、不死の解決の手段を探す)

流通する品は限られている。
ここにいたままでは手に入らない素材は山ほどあるし、知らない植物も旅の途中で多く見て来た。
それならば、新しい発見を求めて。

(´・ω・`) (世界を歩き、リリの痕跡を見つける)

それが、僕の今すべきことだ。


でもその前に、やることがある。

ここに僕がいた証を残そう。
リリの手掛かりになるように。

(´・ω・`) (ただ彷徨うのではなく、帰ってこれるように)

買ってきた塗料で家の壁に大きく文字を書く。
ここが、僕の家だとわかるように。


Death is only the begining except for Us


276 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:03:55 ID:lvNlMSaA0


そして家を守るための仕組みを作った。
家を中心に二重の黒線を描き、そこに錬金術を組み込む。

それは人間の意識を逸らす。
定期的に帰って来なければならないが、これで家は残されるはずだ。


(´・ω・`) 「ふぅ…………」

勢いつけて起きあがり、机の上の紙を全て暖炉に放り込んだ。
実験道具に残っていた研究素材も全て。

炎の色は夜のように黒く、紫の煙を出して燃え上がる。

最後に机の上に丁寧に横笛を置いた。
砕けてしまった、彼女の最も大切な物。

欠片を繋ぎ合わせ、接着した。
別れてしまった僕らが再び出会えるように願いを込めて。




最後に一度だけ振り返り、家を出発した。


277 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:04:57 ID:lvNlMSaA0









8 ホムンクルスと少女のようです  End

             

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