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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです 第8話 

245 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:19:15 ID:lvNlMSaA0


絶望の淵にあったホムンクルスを救ったのは一人の少女。

ある事件をきっかけに、少女もまた不死の存在となる。

二人の物語は永遠に続くはずだった…………。


ホムンクルスは生きるようです


──少女編最終話





8 ホムンクルスと少女のようです



二人の愛の行方は────


246 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:20:03 ID:lvNlMSaA0



リリの傷口から体内に染み込み、その定義が彼女の体を変質させていく。
見た目は変わらないまま。


傷口は完全に消えたとき、リリの顔に血の気が戻った。

(;´・ω・`) 「リリ?」

僕の呼びかけに応えるかのように、彼女は目を開けた。

⌒*リ´- -リ 「ショ……ボン? 私は……?」

「あ、あ、有り得ない……。奇跡だ!」

(´;ω;`) 「奇跡じゃ……ありません。……錬金術です」

リリの手がゆっくりと傷口に触れた。
そこにはもう、何もない。

万能に見える錬金術も、死者を元通りに生き返らせることはできない。

(´ ω `) (リリを生かしてくださったことを感謝します)


247 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:21:49 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´- -リ 「……助けてくれたんだね。ありがとう」

(´;ω;`) 「当たり前だ」

リリの手を強く握った。
もう二度と手放さないと、決意して。

⌒*リ´ v リ 「……これで、私もショボンも同じだね」

既に彼女は"知っている"
自分がもはや人間ではないと言うことを。

殺しても死なず、朽ちゆくことのない存在だと。

知った上での、優しい微笑み。
ただそれだけで許された気がした。

(´・ω・`) 「……行こう。ここに長居は出来ない」



⌒*リ´*・-・リ 「……はい」


248 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:23:10 ID:lvNlMSaA0


ベッドから起きあがったリリに寄り添って支え、教会を出る。
腰を抜かした司祭はそのまま置いてきた。

馬は一頭しかいないが、しばらくは急ぐ必要もないだろう。

自由気ままな旅が楽しめるはずだ。

(´・ω・`) 「当初の予定通り、港へ向かおう。そこから先は、またその時に考えればいい」

⌒*リ´*・-・リ 「ショボンと一緒なら、どこまででも」



・  ・  ・  ・  ・  ・


249 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:28:32 ID:lvNlMSaA0




僕らは二人で、世界中を旅した。いろんな国を見て回った。いろんな出来事があった。

数万人が住む都市で商売をして、数百人もいない村で暮らした。


錬金術を用いて人助けをし、知識を授けて平和に一役買った。


神と崇められて、悪魔と罵られながら。


幸せだった。
二人で笑って、泣いて、生きて。


(´・ω・`) 「…………君と一緒でよかった」



⌒*リ´ v リ 「私もだよ」


250 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:30:50 ID:lvNlMSaA0



気づいたのはいつ頃だったか。
100年は経っていなかったと思う。

リリの様子が少しおかしいことに気づく。。
僕の前では明るく振る舞っていたけれど、何かを隠しているのは明らかだった。

だから彼女に直接聞いた。
どんなに悪いことだろうと、一人で背負わす訳にはいかなかった。

(´・ω・`) 「リリ。言いたいことがあるのなら、言ってくれ」

⌒*リ´・-・リ 「……。ショボン……。
        なんでも……ないよ」

(´・ω・`) 「隠すなよ」

⌒*リ#´・-・リ 「何でもないったら!」

リリは答えてくれなかった。
それどころか、こんなに怒らせてしまったのは数年ぶりのことだ。


251 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:35:15 ID:lvNlMSaA0


(´-ω-`) 「……ごめん」

⌒*リ´- -リ 「私こそごめん……」

微妙な空気が僕らを包む。
お互いの距離感を測りかねていた。

強引にでも聞くべきなのか、そうでないのか、僕にはわからない。

(´-ω-`) (いつからだったかなぁ……)

最初の数年は喧嘩なんて一度もなかった。
一緒に過ごす年数が二桁になるころに何回か喧嘩をした。

つまらないことだったけど。
長く一緒にいるから、お互いのことはよく知っている。

だからこそ、違和感を感じる。
僕のことじゃなく、自分のことで悩んでいるのだと。
そう確信できるものが、心の中で渦巻いてる。

(´-ω-`) (でも、どうすれば……)


252 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:36:42 ID:lvNlMSaA0


僕らが出会った村よりも、ずっとずっと南西にある小さな漁港。
ここで過ごし始めてもう20年にもなる。

⌒*リ´ - リ 「……ちょっと……出掛けてくるね」

それだけ言うと、リリは外に歩いていった。
外はまだ明るいし、心配はいらないだろう。

(´・ω・`) 「ふぅ……」

思わずため息が漏れる。


思い当たることがないわけではない。
一年365日ほとんど一緒にいるのだ。

むしろ喧嘩の理由が無い方がおかしい。

(´・ω・`) (寂しいのかな……)


253 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:39:38 ID:lvNlMSaA0



最初の頃はずっと一緒に暮らしていた。
錬金術を使ってお金を稼ぎながら。

二人でどちらがより売れるか競い合ったり、共同で新しいものを作ったり。

彼女はホムンクルスの僕には無いアイデアで錬金術を行っていた。

リリにとって新鮮だった錬金術は、数年もすればつまらないものになった。
それから僕らは世界中を旅行した。

先人達の偉大な歴史を見て回った。
リリにも純粋に旅行として楽しんでもらえたと思う。

それでもやっぱり定住意欲の方が強くて、旅行先に何度か住み着いた。
だけど十数年が限界だった。

年をとらない僕らは、年数がたてばたつほど怪しまれる。
今住んでいるこの地だって、しばらく住めば離れなければならない。

最近、僕は食べ物の調達によく狩りに出掛けている。
リリは家の近くで野菜を作っていることが多く、そのせいかもしれない。

(´・ω・`) (寂しさを紛らわす方法か……)


254 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:41:31 ID:lvNlMSaA0



椅子から立ち上がって、家の外に出た。

雲一つない真っ青な空に、まだ雪の解けていない白い峰。
まるで自然の美しさが今この景色に凝縮されているかのようだ。
牛は暢気に草をはみ、羊は少し長い昼寝を楽しんでいる。

少し歩いた先にリリはいた。
大樹に寄り添って座っている。













聞き覚えのあるメロディが、風にのって届く。



僕の、一番好きな調べ。


255 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:46:55 ID:lvNlMSaA0




春の陽のように優しく

雪解け水のせせらぎのように心地よい


立ち止まって耳を傾けていた。


パキ


演奏は歪な音で中断された。

⌒*リ´ - リ 「…………」

(´・ω・`) 「…………リリ」

リリの胸には二つに割れた横笛が抱かれていた。


256 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:50:50 ID:lvNlMSaA0


⌒*リ´ - リ 「仕方ありません……いずれ朽ちてしまうものです。
        形を変えないものなどないのですから……」

(´・ω・`) 「まだ、直るかもしれない」

⌒*リ´・-・リ 「いえ、いいんです。もう、充分です。休ませてあげましょう」


(´・ω・`) 「……僕が新しいのをプレゼントするよ。
      上手に作れる自信はないけれど……。
      錬金術じゃなくて、僕の手で」

⌒*リ´*・v・リ 「ありがとうございます」

(´・ω・`) 「家に帰ろう」

僕らは並んで家に帰った。
壊れてしまったリリの横笛は、大事にしまい込んだ。


257 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:52:45 ID:lvNlMSaA0




(´・ω・`) 「リリ、あのさ…………子どもを作ろうか」

⌒*リ´・-・リ 「!?」

⌒*リ´//-/リ 「あ、あああああ、あの……そういうのは……ですね……えっと……」

動揺して真っ赤になるリリ。
慌てすぎてて舌が回ってない。

⌒*リ´//-/リ 「えーあーそのーえーでも……うん……」

(´・ω・`) 「まぁ落ち着いてよ。別に今すぐどうのこうのってわけじゃないし」

⌒*リ´//-/リ 「ま、まだ昼なんだから当たり前です!」

論点がずれていた。
リリが落ち着くのを待ち、それから話を進める。

(´・ω・`) 「僕は君を寂しがらせてるんじゃないかって。
      子どもがいれば、そんなことはないんじゃないかな」

⌒*リ´・-・リ 「……」

(´・ω・`) 「人間と同じように子供を作ることはできないけれど、僕なら……」


258 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 10:54:31 ID:lvNlMSaA0



黙っていたリリはゆっくりと口を開いた。


⌒*リ´・-・リ 「その子供は、人間ですか? それとも、ホムンクルスですか?」

その静かな質問の答えを、僕はもっていなかった。
ただ彼女のことだけを考えていた僕には、答えることができなかった。


⌒*リ´・-・リ 「人間の子どもを私達が育てた時、大きくなったその子は何を思うでしょうか。
        親が不老不死の人外だと知って、その子はまだ自分が人間だと信じられるでしょうか」

(´-ω-`) 「………………」



⌒*リ´・-・リ 「ホムンクルスの子どもは一生子供のままです。もし、大人になるとしても彼もまた不老不死なわけですよね。
        私は、ショボンの言うとおり寂しいと感じています。
        友人もいない、家族もいない、愛する人とたった二人でいるには、あまりにも長すぎる時間を過ごしてきました」



違う、とは言えない。
彼女の言うことは正しい。
そして、その言葉は僕を苦しめる。


259 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:01:18 ID:lvNlMSaA0



(´-ω-`) 「………………」

⌒*リ´・-・リ 「でも、だからと言って、私は、自分のエゴのためにそのような存在を生み出すことを良しとしません。
        ショボンの心遣いはとても嬉しいです」


窓から差し込む陽光を眺めつつ、リリは口を開いた。




⌒*リ´・-・リ 「……怖いのです」

⌒*リ´・-・リ 「死ぬことのない私たちは、いつまで生きればよいのですか?」

(´-ω-`) 「…………」

⌒*リ´・-・リ 「人が死に絶え、植物が腐り落ち、世界が滅んだら、私たちはどうなるのでしょう」


⌒*リ´・-・リ 「この数十年は、この考えが頭から離れません」

だから、僕の心遣いは嬉しかった、と。

(´・ω・`) 「それは……」

続ける言葉もないのに、声を発してしまった。


260 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:05:39 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「……リリは……」

⌒*リ´・-・リ 「ショボンを責めているわけではないです。
        むしろ死んでいたはずの私にこれほどまでに多くの幸せを下さって、とても感謝しています」

⌒*リ´・-・リ 「私がいなければ、ショボンは一人で生きていくことになってしまいますから。
        ただ少し、そう少しだけ、疲れてしまったのかもしれません」

今になってようやく気づいた。


リリは人間の心を持つホムンクルスだ。
人の心は数百年を生きるようにはできていない。
長生きすることを想定して作られた僕とは、決定的に、絶望的に違う。

今はまだ『少し疲れた』程度かもしれない。でも、いずれは……。

深く沈んだ僕の表情を見て、リリは言った。


261 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:11:06 ID:lvNlMSaA0
]


⌒*リ´*・-・リ 「心配しないで下さい。そうそう簡単に負けたりしませんから」

(´ ω `) 「うん……」

ただ頷き返すことしかできなかった。

リリの心を人間の時そのままに残したのは、彼女の心に干渉したくなかったからだ。
僕によって強く作りかえられた心は、果たしてリリのものなのか。
そういう疑問を持ちたくなかった。

だから、彼女の精神には何も施さなかった。
それが今のこの状況を作り出している。

何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなってしまった。
静かに泣いていた僕を、彼女は優しく抱きしめてくれた。



・  ・  ・  ・  ・  ・


262 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 11:26:20 ID:lvNlMSaA0



⌒*リ´*・-・リ




⌒*リ´・-・リ




⌒*リ´ - リ




 リノ´ -川


263 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:20:57 ID:lvNlMSaA0


・  ・  ・  ・  ・  ・



僕とリリはただひたすらに生きた。

そこに神様が願いを聞いてくれて幸せになる奇跡はなく、
悪魔と戦って生きる意味を知るような物語もない。

平凡で、それ故に平和な百数十年だった。
長い年月で得たものは、両手では持ちきれないほどの思い出。
それとは逆に、リリの心は少しずつ磨耗していった。



 リノ´ -川 「ごめんなさい、ショボン……」



一番聞きたくなかった言葉が容赦なく鼓膜を震わせる。

ただぼーっと指をくわえて見ていたわけではない。
心の劣化を防ぐ研究を、元へ戻す研究を続けてきた。


264 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:23:00 ID:lvNlMSaA0



ついぞ答えを見つけることはできなかった。
いずれの手段をとるにしろ、彼女の性格を手付かずで残すことができないのだ。
心とは性格そのものだと言うことを、理解した。

(;´・ω・`) 「頼む! もう少しだけっ!」

そう言ってリリを引き留めた。
何度も。何度も。


265 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:25:30 ID:lvNlMSaA0












 リノ´ -川 「…………ごめんなさい」










.


266 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:31:57 ID:lvNlMSaA0


研究に疲れて寝ていた僕が、そのことに気づいたのは、次の日の朝だった。

(´-ω-`) 「リリ……?」

扉が強く叩かれる音で目を覚ました。

(´+ω-`) 「ん……」

普段ならリリが対応するはずだが、姿が見えない。
仕方なく机から起きあがり、来訪者を迎え入れた。

「ショボン様、リリ様が……」

村人の尋常でない様子から、リリの身に何か起きたのだと悟る。

(#´・ω・`) 「何があった!?」

まどろみから一瞬で覚めた。
語気を荒くして問う。

「リリ様が……川に」

(;´・ω・`) 「っ! どこだっ! 案内しろっ!」


267 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:32:56 ID:lvNlMSaA0



連れてこられたのは、村に流れ込む大きな川。
流れは早く、リリの姿は見あたらない。

(;´・ω・`) 「いつの話だ?」

「つい先程です。一人ふらふらと歩いてこられて……」

(;´・ω・`) 「リリっ……くそっ……リリぃっ!!」

叫んでも返事はない。
水の流れる音だけが、聞こえていた。

(;´・ω・`) 「しばらく家を空ける。村の者にも伝えといてくれ」

「わかりました」

河口へは遠く、この辺りはかなりの深さがある。
おまけに急流ともなれば、川底を調べるのは不可能だ。

(;´・ω・`) (どこから探せば……)

家に戻って旅支度を整える。
必要なものはまとめて革袋へ放り込んだ。

そこで一枚の紙切れが目に付いた。
手に取って見てみると、リリの字で書かれた手紙だった。


268 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:34:43 ID:lvNlMSaA0












「ショボンへ。あなたに救ってもらったこの命を、無駄にしてしまうことを許して下さい。とても幸せでした。さようなら」











.


269 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 12:48:47 ID:lvNlMSaA0







(´;ω;`) 「っ…………」

涙が止まらなかった。
短い手紙には、リリの苦労が一言も書かれていなかった。
彼女は、僕を気遣ってくれたのだ。
エゴで彼女を苦しめた僕を。

罵詈雑言で埋め尽くされていてもおかしくなかった。
呪いの言葉を残されても自業自得だ。

それなのに彼女は……。

(´・ω・`) (探さなきゃ……こんな終わり方は駄目だ……)

ホムンクルスの命を終わらせる方法なんてわからない。
それでも、リリが本当に死を望むなら、見つけなきゃならない。
水底で眠るのは一時的な逃避だ。数百年後、数千年後にさらにひどいことになるかもしれないのだから。

(´・ω・`) (必ず見つける。見つけて、二人で最善な道を探すんだ。
       それがもし離れ離れになってしまうことだとしても。僕が逃げてはいけない)


270 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:12:09 ID:lvNlMSaA0


手紙も袋の中にしまい込み、まずは川下へ向かって歩くことにした。
人の体は浮くものだし、どこかで引っかかっているかもしれないからだ。
乾季になれば、少しは水の量が減る。それまでの凡そ三カ月は川の周辺を調べるしかない。

数百キロの途方もない道のりも、リリを想えば容易かった。

(´・ω・`) (見つけて、今度こそリリを救う)

彼女が、彼女らしく生きていけるように。
彼女が、彼女らしく死ねるように。



僕は……もう逃げない。


271 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 13:41:57 ID:lvNlMSaA0



日の出ている間は、ひたすら川下に向かって歩いた。
下降にある港町まで二週間かけて歩いたけれど、リリの持ち物一つ見つけることすらできなかった。

港町で聞き込みをする。

海に流れ込む河口は人を運ぶだけの勢いも、深さもない。
ここまで流れ着いていれば、誰かが気づくはずだ。

(´・ω・`) 「すいません、普段町で見ない女の子を知りませんか? 
       リルケット・リファリアという名前なのですが」

「いや。交易都市だからなぁ。人の出入りも激しいし、それだけの情報じゃわからない」

(´・ω・`) 「そうですか……ありがとうございました」

(´・ω・`) 「すいません、あの……」


「いや、知らない」

「知らんなぁ」

「わからん」


272 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:49:46 ID:lvNlMSaA0


聞き込みの成果はゼロだった。
リリの姿形を表現できる手段がなければ、当たり前かもしれない。
かといって絵が描けるわけでもない。
状況は最悪だった。

(´・ω・`) (しばらく、ここで暮らすか……)

いつ彼女が流れ着くかわからない。
焦って何往復もするよりは、このほうが良いはずだ。

用意していた金銀をもってギルドに建築の依頼をする。
中心部から離れた、河口を見下ろせる丘の上に小さな小屋を建ててもらうことにした。

完成するまでの一週間は宿屋に泊まり、朝から晩まで河口を眺めて過ごした。

「ショボンさん、でしたっけ。注文通りの家を完成させました」

きっちり一週間後、職人が報告しに来た。
残りの代金を払い、あらかじめ予約していた錬金術の道具店へ向かう。
錬金術師が広く知られていないこの時代に、こうした店を見つけることができたのは運が良かった。


273 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 14:58:59 ID:lvNlMSaA0


(´・ω・`) 「フラスコを10、試験管を12、固定具を2、ランプを2、用意できてますか?」

「ああ、新しい研究所を作る人だったけな。全部できとるよ」

(´・ω・`) 「ありがとうございます」

「サービスにフラスコと試験管二つずつ増やしといたから。また利用してくれよ」

(´・ω・`) 「はい、そうさせていただきます」

両手いっぱいの器具を抱えつつ、家に帰った。
全てを使いやすいように並べて一息つく。
ふと、西側の窓から河口を見下ろす。

川で水遊びをしている子どもたちが目に入った。
覚悟を決めて手元の器具に目線を映す。

(´・ω・`) 「ホムンクルスの研究を一からしよう……」

僕はホムンクルス、ひいては賢者の金属について知らないことはないだろう。
だが、今ある知識だけでは足りない。
リリを見つけたときのために、全てを知っておかなければならない。



・  ・  ・  ・  ・  ・


274 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:01:17 ID:lvNlMSaA0





数十年の年月はあっという間だった。
一匹の兎を検体として百を越える実験をし、千を越える種類の薬品を投与した。


その何一つとして有効な結果は得られなかった。

調べれば調べるほど、ホムンクルスの不死性は完璧な論理の上に組みあがっていた。

(´・ω・`) 「くそっ……」

書きあげた式を破り捨てる。
これもうまくいかなかった。

未だリリを見つけることも出来ていない。
一年に一度、彼女が身を投げた村まで川を遡っていが、手掛かりはない。

リリは記憶を失ってどこか別の場所で生きてるんじゃないだろうか。
どこかで、一人苦しんでいるのではないだろうか。

そんな考えが浮かんでは消えていく。

ここにいれば彼女が見つかる、そう信じていた。
でももう、それすら信じられない。

港町に長居し過ぎたせいで、僕の名もだいぶ知られてしまっている。
ここも安全ではない。


275 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:02:02 ID:lvNlMSaA0
(´・ω・`) (世界中を巡って、不死の解決の手段を探す)

流通する品は限られている。
ここにいたままでは手に入らない素材は山ほどあるし、知らない植物も旅の途中で多く見て来た。
それならば、新しい発見を求めて。

(´・ω・`) (世界を歩き、リリの痕跡を見つける)

それが、僕の今すべきことだ。


でもその前に、やることがある。

ここに僕がいた証を残そう。
リリの手掛かりになるように。

(´・ω・`) (ただ彷徨うのではなく、帰ってこれるように)

買ってきた塗料で家の壁に大きく文字を書く。
ここが、僕の家だとわかるように。


Death is only the begining except for Us


276 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:03:55 ID:lvNlMSaA0


そして家を守るための仕組みを作った。
家を中心に二重の黒線を描き、そこに錬金術を組み込む。

それは人間の意識を逸らす。
定期的に帰って来なければならないが、これで家は残されるはずだ。


(´・ω・`) 「ふぅ…………」

勢いつけて起きあがり、机の上の紙を全て暖炉に放り込んだ。
実験道具に残っていた研究素材も全て。

炎の色は夜のように黒く、紫の煙を出して燃え上がる。

最後に机の上に丁寧に横笛を置いた。
砕けてしまった、彼女の最も大切な物。

欠片を繋ぎ合わせ、接着した。
別れてしまった僕らが再び出会えるように願いを込めて。




最後に一度だけ振り返り、家を出発した。


277 :名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 15:04:57 ID:lvNlMSaA0









8 ホムンクルスと少女のようです  End

             

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( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです 第2話 

34 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:41:13 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.


35 :ミス:2012/04/15(日) 02:41:55 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


.


36 :またミスった:2012/04/15(日) 02:42:37 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.


37 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:44:51 ID:wghgvI3cO
落ち着けwww

38 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:46:40 ID:n.kWS84w0
( ゚ω゚)「どえええええええええええええええ!!!」

(゚ω゚ )「どええええええええええええええええええええ!!!」

( ゚ω゚ )「ドエエエええエエエエエええええええええええええええええええええ!!!」

ξ゚⊿゚)ξ「こっち見んな」

(;^ω^)「ちょちょ、ちょ、マジで言ってるのかお!?」

ξ゚⊿゚)ξ「大マジよ。社長さん」

(;^ω^)「でも、歯車王がなくなったらうちは…」

ξ゚⊿゚)ξ「やっていけなくなるの、クー?」

川 ゚ -゚)「いや。むしろ右肩上がるな」

('A`)「そりゃそうだ」

ξ゚⊿゚)ξ「つーかね、このままじゃやっていけなくなるのは会社のほうよ」

(;^ω^)「うぐ…そりゃそうだけどお…」

ξ゚⊿゚)ξ「会社潰しますか?パイロット辞めますか?」

(;^ω^)「……」


39 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:53:22 ID:n.kWS84w0
('A`)「まぁ待てってツン。そう急展開にしなくてもいいだろうよ」

('A`)「お前だって歯車王に愛着とか未練とか、全くないわけじゃないはずだ」

ξ゚⊿゚)ξ「…それはもちろん、そうよ」

('A`)「クーだって同じだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。というか元より、私はツンに賛成した覚えもない」

('A`)「だよな。というわけで、この件は一旦保留」

ξ゚⊿゚)ξ「でも…」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「…わかったわ。保留にしましょう。私も突然こんなこと言っちゃって悪かったと思ってるし」

('A`)「もう少し早く思っててくれたら、ダメージの少ない発表の仕方もあったと思うんだが」

ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはいすいませんでした。どうせ私は単細胞ですよ」

('A`)「言外の意思をそこまで汲み取らなくてもよろしい」

41 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:59:01 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「…ごめんだお。僕のせいで」

ξ゚⊿゚)ξ「あー…別にあんたのせいって言ってるわけじゃないから。そこんとこは勘違いしないでよね」

川 ゚ -゚)「ツンデレきたな」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、黙れ?」

川 ゚ -゚)「はい」

('A`)「ま、次の定期整備まで一週間ある。まずはそこがポイントだろう」

川 ゚ -゚)「定期整備までは歯車王の維持費もかからないからな。存分に悩むといい」

( ^ω^)「おー…」

('A`)「うし、じゃ俺は出撃後整備にかかるからよ。解散解散」

ξ;゚⊿゚)ξ「げ、もう退勤時間過ぎてるじゃない。またサビ残かぁ…」

( ^ω^)

川 ゚ -゚)「ツン、このタイミングでそれを言うのはただの追い討ちだぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ごめん…ついうっかり…」


42 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:04:40 ID:n.kWS84w0
('A`)「…ふー。出撃後整備完了、っと」

( ^ω^)「お疲れ様だお。ほい、コーラ」

('A`)「なんだよ、まだいたのか。サンキュー」

プシッ

( ^ω^)「…昼間はごめんだお、ドクオ。保留にしろ何にしろ、僕が言わなきゃいけないことだったのに…」

('A`)「気にしちゃいねぇよ。お前はああいうの慣れてないからな」

( ^ω^)「だお」

('A`)「まして親父さんの形見だ。そう間単に決められるこっちゃねぇ」

( ^ω^)「…でも、決めないといけないお」

('A`)「だな。それはお前に任せた。つーわけで帰って抜いて寝るわ」

( ^ω^)「抜く報告はいらんお」


43 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:06:26 ID:n.kWS84w0


            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠


( ^ω^)

( ^ω^)「歯車王」

( ^ω^)

( ^ω^)「ごめん、だお…」


44 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:10:20 ID:n.kWS84w0
そして一週間の月日が流れた。

('A`)「さぁやって参りました運命の進退発表ターイム!」

川 ゚ -゚) パフパフー

ξ;゚⊿゚)ξ「クー、別に律儀に鳴らさなくてもいいのよ?」

川 ゚ -゚)「鳴らしたらジュース一本と言われたので」

ξ;゚⊿゚)ξ「安いんだか高いんだかわからないわね…それ…」

('A`)「いや、一週間怪獣が出なくて良かったな。おかげで安心して考えられた」

( ^ω^)「そうだおね」

ξ゚⊿゚)ξ「…決めたの?」

( ^ω^)「うん。決めたお。売るって」

ξ゚⊿゚)ξ「そう…」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「いや、もう少し溜めろよ。おい」


45 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:17:17 ID:n.kWS84w0
('A`)「えらいあっさりだなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「葛藤するタイミングをくれよ!『ああ、やっぱり…』とかさぁ!思う時間くれよ!見せ場作れよ!」

川 ゚ -゚)「何で怒ってるんだ?」

( ^ω^)「色々考えたけど、やっぱり皆を路頭に迷わせるわけにもいかないし…」

('A`)「いや、俺はここなくなっても知り合いの工場があるから」

ξ゚⊿゚)ξ「私もツテを頼ればなんとか」

川 ゚ -゚)「実家帰る」

('A`)「路頭に迷うのはお前だけだ」

( ^ω^)

( ^ω^)「何だそれ」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ決断してくれて助かったわ!さぁそれじゃ売る算段を付けるわよ!」

( ^ω^)「何だそれ」

('A`)「まぁまぁ」


46 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:24:38 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「で、何かあてはあるのか?」

( ^ω^)「…ぶっちゃけ歯車王ってレトロロボだし。なかなか需要ないと思うんだけどお」

('A`)「いや、逆に高く売れるんじゃないか?その手のマニアにさ」

ξ゚⊿゚)ξ「その通り!実は取引先の人がレトロマニアでね。歯車王のことも気に入ってるらしいの」

ξ゚⊿゚)ξ「いらなくなったら是非私に!って何回も言われたわ」

川 ゚ -゚)「なるほど。逆に言えば、そのあてがあったから今回のことを考え付いたわけだな」

( ^ω^)「マニアの人なら大切に扱ってくれそうだし…」

('A`)「異論はないらしいな」

ξ゚⊿゚)ξ「オッケーオッケー。満場一致ね」

( ^ω^)「それで、その人はどこの人なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「皆さんご存知、『荒巻製作所』の荒巻さんよ」


47 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:30:40 ID:n.kWS84w0
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんくださーい」

/ ,' 3「おお、津野さん…とと、今日は皆さんお揃いでしたか」

( ^ω^)「ご無沙汰してますお」

('A`)「どうも」

川 ゚ -゚)「こんにちは」

ξ゚⊿゚)ξ「荒巻さん。歯車王が欲しいって前におっしゃってましたよね」

/ ,' 3「ええ。皆さんの前で言うのも恐縮ですがの」

ξ゚⊿゚)ξ「歯車王、荒巻さんに売るってことで可決しました」

/ ,' 3「…本気ですか?」

( ^ω^)「はい。社長以下全員の総意ですお」

/ ,' 3「…そうですか。わかりました。まさか本当にこの日が来るとは」

ξ゚⊿゚)ξ「それで、売値の方なんですけ川 ゚ -゚)「これぐらいでいかがでしょうか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「(…さすが経理…)」

49 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:46:18 ID:n.kWS84w0
/ ,' 3「む…いやいや、これはちょっと。歯車王はその…やや、古い機体ですしの」

川 ゚ -゚)「ええ、そうですね。しかしあなたにとって重要なのは年代じゃないんでしょう?」

/ ,' 3「……」

川 ゚ -゚)「歯車王はかなり特殊な機体です。理由は簡単」

川 ゚ -゚)「歯車王は、『一切量産されていない』」

川 ゚ -゚)「つまり、歯車王に使われているいくつかのパーツは完全に固有の部品です」

川 ゚ -゚)「そして我が社の経営事情もあって、そういったパーツは交換歴がありません。当然生産している工場も現存しない」

川 ゚ -゚)「だからこそ価値がある。実用性度外視のコレクションとしてね」

(;^ω^)「…そうなのかお?」

('A`)「らしいな。そういうパーツって、痛みにくい部位のなんだよ。だから固有でもそんな困らないってわけ」

('A`)「(ま、本当はうちにも交換用のストックが残ってるんだけどな…黙っとくか…)」

川 ゚ -゚)「安値で買い叩くつもりなら無駄ですよ。パーツの相場は全て調べてありますから」

/ ,' 3「…ははは、参りましたなぁ。そこまでバレてちゃしょうがない。その金額で出しましょう」

川 ゚ -゚)「わかっていただけたようで何よりです。オークションで競るよりは安いと思いますよ」

/ ,' 3「その通りですな」


50 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:53:07 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「と、いうわけだ。この金額でいいそうだぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「うお!これ私が考えてた見積もりの五倍ぐらいあるんだけど!」

川 ゚ -゚)「ナメすぎだろ…常識的に考えて…」

/ ,' 3「これはわしの方から少し上乗せして買い取ってたレベルですぞ…」

('A`)「今更だけどあいつに営業任せて大丈夫なの?」

川 ゚ -゚)「ツンは値切りの技術に長けてるからな。あと野生の勘」

( ^ω^)「後者も否定できないお」

ξ゚⊿゚)ξ「あたしを何だと思ってるわけ?」

川 ゚ -゚)「ともかく、これで成立だ。さっさと歯車王を運搬してこよう。あ、運搬費もそちら持ちということで」

/ ,' 3「…しっかりしてますなぁ…」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、本当に」


51 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 03:58:01 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「ね、ブーン。私が聞くのもなんだけど、本当に良かったの?」

( ^ω^)「…うん。満足だお」

('A`)「嘘が下手だなお前は。そういう顔してねぇぞ」

( ^ω^)「…ごめん」

川 ゚ -゚)「謝ることはない。お前の気持ちはわかる」

( ^ω^)「クー…」

川 ゚ -゚)「安心しろ社長」

川 ゚ -゚)b「歯車王は、もっと高く売ってやる」

( ^ω^)

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「は?」


52 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:03:05 ID:n.kWS84w0
/ ,' 3「…ふむ…やはり、興味深い」

/ ,' 3「歯車王が作られたのは、もう何十年も前のはず」

/ ,' 3「にも関わらず、この機体の能力は現在の物のそれとほとんど変わらない…」

/ ,' 3「この秘密…恐らく、歯車王の最深部に…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


/ ,' 3『最深部に…』

川 ゚ -゚)「よし、カメラ・マイク共に調子は良好だな」

ξ゚⊿゚)ξ「これって…歯車王のカメラ映像?」

川 ゚ -゚)「ああ。データをこっちにも送信するよう、ドクオに改造させておいた」

('A`)「ちょちょいとな」

( ^ω^)「でもなんでこんなことを?」

川 ゚ -゚)「今荒巻さんがご丁寧に説明してくれたんだが…まぁいい」

54 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:09:52 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「歯車王はブーンの親父さんが設計・開発した機体だ。つまり何十年も前の機体になる」

川 ゚ -゚)「にも関わらず。機体スペックは妙に高い」

('A`)「そうだなぁ。現場に出さえすりゃ、怪獣もちゃんと倒せるし」

川 ゚ -゚)「しかもこのスペック、年々上がっているんだ。社外秘だけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「え、そうなの?」

( ^ω^)「マジで?」

川 ゚ -゚)「気付けよ」

('A`)「俺が出してる社内用のスペックデータ見てないのかよ」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「「うん」」

('A`)「俺の仕事って何なの?」

川 ゚ -゚)「愚痴るのは後にしろ。ともかく、だ」

川 ゚ -゚)「私はこれは、CPU周りに原因があると見ている。歯車王のCPUもオリジナルの一点物なんだ」


55 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:15:50 ID:n.kWS84w0
ξ゚⊿゚)ξ「なら取り出して調べてみれば良かったんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「資金に余裕があればそうするつもりだったさ」

('A`)「分解して組み立て直すなんて無駄なことする金、うちにはねぇもん」

( ^ω^)「本当に申し訳ない」

川 ゚ -゚)「だからちょっと汚い手段に出ることにした」

ξ゚⊿゚)ξ「んん…読めてきた。つまり、荒巻さんに分解して調べてもらっちゃおうってことね?」

川 ゚ -゚)「ああ。そして本当にCPUに価値があるようなら、値段を吊り上げる」

川 ゚ -゚)「機体は引き渡したが、まだ売買契約は済んでないしな。吊り上げて断るようなら歯車王を返してもらう」

(;^ω^)「えげつない…」

川 ゚ -゚)「なんとでも言え。これも内藤重工のためだ。一応法には触れないギリギリのラインだぞ?」

('A`)「ギリギリの時点でどうかと思うけどな…ま、CPUは俺も興味あるからいいけど」


56 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:24:29 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「…それにしても、なんで荒巻さんは一人で分解を進めてるんだお?」

川 ゚ -゚)「それこそCPUに価値がある証拠だろう。頭数が増えれば分け前が減る」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ここまでして価値がなかったらショックでしょうね」

川 ゚ -゚)「部品のコレクションも増えるからいいんじゃないか?荒巻さんにとってはどっちに転んでもプラスだ」

('A`)「クソッ、リスクを背負って回ってるうちの会社とは大違いだぜ。なぁブーン」

( ^ω^)「そこで僕に振るのは嫌がらせの一種かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「で、この分解作業ってどれぐらいかかるの?」

('A`)「一人でやるとなると、かなりかかるな。俺もやろうとしたけど、人員と設備がなくて諦めたぐらいだから」

( ^ω^)「カメラがバレなきゃいいんだけどお…」

川 ゚ -゚)「何、バレたら『誤作動』とでも誤魔化しておけばいい。向こうも歯車王の真の価値を黙ってたんだ、おあいこだろう」

( ^ω^)「…今更だけど、クーって金が絡むと怖いお」

ξ゚⊿゚)ξ「あたしもそう思う」

川 ゚ -゚)「褒め言葉ありがとう」


57 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:32:12 ID:n.kWS84w0
荒巻による分解作業は実に三日間にも及んだ。
その間、クーがカメラの映像から目を離すことは一瞬たりともなかった。

川 ゚ -゚)

ξ;゚⊿゚)ξ「ほんとこの子ってどういう神経してんの?」

(;^ω^)「金が絡むと怖いとは言ったけど、ここまでとは…」

('A`)「つーかツンよ。請求関係はいいのか?こんな後回しにしちまってよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あれなら何回もわざとミスって書き直して先延ばしにしてるから」

(;'A`)「…人のこと言える神経かお前?」

ξ゚⊿゚)ξ「営業はしたたかじゃないとね」

(;^ω^)「したたかってレベルじゃねーお」

川 ゚ -゚)「…む。どうやら、分解が済んだようだぞ」

/ ,' 3『これが…内藤の遺産か…』

( ^ω^)「……」

59 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:39:59 ID:n.kWS84w0
川 ゚ -゚)「…このカメラで追えるのはここまでだな。恐らくCPUの性能試験を行うんだろうが」

('A`)「カメラが分離して自走できるようにしておくべきだったか」

(;^ω^)「そこまでしなくていいお」

('A`)「わかってるよ。どうせ予算もねぇし」

( ^ω^)← グサッ

ξ゚⊿゚)ξ「あ、刺さった」

川 ゚ -゚)「また何日かしたら、CPUのことについてカマかけに訪問してみよう」

('A`)「容赦ねぇな」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ請求はもう少し先延ばしておくわね」

川 ゚ -゚)「頼む。できるだけ先延ばせ」

(;'A`)「訴えられたら負けるな…こりゃ…」

( ^ω^)

(;'A`)「あとお前は立ち直れよ…俺が悪かったって…」


60 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:41:38 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


       ┏
          終
             ┛

62 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 04:45:27 ID:n.kWS84w0



       ┏
          次回
               ┛


       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第参話      遺されたCPU
              ┛              ┛


.


←第1話へ
目次へ
第3話へ→

( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです 第1話 

1 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:04:26 ID:n.kWS84w0



                       ― 西暦20XX年 ―



突如として地球に現れた謎の存在『怪獣』の攻撃により、人類は未曾有の大打撃を受けていた。

次々に壊滅させられていく都市。逃げ惑う人々。

絶望の日々に終止符を打ったのは、ある『兵器』の登場であった。

それは、全ての少年の夢と希望を具現化した、馬鹿げた『兵器』。


2 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:06:15 ID:n.kWS84w0





                   『巨大ロボット』である。




.


3 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:07:30 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


.


4 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:11:45 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

( ^ω^)「!」

('A`)「ブーン!非常警報だ!」

( ^ω^)「聞こえてるお!怪獣が出たんだおね!?」

('A`)「いや、違う。お前の部屋にお母さんが入った」

( ゚ω゚)「うわああああああ!!!非常事態だああああああああああ!!!」

ドタドタドタ

('A`)「ふう…ブーン一家の平和はわしが守った」

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、いい加減自分の部屋に親が入ったら警報が鳴るってシステム止めない?」

川 ゚ -゚)「私は構わないぞ。親父が入ってきても困る」

('A`)「三対一だな。残念ながらお前の提案は却下だ、ツン」


5 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:17:12 ID:n.kWS84w0
ここは『秘密株式会社内藤重工』。
巨大ロボットの生産から操縦、果てはメンテナンスまでを担当する株式会社である。社員は以下の四名。

( ^ω^) 内藤ホライゾン

愛称ブーン。内藤重工の若社長である。担当はパイロット。

('A`) 鬱田ドクオ

内藤重工開発課課長。担当は機械整備。

ξ゚⊿゚)ξ 津野ツン

内藤重工営業課課長。担当は部品調達。

川 ゚ -゚) 素直クー

内藤重工経理課課長。担当は経理。


6 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:21:23 ID:n.kWS84w0
彼らは日夜、粉骨砕身の精神で地球の平和のために戦っているのである。

(;^ω^)「ふー…なんとか危険物の隠蔽には成功したお」

ξ゚⊿゚)ξ「危険物ねぇ…」

('A`)「アダルトグッズなんて危険物以外の何物でもないだろ」

川 ゚ -゚)「というか、何故見つかるようなところに隠すんだ?」

( ^ω^)「や、いざという時に手が伸びるところに置いてるから…」

ξ;゚⊿゚)ξ「どういう『いざ』に対応しようとしてんのよ?」

('A`)「そりゃ色々あるだろ。それこそ怪獣とかよ」

川 ゚ -゚)「もっと持ち出すべき物があるだろう」

('A`)「ねぇ」

ξ;゚⊿゚)ξ「ないのかよ!」


7 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:24:32 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

(;^ω^)「うわ!また侵入者かお!?」

(;'A`)「いや、違う!これは!」

ξ゚⊿゚)ξ「怪獣?」

(;゚A゚)「俺 の 家 の 方 だ ! ! !」

ドタドタドタ

ξ゚⊿゚)ξ「…ここからドクオの家までどれくらいだっけ?」

川 ゚ -゚)「全力で走って十五分ってところだな」

( ^ω^)「ドクオの体力じゃ倍はかかるお」

ξ゚⊿゚)ξ「もうどうしようもないな」

( ^ω^)「うん」


8 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:27:26 ID:n.kWS84w0
一時間後。

('A`)

( ^ω^)「どうだったお?」

('A`)「顔見てわかれ」

ξ゚⊿゚)ξσ「ブサイク」

('A`)「正解」

川 ゚ -゚)「どうやら死に目には会えなかったらしいな」

('A`)「それも正解」

( ^ω^)「まぁそう気を落とすなお。給料日までもうすぐだし」

('A`)「俺はこの会社に入って以来給料日が楽しみだったことがないんだが」

(;^ω^)「う…面目ない」

川 ゚ -゚)「経理担当としても面目ない」

ξ゚⊿゚)ξ「全然面目ない顔してないけど」


9 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:29:37 ID:n.kWS84w0
<ウー…ウー…

( ^ω^)「やたら非常警報の鳴る日だおね」

ξ゚⊿゚)ξ「毎日一回は必ず鳴ってると思うけど…」

川 ゚ -゚)「今度はなんだ?開発課長殿」

('A`)「うむ。怪獣だ」

( ^ω^)「ふーん」

ξ゚⊿゚)ξ「なんだ怪獣かぁ」

川 ゚ -゚)「そうか」

('A`)

( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)


10 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:32:42 ID:n.kWS84w0
( ゚ω゚)「怪獣じゃねぇかああああああああああああああああああ!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「怪獣じゃねぇかああああああああああああああああああ!!!」

川 ゚ -゚)「そうだな」

( ゚ω゚)「そういう非常事態はもっと緊迫した顔と声色で言えお!!!」

('A`)「ごめん」

ξ;゚⊿゚)ξ「出動準備出動準備!!!」 グイグイ

川 ゚ -゚)「押すな。ちゃんと準備はやる」

( ^ω^)「先にコクピット乗ってるお!」

('A`)「あいよ。ほれ、起動キー」

ポイ

パシッ

( ^ω^)「受け取ったお!」


11 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:36:45 ID:n.kWS84w0
プシュー

( ^ω^)「よっ、と」

プシュー

『認証開始……認証中……認証終了』

『パイロットを内藤ホライゾンと認証』

『起動キーを挿入してください』

( ^ω^)「お!」

グイ カチャ

『起動キー認証』

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)「……」

13 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:41:29 ID:n.kWS84w0
('A`)「よーし、出撃準備だ」

ドサッ

『巨大ロボット出撃マニュアル ~出撃直前編~』

ξ;゚⊿゚)ξ「はぁ…相変わらずとんでもない量ね…この出撃直前点検マニュアル…」

('A`)「巨大ロボットの出撃に際しては法律遵守でお願いいたします。とよ」

川 ゚ -゚)「うちのような零細企業にとっては悪法もいいところだ、全く」

ξ゚⊿゚)ξ「愚痴ってても仕方ないわね。やりましょ!」

('A`)「はいはい」

川 ゚ -゚)「担当はいつも通りでいいな?」

ξ゚⊿゚)ξ「当然!出撃直前点検開始します!」

('A`)「オーバー」

川 ゚ -゚)「右に同じ」


14 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:43:00 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』

( ^ω^)

『出撃命令を待ってください』


15 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:46:12 ID:n.kWS84w0
~一時間後~

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令を待ってください』

( -ω-) zzz...

『出撃命令受理。起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』

( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてください』


16 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:49:15 ID:n.kWS84w0
( -ω-) zzz...

『起動キーをONに入れてくださξ#゚⊿゚)ξ『起きろデブがあああああああああああああああああ!!!』

( ゚ω゚)「のわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ『何気持ち良さそうに寝てんのよ!!!とっくに点検完了してるっつーの!!!』

(;^ω^)「ご、ごめんだお…」

('A`)『いいからさっさと起動キー入れろって』

川 ゚ -゚)『横で騒がれてる私たちの身にもなってくれ』

( ^ω^)「了解!歯車王、出撃するお!」

ξ#゚⊿゚)ξ『帰ってきたら説教だからね!』

(;^ω^)「勘弁してくれお…」

ゴゴゴゴゴ…


17 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:53:30 ID:n.kWS84w0
ガシャン!!!



            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠



秘密株式会社内藤重工製造乙型巨大ロボット

形式名:BR-GK01

通称:歯車王


18 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:57:09 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「各システムオールグリーン!歯車王、目標に向けて前進!」

ξ゚⊿゚)ξ『やってやりなさい!』

( ^ω^)「あったりまえだお!」

('A`)『あー…盛り上がってるとこ悪いんだが』

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)『目標ってどれのことよ?』

( ^ω^)「え?」

川 ゚ -゚)『周りを見てみろ』

|::━◎┥ ウィーン…

┝◎━::| ウィーン…

( ^ω^)

( ^ω^)「怪獣いねぇ…」

20 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:01:52 ID:n.kWS84w0
ξ;゚⊿゚)ξ『ちょ、どういうことよ!?』

('A`)『もちっとよく見てみろ』

( ^ω^)「スギウラの人たちが忙しなく動いてるのが見えるお…」

ξ;゚⊿゚)ξ『また!?なんなのよあいつら!』

('A`)『スギウラロボティクス。日本の巨大ロボット産業のトップを牽引する大企業様』

ξ#゚⊿゚)ξ「そーいうことを聞いてるわけじゃないっつーの!」

川 ゚ -゚)『どうやらもう事後処理に入ってるらしいな。さすがは大企業』

(;^ω^)「ていうかどんどん仕事早くなってないかお?あの会社…」

('A`)『ま、年商も右肩上がりらしいからな。羨ましいこった』

川 ゚ -゚)『とりあえず帰還しろ、内藤。邪魔だ』

(;^ω^)「了解…」

ξ#゚⊿゚)ξ『もー!!あんっっっっっっっっっっっっっなに時間かけて点検したのにー!!』

22 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:08:10 ID:n.kWS84w0



                       ― 西暦21XX年 ―



突如として地球に現れた謎の存在『怪獣』の攻撃により、人類は未曾有の大打撃を受けていた。

のは、昔の話。

世界の技術は皆様もご存知の通り目覚しい成長を遂げ、今や巨大ロボット市場は大きなマーケットとなっていた。

結果として企業間の競争も激化の一途を辿っていくこととなり、弱肉強食の様相を呈していったのである。


23 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:13:24 ID:n.kWS84w0
('A`)「オラーイ、オラーイ」

ガチャン…

( ^ω^)「ただいまー」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりー」

ξ#゚⊿゚)ξ「じゃ、ねーよ!!学校帰りか己は!!」

(;^ω^)「ご、ごめんなさい!」

川 ゚ -゚)「まぁそう荒ぶるな。お茶だ」

( ^ω^)「ありがとだお」

ξ#゚⊿゚)ξ「もー、ほんっと気に入らないわスギウラのやつら!ちょっとばかし右肩上がりだからって!」

('A`)「ちょっとどころじゃねぇけどな」

川 ゚ -゚)「うちも平坦ではあるんだがな」

(;^ω^)「低空飛行で平坦じゃ意味ないお…」

25 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:22:37 ID:n.kWS84w0
ξ-⊿-)ξ「…すぅ」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ…」

ξ゚⊿゚)ξ「よし。落ち着いた」

('A`)「しっかしやっぱスギウラはすげーな。怪獣出現から出動までの平均タイム三十秒だってよ」

川 ゚ -゚)「あの点検マニュアルを三十秒でか」

ξ゚⊿゚)ξ「一体何人で点検してんだって話よね…」

( ^ω^)「人数もそうだけど設備もうちとは雲泥の違いだと思うお…」

川 ゚ -゚)「ま、今更だけどな」

('A`)「そうそう。つーかこれだけ格差があるのに生き残ってるだけ俺らはマシだぜ」

( ^ω^)「ほぼ内職で生き残ってるようなもんだけどお」

ξ゚⊿゚)ξ「…あのさ。私から一つ、提案なんだけど」


26 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:24:47 ID:n.kWS84w0
( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「うちの財政を圧迫してる一番の原因ってなんだかわかる?」

川 ゚ -゚)「当然歯車王だろ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。それはみんなわかってるわよね」

( ^ω^)「だからなんだって言うんだお?」

('A`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとあんたって察しが悪いのね…要するに私が言いたいのはね、ブーン」


27 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:25:40 ID:n.kWS84w0





            ┌──┐
          ∪ |::━◎┥∪
           V|    |V
            |:日 日:|
            └┬┬┘
             亠亠




  「歯車王を売っちゃいましょうよってことよ」


28 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:27:17 ID:n.kWS84w0



       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第壱話      出撃!歯車王!
              ┛               ┛


       ┏
          終
             ┛

31 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 02:33:40 ID:n.kWS84w0


       ┏
          次回
               ┛


       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

         ( ^ω^)は巨大ロボットを操縦するようです

       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


       ┏        ┏
         第弐話      歯車王、売るよ
              ┛               ┛


.



目次へ
第2話へ→

从 ゚∀从はヒーローになれなかったようです 第8話 

134 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:38:52 ID:joHtc6/k0
椅子に縛り付けられた俺は、改めて流石兄弟のアジトを見回してみた
世間一般の「流石兄弟のアジト」に対するイメージといえば、盗品で埋め尽くされた雑多な空間だろう
しかし実際はそんな事はなく、綺麗に整えられた調度品(恐らく盗品だろう)、染み一つない床etcetc……
一目見てここが大泥棒のアジトだと想像できる人間はいないだろう

(´<_` ) 「あめぞう」って知ってるか?

「あめぞう」。ニューソク建国以前に実在した国の名だ

从 ゚∀从 この国でその言葉を聞いたことがない奴なんて聾者か幼児くらいのもんだろうさ

(´<_` ) ……まあ、そうだろうな

从 ゚∀从 ……

(´<_`;) ……

从 ゚∀从 で、それがどうしたんだよ

(´<_`;) あ、いや、その

( ´_ゝ`) 女と話すの慣れてないからって遠まわしに行き過ぎだろ弟者

(´<_`;) うむ、すまん

わかった、こいつら絶対童貞だ


135 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:39:45 ID:joHtc6/k0
(´<_` ) あんたにはいくつか聞きたいことがある

从 ゚∀从 それはもう聞いた

(´<_`;) ……あんたを殺すつもりはない。ちゃんと答えてくれたらすぐに解放しよう

(´<_` ) あんたは何者だ?

从 ゚∀从 秘密

(´<_` ) どうしてこの場所がわかった?

从 ゚∀从 内緒

(´<_` ) 能力は?

从 ゚∀从 知らねぇな

(´<_` ) 何なのこの子全然話してくれない


136 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:40:43 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) (おい、しっかりしろ弟者)

(´<_`;) (そうは言っても、尋問なんてやったことないぞ)

从 ゚∀从 ところでお前ら、どうやって俺をこんな風に椅子に縛りつけることができたんだ?

(;´_ゝ`) (おい、逆に質問されてるぞ弟者)

(´<_`;) (どうすればいいんだ、これ)

从 ゚∀从 教えてくれよ。お前らが教えてくれたらこっちも質問に答えてやるよ

( ´_ゝ`)そ !! Σ(´<_` )

(´<_` ) (……どうしよう兄者)

( ´_ゝ`) (お前の能力はバレたからどうなるってもんでもないだろう)

( ´_ゝ`) (どうやってここに来たのかを聞き出すことの方が重要だ)

( ´_ゝ`) (これが分からないままだったらいつ捕まってもおかしくない)

(´<_` ) (それもそうだな)

(´<_` ) いいだろう、教えてやるよ

138 :>>137ミス:2012/04/15(日) 06:42:22 ID:joHtc6/k0
(´<_` ) 明晰夢って知ってるか?

从 ゚∀从 夢の中で意識があるってやつだろ?

(´<_` ) そうだ

(´<_` ) 俺はその明晰夢を自由に見ることができる

(´<_` ) 夢の世界の景色は俺が眠りに落ちる瞬間と全く同じ物になっているんだが……

(´<_` ) その世界での俺の行動が全て、俺が目覚めた瞬間に反映される

从 ゚∀从 ポカーン

(´<_` ) わからんか?じゃあ例に出して説明してやるよ

(´<_` ) そこのテーブルの上に林檎がひとつあるだろう?

(´<_` ) 俺が夢の中でその林檎をナイフで四等分、かわいいうさちゃんの形に皮を剥いたとする

(´<_` ) この時現実世界ではまだりんごはその形を保っている

(´<_` ) 俺が目を覚ますと同時に、テーブルの上の林檎はうさちゃん林檎に姿を変えるのだ

(´<_` ) 名付けt从 ゚∀从なるほどな、お前を襲った時に俺は止めを刺すべきだったって訳だ

(´<_` ) ……わかってくれたなら良い


139 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:43:39 ID:joHtc6/k0
从 ゚∀从 それにしても恐ろしい能力だねぇ、殺し屋のが向いてるんじゃねーか?

(´<_` ) 誰かに命を狙われたら俺一人じゃ戦えないんでね。命の危険は無い方がいいのさ

( ´_ゝ`) 起きてる時は一般人みたいなもんだし、俺が守るにも限度があるしな

从 ゚∀从 よしわかった、じゃあ今度はそっちのば……ん……

从ill∀从 だ……あれっ……?体……が……

(´<_`;) おいどうした……ってうわ!お前血が!

(´<_`;) 考えてみれば落ちた腕で戦ってたんだ。出血が無いわけがない

从ill∀从 無理……し過ぎちまったみたいだわ……

(´<_`;) くそっ、死なれちゃ困る。とりあえず応急処置だ

そう言うと奴は俺を拘束していた縄を解き、それを使って俺の両腕をきつく縛った
視界が霞む。流石に血を使いすぎたか


140 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:44:50 ID:joHtc6/k0
(´<_`;) よし、今のところはこれで大丈夫だろう。後で救急車呼んでやるから

从ill∀从 何のつもりだ?情報が手に入ったら俺は用済みなんじゃないかい?

(´<_` ) 俺等は悪人だが殺人はしない

(´<_` ) 恨みを買いたくないし、何より寝覚めが悪いからな

从ill∀从 へぇ、優しいねぇ

从ill∀从 優しいついでに足のロープも解いてくれないか?少し横になりたいんだ

(´<_` ) うーん、まあいいだろう

(;´_ゝ`) ……!!待て弟者!!

(´<_` ) 別にいいじゃないか兄者、この状態で抵抗ができるとは思えん

(;´_ゝ`) いや、駄目だ。何か引っかかる

(;´_ゝ`) 何か……何か……あっ!

(´<_` ) 何か思いついたか?


141 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:47:22 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) 無いんだ

(´<_` ) 無いって、何がだ?

(;´_ゝ`) ……俺がこいつと戦っていた辺りには血の跡がないんだ

(´<_`;) ッ!

(;´_ゝ`) おかしいだろ?戦闘中は出血がなくて縛られたら血を流し始める

(;´_ゝ`) こいつは念動力者だ。拘束を外させるためにわざと血を流したとも考えられないか?

从il゚∀从 おせぇよ

(;´_ゝ`) !! (´<_`;)

足のロープを解くことはできなかったが仕方ない。十分に準備はできた
拘束を解くことはあくまでついで。本当の狙いは別にあるのだ
体から流れ出た血液が流石兄弟の体を這い上がり、両手両足を拘束した

从il゚∀从 お前らの能力がわかってて良かったぜ

从il゚∀从 こうやっちまえば手も足も出ねえんだろ?

从il゚∀从 その体勢で抵抗できるならやってみな!


142 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:48:08 ID:joHtc6/k0
从il゚∀从 「英雄の骨」はどこだ?

血液の鎖が流石兄弟の体を締め上げる

(; _ゝ) 窓際の、金庫の中

足のロープを解かせて金庫に向かうと、確かにそこには「英雄の骨」が置いてあった

从il゚∀从 確かに返してもらったぜ……ところでお前ら知ってるかい?

(; _ゝ) ? (<_ ;)

从il゚∀从 「大怪盗」流石兄弟の指名手配は「生死問わず」

从il゚∀从 これがどういう意味を持つか、分からないわけじゃないよな?

血液の鎖に、力を込める
ぎしり、と、骨が軋む音が聞こえた


143 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:48:58 ID:joHtc6/k0
( ゚д゚ ) ふむ、夢の中の行為が現実になるという能力で一度は犯行を許してしまう

( ゚д゚ ) しかしその後犯人のアジトを暴き「英雄の骨」の奪還に成功

( ゚д゚ ) その他にも盗品とみられる調度品他数十点を回収

( ゚д゚ ) なお、犯人の流石兄弟は抵抗したため已むを得ず殺害

( ゚д゚ ) なるほど、報告書に間違いはないな?

从 ゚∀从 おう

( ゚д゚ ) よし、ご苦労

( ゚д゚ ) 帰還直後に出血多量で医務室に運ばれたと聞いている

( ゚д゚ ) 今度こそしっかり休むといいだろう。任務もしばらくお預けだ

从 ゚∀从 そりゃーありがたいね。腕の動かし方も忘れかけてた頃さ


144 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:51:03 ID:joHtc6/k0
( ゚д゚ ) さて、俺はこれから忙しくなるな

从 ゚∀从 そりゃまたどうして?

( ゚д゚ ) 流石兄弟といえば犯罪者でありながらファンクラブが存在するほどのビッグネームだ

( ゚д゚ ) それ故に彼らの逮捕……いや、死亡はそれ自身が重大な「事件」となる

( ゚д゚ ) だから今回の件は私が直接世間に一部始終を伝える必要があるのだ

( ゚д゚ ) ……お前の報告書通りにな

从 ゚∀从 ……

( ゚д゚ ) 用が済んだなら出て行け。今言った通り私は忙しいんだ

从 ゚∀从 ……了解

从 ゚∀从 失礼しましたーっと ガチャッバタン

从 ゚∀从 ……ふぅ


145 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:53:38 ID:joHtc6/k0
('A`) どうだった、ハイン?

从 ゚∀从 総理の野郎、全部察してやがった

('A`) へぇ、流石は「勇者」ってところだな

从 ゚∀从 全く、頭に来るくらい優秀だよあの野郎は

( ´_ゝ`) おいおい何の話してるんだ?

(´<_` ) 俺等も混ぜてくれよ、寂しいじゃないか

('A`) なるほど、あんたらがあの流石兄弟か

( ´_ゝ`) そういう君は「リビングデッド」

(´<_` ) 名前はよく聞くよ、よろしく頼む

从 ゚∀从 仲良くしろよ、これから一緒に仕事をする仲間なんだから

('A`) ああ、よろしく

('A`) ところでハイン、いつまでそんな血塗れの服を着てるつもりだ?

从 ゚∀从 ああ、それもそうだな。ちょっと着替えるわ ヌギッ


146 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 06:54:35 ID:joHtc6/k0
(;´_ゝ`) えっあのハインさん、ここで着替えんの?

(´<_`;) ほら、どっか別の部屋行ったほうがよくね?

从 ゚∀从 何言ってんだ、お前らは俺の腕の断面まで見てんだぜ? ヌギヌギ

从 ゚∀从 今更下着見られたくらいどうってことねーよ ヌギヌギ

(;'A`) いや、その理屈は

从 ゚∀从 なんだお前ら初心だな全く。ほらサービスだ、パンt

そこから先は何も覚えていない
ただ何か恐ろしい出来事があったってことしか思い出せないんだ
――流石兄者 ある日の日記

148 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 07:00:05 ID:joHtc6/k0
おまけ 仲間図鑑その1

( ´_ゝ`)

「大怪盗」流石兄者

狙った獲物は逃がさない「大怪盗」流石兄弟の兄の方
能力は弧の動きの強化。能力名は「スピーディー・ワンダー」
洋楽が好きらしい
「刑務所に入るよりは……」とハインの仲間になる


149 :名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 07:03:20 ID:joHtc6/k0
おまけ 仲間図鑑その2

(´<_` )

「大怪盗」流石弟者

狙った獲物は逃がさない「大怪盗」流石兄弟の弟の方
夢の中の行為が現実に反映される能力を持つ。能力名は「ドリームズ・カム・トゥルー」
邦楽が好きらしい。せっかく考えた能力名をハインに聞いてもらえなくてちょっとがっかりしている
「兄者がそうするなら……」とハインの仲間になる


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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです 第2話 

73 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:15:13 ID:nqepu3F.0

内藤家の一階には魔術の研究を行う工房があり、
今、そこに一騎のサーヴァントが召喚された。

(<`十´> 「問おう、お前が私のマスターか?」

雪原に擬態する真っ白なギリースーツを装備したサーヴァントは、
死神を連想させるマスクを覆った顔をブーンへと向けて尋ねた。

(;^ω^) 「そ、そうだお……僕が君のマスターだお」

150cm代と大柄のブーンと比べると酷く小柄な体型だったが、
それでもサーヴァントの放つ威圧感に彼は気圧されてしまい、
とっさに平静を装ったものの声が上ずってしまう。

(;^ω^) 「き、君は……アーチャーで間違いないのかお?」

(<`十´> 「如何にも」

(;^ω^) 「第二次世界大戦で、沢山人を―――」

ブーンは彼の生前について全く知らなかったのだが、
母親に教えられていたためその活躍ぶりは把握していた。
しかし、ブーンは争いを好まず戦争に嫌悪もしている。

大戦で戦った英雄に対して、そんな彼は抵抗を持たずにいられない。


74 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:16:16 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「マスター、一つ言っておくが。
      私は命じられたことを可能な限り最大限に遂行しただけだ」

それを察したのか、言葉を遮ってアーチャーは先手を打つ。

(;^ω^) 「で、でも……」

(<`十´> 「私達の生きる時代ではそれが正義だった。
      銃を取らねば、何も守れなかった。それだけだ」

(;^ω^) 「……」

つい出してしまった言葉に後悔しかけるが、
それでもブーンは戦争というものを肯定することは出来なかった。

……それは、これから聖杯戦争を戦う自分への否定でもあったのかもしれない。

(<`十´> 「マスター、名前は?」

ブーンが口籠ってしまったことで生まれた沈黙を破ったのは、
アーチャーの問いであった。


75 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:17:13 ID:nqepu3F.0

( ^ω^) 「僕は、内藤ホライゾン。みんなブーンって呼ぶからブーンでいいお」

(<`十´> 「ふむ……ブーンか。お前の口振りから見るに、私の名は知っているようだな。
      ならば、あえて名乗らん。顔を合わせることもそれほどないだろうしな」

(;^ω^) 「え……え!?」

アーチャーの何気ない言葉に、ブーンは驚愕した。
自分の言葉がどこまで彼を傷つけたのだろうかと心配するが、

(<`十´> 「む? 勘違いするな。お前の言葉に私は何の感慨も浮かばない。
      戦略的な問題だ。お前は聖杯戦争が終わるまでここで隠れていればいい。
      私が6人のマスターもサーヴァントも、全て仕留めてこよう」

(;^ω^) 「い、いや! それは!!」

(<`十´> 「マスターが死ねばサーヴァントに魔力供給がされなくなる。
      お前に死なれたら、私が困るのだ。だから、外に出歩かずここで隠れていろ」

(;^ω^) 「そんな甘いはずがないお! 6人を相手に君1人で立ち向かえるわけ……」


76 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:19:45 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「一度に相手にするわけではない。ゲリラ戦は私の得意手だ。
      もしものことがあれば私はマスターを援護するが……足手まといだ、お前は」

(;^ω^) 「……!」

正直に、包み隠しもせずにアーチャーに言われ、
ブーンは自分の足場が崩れ去ったような感覚を覚えた。

口から否定の言葉が出かけるが……、

(<`十´> 「違う、とは言わせぬぞ? どう見てもマスターの眼は戦う者の眼では無い。
      胸の内に、何か決めたことはあるのだろうが……戦いへの迷いも見えるぞ?」

ブーンは父であるシャキンの真意を知り、迷いを断ち切れたつもりでいたのだが、
アーチャーの問いにブーンは自信を持てなくなってしまったのだ。

元から、それは一過性のものでしかなかったのかもしれない。
いずれ壁にぶつかれば、脆くも崩れ去るだけの貧弱な覚悟だったのかもしれない。
しかし、"根源への到達"を"人々の為"に成そうとしていたのは、間違いなく彼の意思だ。

(;^ω^) 「……」

彼の意思に違いは無かったのだが、揺らいでしまった。
揺らいでしまったブーンはアーチャーに反論出来なかった。


77 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:25:12 ID:nqepu3F.0

(<`十´> 「どこに不都合がある? お前は手を汚さずに聖杯を手に入れられる。
      私はかつての大戦と同じように、可能な限り最大限に任務を遂行するだけだ」

(;^ω^) 「君一人じゃ……勝てないお」

(<`十´> 「マスターと一緒じゃ私は勝てん」

サーヴァントにも聖杯に託す願いがある。
だからこそ英霊の座より現世への召喚に応じるのだ。

叶えたい願いを、中途半端な覚悟で戦いに臨むブーンに妨げられるよりは、
己の腕を信じそれだけで聖杯戦争に挑むほうが、アーチャーにとっては堅実だった。

(<`十´> 「ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい」

そう言ってアーチャーは霊体化していき、姿を失っていくと、

(;^ω^) 「アーチャー!!」

文字通り、ブーンの前から消えてしまった。
令呪と魔術回路は繋がっており、まだ彼が近くにいることは理解できたが、
ブーンの呼ぶ声にアーチャーが応えることはなかった。


78 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:12 ID:nqepu3F.0

******

|/▼) 「問おう、汝が我を召喚せしマスターか?」

人気の無い円山の中腹で魔方陣を敷いたシィは、
儀式の際に莫大な魔力によって吹きすさんだ疾風が止んだかと思うと、
静まり返った夜闇の中心で、眩いほどの白さを放つローブを顔を覆うように纏った男に問われる。

(*;゚ー゚) (これが、サーヴァント……)

自らが行使した魔術が成功し、見事サーヴァントの召喚を成し遂げた高揚感に一瞬浸るが、
男の身から感じられる魔力の濃さに対する驚きのせいで、それは心の端へと追いやられてしまう。

(*;゚ー゚) 「えぇ、そうよ」

しかし、どれだけ高等な存在であっても所詮は使い魔である。
術者に行使される側である彼に、シィは魔術師らしく毅然とした態度で応えるが、
規格外の魔力量に尻ごみする気持ちは抑えられなかった。

|/▼) 「我は聖杯の招きに従い、"英霊の座"より現世へ"アサシン"のクラスを得て参上した」

アサシン。

気配遮断スキルを持ち、姿を見せず、気配も感じさせずにマスターを暗殺する、
名の通り暗殺者の英霊が就くクラスである。


79 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:27:58 ID:nqepu3F.0

正面切っての戦闘では、他のクラスに比べステータスで劣り不利ではあるが、
マスターが上手く暗殺者としての本領を発揮させてやれれば、充分に勝ち残っていけるクラスだ。

サーヴァントはマスターの魔力供給により現世に姿を留めることが出来、これを"現界"と言う。
マスターから魔力を与えられない限り、自力で補給することの出来ないサーヴァントは姿を保てず、
聖杯を手にすることは叶わずに消滅する羽目になる。

そこに、アサシンが付け込む隙があるのだ。
サーヴァントのステータスはいくら低くとも、人間が彼らに敵うことはない。

闇に溶け込みマスターを狙うアサシンは、聖杯戦争において魔術師の天敵と言っていいだろう。

(*゚ー゚) 「アサシン……」

しかし、セイバー、アーチャー、ランサーの"三騎士"と呼ばれるクラスには、
圧倒的にステータスで劣っていることに変わりは無い。

シィはいざ敵に襲われた際、このアサシンが撃退することは出来るのだろうかと不安を抱く。
姿を見せず暗躍すればいいのだが、何らかのアクシデントに見舞われ、
襲撃されてしまった場合はかち合いに弱いアサシンは頼りがいが無かった。

(*゚ー゚) (でも、ギコくんと合流できれば……)

しかし、アサシンほど情報収集能力に長けたサーヴァントもいないだろう。
戦闘面では役に立てないかもしれないが、ギコとさえ合流出来れば心強い戦力になるに違いない。

マスター殺しのサーヴァント、アサシンとギコのサーヴァントがいれば、
もはや敵はいないだろうとシィは考え直していき、安堵の息をひとまず吐いた。


80 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:28:57 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「なんだ、俺じゃあ頼り無いのかいお譲さん?」

先程の硬い口調とは打ってかわり、やけに砕けた声でアサシンが尋ねる。

(*゚ー゚) 「いえ、そんなことはないわ。貴方ほど便利なサーヴァントはいないもの。
     英霊の前で溜息なんて失礼だったわね、ごめんなさい」

|/▼) 「良いんだ、ステータスの低さには些か俺も不満を覚える。
    生きていた頃ならばこの程度の身体能力じゃあなかったんだが……」

(*゚ー゚) 「あら、残念ね。英霊になる前のほうが強かったの、貴方達は?」

|/▼) 「あぁ、現地での知名度やマスターとの相性など、
    様々な要因によって英霊は能力を限定され、サーヴァントとして召喚される。
    残念でならない、貴女のような女性に俺の全てを見せてやれないとは……」

フードの端から窺える口元を緩めたアサシンはシィの前で跪くと手を取り、
その甲へと静かに口づけていった。

(*゚ー゚) 「貴方、本当にアサシンなの……?」

シィが疑問に思うのも無理はない。

アサシンという割には服装は白いローブとよく目立ち、
何より、その振る舞いが彼女の想像していたアサシンの印象とはかけ離れていた。

|/▼) 「あぁ、アサシンさ。アサシン教団の長、ハサン・サッバーハの名を受け継いだ者の一人」


81 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:30:31 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「アサシンってもっと寡黙なイメージだったんだけど……。
     まぁ、いいわ。ステータスを見る限りアサシンであることは間違いないしね」

マスターとなった者にはサーヴァントのステータスが視えるようになる。
目に映る、というよりは意識に直接情報が刻まれてくるような感覚に近い。
これは敵のサーヴァントにも同様であり、"真名"や"宝具"といった例外以外は開示される。

シィの意識に、アサシンの保有するスキルとステータスが映し出されていく。


【クラス】 |/▼)アサシン
【マスター】シィ・C・ルボンダール
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】男性
【身長体重】
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 魔力D 敏捷A 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
           サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
           ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
         
【保有スキル】投擲(短刀):B
         短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。

         風除けの加護:A
         中東に伝わる台風避けの呪い。

【宝具】???


82 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:31:17 ID:nqepu3F.0

得た情報は記憶の片隅に記録され、意識すればいつでも見ることが出来る。
シィはアサシンのステータスを見るのを止めると、次に取るべき行動を命じていく。
これが、聖杯戦争が開始して初めての二人の作戦行動となる。

(*゚ー゚) 「アサシン、早速やって貰いたいことがあるの」

|/▼) 「何なりと、マスター」

跪いたまま、アサシンは演技っぽくそう応えた。
どうやらこのサーヴァントは主従の関係の通り動いてくれるらしい。
シィはそれに安堵して、彼を真っ直ぐに見据えて告げる。

(*゚ー゚) 「この写真の男の人を捜し出して」

そう言ってアサシンに見せたのは、

『 (,,゚Д゚) 』

かつてのギコの写真だった。
まだ少し幼さの残る顔立ちではあるが、眼には厳かな光が宿っている。

(*゚ー゚) 「昔の写真だけど、顔立ちはそれほど変わっていないはずよ。
     私達が勝ち残るには、彼と合流しないといけない。重要な仕事よ」

|/▼) 「……」

アサシンはその眼を見ただけで、生前の経験から、
この少年は腹に何かを抱え、自らに十字架を科して死地に赴いていく、
試練に生きる人間であることを察した。


83 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:32:01 ID:nqepu3F.0

が、特に何かを語るわけでもなく、口の端を少し緩めると、

|/▼) 「了解だ、マスター」

ただ、それだけを言葉にして跳躍の姿勢を取ったその時、

   「―――――――――ッ!!」

|/▼) 「ッ!」

夜の市外の静けさを打ち破る、地の果てにまで轟くような、
凶暴すぎる獣の雄叫びが二人の身を震わせた。

(*;゚ー゚) 「な、なに!?」

|/▼) (この空気の震え方、近いな……)

聞く者の恐怖心を煽るそれにシィは狼狽し、アサシンの表情は強張っていく。
先に判断を下したのは、マスターよりも実戦経験の豊富なアサシンの方だ。

|/▼) 「マスター、仕事は取りやめだ。安全な場所まで逃げるぞ」

(*;゚ー゚) 「敵がいるの……!?」

唐突に知らしめられた敵の存在にシィはただ動揺するばかりだ。

……ここのマナの豊富さが敵の魔力を紛れこませていたの?
やっと敵を察知したシィは冷静に分析していくが、
今はそんな悠長に構えていられる場合では無い。


84 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:03 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「何なのこの魔力の量、尋常じゃない! 一体何を召喚したっていうのよ……!」

|/▼) 「相手が何だろうが関係ない。早く逃げろ。
    サーヴァントが近付いてきていることだけは確実だ!」

(*;゚ー゚) 「そ、そうね! わかったわ」

シィは言葉と同時に力強く一歩踏みこんだが、アサシンはその場から動こうとはしない。
数メートル程駆けたあたりで気がつき振り返ると、

   「止まるな、そのまま走り続けていけ。俺は奴を食い止める」

両刃剣を背負った純白のローブの背はそう応える。

(*;゚ー゚) 「食い止めるって、貴方のステータスで大丈夫なの!?」

何度も言うように、アサシンのステータスでは三騎士に遥かに劣る。
もし相手のサーヴァントが三騎士であれば生還は絶望的だ。

   「良いから、俺を信じて背を向けろ。大丈夫だ。
    撤退するアサシンを追跡できるサーヴァントなどそうはいまい」

そんな不安要素を一切感じさせぬ、絶対的な自信を持った声で背は語る。


85 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:33:56 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) 「そ、それもそうね……危なくなったらすぐに逃げるのよ! 絶対よ!!」

      「分かっているさ、マスターは自分の身を心配していればよい。行け」

白衣のアサシンは落ちつき切っていた。
数多くの修羅場を超えてきた経験がそうさせるのだ。
暗殺者と言えども英霊である。状況の判断においては彼の方が一枚も二枚も上手だった。

言葉通り、自分の安全を優先することにしたシィは踵を返す。

     「一つ聞き忘れていた事があったな、マスター」

(*;゚ー゚) 「何!?」

     「俺は名乗った。だが、貴女の名は何と言うんだ、マスター?」

こんな時に、とシィは舌打ちをしたくなったが、
アサシンの声はどこか軽々しいものでも不快さは感じられず、
むしろ自身の緊張がほだされて表情が緩んでいった。

(*゚ー゚) 「シィよ、シィ・C・ルボンダール。それが、貴方のマスターの名前」

    「シィか。では、次に会うまでに覚えておこう。行くが良い。
     この場はアサシンのサーヴァント、ハサン・サッバーハが受け持った」

アサシンが言い切るよりも早く、木々の砕けていく音が鳴り響き、

    「――――――――――ッ!!」

雄叫びが近づいてきた。


86 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:35:33 ID:nqepu3F.0

本能的に、恐怖が命ずるままにシィは逃げ出していき、
アサシンは背中にかけていた鞘から大振りの両刃剣を引き抜く。
構えと激突はほぼ同時であった。

|/▼) 「くっ……」

フードに隠れた表情は想定以上の一撃の重みに歪んでいく。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

彼に襲いかかったのは憤怒とも狂気ともつかぬ、
人と言う枠組みから外れた形相をしたサーヴァントだった。

美しいはずの装飾を禍々しき闇色で曇らせた鎧兜を纏い
髪を血の色に染めて逆立たせたその男からは、英霊という風格が感じられない。

|/▼) 「"バーサーカー"か……面白い!」

召喚時に狂化を施し、理性が無くなる代わりにステータスを底上げされるクラス。
アサシンは一合打ち合って感じた剛力と狂気から、バーサーカーのサーヴァントであると察した。
真紅の瞳が彼を射抜き、目の前の"物体"を破壊するべく狂った英霊は剣を振りかぶる。

その一刀もかつては名剣と呼ばれた逸品であったのだろうが、
現世に狂化されて現われたことで輝きは失われ、
魔剣とでも呼ぶべき凶刃となってアサシンを襲う。


87 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:36:37 ID:nqepu3F.0

膨れ上がった筋肉を持つ巨体から繰り出す一撃は、
頭をかち割るべく真上から振られていく。

力任せの一撃だ。

単純ではあるが速度と威力には優れ、アサシンは迷わず避けた。
刹那、アサシンがいたはずの地面が爆撃でもされたかのように膨れ上がり、
石と土が重々しい音を立てて宙へと爆ぜる。

飛び上がったアサシンは木の幹へ着地するが、

|/▼) 「ちぃ……完全に避けてこれか」

屈むと同時に右肩から下腹部へかけて亀裂が走り、血が噴出した。
バーサーカーの剣圧によってカマイタチが生じ、肉を断たれたのだ。
最初に防いだ一撃も全身の骨を軋ませており、彼は確実にダメージを蓄積していた。

以#。益゚以 「――――――――ッ!!」

だが、そんなこともお構いなしにバーサーカーは次の攻撃へと移り、
振った刃を返してアサシンの足場となる木を吹き飛ばす。

人間の力では決して折れぬであろう大樹は小枝のように呆気なく圧し折れ、
夜空に投げ出されたアサシンは超人的な身のこなしで体勢を立て直すと、
別の木に飛び移って敵を見直す。

以#。益゚以 「グゥゥゥウゥゥゥゥゥ……」

呻りをあげる狂気のサーヴァント。
そして暗殺者のサーヴァントの両者は一拍の間睨み合う。


88 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:38:31 ID:nqepu3F.0

|/▼) 「動く者は全て殺す、とでも言いたげだな。意思も残ってはいまい」

以#。益゚以 「――――――――――ッ!!」

先に動き出したのはバーサーカーだ。
見失った獲物を捉えて、彼が襲いかからない理由は無い。

アサシンはその短絡な行動に苦笑するが、
ステータスの差は埋めようがなく、劣勢に立たされていた。

バーサーカーは、アサシンに止めを刺すべく咆哮をあげて突進していく。

|/▼) 「単純で狩りやすい。が、今は足を止められれば充分。
    ついでだ、貴様の真名――――探らせて貰うぞ!!」

それでも、彼の余裕は崩れなかった。

真っ正面から突っ込んでくるバーサーカーへ短刀を投げかけると同時、
アサシンは跳躍して背後を取っていった。

金属のぶつかり合う閃光と、叩きつけられる暴力の爆音が夜の円山で炸裂し、
聖杯戦争の初戦を飾るアサシンとバーサーカーの戦闘は白熱していく。


89 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:39:32 ID:nqepu3F.0

******

川 -) 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公―――」

闇の中で言葉が響く。

川 -) 「降り立つ風には壁を。
     四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

暗闇に満たされた室内の中央には魔方陣が刻まれ、
黒のドレスで着飾った長髪の女性は、令呪の宿る左手を前へとかざし、
言葉―――呪文を口ずさみ続けている。

川 -) 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)
     繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

呪文に触発されるように蟲の血で形成された魔方陣は輝きを放っていき、
部屋を赤く照らしてどこからともなく疾風が舞い込む。

その様を、ローブで身を包んだ男女が見守っていた。
ある者は興奮気味に、ある者は興味深く、ある者は願うように。

川 -) 「――――告げる」

彼らに"化物"と呼ばれる女性は体内を異物が巡っていく感覚を得る。
苦痛ではあるが、魔術を行使する上でそれは避けられないものだ。
逆に、その感覚がどれだけ魔力を練り上げられているか測る指標にもなる。


90 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:40:36 ID:nqepu3F.0

赤々と輝く魔方陣は不可思議な力を発していき、
陣内を稲光が走っていった。

聖杯が数十年もの年月をかけて蓄積してきた大魔力が注がれ、
この世と"あの世"を隔てる壁を打ち破り、かつての功績や伝説から集めた信仰により、
人間霊から精霊の粋にまで昇華された英霊を"英霊の座"より呼びだそうとしているのだ。

川 -) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
     聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

聖杯の強大なサポートを得ながら化物は英霊を現界させるべく、
己の体内から練り上げた魔力を魔方陣へ与え続けていく。

色香を漂わせる口から紡がれる呪文に応え、
英霊召喚の予兆はより一層激しくなり、風は暴風へ変化し、
稲光も強烈さを増して莫大な熱を撒き散らす。

川 -) 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
     我は常世総ての悪を敷く者」

この場を包むのはもはや闇では無く、青と赤の閃光だ。
測り知れぬエネルギーが部屋を満たしていき、それは最高潮へと達する。


91 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:41:36 ID:nqepu3F.0

川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
     汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―――」

そして召喚されるサーヴァントの理性を奪うかわりにステータスを上げる、
"狂化"の一文を付け加えると、

川 -) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」

川 -) 「天秤の守り手よ―――」

これまで込められ続けてきた魔力が堰を切った濁流の如く流れて行き、
その奔流がひときわ鮮烈な光を放つと人影が現われた。

あまりにも刺激の強すぎる閃光に多くの者は目を覆ったが、

川 -) 「……」

マスターである、この美しき化物だけは真っ直ぐに人影を見据えた。

以#。益゚以 「……」

光が散っていき、その姿が露わとなると、
ローブの男女は息を飲み、次いで歓喜した。

   「成功だ! 流石は"吸血鬼"と言ったところか。
    これで我が一族の大望をやっと果たせる」


92 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:42:33 ID:nqepu3F.0

川 -) 「……」

   「すっげぇ! これがサーヴァントかよぉ!!
    さっそく暴れさせようぜ! こいつならやれるよ!!」

以#。益゚以 「……」

しかし、彼らとは対照的にサーヴァントとそのマスターは、
不気味なまでに沈黙していた。

   「まぁ、待たんか。まずは情報の収集じゃ。
    ただ暴れさせるだけでは勝てるものも勝てん」

互いを見やる二人をよそにローブの男女は作戦を立てていくが、

   「そうね、じゃあ"クー"。バー―――」

川 ∀) 「……」

"クー"という化物の笑みが全てを壊した。

    「――――――――ッ!」

ローブの男の胴から上が、突如として振るわれた片刃剣に消し飛ばされたのだ。
彼らは息を飲み込み、剣の持ち主であるバーサーカーは、
闇と狂気に染まった黒刃を再び振りかざしていき、

    「―――――――――」

断末魔を上げる間も無くまた一人がその餌食となった。


93 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:43:27 ID:nqepu3F.0

    「どういうことだ!? 早く化物を鎮めろ!!」

生き残った二人の男女の内、まだ若い男がそう叫ぶと、
呆気にとられていた女は慌てて"化物"へと魔術を行使する。

    「嘘……暴走!? 催眠が効いていないっていうの!?
     そんな、意思なんて欠片くらいしか――――」

しかし、女の言葉は途中で途切れてしまう。
男が、バーサーカーに殴り飛ばされて壁に激突すると、
全身の骨を肉ごと粉砕されてしまったのだ。

息を飲み、潰れたトマトみたいになった男を看取った彼女は、

川 ∀) 「……」

振り返ると、口の端を釣り上げて禍々しい笑みを作ったクーに目を奪われた。
彼女がローブの女へと飛びかかったのだ。
押し倒され、馬乗りになったクーへ女は手をかざし、生き延びる為に魔術を行使した。

   「ひぃ……っ!」

これまでにない程の集中力だった。
まるですがるかのようにクーにかかった催眠を強めるが、
常人であれば廃人になりかねない強制力もクーには何の変化ももたらさない。


94 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:44:16 ID:nqepu3F.0

川 ∀) 「シネ……シネェ!!」

無駄だというのに魔術を使い続ける女の首を、クーは両手で締めあげた。
嗚咽を漏らし、口から唾液をしたたらせて悶える女を心底面白そうに見つめるクー。

舌舐めずりをしてから、クーは女の首筋に大口を開けて食らいついた。

   「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

肺が張り裂けんばかりの悲鳴を女が上げるが、
首に穴があいてしまった為にやがてそれはただの酸素となって漏れ出し、
息の根と共に止まっていった。

租借の度に女体が震え、淫猥な響きをもって血肉を散らしていく。
今のクーの胸にあるものは喜びだ。
空腹が満たされる食欲から与えられる幸福感を味わっていた。

人のそれと変わりない食欲を、クーは女の命を貪ることで満たす。

川 ゚∀゚) 「アッハッハッハッハッハ! マズイィ! マズイナァ!!」

骨の髄から血の一滴に至るまで貪り尽くしたクーは、
残った死体に唾を吐き捨てるとバーサーカーを一瞥した。

以#。益゚以 「……」


95 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:10 ID:nqepu3F.0

川 ゚ -゚) 「オマエモハラガヘッテイルダロウ、バーサーカー?」

声帯が人間の構造と違うのか、壊れているのか、
それとも精神の狂いのせいなのか、クーの声はどこか歪だ。

以#。益゚以 「……」

バーサーカーは沈黙を守っていた。
彼には狂化が施されている為、理性は残っていない。
マスター以外の存在を全て粉砕するだけの暴力の塊。

それが、今回の聖杯戦争で召喚されたバーサーカーというサーヴァントだった。

川 ゚ -゚) 「イクゾ、バーサーカー。ショクジヲシニイコウ」

以#。益゚以 「――――――――――――――ッ!!」

クーの言葉を命令と受け取ったのか、
バーサーカーは雄叫びを上げると剣を一度振るい、
天井をぶち破ってこの場を包む闇を晴らしていった。

天井に出来た穴からは夜空が覗けた。

そこから差し込む美しい月光がスポットライトのようにクーを照らしていき、
木々に覆われた景色を魅せていく。

どうやら、ここは山中に作られた地下施設のようであった。


96 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:45:58 ID:nqepu3F.0

跪いたバーサーカーはクーを肩に乗せると再び咆哮し、
外へと向かって飛び出していく。

川 ゚ -゚) 「ツギハオイシイモノヲタベヨウ。キットタノシイゾ、バーサーカー」

狂化のステータス向上の恩恵を受け、膨れ上がった筋肉に覆われた巨体を、
闇に染めたサーヴァントへとそう語りかけるクーに、

以#。益゚以 「―――――――――ッ!!」

応えるかのようにバーサーカーは獣じみた雄叫びを上げた。
そして彼は、空中から何者かを発見するともう一度叫ぶ。

|/▼)

応答ではなく、己の敵を発見した歓喜の咆哮を上げるバーサーカーは、
地に着地してクーを肩から降ろすと、その者へと向けて一目散に駆けだしていった。

川 ゚∀゚) 「ヌケガケナンテズルイゾ、バーサーカー」

その背を狂った笑みを浮かべて見送るクーは、ゆっくりと同じ方向へと歩き出す。


97 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:46:42 ID:nqepu3F.0

******

木々を震わす獰猛な叫びと連続して響き渡る破壊の音。
サーヴァントを召喚して間もなく、穏田ドクオ達は異変を感じていた。

('A`) 「こいつは……」

目,`゚Д゚目 「敵のサーヴァントに違いあるまい」

山道の外れにある広いスペース。
雪の敷き積もったその中心には土が露わとなった円形の部分があり、
そここそがドクオのサーヴァント"ランサー"が召喚された場である。

不自然に雪が融け上がって出来たクレーターに立つランサーは、
漆黒に塗られた当世具足と呼ばれる軽装の鎧を装備し、
肩には黄金で出来た数珠をぶら下げており、武者然としていた。

鹿の角を模した装飾のある兜をかぶった顔は、
敵の存在にさして脅威を感じていないのか威風堂々である。

同じくらいの目線に立つドクオを威厳に満ちた瞳で見据えたランサーは、

目,`゚Д゚目 「我が主よ、下知を。我が槍にて敵の首級を上げてみせようぞ」

そう指示を乞う。
冷静な声とは裏腹に、胸中では早速現われた敵との戦に燃えている様子だ。


98 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:49:40 ID:nqepu3F.0

('A`) 「いや、霊体化していろ。ランサー」

しかし、ドクオはそれを制する。
ランサーは少々面食らったようで抗議した。

目,`゚Д゚目 「むう、何故で御座るか? 拙者の力量を信用出来ぬとでも?」

('A`) 「違う、お前の強さは分かっている。敵の情報を探りたいだけだ。
    相手がどんなサーヴァントか、どんなマスターかもわからないんだぞ?」

目,`゚Д゚目 「しかし、それは相手も同じことであろう。
       兵は神速を尊ぶという。先手を制すれば優位であることに変わりない」

('A`) 「孫子か? 敵を知り、己を知れば百戦危うからずとも言うぞ。
    先手を制しても、仕留め切れなきゃ意味がねぇ」

目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孫子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」

('∀`) 「フフ……まぁ、そんなとこかな? 」

目;`゚Д゚目 「なんと! いやこれは失礼致した!」

('A`) 「いや、いい。今回は情報収集に専念だ。
    可能であるならば敵の排除を行う」


99 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:52:31 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「承知! では霊体化し偵察へ……」

('A`) 「行かなくて良い。偵察ならこいつらでやる」

親指を背後へ向けてドクオが言うと、ランサーはそちらへ振り返る。
視線を向けた先には、

('、`*川
  _
( ゚∀゚)

(゚、゚トソン

( ^Д^)

( ´∀`)

( ><)
 _、_
( ,_ノ` )

7人の仲間―――PMCインビジブルワンの傭兵達が武装しており、
あらゆる場所で一定の偽装効果を持つ、デシタルカモフラージュを施した迷彩服を着こんでいた。
手にはそれぞれ短機関銃や対物狙撃銃が構えられ、戦闘の準備は万端である。


100 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:53:48 ID:nqepu3F.0

目,`゚Д゚目 「これが貴殿の臣下で御座るか?」

('A`) 「まぁ、そんなとこか……」

('、`*川 「違うでしょ、ボス。私達は同志でしょうが」

( ´∀`) 「いや、ドクオの会社の社員である手前、
        そう言っても変わりないんじゃないかモナ?」
  _
( ゚∀゚) 「ボスがトノサマ? チョンマゲ似合わねーんじゃね?」

(゚ー゚トソン 「ぷっ、言えてますね、それ」
 _、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、軽口叩くな。ボス、今使い魔に敵を追跡させている。
      アンタがサーヴァントと話している間に放っておいた。映像を見てくれ」

渋澤が談笑し始めた彼らを制すと、ドクオに小型のノートパソコンを渡した。
画面には使い魔に取りつけたCCDカメラから送られる映像が流れていて、
複数のブラウザが立ち上がっていることから、駆り出された使い魔が一匹だけではないことがわかる。

('A`) 「おっ、気が効くな。仕事が早い」

('、`*川 「こっちでの潜伏生活が始まってから、非常時に備えてすぐ偵察出来るように、
      色んなところに仕掛けておいたのよーボスー」

('A`) 「お前達にも魔術を教えておいて良かったな、助かる」

言いながらも画面に目を走らせたドクオは、白いローブのサーヴァントと、
黒く禍々しい鎧を着こんだサーヴァントとの戦闘を眺めていく。
場所は、恐らくはこちらとは反対側の森の中だ。


101 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:54:30 ID:nqepu3F.0

('A`) (粉塵で見えんが……黒いのは恐らくバーサーカー。
    さっきの叫びもこいつのものだろう……が、こいつはなんだ?)

彼が疑問に思ったのは白いサーヴァントだった。
純白のローブで身を覆い、フードに隠れて顔は見えず、
軽装な防具を装備して両刃の大剣を構えてはいるがセイバーには思えない。

ならば、俊敏な身のこなしや短剣を投擲して戦う姿からアーチャーの可能性もあるが、
宝具を使用せずに戦闘しているライダーかもしれない。

いずれにせよ、既に召喚されているランサーとバーサーカー以外のクラスには間違いないが、
どのクラスであるか断じるには情報が少なすぎた。

電子機器越しにはサーヴァントのステータスが見られないことが悔やまれる。

('A`) (……今はこいつらよりも)

ドクオは別の窓へ目を移していく。
サーヴァント達の戦闘よりも重要な映像を見つけたのだ。

【 (*;゚ー゚) 】

白いダウンジャケットを着た薄ピンクのニット帽の女性だ。
帽子からはみ出した栗色の髪や雪のような肌から白人であることは明白である。
そして、右の手に宿る令呪を目敏く見逃さなかった。


102 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:55:37 ID:nqepu3F.0

('A`) 「こいつがマスターだな」

その言葉にインビジブルワンの傭兵達は目をギラつかせると、
己の標的を見定めて"部隊長"であるドクオに指示を乞う。
 _、_
( ,_ノ` ) 「ボス、指示を」

('A`) 「恐らくはこいつが白いやつのマスターだ。
    バーサーカーに襲われ逃走中、ってとこだろうな。
    バーサーカーのマスターが見えないのが気にかかるが、マスターには違いない」

('A`) 「このマスターの位置と動きから察するに、
    西から下山してそのまま10丁目方面に逃げ込むつもりだな。
    俺とジョルジュが追跡する。お前達は――――――――」

ドクオは情報をまとめ、仲間達へと指示を下していった。

目,`゚Д゚目 「どれ、我が主の手並みを拝見させて頂くかのう……」


103 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:56:26 ID:nqepu3F.0

******

(*;゚ー゚) 「はぁ……はぁ……っ」

シィは走っていた。

アサシンにその場を任せて逃走し、既に10分ほどが経過している。
その間一切速度を落とさずに全力で走り続けることで、
剣を交える金属音は途絶えたが、未だに木々を破壊する爆音は耳に届く。

(*;゚ー゚) (アサシンは大丈夫なのかしら)

森を抜け、市街に面した場所に到達したシィは、
ようやくサーヴァントの身を案じる余裕が生まれた。

背後を振りかえり山を見渡すと、土煙が立っているのが目立ち、
それは一般人には微かな変化にしか思われないだろうが、
彼女にはそこでサーヴァント同士の剣劇が繰り広げられていることが分かる。

(*;゚ー゚) 「アサシン、早く戻ってきて」

アサシンは充分に時間稼ぎの役割を果たした。
後は撤退し、シィの元に戻るのみだ。

サーヴァントを召喚した以上戦いの権利を放棄しない限り、
シィは狙われ続けることになる。

バーサーカーから逃げおおせたと言ってもアサシンが彼女の傍にいない以上、
残る5人のマスターに狙われた場合成す術も無く殺されてしまうだろう。
そんな状況で夜の街を歩くのは、シィには危険極まりない行為であった。


104 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:57:24 ID:nqepu3F.0

(*;゚ー゚) (とりあえず、どこかに隠れていなきゃ)

そう思ったシィは止めていた足を動かし、ひとまずどこかに隠れることにした。
魔術を使っているところを一般人に見られるのは、魔術師にとって禁忌である。
もっとも"証拠"さえ残さなければ問題はないのだが、人混みとあってはそうもいかない。

だからシィは、深夜でも人の多い場所を探して歩き続けた。
ビルの林立する10丁目通りを歩き続け、アスファルトに積もった雪に足跡を刻むシィ。

彼女は交差点に迫るとまだ灯りのつく場所を見つけた。

ほとんどの店はシャッターを降ろしていたが、
まだコンビニや一部のファーストフード店は開いている。

(*゚ー゚) 「そういえば!」

シィはここまでやって来る時、左側に曲がった先に、
コンビニがあったことを思い出すとスピードを上げた。

口からは荒い息が漏れ、心臓はもはや限界を迎え早鐘を打っていたが、
生き残る為に全力で走り続けた。
コンビニへ逃れようとする彼女はもはや縋りつく思いだ。

(*;゚ー゚) (人前じゃ、他のマスターも下手なことはしないでしょう)

交差点に差し掛かり、シィが後少しだと思った途端、胸の内に安堵が生まれた。
自分はサーヴァント同士の戦いに、生き残ったのだ。
これでかつての恋人と、ギコと合流できれば、聖杯を手にするのも夢ではない。


105 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 13:58:18 ID:nqepu3F.0

(*゚ー゚) 「大丈夫、私はまだ戦える……これからも」

確かな自信を手にしたシィは笑みを作り出そうとすると、

(*゚ー゚) 「え……?」

音が響いた。
生々しい音だ。

衝撃が左肘から右半身へ響いていくと、次に強烈な熱量を左腕に感じる。

(*゚ー゚) 「なに……?」

走ることで生まれた熱ではない。
熱源へ目を配らせるが、彼女は事実を否定したくなった。

(*;゚ー゚) 「なん……なのよ……これ?」

灼熱を感じる左肘から先が地面に転げ落ちていたのだ。
血液がだくだくと流れ出る真っ赤なそこからは白い骨が飛び出していて、
それを目にしたシィは反射的に絶叫を上げそうになるが、

('A`) 「……」

濃緑色のモッズパーカーを羽織ったドクオに顔面を殴りつけられ、
口まで出かかっていた声は掻き消されてしまった。

自分の腕から噴出した血によって出来た水溜りに倒れ、
シィの白いダウンは赤黒く汚れていく。
血に塗れた彼女の傍らには、吹き飛ばされた己の腕がぽつりと並んでいる。


106 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:04:03 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「な……に……?」

('A`) 『狙撃は成功だ。これより移植を行う。周囲の警戒を怠るな』

シィは未だに事態が飲み込めていない様子だ。
だが、インカムを装着したドクオは彼女と打って変わり、
冷静に状況を仲間へ報告し、進めていく。
  _
( ゚∀゚) 「ボス、本当にそんなこと出来るのか?」

反対側、交差点から回り込んできたジョルジュがドクオに尋ね、
その間にも彼は雪の上に転がった令呪の宿るシィの左手を掴むと、

('A`) 「出来るさ、霊媒治療術は心得ている」

(*;´ー゚ナ) 「うっ……!」

身動きを取れぬよう彼女の身体を蹴りあげ、
踏みつけながらも魔術を練り上げて呪文を唱え出す。

シィはその様をただ眺めていることしか出来なかった。
ドクオの魔術によって、奪われてしまった自分の左手に宿る令呪が輝きだし、
  _
(;゚∀゚) 「……つッ!」

痛みと共にジョルジュの右手へと移植されていった。
今や、シィに宿っていた令呪は彼の手の甲で赤々と輝いている。


107 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:05:53 ID:nqepu3F.0

(*;´ー゚ナ) 「あっ……あぁ……」

言い知れぬ喪失感にシィは苛まれた。
サーヴァントも、聖杯も、ギコの力になるという想いも、
全て姑息な手で奪い取られてしまったのだ。

('A`) 「ジョルジュ、命じろ。令呪を使って、あの白いサーヴァントに」
  _
(;゚∀゚) 「……どうすればいいんだ?」

('A`) 「簡単だ。『マスターの変更を認め、前マスターを殺害せよ』と、
    令呪を意識して念じればいい。急げ、マスターの危機をサーヴァントは察知してくるぞ」
  _
(;゚∀゚) 「あいよ……」

言われた通り、ジョルジュは令呪の宿る手を抑えつけ、集中していく。
ドクオはシィの動きとサーヴァントの襲来に備え、警戒しながら彼を一瞥する。
  _
(;-∀-) 「令呪を以って命ずる……マスターの変更を認め、前マスターを殺害しろ……」

ジョルジュの言葉と共に令呪は一際大きな光を放ち、一画が失われた。
そして、残り二画となった令呪の前に――――

|/▼) 「……」

稲妻が生じたかと思ったその瞬間、サーヴァントが現われた。


108 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:06:49 ID:nqepu3F.0

('A`) 「ふん、アサシンだったか……」

マスターだけが持つサーヴァントのステータスを見る眼で、
疑問だった彼のクラスをドクオは確認した。
しかし、興味の無いような声で呼ばれたアサシンのサーヴァントは、

|/▼) 「……」

(*;´ー゚ナ) 「ひっ……あ、アサシン……嘘よね?」

淡々とシィの元へ近づいていき、ドクオは離れていく。
フードに隠れた顔を拝んだ彼は笑みを浮かべ、
アサシンは感情を窺わせぬ冷たい眼でシィを見た。

|/▼) 「……すまん、シィ」

(*´ー;ナ) 「いや……いやよ!」

横たわった彼女は涙を流し、必死に訴えかけた。
それでも、アサシンは令呪で命じられた通りに行動するしかなく、
その場で跪くとシィの首を掴んだ。

(*´ー;ナ) 「―――――」

何が起きたのか、掴まれた首には短刀の刃が突き立っており、
それはアサシンの右手の籠手から伸びていた。
引き離された白刃は血に塗れ――――


109 : ◆IUSLNL8fGY:2012/04/14(土) 14:07:42 ID:nqepu3F.0

(* ーナ)

シィの命はその短刀によって奪われてしまった。
アサシンは首から離した手でシィの開きっぱなしの瞼を閉じてやり、

|/▼) 「眠れ、安らかに……」

亡骸へそう言葉をかけた。

その言葉は万人に等しく訪れる、死出の旅立ちが安らかであることを祈るものだ。
生前にアサシンが多くの暗殺対象へ向けて放った言葉でもある。

('A`) 「よくやったジョルジュ、アサシン。作戦は終了だ」

ドクオは仲間達へそう呼び掛けると、二人は速やかにその場を離れていく。

その迅速さは彼らが戦闘のプロフェッショナルであることの証明に他ならない。
死体や現場の後片付けは、聖堂協会と魔術協会の仕事だ。
死体一つ片付けることくらい、彼らにとっては造作もない。

ドクオがどのような汚いやり口でマスターを殺害しても、
聖杯戦争で生じた戦闘の後始末をするのは両教会の仕事であり、彼は利用しているのだ。
  _
( ゚∀゚) 「了解」

|/▼) 「……」

新たなマスターにジョルジュを迎えたアサシンは何も語らず、
実体を失って霊体へと変化していった。



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