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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第7話 

183 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:21:22 ID:RpSgo5Fo0







7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです

185 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:22:22 ID:RpSgo5Fo0



僕は彼女にすべてを話した。

優しかった家族のこと。
残虐で、許し難い事件のこと。

話し終わった後、彼女も教えてくれた。その凄惨な過去を。


⌒*リ´・-・リ 「私の生まれは、もう気づいていると思います。それなりの良家でした。
         父は教会の牧師、母はそれなりに土地を持った家の一人娘でした」

⌒*リ´・-・リ 「父も母もとても優しくしてくださったのを覚えています」

彼女の住んでいた地域は聞いたことがあった。
宗教戦争でその地に住んでいた人は残らず殺されたと、そう風の噂で耳にしていた。

⌒*リ´・-・リ 「それは突然でした。朝方に村を異国の軍隊が襲ってきたのです」

⌒*リ´・-・リ 「ですが、私の家は傷一つつくことはありませんでした。
         なぜなら父は異国の軍隊の進撃を知っていたので、家族の命と引き替えに、村を売っていましたから」

⌒*リ´・-・リ 「それから1ヶ月は毎日が豪勢な生活でした。
         父が何をしたのかは私にも分かっていましたが、命が助かったことに素直に喜んでいました。
         それほど村人達は酷い目にあわされていたのです」


186 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:23:17 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「男達はほとんどが家族の前で見せしめに殺され、残りは家畜同様の奴隷として扱われました。
         若い女は何十人もの兵士に乱暴され、拷問され、玩具のように捨てられました」


⌒*リ´・-・リ 「私の家族だけが平和に暮らしていたのです。しかしその生活もすぐに終わりました。
         元々私たちの信仰していた宗教が、討伐軍を送ってきたのです。
         異国の兵はあっと言う間に打ち負かされ、逃げていきました」


⌒*リ´・-・リ 「その日からは地獄でした。父と母は私の目の前で拷問されました。
         私自身は二人が死んだ後にいたぶる予定だと聞きました」


⌒*リ´・-・リ 「どのくらいたったのか分かりませんが、一週間よりはずっと長かったと思います。
         父が先に死にました。今から思うと村人の怒りは直接敵を導いた父に強く向かっていたからなのでしょうね。
         母はその後も苦しめられました」

⌒*リ´・-・リ 「父が殺された3日後の夜、母も息絶えました。
         いよいよ私も、あの少女達のようにボロボロにされるのだと思い、牢の隅でおびえていました」


⌒*リ´・-・リ 「しばらくして鍵の開く音がし、私は鼻息を荒くした一人の男に力ずくで地面に押さえつけられました。
         そこで必死の抵抗をし、なんとか逃げ出すことが出来ました。
         鍵番が独断で来たおかげで助かりました」


187 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:24:00 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「そこからは覚えていません。ただひたすらに走り、逃げ続けました。
         気づいたときにはこの村のベッドで寝かされていました」


⌒*リ´・-・リ 「持って来れたのは、普段から肌身話さず大事にしていた、父の手作りの笛だけです」


⌒*リ´・-・リ 「……これが私の話です。……嫌いになりましたか?」


心配そうに尋ねてくる彼女に頭を振った。

(´・ω・`) 「そんなことはない」


話が終わった時、太陽は沈み空には星が輝いていた。
僕らは狭いベッドに手を繋いで並んで眠った。

(僕たちはきっと、お互いの傷をなめあいながら生きていくのだろう)

意識がとぎれるほんの少し前にそんなことを考えた。


188 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:25:04 ID:RpSgo5Fo0


僕はまず、村長に事実を話した。僕がホムンクルスで錬金術師だということを。
ちゃんと理解してくれたかどうかは怪しかったけれど。

僕たちは僕の正体を隠さないことに決めた。
これだけ小さな村であれば外部との接触もほとんどないだろうし、隠したままでバレたときの方が困ると考えたからだ。

仲のよい村人から順々に。
皆は一様に驚いていたけれど、受け入れてくれた。
ひと月もしない内に、村人の中で僕の真実を知らない者はいなくなった。

危ない仕事を積極的に引き受け、村のために働いた。
唯一困ることと言えば、衣服が破けてしまうと戻らないといったことぐらいだ。

順風満帆な生活だった。


それが崩れたのは、僕は彼女に出会ってから三年近く経ったある秋の日。


・  ・  ・  ・  ・  ・


一人の兵士が僕たちの村を訪れた。
戦争で用いる長槍を携え、馬に跨って。

男は自らを素性を明かさず、村中の人間を集めるように指示した。


189 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:26:22 ID:RpSgo5Fo0

「今すぐだ! 早くしろ!」

程なくして僕たちは一カ所に集められた。

(´・ω・`) 「!」

他の村人が不審がる中、僕はすぐに男の目的を知る。
その黒い鎧に輝く銀色の蛇の文様。
この世で僕が最も憎む対象を身に纏っていた。

「集まってもらったのは他でもない、みなに協力してほしいことがあるのだ」

(´・ω・`) 「……」

「とある男を捜している。危険な化け物だ。
 そいつは人の形をしているが、怪我はすぐに治り、殺しても死なない。心当たりのある者はいるか?」

空気が一瞬で張りつめた。誰もが僕のことを想像したのだろう。
しかし、誰一人として口を割らなかった。

「隠して特をすることはない。知っているのなら速やかに告げよ。もし正しい情報を提供すれば、金一袋をやる」

じゃらじゃらと見せつけるように巾着を振る。
それでも、声を上げる者はいなかった。


190 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:27:53 ID:RpSgo5Fo0

「ふむ……二、三日この村の入り口にいる。話をする気になったのなら来い」

それだけ言って、歩いていった。僕はその背に襲いかからないように、全神経を集中させなければならなかった。

⌒*リ;´・-・リ (ショボンっ……)

(;´・ω・`) (分かってる)

村人たちは各自の仕事に戻り、僕らはいったん家に帰ることにした。

⌒*リ´・-・リ 「あれって……」

(´・ω・`) 「間違いない。嗅ぎつけてきたんだ」

部屋の中には液体の入ったフラスコと、数種類の粉末が置いたままにしてある。
行商から怪しまれない程度に購入していた物だ。
村に対する恩返しにと、時間を見つけては研究をしていた。

ここから足がついたのかもしれないと歯噛みする。

⌒*リ´・-・リ 「どうすれば……」

リリと僕は全く逆のことを考えているだろう。

(´・ω・`) (どうすれば、村人に危害が加わらない?)


191 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:29:58 ID:RpSgo5Fo0

粉末は一部を残して、全て暖炉に放り込む。
フラスコも同様にし、錬金術の証拠隠滅をはかる。

(´・ω・`) 「……」

入り口で待つと言っていた辺り、確信に近い何かを持っているのだろう。変な誤魔化しはきかない。
疑いたくはないが、密告者の可能性も考えられる。

(´・ω・`) 「リリ、僕はここから離れる。君たちは脅されていただけだと言うんだ。いいね?」

⌒*リ´・-・リ 「そんなっ! みんなで考えれば解決案だって……!」

(´・ω・`) 「そんな時間はないし、あいつらはそんなに優しくない。軍隊を送って皆殺しにしていないのが不思議なくらいだ」

あいつならその程度の行為に何の躊躇いもないだろう。
それだけはなんとしても避けなければならない。

⌒*リ´・-・リ 「それなら私も行きます!」

(´・ω・`) 「無理だ! どこまで逃げればいいのか分からない、厳しい道のりになる。君の安全を保障できない」

⌒*リ´・-・リ 「ここにいても同じことですよね。そういう人に狙われているということは理解しているつもりです」


確かに村に残っても安全とは言い難いのは事実だ。


192 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:30:57 ID:RpSgo5Fo0

説得を試みるが、リリは強情だった。
彼女は一度決めたら譲ってくれない。
強い光を秘めた、覚悟の眼差しと目が合う。

(´・ω・`) 「ああもうっ! 後で泣き言を言うなよっ!」

⌒*リ´・-・リ 「逃避なら私の方が先輩なんですから」

(´・ω・`) 「実行は夜だ。南西側に向かうよ。港を目指す」

無事に逃げ切るために、頭を回転させる。

(´・ω・`) 「冬にかかるとまずい。服はたくさん着て」

⌒*リ´・-・リ 「食べ物は?」

(´・ω・`) 「少な目でいい。この辺の土地は豊かだし、食べる物はあるはずだ」

ホムンクルスの知識があれば、食用可能かどうかを悩む必要はない。

護身用の剣を身につけ、後に使うための金貨を十分に用意する。
最後に、錬金術で作った粉末をこぼれないようにしっかりと包み、腰紐に結びつけた。

さぁ、荷造りはすませた。
後は出発するだけだ。


193 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:31:55 ID:RpSgo5Fo0

日が落ちるまではまだ少し時間がある。

(´・ω・`) 「……別れの手紙を書こうか」

村人に直接合うのは危険すぎる。
それなら別れの手紙を書けばいい。
何も言わずに去るのは、庇ってくれたみんなに対して、余りに薄情だ。

ではまずは私が、とリリは筆を手に取りすらすらと綴っていく。


⌒*リ´;-;リ 「村長、私が初めてこの村に来たときのことを覚えていますか? 
         ぼろぼろになっていた私に温かいスープをくださいましたね。
         その時の味はつい昨日のことのように覚えています。


         力仕事の出来ない私に仕事をくださいましたね。
         最初に作った編み物はうまくできず、とても見苦しい物でした。それでも、それを買ってくださいましたね。
         何度も何度も丁寧に教えてくださいましたね。おかげさまで、随分とましな物も作れるようになってきました。


         一人で生活するための空き家を作ってくださったのも村長ですよね?
         年頃であった私に気をつかってくださったのは嬉しかったのですが、私は村長と暮らしていたかったです。
         実の孫のように可愛がってくれてありがとうございました。


         私には大事な人が出来ました。


         その人の行く道がどれほど過酷であろうと、隣に寄り添って支えてあげたいと思う人が。
         今の私があるのはひとえに、村長と村の皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。
         旅立つ勝手を許して下さい。いつかまた、この地に帰ってきたいと思います。それでは、さようなら」


リリは瞳を潤ませながら、しかし一滴も手紙に零すことなく書き終えた。


194 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:32:53 ID:RpSgo5Fo0

僕も筆を手に取った。
少し考えてから書き始める。


(´;ω;`) 「この村の人々にはとても感謝しています。人ではない僕が、人間のように過ごすことが出来ました。
       厭うことなく、嫌うことなく、恐れることなく、接してくれた皆さんの優しさが、僕は大好きです。
       僕のせいで皆さんに迷惑がかかることを許して下さい。リリと出会えて、皆さんと暮らせて、幸せでした。


       いつか必ず、このご恩は返します。どうか、彼らには脅されていたと言ってください。
       そして、この手紙は燃やして捨てて下さい。それでは、さようなら」


僕の書いた部分は、所々滲んでしまった。
手紙はまとめて筒状にして結んだ。

空はいつの間にか暗くなってきていた。

(´-ω-`) 「急ごう。今夜は月も星もない今の内に離れて、距離を置いてからランタンを使うよ」

⌒*リ´・-・リ 「わかりました」

僕たちは身を屈めて曇り空の下を走った。
途中、村長の家の中に手紙を投げ入れ、振り返ることなく走り続けた。

村から丘二つ離れたところで、太陽の残光は完全に消え失せた。

ランタンに火を灯して掲げる。
小さな明かりに照らされ、街道がうっすらと浮かび上がった。


195 :ごめんなさいーご飯行ってきますー:2012/03/08(木) 21:34:29 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ひとまずはこれを辿る。明日の朝までに距離を稼いでおきたい」

⌒*リ´・-・リ 「大丈夫。心配しないで」

二人で並んで行く。
道は舗装されていて、体力を温存できる。

一言も言葉を交わさず、数時間は歩いていた。
本人の言うとおり、リリにへばった様子はなく、黙々とついてきていた。

(´・ω・`) 「ここだ」

西側に向かって延びる道から細い通りが西南西にある分かれ道に着いた。
今日の目標である林の小道はこの通りの先にある。

この移動がばれ、追っ手が来ていたらのなら、戦闘も覚悟していた。
まだ気づかれていないのだろうか、追われている気配はなかった。

しかし万事うまくいっているわけではなかった。
リリが僕の後ろを歩くようになり始めたのだ。

(´・ω・`) 「大丈夫?」

⌒*リ;´・-・リ 「はい、まだ、大丈夫、です」


196 :もどりましたー:2012/03/08(木) 21:52:59 ID:RpSgo5Fo0

そう答える彼女はやはり、しんどそうだった。
休む間もなく歩き続けているし、もう夜も遅い。
疲労は当たり前だろう。

(´・ω・`) 「後少しだから、頑張って」

少なくとも林道までは行かなければ、いざというときに姿を隠せない。

⌒*リ;´・-・リ 「頑張り、ます」

ペースを少し落とし、彼女の歩幅に合わせた。

それからしばらく歩いて、ようやく林道の頭にたどり着いた。わき道にそれ、木の陰に座り込む。
リリはすぐに眠りに落ちた。
僕は彼女が体を休ませられるように、自らの衣服をクッションとして体の下に置いた。

(´・ω・`) (ひとまずはうまくいったか……?)

僕は寝るわけにはいかず、今後の計画を頭の中で練り直す。
この逃避行がより完全な物になるように。

考え事をしている間に、太陽が姿を現した。
睡眠時間は充分ではないだろうが、もう移動しなければならない。

(´・ω・`) 「リリ、起きて」

⌒*リ´ -・リ 「……ショボン?」


197 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:53:57 ID:RpSgo5Fo0

怠そうに起きあがるリリを見て心が痛んだが、仕方のないことだと言い聞かせた。

(´・ω・`) 「あの山を越えれば、村が一つある。うまくすれば馬が手に入るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「行きましょう……」

昨日よりもゆっくりのペースで、山を目指す。
夕方までに何度も休憩し、やっと半分を踏破した。

当初の予定より大分遅れていたが、リリを責めることは出来ない。
食事はまともではないし、睡眠時間も短い。
人間の女性としてはむしろよく耐えている方だろう。

⌒*リ´・-・リ 「ごめんなさい、ショボン」

僕が難しい顔をしているのが見えたのか、リリは弱々しい言葉を口にした。

(´・ω・`) 「問題ないよ。僕たちがいないことに気づいたとしても、奴は街道を進むと見て間違いない。
       それならば時間はまだ十分にある」

安心させるつもりだった言葉なのに、その言葉は冷たく響いた。

⌒*リ´・-・リ 「もう、歩けるよ」

199 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:54:57 ID:RpSgo5Fo0

リリは立ち上がった瞬間、前のめり倒れた。
慌てて体を受け止める。

(;´・ω・`) 「リリっ!」

⌒*リ´ - リ 「ごめんなさい……ごめんなさい……」

その日の夜も、木の陰で一晩を明かした。
翌日になるとリリは元気を取り戻し、予想以上に距離をかせげた。

細い林道は深い森へと続いていく。この山を越えれば、村が一つあるが、
山越えはそう簡単ではない。人通りも少ないため、草木は茂り放題だ。

姿を隠すのにはちょうどいいけれど、体力を必要以上に消費するだろう。

⌒*リ´・-・リ 「行きましょうか」

覚悟を決めたように、リリは呟いた。

(´・ω・`) 「うん」

草をかき分け、日の光が届かない山に足を踏みいれた。
僕が前を歩き、後ろからリリが着いてくる。

道は次第に上り坂になっていく。
どのくらい登っただろうか。

ちょうどいい高さの岩を見つけ、そこに座り込む。


200 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:55:49 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「リリ、少し待ってて。食べ物を探してくるから」

⌒*リ´・-・リ 「わかりました。気をつけて下さいね」

彼女の手を優しく握り、付近の探索へ出発する。

奥に進んですぐに見つけた背の高い木の果実は、甘くて腹も膨れる。
対して栄養がないのが難点だが、疲れているリリには丁度いいだろう。
木に登ってよく熟れた実をとる。

そして予想通り、この一帯には喉の渇きを潤すのにはもってこいの植物が生えていた。
人差し指ほどの長さの茎から細い毛が無数に生えているそれは、茎に多量の水分を含ませる性質がある。
根を千切れば、そこから水を吸うことができる。

数十の実と一握りの束を手に、リリのもとに戻った。

(;´・ω・`) 「遅くなってごめん」

⌒*リ´・-・リ 「たいして経っていませんから、謝らないでください」

二人で食事をし、長めの休憩をとった。
自然の音が心地いい。耳を澄まして聞き込んでいると、リリは微笑みながら服の内側から何かを取り出した。

⌒*リ´・-・リ 「持ってきてしまいました」


201 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:56:44 ID:RpSgo5Fo0

その手に持つのは、大事な手作り笛。
そっと唇にあて、息を吹き込む。

虫のさざめき、風に揺れる葉の音と一緒に彼女は奏でる。
音楽の終わりと同時に彼女は立ち上がった。

⌒*リ´・-・リ 「さて、歩きますよ」

(´・ω・`) 「また、聴かせてくれ」

⌒*リ´・-・リ 「無事に逃げ切れたなら、いくらでも」

日が沈んだとき、僕らは山の中腹にたどり着いた。
何年も放置されたような木製の台が並んでいる。


(´・ω・`) 「今日はここで休もうか」

強度を調べてから台に座る。
気が抜けたのか、リリはすぐにうとうとし始めた。

(´・ω・`) 「横になって」

⌒*リ´ - リ 「ショボン……はぜんぜん……寝てない……のに」

(´・ω・`) 「大丈夫。僕のことは気にしないでいいから」

リリは元気に振る舞っているが、日に日に疲れを増していた。早急にくつろげる場所が必要だった。

(´・ω・`) (だけど山越えには早くて後二日。この調子だと恐らく三日はかかるだろう)


202 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:58:00 ID:RpSgo5Fo0

それに、いつまでもここが安心とは限らない。
向こうの町で罠を張られている可能性もあった。

リリの寝顔を見ながら、彼女に最も負担が少ない形を考える。
しかし、山を出るまでは歩かざるを得ない。

(´・ω・`) (村に来た男から馬を奪っておけばよかった。そうすれば追っ手までの時間も稼げるし、リリも楽だったはずだ)

自分の手筈の悪さに腹が立つ。彼女を辛い目にあわせているのは他でもない、この僕だった。

(´・ω・`) (後三日は……耐えてもらうしかないのか)

見張りをして睡眠時間を殆どとっていないせいか、頭が重い。
寝るまいと思っていたが、結局、朝日と同時に目が覚めた。
焦ってリリの安全を確認する。

⌒*リ;´・-・リ 「はぁっ……はぁっ……」

体調を崩しているのは一目瞭然だった。
呼吸は荒く、額には多量の汗をかいている。

(;´・ω・`) 「リリ、大丈夫かい?」

⌒*リ;´・-・リ 「はぁっ……はい……なんとか……」

返事をするのもやっとな状態。とても歩けるとは思えない。

(´・ω・`) 「少し待ってて」

寝たままの彼女を放っておくのは気が引けたが、少しでも楽にしてやりたかった。
昨日採った植物を再び集め、破いた袖を十分に湿らす。
それをリリの額にのせた。


203 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 21:59:12 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「あり……がとう」

(´・ω・`) 「ごめん……僕が無理をさせたから……」

⌒*リ´・-・リ 「気に……しないで」

リリには薬が必要だ。
症状を緩和するための薬を作る錬金術は、今は使えない。

(´・ω・`) (器具も材料もなければ、僕は何も出来ない……)

唯一ホムンクルスでよかったと思える点が、この錬金術の知識なのに、使いたいときに使えない。
そんな知識に一体何の意味があるのか。

⌒*リ;´ - リ 「うぅ……」

(´・ω・`) (っ……! 今は悔しがってる時じゃない)

自分でどうにか出来ないならば、山を越えて町に薬を買いに行くしか方法がない。
彼女をおいて離れることは出来ない。

ならば解決策は一つ。

(´・ω・`) 「リリ、ごめん。揺れるよ」


204 :あうあうあー^q^:2012/03/08(木) 22:02:30 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ;´・-・リ 「うん……」

彼女を背に負う。
その体は驚くほど軽い。

出来るだけ衝撃が無いように気を配りながら進む。

(´・ω・`) (町まで我慢してくれ……)

いかに軽いとは言え、同じ距離を歩くのにかかる時間は倍になった。
苦しむ彼女を背に、夜通し歩き続ける。


・  ・  ・  ・  ・  ・


三日間軽い休憩を何度か挟むだけで歩き続け、三日目の夜、ついに倒れた。
精神よりも先に肉体に限界がきてしまったようだ。

顔の向きだけ変えて、隣に倒れているリリの方を向く。

リリの病状は悪くなるばかりで、回復の兆候は見えない。

(;´・ω・`) 「くそっ……」

山の終わりはまだ暫く先ある。

(;´・ω・`) (考えろ……考えろ……)

今から少し休み、一人で村に向かったとして、果たして間に合うかどうか……。

(;´・ω・`) (少しでも病状を抑える方法を……この近辺には何がある……? 今の僕には何が出来る……?)


205 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:03:38 ID:RpSgo5Fo0

ふと、腰に結んだ袋を思い出した。
そこにあるのは、錬金術で生み出した唯一の物質。
村人への恩返しに使う予定だったそれは、優秀な肥料だ。

一振りで瞬時に植物を成長させることが出来るほど強力な。

肥料は、栄養価の素になる。
リリの病状は疲労と栄養不足が原因だろうから、片方を取り除いてやれば少しはマシになるはずだ。

(´・ω・`) (当然、直接人間には使えない。だけど……)

解決方法は簡単だ。
今までなぜ気づかなかったのか分からないほどに。

手に力を込めて起きあがり、リリを寝かせたまま、来た道を戻る。
充分に離れ安全を確認したところで、袋から粉を一摘み取り出し振りまく。

すぐに植物は成長し始めた。
夏にしか実を成らせない木も、普段は大きくならない木も、肥料を得て、それを栄養価に昇華させる。

(´・ω・`) (よしっ)

この山がこれほどの多様性を有していなければ、難しかったかもしれない。
熟れた果実を収穫し、リリが食べられるように、細かくする。


206 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:04:41 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「リリ、口を開けて」

⌒*リ;´・-・リ 「ぁ…………」

取れたての野菜を口へ運ぶ。
リリに噛む力はほとんどなかったが、必死に飲み込む。

⌒*リ;´・-・リ 「ぉぃし……」

苦痛に歪み、泥に汚れた笑顔は痛々しい。
僕は無理に笑い返し、彼女の食事を手伝った。

⌒*リ;´・-・リ 「ぉ腹………ぃっぱ……」

食べれたのは普段の三分の一にも満たなかったが、ここ数日では一番食べてくれた。


・  ・  ・  ・  ・  ・


その後は僕らは地べたに寝て休んでいた。
危険だとか考えている余裕はなく、丸一日ゆったりと横になっていた。

食べ物のおかげが、リリの様子は見違える程良くなった。
少なくとも、楽に喋れるほどには。

⌒*リ´・-・リ 「ショボン、ごめんね。迷惑かけて」

(´・ω・`) 「僕の方こそごめん。無理していたのに気づいてあげられなくて」

僕らはお互いに謝り、笑い合った。


207 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:05:33 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「さ、そろそろ行こうか」

僕の体力は回復していたから、栄養たっぷりの野菜と果実を少しずつ持ち、リリを背負った。
幾分重くなった気がする。
それを彼女に言うと怒られた。

⌒*リ´・-・リ 「女の子にはもっと優しい言い方をしてくれないと困ります」

(´・ω・`) 「良い意味で言ったんだけど」

⌒*リ´・-・リ 「良い意味でもです」

納得はいかなかったけども、話を切り上げることにした。
無駄に体力を使って、また倒れる展開だけは避けたい。

(´・ω・`) 「やっとか……」

さらに二日経ってから、山を抜けることが出来た。
町はもう目に見えるところにあった。

(´・ω・`) 「リリ、後少しだよ」

⌒*リ;´・-・リ 「うん……」

二日間の強行軍が彼女の病状を悪化させていた。
早く町で薬を手に入れなければならない。

森から出て姿が隠せないことは、もう恐れてはいなかった。


208 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:06:26 ID:RpSgo5Fo0

町に入り、薬屋を探す。
僕の住んでいた町よりはずっと大きく、探すのに多少苦労した。

「へぇ、どうも」

(´・ω・`) 「熱の薬はあるか」

「こちらです」

店主から薬を受け取り、金貨を払った。
次に探したのは宿屋だ。

リリも僕もあまりにも汚く、これでは目立ちすぎる。
宿屋はすぐに見つかった。
もともと交通の要所にある町として広がったために、そういう施設は多いようだ。

(´・ω・`) 「二人部屋を頼む」

「先払いでよろしいでしょうか?」

(´・ω・`) 「構わない。服を二人分、あとお湯を沸かして持ってきてくれ。タオルと一緒に」

「畏まりました」

金貨を握らせ、部屋にあがった。
リリをベッドに寝かせる。


209 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:07:49 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´・-・リ 「無事についてよかったです」

(´・ω・`) 「そうだね。さぁ、まずは薬を飲んで」

グラスの水と粉薬を渡す。
それを飲み終えるのと同時に部屋の戸が叩かれた。

「湯と服を持ってきました」

(´・ω・`) 「ありがとう、入ってくれ」

子供が入るくらいの大きさの入れ物にたっぷりと湯が入っており、宿の従業員が複数人で運んできた。

「それではごゆっくり」

扉がしまったのを確認して、湯に用意されていたタオルを浸した。

(´・ω・`) 「さて、リリいいかな?」

⌒*リ´・-・リ 「えっ? えっ?」

子どものように混乱している。
何をされるのか理解していないようだ。

(´・ω・`) 「お互いどろどろだし、リリ動けないでしょ?」

⌒*リ´//-/リ 「~~~~~っ!!」


210 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:08:36 ID:RpSgo5Fo0

やっとわかってくれたようだ。

⌒*リ´//-/リ 「ちょっ、ちょっと待って下さい。まだ心の準備が」

(´・ω・`) 「はーい、時間切れー」

彼女の服を脱がせ、全身を暖かいタオルで丁寧に拭いていく。
汗と泥を取り除くと、綺麗な白い肌が現れた。

(´・ω・`) 「はい、終わり」

服を着せ終え、今度は自分の汚れを落としにかかった。

(´・ω・`) 「ふーすっきりした」

使い終わった湯を廊下に運び、ベッドに横になった。
作業が終わっても、リリはリンゴの様に顔を真っ赤にしたまま、口を利いてくれなかった。


「食事をお持ちしました」

僕らの沈黙は宿屋の主によって破られた。
もうそんな時間になっていたのかと驚きつつ、許可を出す。

(´・ω・`) 「ああ、入ってくれ」


211 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:09:40 ID:RpSgo5Fo0

「どうぞ。食べ終わりましたら、扉の外に出しておいてください」

出された食事は豪勢だった。
久しぶりの肉に思わず涎が出てくる。

当然ホムンクルスでもうまいものはうまい。

(´・ω・`) 「食べようか」

⌒*リ´・-・リ 「はい……」

リリの祈りが終わるのを待ってから食事を食べる。
僕らはやっと日常に帰ってこれた。

(´・ω・`) 「おいしいね」

⌒*リ´・-・リ 「はい……」

ちゃんと話してくれないのは寂しくもあったし、
照れたままはい、としか答えないリリに少し悪戯心が湧いてきた。

(´・ω・`) 「綺麗な体だったから大丈夫だよ。気にしないで」

⌒*リ´//-/リ 「~~~~~~~っ!?」

ますます喋らなくなってしまった。

(´・ω・`) 「ごめんごめん。ちょっとからかっただけだから」

⌒*リ´//-/リ 「ややや、やめてください……」


212 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:10:34 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ああそうだ、明日からの予定なんだけど、この町もすぐに離れた方がいいと思う。
       馬を調達して、さらに西に向かうよ。馬は乗れる?」

唐突にまじめな話題に戻す。
若干動揺しているものの、しっかりと話についてきてくれた。

⌒*リ´・-・リ 「はい、大丈夫です」

(´・ω・`) 「わかった。朝になったら、二頭貰ってくるから、ここで待ってて」


・  ・  ・  ・  ・  ・


朝の町は交易地といえども、まだ静まり返っている。
厩舎に行き、馬二頭を買うのには苦労はしなかった。
十分な量の金貨があったからだ。

宿に引き返す途中、数人の騎士の姿を見かけ、家の陰に隠れる。
そいつらは間違いなく、あの男とその仲間だ。


213 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:11:28 ID:RpSgo5Fo0

「なかなか現れんな。林の小道は調べたのか?」

「今調べている途中ですが、人が通った後はあるようです」

「ふむ、宿は全部当たったのか」

「いえ、まだです。なにぶん数も多いので。ですが、薬屋の主人からそれらしい男を見たと言う話を聞きました」

「だったら、さっさと探し出せっ!」

会話は其処で終わり、馬の駆ける音が遠ざかっていく。
宿を総当たりされたら見つかるのは時間の問題だ。

(´・ω・`) (急ぐか……)

真っ直ぐ宿に向かい、リリが無事でいるのを見て一安心する。

(´・ω・`) 「リリ、町を出るよ。準備は?」

リリの熱は下がり、すっかり元気を取り戻していた。

⌒*リ´・-・リ 「もうできてます」

(´・ω・`) 「よし、行こう」


214 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:13:28 ID:RpSgo5Fo0

西へ頭を向け馬を疾駆させる。
この先にあるのは港町。
そこから船に乗って逃げれば、そうそう追ってはこれないはずだ。

(;´・ω・`) 「っ!?」

安心して気が抜けた瞬間、左腕に激痛が走った。

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!」

(#´・ω・`) 「くそっ!」

リリの叫びを聞きながら、自分の馬から飛び降り体をリリの後ろに投げ出す。

「がっ!」

計五本の弓矢が全身を貫く。
地面に激しく叩きつけられた痛みを無視し、すぐに起きあがった。
リリに逃げるよう急かす。

(#´・ω・`) 「走れっ! 後で追いつく!」

⌒*リ;´・-・リ 「でもっ!」

(#´・ω・`) 「いいから行け!」


215 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:14:26 ID:RpSgo5Fo0

体に刺さった矢を一本ずつ乱雑に抜いていく。
すぐに五人の騎士に囲まれた。

「女を捕まえてこい」

二人が円陣を崩しリリの後を追う。
それを横目に、男達の隙を窺っていた。

「久しぶりだなぁ、ショボンよ」

(#´・ω・`) 「……」

黒い鎧に銀の蛇。
多くを知っているわけではないが、この男はよく覚えていた。
一番最初に僕の主人を襲った男だ。

「まぁいい。我らと共に来てもらおう」

(´・ω・`) 「断る」

「ならば力づくで連れて行くまでよ」

三人が同時に槍を突き出す。


216 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:16:48 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「ホムンクルス相手に接近戦とは脳無しか?」

相手の攻撃と同時に一人の懐に飛び込む。
右腕を槍の一撃で斬りおとされながら、左で抜いた剣で首を叩き斬った。

「がっ……?」

男は目を見開き崩れ落ちる。

(#´・ω・`) 「ぐっ……」

背中から異物か体の中に侵入してくるのを感じる。
胸から二本の槍が飛び出していた。

「やっ……」

(´・ω・`) 「てないよ」

左腕を大きく振りかぶり、刀を投擲する。
真っ直ぐに喉を貫き、絶命に至らせる。

「ぎっ……!」

(#´・ω・`) 「があああああああああああああ」

まだ生きている騎士の槍を掴み、全力で体を捻る。
体中の細胞がぶちぶちと千切れる音をさせながら。


217 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:18:12 ID:RpSgo5Fo0

「なっ?」

男はバランスを崩して落馬した。

(´・ω・`) 「悪いが時間がない」

リリを追いかけなくてはならない。
体から引き抜いた槍を男に向ける。

「待て。女の命がどうなってもいいのか?」

(;´・ω・`) 「っ!?」

振り向けば、首元に剣を突き付けられたリリがいた。
その後ろには追いかけた二人だけではなく、五人に増えていた。

⌒*リ´・-・リ 「ショボン、ごめんなさい……」

「喋るな。武器を捨て隊長から離れてもらおう」

(´・ω・`) 「くそっ……」

「ふ……ふ……よくやった……。こいつを縛れ!」

身動きが取れないほどに上半身が固定される。
リリを見ると、怪我はないようで一安心する。

「女は縛って捨て置け」

⌒*リ;´・-・リ 「ショボンっ!」

(;´・ω・`) 「リリっ」


218 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:18:54 ID:RpSgo5Fo0


馬にのるように促される。
逆らって彼女に害が及ぶのは避けたかった。

僕を乗せ、男達は道を引き返す。
少し離れたところで、急に動きを止めた。

「ああそうだ」

隊長格の男は不気味な笑い顔を僕に向けてくる。

「我らに逆らうとどうなるか、教えてやるのを忘れていたな」

リーダー格の男が顎で指示し、それに合わせて一人の男が弓に矢を番える。
その先には両手を縛られたままのリリ。

「やめろっ! 頼む! やめてくれっ!」

「やれ」


219 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:22:25 ID:RpSgo5Fo0

ギリギリと引き締められた弦の音が消えた。

「リリ──────っ!!」

スローモーションのように弓矢は進んでいく。
時が止まったかと思えるほど、ゆっくりと。
けれども着実に。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´・-・リ 「この辺の人じゃないですよね……生きてますか……?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´・-・リ 「リルケット・リファリアと言います。この辺りの人はリリーやリリって呼びます。
         あなたの名前は?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


⌒*リ´;-;リ 「別に……あなたが死なないだとか、作られただとか、そんなことはどうでもいい。
         私は、あなたと一緒にいたい。それでは駄目ですか……?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

⌒*リ´ - リ 「ショボン……」


矢は、リリを射抜き、彼女はゆっくりと倒れた。
倒れたまま、起きあがることは無かった。

(#´ ω `) 「あ……あ……」


220 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:24:54 ID:RpSgo5Fo0

(#´ ω `) 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「黙れっ!」

叫ぶことしかできなかった。
殴られても、蹴られても、喉が張り裂けてしまうほどに。

「行くぞ」

激痛とともに、意識を失った。


・  ・  ・  ・  ・  ・


「ふん、大した化け物でもなかったな」

意識を取り戻したときは既に夜になっていた。
男たちは山沿いにある街道で野宿をしていた。

「気づいたか化け物?」

僕は身動ぎをしようとして、痛みで動くのをやめた。
両手は重ねられて、墓標のごとく一本の剣が突き刺さっている。
両の足はふくらはぎと太股に一本ずつ、計四本が突き刺さっていた。


221 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:29:46 ID:RpSgo5Fo0

「死なないってのは面白ぇなぁ!」

地面に転がっている酒瓶の数からして相当呑んでいるようだ。
溢れんばかりの憎悪は逆に冷静に考えさせてくれるのだろうか。

僕がすることはただ一つだけだった。

「何か言えよ! あぁん?」

二、三発顔を殴られた。
それでも反応を見せなかった僕に腹を立てたのだろう。
腰から長剣を抜きはなつ。

「反応しねぇと斬っちまうぞ? 必要以上に傷つけるなとは言われてるけどな、
みんな寝てんだ。関係ねぇや」

そうか。
こいつは見張り役か。

それなら都合がいい。

(´・ω・`) 「ホムンクルスを」

「ん?」


222 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:34:42 ID:RpSgo5Fo0

僕の言葉に興味を持ち、耳を近づけてくる。

(´・ω・`) 「ホムンクルスを生け捕りにしたければ、方法をよく考えるべきだったな」

両手を思いっきり引き抜く。
手のひらが半分になるが瞬時に再生する。

「なっ!?」

地面に突き刺さった剣を抜き、不用意に近づいていた男の首を深く切り裂いた。
喉から赤い泡が膨れ上がっては弾け、しばらくして男は動かなくなった。

(´・ω・`) 「ぐっ……」

今度は両足を切り落として自由になる。
火の消えかかった焚き火の近くには男が四人。
順番に喉を切り裂いていく。

(´・ω・`) 「おい、起きろ」

リーダー格の男は殺す前に話しておきたかった。

「なんだ……ん……!?」

屈み込む僕の姿を見て剣に手を伸ばすが、その腕をはね飛ばす。

「ぎゃああああ腕! 腕が!」


223 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:35:47 ID:RpSgo5Fo0

(´・ω・`) 「黙れ」

喉元に切っ先を突きつける。
それだけで静かになった。

「なんで……なんでリリを殺した……」

「は、はん。ただの気まぐれだ。
なに、乱暴するよりはずっとマシだろうが。むしろ感謝あ」

(#´・ω・`) 「もう喋るな」

口の中に剣を突き刺した。
脳幹を破壊して地面に届く。

男達の馬に乗り、全力疾走で西に向かう。
移動距離から考えて、気を失ってから一日と経っていないはずだ。
彼女の亡骸を放置したままに出来るわけがなかった。

日の出の前、空が白み始めた頃にリリが倒れていた場所に戻ってきた。
そこには血痕だけが残されていて、彼女の体はなかった。

(どこだ……どこにいる……?)

ここにいないのなら、町の中に運び込まれたに違いない。

(最も可能性が高いのは教会だ)

大きい町だが、中には一つしか教会はなく、そこに向かった。
入り口に馬を結び、中に入る。そこには白いベッドが置いてあった。


224 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:37:22 ID:RpSgo5Fo0

⌒*リ´ - リ 「ショ……ボン……?」

(´;ω;`) 「リリ……?……リリ!」

リリはまだ生きていた。
矢は抜かれ、適切な治療が施されていた。

⌒*リ´ - リ 「よか……った……最期……会え……」

(´;ω;`) 「馬鹿なこと言うな! 僕が必ず助ける!」

僕らの話し声が聞こえたのか、奥から牧師が出てきた。

「彼女のお知り合いの方ですか?」

(´;ω;`) 「はい」

「昨日彼女を見つけ、医師に診てもらったのですが、傷が深すぎて……一日生きているだけで奇跡です」

(´;ω;`) 「見つけて下さってありがとうございました」

彼が見つけてくれなければ、もう話すことは出来なかった。
でも、リリはまだ生きている。
医師が匙を投げても、錬金術師はフラスコを投げない。

僕には彼女を救う力があるはずだ。


225 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:40:32 ID:RpSgo5Fo0

(´;ω;`) 「もう少し、リリを見ていてあげて下さい」

「ですが……」

(´;ω;`) 「お願いします。すぐに戻ってきますから。
        リリ、もう少しだけ待っていて」

⌒*リ´ - リ 「うん……」 

僕は教会を飛び出し、薬屋に向かった。
途中フラスコを数個購入する。

(´-ω-`) (リリの傷は深い……人間の治癒力で治る範囲を超えている。
       それならば……僕は罪を犯そう。彼女に恨まれるかもしれない。それでも、僕は彼女に生きていてほしい。)

宿の一室を借り、作業場を作る。

強力な肥料は生命の源に。
千年生きる蝉の粉末と、渦を巻く海牛のエキス。その他はこのくらい大きい交易都市なら手に入る。
必要な素材は多くない。
難しいのはコンマ以下の誤差も許されない調合。

本来は数年かかる物を、たった数時間で完成させなければならない。
それも、最難関の錬金術を。

(…………)


226 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:42:57 ID:RpSgo5Fo0

慎重に薬品を加えていく。
最後に僕の血液を混ぜることで、僕と同等の知識を得る。


・  ・  ・  ・  ・  ・

・  ・  ・  ・

・  ・


(´・ω・`) 「できた……!」


血のように赤い液体金属。

多くの錬金術師が夢見、破れていった伝説の存在。

たった一滴で無限の富と永遠の命を与えると謂われる。

たった一滴で神を貶める罪の結晶。

(´・ω・`) 「賢者の金属……」

ひとたび体内に摂取すれば、それは血液に溶け、後戻りすることはできない。



教会に駆け戻り、瀕死の彼女の横に立つ。

(´ ω `) 「僕の弱さを許してほしい……」

僕は祈るように、罪の塊を彼女の傷口に垂らした。


227 :名も無きAAのようです:2012/03/08(木) 22:51:12 ID:RpSgo5Fo0








7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです  End

             ↓

8 ホムンクルスと少女のようです


《時系列》

ホムンクルス生誕
   ↑
   ↓
6 ホムンクルスの忘却と少女の幸福のようです
7 ホムンクルスの罪と少女の難のようです
   ↑
   |
   |
   ↓
1 ホムンクルスは戦うようです
   ↑
   ↓
2 ホムンクルスは稼ぐようです
   ↑
   ↓
3 ホムンクルスは抗うようです
   ↑
   ↓
4 ホムンクルスは救うようです
   ↑
   ↓
5 ホムンクルスは治すようです


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