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( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです 目次 

( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです その1


( ;ω;)ζ(;ー;*ζ残念な事になったようです その2


ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです 目次 

ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その1


ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その2


ξ゚⊿゚)ξは画面の世界の住人のようです その3


( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです 第3話 

121 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:20:44 ID:Xm/VcOpw0

深夜を迎え、空が白み始めてきたその頃、山を降りる女性がいた。

黒のドレスを身に纏い、夜そのものと同化したような彼女は木々を抜け、
コンクリートに囲われた10丁目通りを進む。

川 ゚ -゚)

その姿は幽鬼さながら、生気といった物が感じられなかったが、
女性の相貌は花も恥じらうほどの美しさといった様で、
裸足でアスファルトの上を歩く彼女は見る者があれば魅了したことであろう。

人外の美貌を持つ"吸血鬼"、クーは交差点まで歩き続けると目的の物を見つけた。

(* ー )

川 ゚∀゚)

道端に打ち捨てられたシィの亡骸を見つけると、
クーは口を大いにに歪め、人ならざる笑みを浮かべる。

妖しくも邪気を発露させる笑顔で、一言。

川 ゚∀゚) 「イタダキマス」

そう発するが早いか、遺体に跨ると首へかぶりついた。
真っ赤な口から覗かせる白い八重歯は獰猛な肉食獣を思わせ、
体温を失った柔肌を食い破り、肉の味を堪能しながら租借する。


122 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:21:34 ID:Xm/VcOpw0

川 ゚~゚)

ぐっちゃぐっちゃ。

野性味の溢れる音を響かせて、喉を鳴らせるなりもう一口。
1分と経たずにシィの顔は"顔"を失っていき、
目玉まで食らわれて白骨をクーへ晒した。

川 ゚~゚)

目玉を口の中で弾けさせ、濃厚な鉄の味と弾力を楽しんだ彼女は、
シィの頭蓋を路面に叩きつけてかち割っていき、
そこから露わとなった紫色の血管が張り巡らされ、皺の刻まれた黄土色の脳を拝む。

租借していた物を飲み下すと、ぶよぶよとしたそれを手にとって、
脳幹を引きちぎって口の前へと持っていった。

川 ゚ -゚)

丸っこいそれは弱々しく脈を未だに打っており、
鼻を突くような異臭を放つ。
鼻腔を満たすのは吐き気を催すような濃密な血の臭いだ。


123 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:22:34 ID:Xm/VcOpw0

しかしクーにとっては肉汁ほとばしるステーキのジューシーな香りと同意である。

川 ゚∀゚)

芳しい匂いを嗅いだ顔からは笑みがこぼれ、
血液と肉片を散らせて彼女は脳を貪っていった。

川 ゚ー゚)ー3 「ゲフゥ……」

満腹となったのか、彼女の血に塗れ赤黒くなった顔からは幸福さが読み取れた。

まるで、腹をすかした子供がご馳走を平らげたかのよう。
いや、人間にとってはおぞましい光景にしかすぎないのだろうが、
彼女にとってはシィの遺体は紛れもないご馳走に違いなかった。

川 ゚ー゚) 「マジュツシダッタノカ。ドウリデウマカッタワケダ。
      マリョクガメグッテイクノヲカンジル」

魔術師を食らう事でクーの身体に魔術刻印と回路が取りこまれ、
それがそのまま彼女の力となっていったのだ。

魔術刻印は魔術師の家に生まれ、家督を継いだ者へと代々譲渡されていき、
先祖の作り出した魔術回路や魔術を引き継いでいく。
そして受け継いだ者は己の研究の成果をまたそれに刻み、次の代へと託していくのだ。

次代を繋いでいくにつれ魔術刻印は強化され、より強力な物となって魔術師の家系を支えていく。

長い歴史を持つ家系ほど優秀な魔術師を生み出すことが出来るということで、
その事実は歴史の浅い家系を持つ魔術師達が軽視される実体を作り出していた。


124 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:23:28 ID:Xm/VcOpw0

しかし、そんなことはクーにとっては関係なく、
シィの家、ルボンダールの魔術刻印を体内に取り込んだことで、
パワーアップ出来たという結果だけが重要だった。

川 ゚ -゚) 「ムシドモ、ザンパンハキサマラニクレテヤル」

魔術師の肉は美味い。

そう学んだ彼女は食い散らかした遺体の残りを体内に巣くう、
"魂蟲"という魔術によって生み出された虫達に食わせてやる。

蛆が湧くように遺体へ群がる魂蟲達を傍目にし、

川 ゚∀゚) 「サテ、イッスイシタラマジュツシドモヲクイニイコウカ」

朝陽の昇り始めてきた空に舌打ちをするとクーは笑みを浮かべた。

美味い食事を人間と同じく吸血鬼も好む。
骨まで虫に食らわせ、地面に零れた血の一滴まで吸い尽くさせた彼女は、
太陽の届かぬどこか暗い所へと消えていく。

シィの敗退とアサシンのマスター交代。
そして、クーの食事によって聖杯戦争の第一夜は明けていった。


125 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:24:27 ID:Xm/VcOpw0

******

カーテンから微かに漏れ出る朝陽がブーンの目を刺激する。

( ´ω`) 「……」

眩しさに瞼を抑えながら、彼は気だるい身体をベッドから起こした。

4畳ほどの空間にはベッドや机、テレビなどが置かれており、
本棚の空いたスペースには少林寺拳法の大会で取ったトロフィーや、
家族や友人達との思い出の写真が飾られている。

昨夜アーチャーを召喚したものの、戦力外通告を彼に突きつけられ、
家を飛び出されてしまった後、ブーンは自室に籠りきっていたのだ。

数々の自問自答を繰り返し、苦悶している内に彼はこうして朝を迎えてしまった。

( ´ω`) 「僕に……マスターになる資格はなかったのかお?」

ブーンは自らのサーヴァントにかけた言葉の一言一句を思い返しては、後悔して過ごした。
サーヴァントは使い魔と言えども元を辿れば英霊であり人間だ。
アーチャーという人間が生きた時代への理解が、彼には足りなかったのだ。

英雄と呼ばれた者であれば己の戦いを誇りに思っていてもおかしくは無い。
だが、アーチャーと対面した時にブーンは肌で"何か"を感じ取ったのだ。
この英霊ならば己を理解してくれるのかもしれないという、錯覚に陥るような"何か"を。

だが、それに甘えたブーンの直情的な言葉が引き金になったのは確かなことであった。


126 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:25:25 ID:Xm/VcOpw0
( ´ω`) 「学校……行くかお」

苦悩していても時間は過ぎていく。

ブーンは習慣に従い、制服に袖を通していくと身だしなみを整え、
教科書など必要な物をメッセンジャーバッグにしまっていくと一階へ降りる。

J( 'ー`)し 「おはよう、ブーン」

( ´ω`) 「おはようだお、かーちゃん……」

リビングには彼の母がいた。

いつものように朝食を並べたテーブルに向かって座る彼女の表情は穏やかで、
息子を見る瞳は一見しただけで彼の異変に気付いたのか、

J( 'ー`)し 「サーヴァントの召喚、上手くいったのかい?」

( ´ω`) 「召喚は出来たお……でも……」

J( 'ー`)し 「でも?」

( ´ω`) 「……」

「学校で何かあったのか?」とでも言うような口振りで尋ねる。
そんな母にブーンは昨夜の失態を語ることは躊躇われた。

父を失って以来、自分に夫の望みを託し、
期待して見守ってきてくれたはずの母に申し訳が立たないのだ。
ブーンの胸を薄暗いものが覆っていき、己へ更なる嫌悪が募っていく。


127 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:26:09 ID:Xm/VcOpw0

J( 'ー`)し 「ブーン、アンタはね、とーちゃんとかーちゃんの自慢の息子だ。
      私はねぇ、アンタを信じてるよ。命がある限り何度だってやり直しは効くよ」

( ´ω`) 「かーちゃん……」

J( 'ー`)し 「だけどね、アンタがそんな顔をしてる内はやり直しなんて出来るわけがない。
      シャンとしなシャンと! 背筋曲がってるよ!? 猫背は折角の男前を代無しにしちまう」

( ´ω`) 「……ごめんお」

J( 'ー`)し 「だから背筋ピンとして、ごはん食べて気分でも変えなさい。
      さっ、冷めないうちに食べましょう」

( ´ω`) 「わかったお……いただきます」

叱咤されたものの、ブーンの顔にさした影が消え去ることは無い。

しかし、言われたままに彼は箸をとり、ほかほかと湯気を立てる白米を口へ運ぶ。
重い気持ちのまま租借していくと口の中にほのかな甘みが広まっていった。

( ´ω`) 「……」

無言のまま食事を進めていくが、食卓に並べられた味噌汁の香りや、
鮮やかな鮭の紅色が彼の五感を刺激していき、
それらの旨みは疲弊していた心に微かな喜びを味わわせる。


128 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:26:53 ID:Xm/VcOpw0

( ^ω^) 「……」

いつも通りの母の味だ。

何の変哲もないただの朝食の風景。
だが、掛け替えの無い物である。

ブーンは穏やかなこの空気に癒され、料理に食欲を掻きたてられた。
人間とは単純なもので、食事によって与えられる幸福感で嫌なことを一時忘れられるのだ。
立ち直った、とまでは言えない物の、彼は普段通りの表情を作れるようにはなった。

J( 'ー`)し 「ブーン、美味しかったかい?」

母は、人間と言う物を良く知っていた。
何より、自分と夫の息子の持つ強さをよく理解していた。
彼女は絶望に打ちひしがれた時の夫のことを思い返しながら、ブーンへ尋ねる。

( ^ω^) 「うん、美味しかったお。ご馳走さま」

朝食を平らげたブーンは微笑みを返し、立ち上がると、

( ^ω^) 「それじゃあ、学校へ行ってくるお」

J( 'ー`)し 「そうかい、まだ寒いから暖かい格好していくんだよ」

わかったお、と短く答えたブーンは自室へ上がり、
青と白のスタジアムジャンパーを羽織り、
茶色のメッセンジャーバッグをかけて戻ってくると、玄関へ進んでいく。


129 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:27:41 ID:Xm/VcOpw0

( ^ω^) 「いってきます」

J( 'ー`)し 「いってらっしゃい」

背筋を真っ直ぐと伸ばして外へ出ていくブーンを、母は見送った。
聖杯戦争の行われる土地で、平素通りこうして日常は繰り広げられていく。

だが、ブーンの脳裏にはやはりアーチャーのことが引っかかっていた。

( ^ω^) (学校に向かったは良いもの、途中で他のマスターに襲われたら……)

背筋に冷たいものを覚えるが、アーチャーの言葉が蘇る。


(<`十´> 『ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい』


手袋を脱ぎ、令呪を隠す包帯を見やる。
たしかに令呪をいつでもアーチャーをこの場にすぐさま呼びだす事が出来るが、
そんなことの為に貴重な三回限りの令呪を使用していいものなのか……。

溜息を吐かざるを得なかった。

三回とは言えども、サーヴァントへの命令権を失えば制御することは出来なくなってしまう。
同時にマスターとしての資格を失うことになるからだ。

実質、二回限りの絶対命令権。これをただ呼ぶ為に使うなど、愚の骨頂と言っても良いだろう。


130 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:30:07 ID:Xm/VcOpw0

( ^ω^) (まぁ、仕方ないおね)

そう断じることが出来るようになるほど、今のブーンは前向きな姿勢を取り戻せた。

「我に従え」などという、漠然とした命令では令呪の効力を最大限に発揮するには至らないのだ。
「次の攻撃を全力で放て」というような単純明快な命令であって、初めて令呪は十全に機能する。

( ^ω^) (でも、いざとなったら背に腹はかえられないお。
       それにアーチャーを呼んだら、説得のチャンスだお。
       気持ちを切り替えないと……)

胸の内に決意を固めると、ブーンは北24条通りにある
東区役所方面と栄町駅方面に分かれる交差点に友人の姿を見かけた。

( ^ω^) 「おはようだお、ショボン!」

駆け寄って声を掛けるとショボンは振り返り、

(´^ω^`) 「昨夜はお楽しみのようでしたね」

にやけた憎たらしい面を見せてきた。
昨夜、という単語にブーンは動揺するが、
魔術師でも魔術使いでもないショボンが聖杯戦争を知る筈がない。

(;^ω^) 「な、なんのことだお……?

(´^ω^`) 「付き合った翌日にセックスするのは当たり前じゃないですか~。
      最近の若者の性は乱れてますからね~。で、どやったんや? どやったん?
      あのツンデレ娘は夜はどんなデレを見せてくれたんや?」


131 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:30:50 ID:Xm/VcOpw0
(;^ω^) 「し、知らんお。昨日のことかお?」

昨日、ツンに呼びだされたことをショボンは誤解していた。
しかし、昨日と言ってしまったはいいものの、
どう誤魔かせばいいのかブーンは困ってしまう。

(´^ω^`) 「おう? おうおう、そうかそうか。
      "付き合ってるのは二人だけの内緒ね!"
      パターンですか。それじゃあ話せないのも納得ですな」

(;^ω^) 「誤解だお! ちゃんと話せばわかってくれるお。
        だから、ちょっと黙って話を聞いてくれお!!」

三(´つω;`) 「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな!!」

嘘泣きを交えて学校へ走り去るショボン。

立ちつくすブーンを見た登校途中の生徒は口々に、
「ホモ?」「カップルだったの?」「キモッ」「ホモォ……」など、
更なる誤解を招きかねない言葉を連ねていった。

(;^ω^) 「まっ、待つおショボン! 勘違いさせるようなことすんなお!!」

見事にショボンの策にかかったブーンは、慌てて後を追った。
短距離走では校内一の記録を保持する彼は、あだ名の起源となる、

⊂二二二(;^ω^)二⊃ BoooooooN!!

"ブーンフォーム"と呼ばれる姿勢を取って、校内最速を誇る全力疾走を道行く人々へ見せつけた。
ショボンに追いつくのに5秒も掛からず、


132 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:31:57 ID:Xm/VcOpw0

───────── ― - --
─── /⌒ヽ, ─────────
 ̄ ̄  / ,ヘ  ヽ/⌒ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   , ” ' ‐ ,
 ̄ ̄ i .i \ (#^ω^)ヽ,   ___,, __ _ ,, - _―" ’.  ' ・,  ’・ ,  /∧_∧
── ヽ勿  ヽ,__    j  i~""     _ ― _: i ∴”_ ∵,          ))
______   ヽ,, / / __,,, -- "" ─ "ー ・, ; ; - 、・   r=-,/⌒  ~ヽ~,
───────  ヽノ ノ,イ  ─── ― -            i y  ノ' ノi j |
───────  / /,.  ヽ,  ──                i,,___ノ   //
______   丿 ノ ヽ,__,ノ ___ _ _ _           ,'    ゝi
           j  i                        /   y ノ
_____    巛i~ ____ _             /    /~/
                                   i   < /
───────                          ヽ,  \
         _  _                          / ヽ_  )
────  // | | 巛             r、  r、       i (~_ノ
       //   | |    ===┐     | |  | |      ノ  /
      //   | |        | |     !」  !」      ノ  /
      ~    ~        | |      O  O   (~   ソ
               ===┘            ~ ̄


133 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:33:54 ID:Xm/VcOpw0

背を捉えるなり速度重視の飛び蹴りを横っ面に炸裂させた。

綺麗な弧を描いて宙を舞ったショボンは、柔道を幼い頃から学んでいる経験から、
これまた綺麗な受け身をとり、

(メ;)´^ω^`)v 「許してだっちゃダーリン☆」

足跡をつけた頬をブーンへ向けて笑みとピースを送る。

(;^ω^) 「呆れて物も言えないお……」

その後、紆余曲折あって校門の前で登校途中の生徒を待ち構え、
選手宣誓のごとく彼らは「僕達はホモじゃありません」宣言をするのだが、

ξ゚⊿゚)ξ 「あぁ、そう」

ツンの残冬にも負けぬ凍てつく視線と言葉を浴びせられると、
元通りのテンションになってとぼとぼと教室へ向かい、
何事も無かったかのようにホームルームを待った。

( ´ー`)「はーい、日直ー」

間延びした声でクラス全員に、教室に入ってきた担任のシラネーヨは言う。

日直が起立と礼と言い放つとクラスメイト達は従った。
規律のとれた、模範的な高校生と言えよう。


134 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:36:07 ID:Xm/VcOpw0

( ´ー`)「おはようだーよ」

ほぼ自動化されたように黒い出席簿を開いて点呼をとると、
ホームルームを始めていくがなんら変わり栄えもするものはない。

しかし、

( ´ー`)「昨日の夜、寝ようと思ったらクマかなんかの鳴き声が聞こえたんだけど、
      お前達にも聞こえたか? 大きかったんだけど、ニュースにもなってないし……」

ξ゚⊿゚)ξ 「……ッ」

シラネーヨの何気ない、もしかしたら寝ぼけて聞こえただけかもしれない、
そんな話にツンは引っかかるものがあった。

シラネーヨの自宅は聖杯の設置された札幌神宮の近くにあり、
その一帯となる円山はマナが一際豊富なので、サーヴァントの召喚にはもってこいの場所だ。

聖杯は魔方陣と器によって、大聖杯と小聖杯によって分かれる。
大聖杯となる魔方陣は札幌神宮の地下に敷かれており、
今は亡き父、モララーの推測では円山のマナがそこに流れ込んでいるのだという。

聖杯の異常か、召喚されたサーヴァントによる物か。
ツンには、シラネーヨの口振りからして後者であると判断した。

で、あるのならば、クマの鳴き声といった情報から、
恐らくは、理性を失ったバーサーカーが獣じみた叫びを上げたのだろうと答えを導き出す。


135 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:37:38 ID:Xm/VcOpw0

ξ゚⊿゚)ξ (たぶん、円山のほうにバーサーカーとそのマスターがいるのね。
      所構わず叫び出すバーサーカーなんて、一体どれほどの狂化スキルなのかしら)

更に推測していき、ちらっとブーンのほうを見て溜息をついた。


( -ω-) Zzz


ξ∩⊿-)ξー3 (バカ……)


彼は既に眠っていたのだ。

他のマスターがいるにも関わらずのこのこと学校に現われ、こうして無防備を晒す。
自分はなめられているのだろうか、とツンは憤りそうにもなったが、
呆れてそんな気にもなれなかった。

一晩中葛藤し、眠れなかったブーンは睡魔に勝てなかっただけなのだが、
それを抜き差ししても彼には緊張感が足りなかった。


136 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:38:27 ID:Xm/VcOpw0

ツンはそんな背景は知る由もなかったのだが、

ξ゚⊿゚)ξ (私が手段を選ばないような輩だったらどうするってーのよ。
        アンタ今頃、私の魔術かサーヴァントにミンチにされてるのよ?)

ξ゚ー゚)ξ (全く、抜けてんだから……)

幼馴染の情ゆえか、彼に敵愾心を抱くことはなく、
それどころか自分自身のささくれ立った気持ちが癒されているのを、
心のどこかでは感じていた。


だが―――――


ξ゚⊿゚)ξ (聖杯を取るというのなら、話は別よ)

冷たい仮面で優しさの暖かみを覆い隠し、ツンは決意を固めていた。


137 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:39:49 ID:Xm/VcOpw0

*******

('A`) 「状況を確認する」

円山のマンションの一室。

リビングに置かれたテーブルへ向かい、
ドクオ達インビジブルワンはソファに座っていた。

('A`) 「聖杯戦争の概要について、まずはおさらいしていこう」

('A`) 「聖杯戦争とはあらゆる願いを叶える聖杯という魔術礼装を奪い合う戦いだ。
    聖杯は地脈から魔力を溜めこみ、7人の魔術師に令呪を与え、サーヴァントを各々に与える。
    サーヴァントのクラスは7つだけだ。それぞれ――――」

<人リ゚‐゚リ セイバー


('A`) 「このクラスは剣を武器にするサーヴァントが該当し、
    ステータスが最も優れ、これまでの聖杯戦争を全て終盤まで戦い抜いた実績から、
    最優のサーヴァントと呼ばれている」


(<`十´> アーチャー


('A`) 「アーチャーは弓。遠距離武器を使用するサーヴァントがこれに該当する。
    弓、と言いきってもいいのだが、英霊によっては大量に所持する宝具を投げつけるような奴もいる。
    気をつけておけ。このクラスは単独行動スキルを持ち、魔力供給を行わずとも数日は現界していられるぞ」


138 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:41:13 ID:Xm/VcOpw0
目,`゚Д゚目 ランサー


('A`) 「ランサー」

目,`゚Д゚目 「応!」

('A`) 「……は、見ての通りだ。ジョルジュ、わかるか?」
  _
( ゚∀゚) 「あぁ、ステータスが見えるぜ。変な感覚だ」


【ランサー】 目,`゚Д゚目
【マスター】穏田ドクオ
【真名】???
【性別】男性
【属性】中立・善
【ステータス】筋力B  耐久C 敏捷A++ 魔力D 幸運D 宝具A++
【クラス別スキル】耐魔力A
            Aランク以下の魔術をキャンセル。

【保有スキル】  直感B
           戦闘の"流れ"を読むことの出来る能力。
           敵の攻撃をある程度予測することも出来る。
    
           騎乗D
           騎乗の才能。馬であるならば人並み以上に乗りこなすことが出来る。
           知識を与えられれば現代の乗り物を扱う事も可能。

【宝具】    ???


139 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:42:23 ID:Xm/VcOpw0
  _
( ゚∀゚) 「敏捷に一際優れ、高い白兵戦能力を持つ槍使いってのが、このクラスの特徴か?」

('A`) 「その通りだ。全クラス中ランサーは最高の敏捷を持つ」

目,`゚Д゚目 「恐らくは、拙者の逸話によるものでござろう。
       拙者は身のこなしで事なきを得てきたからのう。それ故の当世具足で御座る」

('A`) 「なるほどな、重装備では取り回しづらく、逆に負傷してしまうわけか」

目,`゚Д゚目 「然り!」

('A`) 「このランサーのように、敏捷が特に高い者でなければこのクラスには該当しない。
    少々、ステータスが高すぎる気もするが……」

目,`゚Д゚目 「主の補正と日の本における拙者の知名度の恩恵であろう。
       本来ならば、A++のような評価を受けることは無いで御座る」

('A`) 「俺もそれほど落ちぶれてはいないということか……。
    次のクラスについて説明しよう」


140 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:44:31 ID:Xm/VcOpw0

(???)ライダー


('A`) 「このクラスは敏捷くらいしか目を見張る物はないものの、、
    固有スキルに騎乗A+以上を持ち、強力な宝具を数多く所有する。
    何らかの乗り物に乗って戦闘するのが特徴だな。耐魔力スキルも持っているぞ」

(???)キャスター


('A`) 「キャスターは魔術に特化したクラスで、魔術A以上がキャスターの条件だ。
    しかし、魔術に攻撃を頼り切るキャスターは耐魔力を持つサーヴァントには滅法弱く、最弱と呼ばれる。
    一見脅威には思えんが、道具作成と陣地作成のスキルを活かして戦術を組んでくることだろう」

('A`) 「相手は常に自分に有利な状況に持ちこんで戦闘をしかけてくるはずだ。
    結界を用い籠城する戦術も非常に有効で、手ごわい相手に違いない。攻城戦も想定しておけ」


|/▼) アサシン


('A`) 「アサシンのサーヴァントはステータスは貧弱もいいところだ。
    白兵戦においては勝ち目は無いと言っていい」

|/▼) 「随分な言われようだな」

('A`) 「だが、事実だ。お前もわかっているはずだが?」

|/▼) 「あぁ、マスターが変わりステータスが降下してしまったのでな」


141 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:45:29 ID:Xm/VcOpw0

【クラス】|/▼)
【マスター】長岡ジョルジュ
【真名】ハサン・サッバーハ 
【性別】男性
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力C 耐久C 魔力E 敏捷B 幸運E 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
           サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
           ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
         
【保有スキル】投擲(短刀):B
         短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。

         風除けの加護:A
         中東に伝わる台風避けの呪い。


142 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:46:32 ID:Xm/VcOpw0

('A`) 「確かに、低下しているが、お前には虎の子の気配遮断スキルがあるだろ。
    マスターを暗殺出来ればサーヴァントもいずれ消える、まだ活躍してもらうぞ」

|/▼) 「まずは、お前を殺してみせようか?」

アサシンは冗談めかした口調で言ったのだが、
        
 ( ^Д^) ( ><)
 _、_   
( ,_ノ` ) 「……!」(゚、゚トソン

 ('、`*川  ( ^Д^)

言葉を聞いた途端、皆が一斉に懐に忍ばせていたハンドガンに手を伸ばし、
魔術を使える者は詠唱の準備を、ジョルジュは令呪を使用する構えをとった。

|/▼) 「冗談だ、貴重な令呪、無駄にはするなよマスター。
    不本意な契約だが、聖杯を取れるのならば構いはしない。
    俺を存分に使うが良いマスター、ドクオ」

('A`) 「そうさせて貰おう。ジョルジュ、よろしく頼むぞ」
  _
(;゚∀゚) 「任せとけよ。お前とは長い、魔術も他の奴より使えるつもりだ」

さて、と仕切り直し、ドクオは最後のクラスについて解説していく。


143 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:47:32 ID:Xm/VcOpw0

以#。益゚以 バーサーカー

('A`) 「次はバーサーカーだ。こいつには制約が無い。
    どんな英霊でも狂化を許諾すればバーサーカーになれる。
    呪文に一節加えるだけでクラスを指定することも可能だ」

('A`) 「狂化は理性を失う代わりにステータスを強化することが出来る。
    ただし、一部の宝具が使えなくなったり、理性を失って戦闘の技術に支障をきたす、
    消費魔力量が膨大になるなど、デメリットも多く抱えている」

('A`) 「宝具と真名さえ割れれば、このクラスは大して恐ろしくもないんだが……。
    アサシン、お前は実際に交戦したんだよな?」

|/▼) 「いかにも。だが、真名は判明せず、宝具を使う事も無かった。
    常時開放型なのか、使えなくなってるのかもわからん」

('A`) 「そうか……マスターは見かけたか?」

|/▼) 「いや、残念ながら。マスターらしき人物は現われなかった」

('A`) 「もう一度、探る必要があるな……」

|/▼) 「分からないことばかりだが、奴は強い。
    これだけはたしかだ。狂化などされなくても、
    奴は充分に聖杯を狙える器であったのだろう」

('A`) 「強力な英霊を更に強化したか。
    魔力消費が莫大な物になるはずなんだが……。
    マスターは一体どんな化物なのやら」


144 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:48:55 ID:Xm/VcOpw0

(-A-) 「もう一度整理しよう。サーヴァントのクラスは7つ。
    セイバー、ランサー、アーチャー、アサシン、キャスター、バーサーカー、ライダーだ」

('A`) 「サーヴァントは聖杯より魔力を得て現世に現われる。これが現界だ。
    現界したサーヴァントは実体と霊体を使い分ける事が出来る。
    実体化と霊体化だ。霊体は目視は不可能で、普段はこの形態をとることになるな」

('A`) 「実体化したサーヴァントには魔力の核となる器官があり、そこを潰せば魔力を保てなくなり死ぬ。
    人間と同じく、心臓や脳を潰してやればいい……が、神秘を伴った武器でなければ、
    奴らにダメージを与えることは出来ない。魔術による攻撃ならば通用するが……」

(-A-) 「耐魔力スキルがあるサーヴァントには通用しないと思ったほうがいい。
    スキルのランクにもよるがな。正直、俺の魔術ではサーヴァントには敵わないだろう。
    だが、前にも言ったようにマスターの魔力供給が無ければサーヴァントは姿を保てない」

('A`) 「よって、俺達はマスターさえ倒せばいい。マスターを失ったはぐれたサーヴァントは、
    サーヴァントを失ったマスターと再契約するケースもある。その場合は少々厄介だ。
    だからアサシン、ランサー。討ち漏らしはなしにしてくれよ」

目,`゚Д゚目 「御意」

|/▼) 「了解だ」

(-A-) 「さて、次は具体的な話しに移っていこう」

('A`) 「聖杯は召喚した英霊の魂を取りこみ、万能の願望機となる。
    つまり他の6騎を倒す必要があるのだが、5騎のみを倒しその力を分ける事も出来る。
    どの程度の願いを叶える事が出来るのかはわからんがな」


145 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:50:09 ID:Xm/VcOpw0

('A`) 「ランサーとアサシンを擁する俺達は、他のサーヴァント達を倒し聖杯を狙う。
    血の気の余った奴や情報を欲した奴らが、今日から動き出すことだろう。
    基本的に戦闘行為や魔術の行使を一般人に見られてはならない」

('A`) 「発見された場合は目撃者を即時に抹殺し口封じするのがルールだ。
    だから真夜中に行動を開始するのがセオリーだ。
    俺達がどのマスターがどのクラスを従えているか知るチャンスでもある」

('A`) 「昨夜の帰還後、使い魔を放ってもバーサーカーはもう見えなくなっていた。
    しかし、奴とそのマスターが円山にまだ残っているのは確実のはずだ。
    ……トソン、内藤と津出の情報を教えてくれ」

(゚、゚トソン 「了解です」

トソンはテーブルの端に置いていた地図を取り出し、
拡大図を広げていくと赤枠で囲んだ場所を指で示していく。
慎み深い紅色の唇を動かした彼女は、

(゚、゚トソン 「札幌の東区に区分され、北24条方面にある……この敷地の広い家が津出の所在地です。
      内藤の家はここから2丁離れて、西の方にある一軒家です。
      両者とも東区役所方面のVIP高に通い、幼い頃から面識がある模様」

(゚、゚トソン 「なお、昨日。内藤はどうやら聖杯戦争に迷いを持っているような会話を津出としていました。
      それを津出はなじっており、決別したかのように思われます」

('A`) 「盗聴器でも仕掛けたのか?」


146 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:51:49 ID:Xm/VcOpw0

(゚、゚トソン 「いえ、この子がやってくれたのですよ」

∧ ∧
(=^o^=) にゃあ~

トソンが呼んだのか、窓際に立っていた猫が駆け寄ってきて、
そっと灰色の毛で覆われた身体を両手で抱いたその姿は、
ペットを抱く可憐な少女のように見えた。

('A`) 「使い魔か。お前は、この中で一番使い魔の扱いに長けていたよな」

(^ー^トソン 「ふふ、ありがとうございます」

にっこりとほほ笑むその姿は少女っぽさに拍車を掛ける。
その様に、彼女の恋人であるジョルジュは見惚れていた。

('、`*川 「アンタより先にこっちに着いてから、ちゃんと仕事してたのよ?
      でも、内藤と津出の情報はあっさり掴めたものの、他のマスターについてはまだなの。
      ごめんなさい。どうやら、外部の連中が今回は多いみたいね」

('、`*川 「……一応、魔術的な仕掛けが施していそうな所は見かけたんだけども」

('A`) 「どこだ?」

ペニサスは拡大図の別のページを開き、印を付けた場所を指差す。

('、`*川 「伏古の7条にある、公園のお隣のこのお屋敷。
      結界が張られてる感じはするんだけど、
      偽装されてるからか詳しいことわからないのよ」


147 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:52:46 ID:Xm/VcOpw0

('、`*川 「危険だと判断して、それ以上の調査は打ち切ったわ」

('A`) 「ただの進入を阻む魔術結界ではなく、トラップの類か。
    それだけ分析出来れば十分だ、賢明な判断だった」

('A`) 「後は、俺が直接調べに行こう。帰還次第、作戦を改めて立案する」

目,`゚Д゚目 「応! では拙者が供を」

('A`) 「いや、ランサーはここに残ってこいつらを守ってくれ」

目;`゚Д゚目 「主っ! 何故で御座るか!? それでは主の身が危険に晒されよう」

('A`) 「俺は問題ない。俺の魔術は隠密行動に特化している。
    サーヴァントに通常兵器は通用しない、いくら武装していても敵に襲われればこいつらでも一溜まりもないんだ。
    だからランサー、こいつらを守ってくれ。サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントだけだ」

目;`゚Д゚目 「しかし……」

目,`-Д-目 「否、主の命に従おう」

('A`) 「悪いな、ランサー。槍を振るう機会は今夜にでもやってくるはずだ。
    それまで我慢してくれ。じゃあ――――」

('A`) 「最後に確認しておきたいんだが、監督役はどうなっている?」

( ´∀`) 「それは僕から」


148 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:53:57 ID:Xm/VcOpw0

( ´∀`) 「今回の聖杯戦争の監督役は、杉浦ロマネスク。
       杉浦はここのロマネ札幌教会の神父モナ。
       10年前に父親が死去して引き継いで以来、一人で切り盛りしてるモナ」

( ´∀`) 「それで聖杯戦争が札幌で行われるにあたって、聖堂協会に所属している彼は、
       能力を買われてる事もあって今回の監督役に任命された」

('A`) 「あぁ、よく知ってる。神父の動向は?」

( ´∀`) 「聖杯戦争が始まる前となんら変わりないモナ。
       内藤が昨日、教会に訪れていた。教会内にしかけた盗聴器から会話を聞いた限り、
       どうやら参戦するのを渋っていたらしい。それよりも耳寄りな情報があるモナ」

('A`) 「なんだ?」

( ´∀`) 「ドクオが入手した情報通り、刃児耶ギコが参戦していたことが判明したモナ。
       奴は神父と会話した後、消えたモナ。追跡は不可能だった。
       それよりも会話の中でギコは自分のサーヴァントが"セイバー"であることを明かしたモナ」

('∀`) 「そうか……来たか、"便利屋"」

モナーの報せを聞いたドクオの頬は自然と綻び、声からは薄っすらと喜びが感じられる。
部下達は敵の名を聞き微笑むボスに、言い知れぬ恐怖を覚えた。

('A`) 「それは良いことを聞いた。セイバーのマスターがもう判明するなんて。
    運の良いことにこちらにはアサシンが居る。暗殺の脅威はもう無い。
    じゃあ、更なる情報を集めに伏古にある屋敷へ行ってくる」


149 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:54:59 ID:Xm/VcOpw0

ソファから腰を上げて玄関へ向かうドクオは、

('A`) 「引き続き、監視を怠るな。特に監督役の教会をな。
    聖杯戦争中は教会一帯に使い魔を放つことを禁止されている。中立地帯だからな。
    渋澤、プギャー。二人一組で監視に当たれ。不審な動きが見えたら俺に連絡しろ」

ポケットからケータイ電話を取り出して見せ、そう付け加えた。
人員を二名割いてまで監督役に監視をつける理由とは。

 ( ^Д^) 「ボス、どうして監督役なんぞをそんなに警戒するんだ?」

何故そこまで執着するのか、プギャーは説明を求める。


('A`) 「奴は―――前回の聖杯戦争の勝者だ」


短く、それだけを告げてドクオは部屋から出ていった。


150 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:55:59 ID:Xm/VcOpw0

******

部屋を出たドクオはトレードマークとなりつつある、
濃緑色のモッズコートを右手で翻すと袖を通していった。

真っ白なロングスリーブTシャツをコートで覆っていき、
両脇のガンホルスターをファスナーを閉じて隠すと、
ダメージを受けた青いジーンズを履く彼はもはや一般市民にしか見えない。

階段を下りて地下にあるガレージへと向かう。

そこにはドクオ達インビジブルワンの所有する車両が二台あり、
その内の黒いパジェロVR-Ⅰへドクオは乗り込み、キーを差し込む。
重厚ながらも滑らかな車体がエンジンの稼働に震えていく。

ギアをニュートラルから1stへ。

('A`) 「さて、伏古とやらにいってくるか」

呟き、アクセルを踏み込もうとしたその時、

('、`*川 「ボスー!」

エンジンの呻りにペニサスが足音を加える。
彼女は黒い長髪を振りみだしてパジェロへ駆けより、

('A`) 「どうした?」

ミラーを開けてドクオはペニサスのほうを覗きこむ。


151 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 16:56:59 ID:Xm/VcOpw0

('、`*川 「アンタにちょっとプレゼントしたいものがあってね」

(;'A`) 「プレゼント?」

⊂('ー`*川 「そっ、これこれ」

右手に掴んでいた物を窓越しドクオの首へ巻きつけ、
彼はそちらへ視線を落としていった。

(;'A`) 「お前、これ目立つだろ……」

彼の首には赤いマフラーが巻かれ、言葉の通り、
濃緑色のコートにこれでは目立ってしまうに違いない。

('、`*川 「良いの良いの。この方が冬にあってるし、パンピーに見えるでしょ?」

(;'A`) 「あぁ……あぁ……その通りだけど……まぁいいか」

暖かいしな、そう付け加えたドクオはミラーを締めていく。

('A`) 「サンキューな」

('ー`*川 「似合ってるわよ。少しは陰気な顔が紛れそう」

(;'A`) 「うるせー……」

('、`*川 「それ、こっちに来てからジャパネットってとこで買ったの。
      おまけでもう一個ついてきたんだけど、アンタに似合ってよかったわ」


152 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:00:13 ID:Xm/VcOpw0

('A`) 「……?」

ペニサスの言葉は閉まり切ったミラーに遮られ、彼には届かなかった。

手で離れろと告げられ、ペニサスが数歩後ろへ下がるが遅いか、
黒のパジェロが発車していった。

幸いなことに空は快晴で、太陽が札幌の市街を照らしていた。
予報ではここ一週間の天気は安定する模様。

円山を降り、新聞社を抜けて北一条の通りへ入ると赤い塔が目に入る。
147mにもなり天を貫かんとするこの電波塔はテレビ塔と呼ばれ、
夜にはイルミネーションで飾られて観光名所の一つとなっている。

北海道にとって、東京の東京タワーのような存在だ。
近年改修され、より鮮やかな表示となった時計の表示枠は11時36分を告げる。

('A`) (内藤と津出は学生だったな。通学していないとしたら、
    遭遇戦になることもあるだろうな)

ハンドルを握る右手の令呪を見やり、最悪の場合これを使ってランサーを呼ばねば、
ドクオは敵サーヴァントに対抗できずに命を奪われることになるだろう。

もっとも、ドクオの魔術は隠密行動に優れた物なのだが、
アクシデントというものはどうしてもついて回ってしまうものだ。

雪の残る道ではあるが、ここは交通量などが多い為かアイスバーンではない。
軽自動車ではまだハンドルを雪に取られることもあるだろうが、
スーパーセレクト4WDⅡという駆動システムは苦も無くパジェロを走らせる。


153 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:02:15 ID:Xm/VcOpw0

隠田ドクオは魔術師である以前に、傭兵でもある。
渡り歩いてきた紛争地帯の中には雪国もあり、雪道での運転経験も豊富だ。

そんな彼とパジェロは日本の交通法に従い、安全運転で走り続け、東区へとさしかかる。
ここまで来るとアイスバーンが増え、環状通りへ入ると路面には氷が張って輝いていた。
氷の道を走行する自動車の中には時折スリップする物もあった。

(;'A`) 「うおっ、危ねぇな……」

目前の車両がスリップした時にはドクオも流石に肝を冷やす。

車間距離を適切に保っていたことが幸いだった。
そのまま環状通東駅を右折し、伏古通りに向かっていく。

すると、サイクリングロードを発見した。
木々が生え揃えられ、舗装されたスペースを持っていたのだが、
雪が大量に積っている為それらは覆い隠され、ドクオには細長い雪原にしか見えなかった。

('A`) (反対車線に見える公園が伏古公園か?)

中央分離帯のように設置されたサイクリングロード。
そこを左折して、サイクリングロード越しに見える公園を覗くと、
これもまた雪原じみた公園を見かける。

('A`) (広い敷地だ。中央には噴水、球状のスペース。右には木々に覆われたジョギングコースと、
    左にはフェンスと野球場と小山。奥には遊具コーナーか……ここで待ち構えれば、
    スナイパーも設置でき、ランサーの得物を充分に活かしてやれるだろう)


154 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:03:29 ID:Xm/VcOpw0

伏古公園を見たドクオの頭は、自然と戦略を組み立てていた。

もしこの目的地の屋敷にいる者が魔術師で、マスターであるのならば、
ここが戦場になる可能性は十分にあるだろう。

他に、スナイプポイントになりえる場所はないか探しながら、
パジェロを走らせているとペニサスが目を付けていた屋敷らしい物を見かけた。
標識を見やると、伏古7条と記されており、ここで間違いないと確信した。

北24条通りへ向かう道路と分かたれる、交差点が前方に映り、
ドクオはパジェロを転回させて反対車線に入り込んだ。

屋敷の傍には公園があり左折して路肩に停車させる。

公園にはまたしても小山があり、今は雪に埋もれているが砂山やベンチなど、
ささやかな遊具が設置されているのが雪原の凹凸から察せられた。

('A`) 「へぇ、こんな田舎にも立派な屋敷はあるもんだな」

ベンチに腰かけたドクオは不審さを感じさせぬよう、
さもドライヴの休憩に立ち寄った者のように自然と振舞いながらも、屋敷を盗み見ていく。

赤レンガで作られた、一見古風な屋敷だが、
覗ける内装から近代化されていることは明らかだ。
門も構えられており、玄関まで石畳で覆われ、ロードヒーティングが成されているのか雪は無い。


155 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:06:48 ID:Xm/VcOpw0

歴史と科学が融合し、様式美と性能美を併せ持つ無駄の無い屋敷だった。

また、別館と一体化しており、別館にはガレージが備えられている。
ここ一帯の住居としては破格の広さで、一区画を丸ごと屋敷にしていた。
赤レンガ庁舎を彷彿とさせるレンガ屋敷だ。

ドクオはその端から端へと視線を走らせていき、ポケットからタバコを取り出す。
黄色のソフトパッケージにはハトが描かれ、バニラの甘い香りが鼻腔を撫ぜる。

白いフィルターを口に加え、ジッポーで火を付けると濃厚な甘みとは裏腹に、
どっしりとした重みが肺にパンチを効かせていった。

(-A-)y━~~ (正解だよ、ペニサス。もし使い魔を入り込ませていたら、
         お前の魔術回路は焼かれていたことだろう。こいつは単純な術式じゃあない)

煙を吐き出し、ドクオは屋敷全域に掛けられた結界を分析していく。

有効範囲は大したものではなく、索敵に向く結界ではない。
しかし、侵入者を呪う術式が組まれ、更には交霊を司る術も合わせられている。

おまけに術式それぞれに念入りに偽装の術式が組まれており、
そうとも知らずに使い魔が入りこんだ途端、魔術を供給する術者へ膨大な魔力を送り込む仕掛けだ。
                         マナ            オド
魔力には二種類あり、自然の生み出す"大源"と、生物に宿る"小源"に分かれる。
生物が自ら生成するオドと自然が生成するマナでは、絶対量こそ変わるが性質は同じ魔力である。

大まかに言えば魔力とは出力機であり、魔術師は入力機だ。
一度に大量の魔力を送りこまれると魔術回路は処理しきれずに暴走し、
魔術師の神経やら内蔵をズタズタに引き裂いてしまうのだ。


156 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:07:43 ID:Xm/VcOpw0

本来、人間には魔術を操る器官など存在しない。魔力とは身体にとって異物にしかすぎない。

それだけならば魔術師の力量如何によっては制御してみせることだろう。
だが、呪いによって送り込まれる魔力は指向性を持ち、魔術回路をかき乱す。

(;'A`)y━~~「相当な魔術師が住んでいるに違いあるまい……」

ドクオですら、このまま足を敷地内に踏み入れれば一瞬で魔術回路を焼かれることだろう。

('A`)y━~~ (これほどの術式、一体誰が……無名の魔術師の筈がない。
        しかし、高名な魔術師がやってくるのなら容易に情報が手に入るはずだが……)

脳内に記録された魔術師のリストを読みあげるも、
その誰もが今回の聖杯戦争に参戦するとの情報は得ていない。

いや、目ぼしい魔術師は皆この地にやってくる前に全て消した。

('A`)y━~~ (そのはずだ……)

まさか、とドクオはある考えに至るが、

('A`) 「ッ!」

側頭部を貫くような鋭利な殺気を感じて飛び退る。
タバコを吐き捨て、雪の上に膝を突いて着地するとベンチが爆ぜた。
同時、甲高い銃声が空を走っていく。


157 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:09:58 ID:Xm/VcOpw0

('A`) (着弾と銃声がほぼ同時か、近いな)

聞き覚えのある音だ、とドクオは感じた。
未だにスナイパー達に根強く支持される木製ライフルから立つやけに甲高い音。

(;'A`) (モシンナガンか)

ベンチは粉々に砕け、今や雪の上に木片と金属片を晒している為、狙撃位置は割り出せない。
モシンナガンに使用される7.62mm×53R弾は貫通力には優れるが、これほどの衝撃を与えるはずがなく、
即座にこれはサーヴァントによる攻撃だとドクオは判断した。

ここまで至るのに要した時間は一秒にも満たず、彼は既に次の行動に移っている。

戦場を越えてきた数だけドクオは戦士として鍛え上げられ、
磨きぬかれた状況判断能力と行動力がそうさせたのだ。

    インビシブル    ウロボロス
('A`) 「invisible―――uroboros」


呪文の高速詠唱。


――――隠匿の魔術。


背に掘られた穏田家の魔術刻印が輝き、全身に魔力を覆わせたドクオは飛び出していく。
先程まで彼がいた位置に弾丸が飛び込み、雪煙を上げた。
姿勢を低く、そして全力で足を振りあげて駆け抜ける。


158 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:11:24 ID:Xm/VcOpw0

先程の狙撃でドクオはスナイパーの居場所を特定していた。

小山にいるはずだが……そこには人の姿など見当たらず、

('A`) (気配遮断のようなスキルか。見えんが、いるのは確実だ)

ドクオはパジェロのほうへと駆けこんだ。
途端に銃声は止んだが、これはひとえに彼が行使した魔術のおかげだ。
隠田家が秘術であるそれは気配を隠匿するというもの。

今の彼の姿は外界から隠匿されており、何人たりとも視界に納めることは敵わない。
これが、この魔術こそがランサーを伴わずに出てきたドクオの自信の源である。

隠密行動に特化した魔術。
隠田家に授けられる隠者の属性がそれを実現させたのだ。

この隠匿の魔術を使われては、サーヴァントと言えども彼を捉えることは不可能だ。
しかし、サーヴァントとはかつての英雄である。
戦いのセオリーというものを、彼らが理解していないはずがない。

ドクオがパジェロのドアを開けた、その途端。
ガラス片が雨霰となって散っていった。

気配遮断スキルにも匹敵するほどの魔術ならば、長時間行使出来るはずもない。
そう踏んだ敵サーヴァントは自動車を逃走に使うと踏み、
見えないながらもドアが開く瞬間を狙って、頭部があるはずの部位へ弾丸を放ったのだ。


159 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:13:22 ID:Xm/VcOpw0

が、

(;'A`) 「危なかった……」

ドクオのほうが一枚上手であった。

その一瞬を狙われることを予期して、わざわざ反対側へと回りこみ、
地面に伏せた状態で手を伸ばしてドアを開けたのだ。

背の上に粉々になったガラスが降り注ぐが、
シャツの下にきていた防弾ベストが身体を守り、幸いなことに無傷で済んだ。
ドクオは座席に伏せたままキーを挿しこみ、片手でギアをチェンジして蹴りを放つが如くアクセルを踏み込む。

それよりも早く、蜘蛛の巣状になっていた反対の窓ガラスが完全に消し飛び、
背のほんの数センチ上をサーヴァントの放った弾丸が通過していった。

背筋に冷たいものが走ったが、パジェロは獰猛な呻りをエンジンから上げて急発進する。
他人から彼の姿が見えていれば間抜けな格好に見えただろうが、
九死に一生を得たドクオは速やかに姿勢を正して運転していく。

まだ、安心は出来ない。

追跡を避けるべく、ドクオは全速力でその場を抜けた後、
遠回りをしてから帰路へと就くことにした。


160 : ◆IUSLNL8fGY:2012/05/05(土) 17:14:05 ID:Xm/VcOpw0

―――彼が睨んでいた公園の小山の上。


(<`十´> 「……逃したか。魔術師の分際で、中々やる」

雪に埋もれたサーヴァント……アーチャーは呟く。

その姿は、彼の宝具の一つによって雪と同化していた。
限定的な能力ではあるが、アサシンの気配遮断スキルと同等の効果を発揮する宝具。
ドクオには見えなかったが、しかしその正体を見破られる日は遠くは無いだろう。

確実に仕留められるとアーチャーは踏んでいたのだが、
今回行われた戦闘は吉と出るか、凶と出るか。

彼のマスターである内藤ホライゾンは、その事を知る由も無かった。

小山の上でライフルを構えていたアーチャーはそのまま霊体化していき、
次なる標的を求めて歩き出していく。


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