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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第6話 

181 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:30:07 ID:sHdSpc460

今回は過去の話になります。
書きたい話を書きたい順に書いていたらこんなわけのわからない順番に……。
簡単な順番を書いていくことにします。


ホムンクルス生誕
   ↑
   ↓
6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです
   ↑
   |
   |
   ↓
1 ホムンクルスは戦うようです
   ↑
   ↓
2 ホムンクルスは稼ぐようです
   ↑
   ↓
3 ホムンクルスは抗うようです
   ↑
   ↓
4 ホムンクルスは救うようです
   ↑
   ↓
5 ホムンクルスは治すようです



148 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:20:51 ID:sHdSpc460






6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです


149 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:23:47 ID:sHdSpc460


遠くへ……。


真冬の地。
降り積もる雪。

僕は歩く。
ざくざくと、深く足跡を残して。

それらは白く塗りつぶされていく。
おぞましい出来事を覆い隠すかのように。


僕は歩く。
雪が過去を埋め尽くしてくれることを願いながら。


(´ ω `) 「はぁ……はぁ……」

吐く息は白銀の世界に溶けていく。

何も考えずに足を動かし続けてもう一週間になる。
普通の人間ならとっくに息絶えて、狼の餌食になっているはずだ。

ホムンクルスゆえに、生きていれるというのはなんという皮肉か。


150 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:24:55 ID:sHdSpc460

眼を閉じて倒れ込もうとするたびに凄惨な光景がまぶたの裏に流れる。
その度に前を見て進む。

(´ ω `) 「やめろ……やめてくれ……」

僅かに吹雪が緩やかになり、林の切れ目に尖塔が見える。
そこから洩れる暖かな光に心ひかれ、門を目指す。

四つの尖塔のある比較的新しい教会。
門は押すとゆっくりと開き、中には人の姿は無かった。

教会内は物音一つしない。
それなのに僕の頭の中は甲高い悲鳴が鳴り響いている。

(´ ω `) 「ああ……」

怨嗟の声が頭の中で響き続ける。

ホムンクルスは死んで逃げることが出来ない。
一時的に意識が失われるだけにすぎない。
そんなわずかな希望にすがって、教壇の前で首を切り裂いた。
微かに見えた、飛び散った血液は人間と同じ色だった。


151 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:28:55 ID:sHdSpc460

どれだけの時間がたったのか分からない。
極僅かかもしれないし、数百年と経過しているかもしれない。
世界が滅びていてくれたら、どれほど救われていただろうか。


そんな馬鹿なことを考える。

焦点があった視点の先には、なぜかまだ湯気をあげるスープが置いてあった。

脳が空腹を訴える。
小さな木製のスプーンを恐る恐る手に取り、料理を口に運ぶ。

さらさらとした舌触り。
食べやすい大きさの芋は中まで味がよくしみている。


視界がぼやける。
僕は泣いていた。

まるで、人のように。
殺しても死なない化け物のくせに。

嗚咽をあげながら。


152 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:30:12 ID:sHdSpc460

僕は家族を救うことが出来なかった。
大切な物をすべて失った。

なのにのうのうと生きている。

これからの途方もない命の行方を恐れている。
そんな自分が嫌で、涙が止まらない。

(´;ω;`) 「うっ……っ……ううっ……」

蹲ってひたすら泣いていた。
そんな事では何の解決にならないことは知っていたけれど。

「あの……大丈夫ですか?」

背中から掛けられた小さな声。
振り向けばそこに小柄な少女が立っていた。

ぶかぶかの服は所々に繕った跡がある。
この近辺に住んでいるのだろうか。

⌒*リ´・-・リ 「この辺の人じゃないですよね……生きてますか……?」


153 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:31:02 ID:sHdSpc460

見知らぬ人間が怖くは無いのだろうか。
いや、ここらは平和な土地柄なのかもしれない。

それにしては言語が乱雑な気もするけれど。

(´ ω `) 「スープは君が?」

⌒*リ´・-・リ 「はい。余り物ですけど」

(´・ω・`) 「……ありがとう。美味しかったよ」

ゆっくりと立ち上がる。
体の芯が凍っているのか、うまく動けない。

⌒*リ´・-・リ 「……よかったら、家に来ますか? 暖炉に薪をくべる仕事がありますよ?」

(´・ω・`) 「……いや、いいよ」

優しくされたら動けなくなりそうだった。
だから誘いを断り、出口に向かって歩く。

⌒*リ´・-・リ 「そう……ですか。でも、とてもじゃないけど動けないと思いますよ」


154 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:32:22 ID:sHdSpc460

扉を開けた瞬間、吹雪が舞いこんできた。
目の前が真っ白に染まり、前がほとんど見えない。

⌒*リ´・-・リ 「ね? 私の家はすぐそこですから」

(´・ω・`) 「いや、いい。これくらいで、いい」

これだけ吹雪けば、夏になるくらいまでは眠れるだろう。

⌒*リ´・-・リ 「え?」

驚く少女を余所に、豪雪の中に踏み出した。
慌てた様子で腕を掴まれる。

⌒*リ;´・-・リ 「ちょっ、ちょっと待ってください! 実はですね、家に帰れなくて困ってるんです」

(´・ω・`) 「どうやって来たんだよ……」

少女の小柄な体でこれだけの雪を掻き分けられるとも思えない。

⌒*リ´・-・リ 「家は、この教会のすぐ裏にあるんですけど、さっきは今ほどひどくなかったんです」

(´・ω・`)  「…………」

⌒*リ´・-・リ  「帰らないと凍え死んじゃいます」

(´・ω・`)  「……送っていくだけだから」


155 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:34:50 ID:sHdSpc460

貰ったスープの分くらいは恩返ししてもいいだろう。
少女の指示に従い、雪をかき分けていく。
教会の裏側に回るまでに随分な時間がかかった。

⌒*リ´・-・リ 「どうもありがとうございました」

(´・ω・`) 「ああ、それじゃ」

⌒*リ´・-・リ 「ちょっと待ってください。スープ代貰ってませんよ?」

(´・ω・`)  「……え?……有料なの?」

当然無一文。
金目のものなんて何一つ持ってなかった。

⌒*リ´・-・リ 「伊達に一人で生きてるわけじゃないです。
         いいじゃないですか。今夜くらい泊まって下さいよ」

(´・ω・`) 「……僕が乱暴するとは考えないのか?」

⌒*リ´・-・リ 「身を守る術くらい心得てますし、
         教会でうじうじ泣いてるような人がそんなことするとは思えません」

手を引かれるがままに家の中に入る。
広い部屋には所狭しと薪が重ねられていた。

(´・ω・`) 「広いな」


156 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:35:59 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「一人暮らしですけど、このくらいは必要です。
         ああ、寝るのは地面で寝てください」

確かにベッドは一つしかなく、どう考えても二人が寝れるサイズではない。
それならば、少女が床をさすのは自然なことだと思うのだけれど。

(´・ω・`) (何故親指……)


結局、勢いに流されて一晩泊まることになった。

勢い流されてとは、我ながら体のいい言い訳だ。
ただ独りでいるのが寂しかった。

誰かに優しくしてもらいたかった。

⌒*リ´・-・リ 「夜中は暖炉の火が消えないよにしてくださいね。よろしく」

それだけ言うと彼女は布団にもぐってしまった。

火花を見つめて時間を過ごす。
たまに薪を放り投げ、またうとうととする。


・  ・  ・  ・  ・  ・


157 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:38:23 ID:sHdSpc460



(´ ω `) 「やめろっ……!」

真っ直ぐに伸ばした手は空を切った。

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……」

嫌な汗で全身が不快感に苛まれる。
少女は起きてこない。

息するのが苦しい。
生きるのが苦しい。

悪夢のような光景が何度もフラッシュバックする。

一睡もすることが出来ずに朝を迎えた。
日が昇る頃に少女は目を覚まし、調理場に向かっていった。

窓から外を確認するが、相変わらず吹雪いているし、半分ほどが雪に埋もれている。
この調子では扉は開かないだろう。

⌒*リ´・-・リ 「どうぞ」

差し出されたのはパンとジャムを少し。

(´・ω・`) 「これも有料……?」


158 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:39:46 ID:sHdSpc460

⌒*リ´*・-・リ 「勿論です」

少女は笑顔で答える。
迷ったものの、それを受け取りかじる。

その後は無言で過ごした。
少女にとっては苦痛だったかもしれないが、
僕は話す気になれなかった。

少女は黙々と手作業で何かを編んでいる。

二日が経ち、


三日が過ぎ、


四日目についに僕は口を開いた。


(´・ω・`) 「……聞かないのか?」

少しだけ、少女に興味を持ったからだ。
暖かい寝床に、暖かいご飯を食べ、だいぶ落ち着いてきていたというのもあった。

⌒*リ´・-・リ 「何をです?」


159 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:43:26 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「教会にいた理由」

少女から先に理由を聞かれていたら、にべもなく断ったかもしれない。

⌒*リ´・-・リ 「言いたくないのならそれでかまいません。
         雪が積もって家からでれませんから、話すことしかすることがありませんけどね」

(´・ω・`) 「……」

自分から話を持ち出したものの、話したくはなかった。
だから少女の優しさに甘えることにした。

(´・ω・`) 「この辺りはいつも吹雪いているのか?」

⌒*リ´・-・リ 「この時期はたいてい。例年だと、後一週間ほどは身動きとれませんよ」

話始めれば、聞きたいことは次から次へと出てきた。

(´・ω・`) 「……食料は?」

⌒*リ´・-・リ 「当然、足りませんよ。少しでも雪がおさまったら、手伝ってもらうことがあります」

もともと一人分しか用意されてなかったのだろう。
僕が予定外を引き起こしてしまったなら、その責任はとらなければならない。

(´・ω・`) 「それじゃあ、必要になったら声をかけて」


160 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:45:06 ID:sHdSpc460

久しぶりに話したことで少し疲れたので、再び壁にもたれた。
眠ることは出来ないけど、休むことくらいなら。

⌒*リ´・-・リ 「せっかくの話し相手だと思ったのに」

(´・ω・`) 「僕なんかと話してもつまらないよ」

⌒*リ´・-・リ 「つまらないかどうかは私が決めます。それに、家主の要望には答えるべきじゃない?」

会話を楽しむ余裕は残っていなかった。
それゆえ、少女の話を聞き相づちを打っていた。

それは夏の祭りの話だったり、教会を造るときの話だったり、僕にとって新鮮で、心惹かれる物だった。

以前は家から出ることすら許されていなかったのだから。
主の仕事を手伝い、その娘の話し相手をしていた。外の世界のことはそのときに聞いた物が大半だった。

⌒*リ´・-・リ 「どうして泣いてるの?」

指摘されて初めて気づいた。
ぼろぼろと大きな粒がこぼれていた。

(´;ω `) 「いや、なんでもない」

手の甲で拭い、平静を装った。

⌒*リ´・-・リ 「なんでもいいなら、それでいいけですけど。それでですね、その時叔父さんが―――――」


161 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:48:11 ID:sHdSpc460

よくもまぁ、話題が尽きないものだ。
この雪の中ただ一人で暮らしていたせいで、人恋しいかったのかもしれない。

それにしても、なぜこんなところに一人で暮らしているのだろうか。
独り立ちする年齢には見えない。
なら、何か事情があるのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「……気になりますか?」

(´・ω・`) 「え?」

⌒*リ´・-・リ 「私のことです」

どうやら顔に出ていたらしい。
顔を上げると少女の真っ直ぐな視線とぶつかり、目を逸らして謝る。

(´・ω・`) 「……ごめん」

⌒*リ´・-・リ 「謝らないでください。気になるのは当然ですよね。
         それに、まだ自己紹介もしてませんでした」

胸に両手を重ね、ペコリと一礼をする。
ドレスを着て教会で会っていたなら、どこかの令嬢かと思わせるような、そんなお辞儀だった。
その動作が過去の少女と重なって、胸を締め付ける。

⌒*リ´・-・リ 「リルケット・リファリアと言います。この辺りの人はリリーやリリって呼びます。
         あなたの名前は?」


162 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:50:05 ID:sHdSpc460

僕の名前。
主人からいただいた大事な名前。

(´・ω・`) 「僕は……ショボン」

⌒*リ´・-・リ 「変わった名前ですね」

(´・ω・`) 「僕もそう思う」

何故こんな名前にしたのか主人に聞いたことがあった。
その時に笑いながら答えられたのを覚えている。

がっかりしたようなしょぼくれ顔だからだ、と。

⌒*リ´・-・リ 「私がここで暮らしている理由は聞かないでくださると助かります」

ぎこちない笑顔で言う。
問いただすつもりなんか無かった。
隠し事をしているのはお互い様だ。

⌒*リ´・-・リ 「それにしても、ひどい雪ですね」

窓はすでに覆い尽くされており、部屋の明かりは暖炉の火だけだった。

それからも、少女の話を聞きながら時間を過ごした。
たまに僕も話した。

過去を思い出すのはつらかったけれど、少女と話しているだけで少し楽になれたから。


163 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:51:44 ID:sHdSpc460

話疲れたのか少女は寝息を立て始めた。
毛布をしっかりとかけ、火の番をする。
一人の時間になると忽ち自問自答が始まる。

楽になることは主人に対する裏切りではないのか。

幸せに生きる権利なんてないのではないか。

今すぐにでも死ぬべきではないか

堂々巡りで答えなんて出ない。
ただの徒労だと分かっていても、考えることをやめることができなかった。

(´ ω `) 「…………僕はどうすれば」


・  ・  ・  ・  ・  ・


⌒*リ´・-・リ 「起きてください、雪がやんでますよ」

揺すられて目を覚ました。

(´・ω・`) 「……?」


164 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:54:39 ID:sHdSpc460

窓から差し込む太陽の光が目にささる。
うずたかく積もった雪は、溶けはじめていた。

⌒*リ´・-・リ 「随分と長いこと寝てましたね。寒くて目が覚めたじゃないですか」

彼女の指は暖炉を指している。

⌒*リ´・-・リ 「まぁ、いいですけど。二日も暖炉の番を任せたのは私ですし。
         無理をさせてしまいましたか?」

(´・ω・`) 「いや……ごめん」

⌒*リ´・-・リ 「いい天気なので、食料を補充しておきたいのですが」

(´・ω・`) 「ああ、わかった。どうすればいい?」

ゆっくりと立ち上がる。
全身の気だるさはなくなっていた。

⌒*リ´・-・リ 「それでは、行きましょうか。それを持ってきてください」


シャベルに見えるけれど、金属部分は先端だけだ。
幅がこうも広くては地面は掘れない……いや、雪を掘るのか。
それならば、全体的に軽く作られているのも納得できる。


165 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:55:36 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「わかった」

少女が扉を押してもびくともしない。
積もった雪がまだ重しになっているのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「仕方ありません。窓から出ますよ」

少女は窓を開け、雪の上に飛び出した。

⌒*リ´・-・リ 「早く来てください。ここからはあなたの仕事です」

同様に窓から外に出て、雪を踏み固める。
そこからはシャベルを使って雪を崩し、体を使って道を作る重労働だった。
僕が道を作っている間、少女は後ろで方向を指示している。

(´・ω・`) 「ふぅ……少しくらい手伝ってくれないかな」

ホムンクルスの命は無限でも、体力は有限だ。
回復力は人間よりも僅かに優れている程度。
当然、作業効率はどんどん落ちていく。


166 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:57:03 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「あなたのせいで、この雪の中食料を取りに行くことになっているんですけどね。
         それに私はあなたよりずっと力作業では劣ります。まぁ、いいですよ。それをかしてくだ」

(´・ω・`) 「後どれくらい?」

確かに食料が足りなくなったのは僕のせいだ。
それに諦めるのは癪だったので、話を遮った。

⌒*リ´・-・リ 「まだまだですよ?」

数時間かけて雪を掘り続け、大きな木にぶつかった。
幹は大人数人でやっと囲めるほど太く、枝は高くまで伸びている。
この雪で倒れないのだから、余程丈夫なのだろう。

⌒*リ´・-・リ 「やっとここまで来ましたか。随分かかりましたね」

(;´・ω・`) 「はぁっ……はぁっ……よく、言うよ…」

ここまでずっとぶっ通しで作業していたのだ。少しくらい休ませて欲しい。

⌒*リ´・-・リ 「もう少しです。頑張ってください。この右奥にあるはずです」

言われるがままに道を作る。
疲労は限界に達していた。

⌒*リ´・-・リ 「この辺ですね。少し待ってください」

少女は屈んで、その小さな手で雪の下側を掘っていく。


167 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:58:29 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「あった。ありました」

掘り出したのは袋。

⌒*リ´・-・リ 「中に野菜が入ってるんです。冬はこうやって保存するんですよ。
         全部持って行こうかなぁ……んー、うん。じゃあこれもってください。家に帰りましょう」

渡された袋を抱え、来た道を引き返す。
何の問題も起こらず、あっさり帰ってくることが出来た。
汗で冷え始めた体を、暖炉で暖める。

⌒*リ´・-・リ 「さて、これで完全に雪が溶けるまではもちそうです。お疲れさまでした。何か食べますか?」

(´・ω・`) 「いや……今はいいよ」

体を動かしてるうちは嫌なことを考えなくてすむのだから、悪くないかもしれない。
そんなことを考えていた。

⌒*リ´・-・リ 「もし、もしこれからどうされるのか決まっていないのでしたら……ここに住んでくださってもいいですよ」

(´・ω・`) 「考えさせてもらうよ」


168 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:02:46 ID:sHdSpc460


もし許されるのなら、少女と生きてみたいとすら思っていた。
あいつら以外の人間をも恨み続けることなんて、もとより僕には出来ないのだ。

僕は人間が好きだから。
それに、この娘はあいつらとは関係がない。

⌒*リ´・-・リ 「音楽は嫌いですか?」


音楽についての僕の知識は乏しい。

完璧な存在として説明されている文献が多いホムンクルスだけれど、僕はそうではない。
そもそも生まれながらにして森羅万象を知ると、精神に異常をきたしてしまうそうだ。
それに、人間社会にも適合できない。

実際にホムンクルスを作った僕の主人が言うのだから間違いないのだろう。
音楽や美術、人の心理、人間関係について自ら学ぶことで情緒が育まれ、心を得る。

⌒*リ´・-・リ 「あのー?」

(´・ω・`) 「ん……ああ……いや、そんなことはないけど」

考え事をしていたせいで反応が遅れ、間抜けな返事をしてしまった。


169 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:04:06 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「昔のことを思い出してて。楽器の演奏が出来るの?」

⌒*リ´・-・リ 「少しだけですけど」

階段を上り、二階から持って降りてきたのは木で造られた横笛。
大事そうに抱えられたそれは随分古い物のように見える。
少女は二、三回音を調べるようにならす。

⌒*リ´・-・リ 「それでは」

鳥の囀りのような高い音から演奏は始まった。
短く区切った調子のリズムからゆったりとした長いリズムへ。
音域を全体的に下げ落ち着いた雰囲気を醸し出す。

(´-ω-`) 「……」

技術で言えば決して上手ではないのだろう。
たまに意図せぬ音を出してしまったであろうことが表情から読みとれた。
しかし、音楽として聞くのであれば、それは非常に心惹かれるものだった。

⌒*リ´・-・リ 「どうでしょうか……?」

恐る恐る尋ねてくる少女。


170 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:05:06 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「とてもよかった」

それ以上に今の気持ちを表現する言葉を知らない。
それでも、少女には十二分に伝わったようだ。

⌒*リ´*・-・リ 「それはよかったです。では調子にのってもう一曲」

目を閉じて聴覚に身を任せる。
音楽が心に沁み込む。

少女は気の向くままに笛を吹き続ける。


・  ・  ・  ・  ・  ・


⌒*リ´・-・リ 「晩御飯ができましたよ」

揺さぶられて起こされた時、辺りはすっかり暗くなっていた。
窓からは月明かりが射しこんでいる。

(´・ω+`) 「ん……寝てたのか……」

⌒*リ´・-・リ 「それはもう、ぐっすり」


171 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:08:04 ID:sHdSpc460

机の上には二人分の食事が用意されていた。
切り分けられたチーズ。
一口サイズのパン。

瓶の中に入っているのは葡萄酒だろうか。
小さなグラスが二つ並べてある。

スープには今日取りに行った根野菜が豊富に使われていた。

⌒*リ´・-・リ 「神の恵みに感謝します」

少女が祈りが終わるのを待ってから、食事に手をつける。
神なんて信じちゃいないから、祈りはしない。

(´・ω・`) 「……おいしい」

⌒*リ´*・-・リ 「当然です」

僕と少女の生活はきっとこの日から本当の意味で始まった。


172 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:09:42 ID:sHdSpc460


季節が変わり雪が融け始めてからは、畑の手伝いをすることになった。

村長にも会い、挨拶もそこそこに僕が暫くこの村にとどまることにしたと話した。
陽気な老人で、少女のことをよろしく頼むと任されたが、
現状よろしく頼まれているのは僕の方だった。

(´・ω・`) 「何をすればいい?」

共同生活の一員として生きることに関して、僕は質問してばかりだった。
それなのに彼女は嫌な顔一つせずに教えてくれた。
僕の得意な錬金術は、道具がなければ毛ほどの役にも立たない。
こんな田舎の土地に道具があるはずもなかった。

⌒*リ´・-・リ 「……こうやって左手で押さえながら、そうそう」

朝は今まで少女が任されてきた仕事を習う。
それが終わった後は、割り当てられた畑を耕す。

「おーい! ショボン君、こっちも手伝ってくれないか?」

懸命に働いていたからか、村人達はすぐに僕を受け入れてくれた。

畑仕事を夜までやって、家に帰って葡萄酒を飲む。
そんな人間らしい生活も楽しかった。


173 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:11:13 ID:sHdSpc460

(´・ω・`) 「お疲れさま」

⌒*リ´・-・リ 「お疲れさまでした」

そうやって過ごしていた僕らの関係は、ただの同居人だった。
村人達ははやし立てていたけれど、当人達にそんな気はなかった。

それが大きく変わったのは季節が一回りしてから夏に入って少しした頃。

彼女との生活は一年と半年ほど経っていた。

いつも通りに僕は村から一番離れた山の麓で野菜の手入れをしていた時、
山から下りてきた巨大な熊とはち合わせになった。

持っていたのは小さな鎌一つ。
腹を空かせた熊をそのままに逃げることは出来なかった。
畑に居着いてしまえば、村人達に危害が加わるかもしれない。

それに、どうせ死にはしないのだ。
肝を据えて鎌を構えて対峙する。


熊が勢いよく飛び込んでくる。
一瞬の内に振り下ろされた一撃で、どうやら頭を吹き飛ばされたらしいことを回復してから理解した。
一方右手の鎌は熊の腕を軽くひっかいた程度の傷しか与えてないようだ。

:・;、・ω・`) (毛が邪魔して刃が通らない……)


174 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:12:42 ID:sHdSpc460

死んだフリをしたまま作戦を練る。
熊はゆっくりと僕に覆い被り、呑気に鼻を動かしていた。

(´・ω・`) (死肉だとでも思ってるんだろうな)

牙をむき出しにし、頭を食いちぎろうとした瞬間、鎌を目に向かって突き出した。
熊は悲鳴とともに後退する。

その隙につけ込んで、もう一太刀浴びせようと飛び込んだが、鋭い爪で横なぎにされ数秒間宙を舞った。

(#´-ω・`) 「がっ……ってえああああああああ」

腸が露わになっていた。
痛みで意識が飛びそうになるのを必死にこらえる。
治癒に時を要している間に、熊の方も落ち着きを取り戻したように見えた。

(#´・ω・`) 「もう一つの目玉も潰してやる」

完全回復を確認し、不自由な左目の側から懐に飛び込む。
コンマ数秒反応が遅れ、右腕の振り下ろしが襲ってくる。
それを紙一重で避け、残された目玉を潰して終わるはずだった。

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!!」


175 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:13:32 ID:sHdSpc460

その声に動きが僅かに鈍る。
必殺の攻撃と目潰しは同時に入った。

僕は彼女の前で……初めて死んだ。

⌒*リ´;-;リ 「ショボンっ……ショボンっ……」

怒り狂った熊を恐れず、彼女は僕の元へ一直線に走り来る。

⌒*リ´;-;リ 「そんな……嫌だよ……ショボンっ!」

(#´-ω・`) 「だい、じょうぶ、だから」

⌒*リ´;-;リ 「大丈夫なわけが、こんなに血も出て……」

そこまで言って気づいたようだ。
傷が余りにも浅いことに。

それも、驚異的な速度で治癒していることに。

「ショボンっ!大丈夫か?」

村の男達が熊に気づき武装して近づいてくる。
視力を失った熊に驚きつつも、複数人で槍を突き刺してとどめを刺す。


176 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:14:44 ID:sHdSpc460

「お前がやったんか?」

(´・ω・`) 「はい」

「怪我は?」

体中についていた血痕はすでに消えてなくなっていた。
服はボロボロになっているけれど、傷さえなければ大丈夫だろう。

(´・ω・`) 「ありません」

「そうか。今度からは無理をするなよ」

(´・ω・`) 「すいませんでした」

⌒*リ´・-・リ 「……ショボン、家に帰るよ」

彼女の一歩後ろを歩き、帰路についた。
家に着くまでの間、彼女は一言も口を利かなかった。

⌒*リ´・-・リ 「……どういうこと?」

てっきり化け物扱いされると思っていたから、家に帰ってきて最初の一言にひどく安心した。
もはや隠すことはかなわないと知り、正直に打ち明ける。

(´・ω・`) 「僕は……人間じゃない。ホムンクルスだ……」


177 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:16:30 ID:sHdSpc460

⌒*リ´・-・リ 「ホムン……クルス……?」

(´・ω・`) 「動いて喋って考えて……死なない、作り出された命」

簡潔に言えばそういうことだ。
細かい点だと体内構造も若干違うし、痛みという刺激に対する反応も鈍い。
だがそんなことは説明しても無駄だろう。

(´・ω・`) 「今まで騙しててごめん……」

知られてしまえば、もうここにはいれない。


去ろう。
彼女の元から。

いずれ村の人にも知られるかもしれない。
そうなれば、彼女たちの平穏な暮らしを乱してしまう。

⌒*リ´・-・リ 「私は……私は……」

(´・ω・`) 「さようなら。今までありがとう」


精いっぱいの感謝を籠めて、別れの言葉を告げる


178 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:17:40 ID:sHdSpc460

彼女のおかげで、過去を忘れることができた。

彼女のおかげで、生きていることができた。

だから、彼女のために去ろう。

⌒*リ´ - リ 「待ってっ……!」

反応する暇もなく、後ろから抱きとめられた。

⌒*リ´;-;リ 「別に……あなたが死なないだとか、作られただとか、そんなことはどうでもいい。
         私は、あなたと一緒にいたい。それでは駄目ですか……?」

(´-ω-`) 「リリ……」

⌒*リ´;-;リ 「初めて……」

(´・ω・`) 「え?」

⌒*リ´;-;リ 「初めてちゃんと名前呼んでくれたね……。
         村の人にも分かってもらえるように努力するから……。
         だから……これからも、一緒にいてください」

枯れてしまったと思っていた涙が、とめどなく溢れて来ていた。

(´;ω;`) 「うん……っ。うん……っ」

何も答えることができず、ただひたすらと頷いていた。


179 :名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:21:30 ID:sHdSpc460







6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです  End

             ↓

7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです


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